今日の魔女の仕事~魔女達が照らす明日~   作:ジョン5

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魔女と職人2

翌日、ウォルタとフレイの二人は、カンカから受け取った地図に従い、デコ山へとやって来た。

 

「着いたわね。取り敢えず……」

 

ウォルタは後ろを振り返って言った。

 

「なんで、あなたがいるわけ?」

 

ウォルタが振り返った先には、カンカの姿があった。

 

「いや、ちょっと気が変わってな。お前さんたちに同行することにした」

 

カンカが笑顔で答えた。

 

「……わざわざついてくるなんて、何かよからぬことでも考えてんじゃないの?」

 

ウォルタがカンカに詰め寄った。

 

「お見通しか。だが、これはお前さんたちにとってもいいことだ。鉱石の採取のついでに、ちょっとしたバイトをやってもらおうと思ってな」

 

「バイト?」

 

フレイが尋ねた。

 

「ああ、うちの試作品の試用を行ってもらう。採掘場所への道のりでは嫌でも魔物と遭遇する。そこで、ウォルタ、お前さんにはその試作品で戦闘を行ってもらい、実戦データを取ってもらう」

 

カンカが答えた。

 

「……バイトってことは、その分を修理費から差し引いてくれるってことよね」

 

ウォルタが尋ねた。

 

「そういうことだ。悪い話じゃないだろう」

 

カンカが口元に笑みを浮かべた。

 

「……そう言うことなら分かったわ。で、その試作品ってのは?」

 

ウォルタがそう尋ねると、カンカは背負っていた巨大な縦長のカバンから、身の丈ほどのバズーカのようなものを取り出した。

 

「随分とでかいな」

 

フレイは目を丸くして驚いた。

 

「これが試作品の魔法銃……というか、魔法砲だ。使用者の魔力を、巨大な魔法弾に変換して、打ち出すことができる」

 

カンカは誇らしげに鼻をフフンと鳴らした。

 

「ちょっと、私、こんなでかい魔法銃使ったことないわよ」

 

ウォルタが抗議した。

 

「別に、同じ銃の類なのだから、使い方にそんな大差はない」

 

カンカはウォルタの抗議をさらっと流した。

 

「……まあ、取り敢えず使ってみるけど」

 

ウォルタは渋々、カンカから魔法砲を受け取った。そして、三人は採掘場所に向けて歩き出した。

 

 

 

 

「……おかしいなぁ」

 

しばらく歩いたところでフレイが言った。

 

「どうしたのよ?」

 

ウォルタが尋ねた。

 

「うーん、カンカは嫌でも魔物と遭遇するって言ってたけど、今の所、一匹たりとも魔物が出てきてないぞ」

 

フレイの言葉に三人は足を止めた。

 

「……確かに、そうね。カンカ、どうなってるのよ」

 

ウォルタがカンカに尋ねた。

 

「さぁな、だが、おかげで楽に目的地に着けるのなら、得じゃないか。まあ、そいつの試用が出来ないのは残念だが」

 

カンカはウォルタの背負った魔法砲を指さして言った。

 

「例え、一匹も魔物と遭遇しなかったとしても、バイト代分は、修理代から引いてもらうわよ」

 

ウォルタが口元に笑みを浮かべながら言った。

 

「おいおい、実戦データが取れないんじゃ、バイトは成立しない。修理代の差し引きはなしだ」

 

カンカとウォルタが言い合いを始めようとしたとき、突如、地面が大きく揺れた。

 

「……二人とも、そのことでもめる必要はないみたいだよ」

 

フレイが言そう言った次の瞬間、山の上から、大きな二本の角を持った、巨大な牛の姿をした魔物が飛び降りて、三人の目の前に着地した。

 

「魔物⁉」

 

ウォルタがカンカとの言い合いを切り上げて言った。

 

「……こいつは、ストーンブルだな。この山で見かけるのは珍しいが……」

 

そう言いかけると、カンカはしばらく考え込んだ後、再び口を開いた。

 

「なるほど! こいつが現れたことで、他の魔物たちが縄張りを追い出されたから、私たちは他の魔物と遭遇しなかった訳か!」

 

カンカが一人で納得した次の瞬間、ストーンブルの突進が三人を襲った。

 

「……って、今はそんなことどうでもいいでしょ!」

 

ウォルタはカンカを抱きかかえると、そのまま横に飛び、魔物の突進を回避した。

 

「戦闘開始! 早速、使わせてもらうわ!」

 

そう言うとウォルタは魔物に向けて魔法砲を構え、引き金を引いた。しかし、放たれた弾は魔物のいる位置を大きくそれ、山に直撃した。

 

「おい! どこを狙っている!」

 

カンカがウォルタに向かって叫んだ。

 

「初めてなんだから、仕方ないでしょ! 次は当てるわ!」

 

ウォルタは再び魔物に向けて砲を構え、引き金を引いた。今度は放たれた弾が、その射線上に魔物をしっかりと捉えた。しかし、その弾は魔物に当たる直前に、簡単によけられた。

 

「……意外と身軽ね。というかこの砲の弾速が遅ぎるわ」

 

ウォルタは顔に冷や汗を浮かべた。

 

「……なるほど、弾速の調製が必要と……」

 

カンカはそう言いながら、メモを取り始めていた。

 

「……まったく、呑気なものね。フレイ! こっちの攻撃はあてになりそうもないわ。お願いできる!」

 

ウォルタが遠くのフレイに向けて叫んだ。

 

「分かった! こんな奴、ウチの剣で……」

 

フレイがそう言いかけたとき、カンカが割って入った。

 

「待ってくれ! まだ、弾が魔物に当たった時のデータが取れていない。戦闘の主役はあくまでこの魔法砲だ。間違って倒してくれるなよ!」

 

「ええ⁉ 倒しちゃダメなのかよ!」

 

魔物の突進をかわしながらフレイが言った。

 

「ちょっと、カンカ! 無茶が過ぎるわよ! あなたも見たでしょ、この魔法砲であの魔物を仕留めるのは無理よ!」

 

ウォルタが顔を強張らせながら、カンカに言った。

 

「……ほう無理か。呆れたな、せっかくお前さんの腕を見込んでこのバイトをやらせたというのに、どうやら私の見込み違いだったようだ」

 

カンカがため息混じりにそう言った。

 

「……どういう意味よ」

 

ウォルタは眉をひそめながら尋ねた。

 

「魔女とは常にあらゆる制約の中で仕事をこなすものだ。お前さんも一人前の魔女なら、今のこの状況も、持ち前の機転で乗り越えられると思うが」

 

カンカはウォルタの目を真っ直ぐ見て言った。

 

「……まったく、好き放題言ってくれるじゃない……でもおかげで火が付いたわ。待ってなさい! 今に見返してあげるわ!」

 

そういうとウォルタは再び魔物に向けて砲を構えた。

 

(このまま、撃ってもかわされるのがオチ。だったら!)

 

そう思うとウォルタはフレイに向けて叫んだ。

 

「フレイ! 悪いけど、その魔物、どうにかして空中に放り投げてもらえない!」

 

「よっしゃあ! 任せろ!」

 

そう言うとフレイはバッグから魔導石を取り出し、握った魔法剣にスキャンした。

 

『デュアル』

 

魔導石から音声が鳴り、魔法剣が二つに増えた。そして、二本の剣を構えたフレイのもとに、ストーンブルが突進を仕掛けてきた。

 

「そのまま来い!」

 

そう叫ぶフレイに魔物の突進が直撃した。しかし、フレイはこれを二本の剣で受け止め、そのまま、魔物の突進の勢いと、二本の剣を利用して、魔物を空高く投げ飛ばした。

 

「あのストーンブルを投げただと⁉」

 

カンカは上空を見上げて驚いた。

 

「流石ね、フレイ!」

 

そう言うとウォルタは空中の魔物に砲の狙いを定めた。

 

「どんだけ身軽でも、空中では身動きは取れない! これで終わりよ!」

 

ウォルタが銃の引き金を引き、放たれた弾はストーンブルに直撃した。魔物は光の粒子となって消えた。

 

「本当に倒しちまうとは……いやはや、参った」

 

カンカが呆然としながら、ウォルタに言った。

 

「私たちにかかればこんなものよ。ね、フレイ?」

 

ウォルタはフレイに向けてウィンクをした。

 

「まあな!」

 

フレイも笑顔とサムズアップでそれに答えた。そして三人は無事、核の材料となる鉱石を採取し、デコ山を後にした。

 

 

 

 

数日後、ウォルタは、再びカンカの店を尋ねていた。

 

「ほらよ、修理アンド、核を上級仕様にしたお前さんの魔法銃だ」

 

カンカはウォルタに魔法銃を渡した。

 

「どうも」

 

ウォルタはカンカから魔法銃を受け取った。

 

「じゃあ、私はこれで」

 

そう言って店から出ようとしたウォルタの背中にカンカの声が響いた。

 

「ウォルタ……お前さん、いい仲間を持ったな」

 

その言葉にウォルタは立ち止まった。

 

「今までの一人ぼっちのお前さんなら、成し遂げられなかったことも、あのフレイとならそれができる。お前さん達の戦いを近くで見てそう感じたよ。その絆、大事にするんだな」

 

カンカは笑顔でそう言った。

 

「……わざわざ言われなくても、分かってるわよ、偉そうに……また世話になるわね、ぼったくり職人さん」

 

そう言ってウォルタはカンカに笑顔を向けた。

 

「いつでも来なよ、がめつい魔女さん」

 

カンカの言葉に笑顔で答え、ウォルタは店を出た。

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