今日の魔女の仕事~魔女達が照らす明日~   作:ジョン5

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魔女と花畑2

「フレイさん!」

 

花畑だった荒れ地の前に、佇むフレイにフラウが声を掛けた。

 

「どうした、フラウ?」

 

フレイが振り返った。

 

「……行かれるのですね?」

 

「……ああ、このままじっとしてても何も変わらないしな。けど、今度は自分を責めて焦ったりしてないよ。ウチ決めたんだ。この花畑を甦らせるためにベノムフラワーを倒すって!」

 

「花畑のため?」

 

「ああ。もちろんウォルタや村の人の毒を取り除くためってのもあるけど、魔物の毒のせいで消えてしまった、この花畑の本当の姿を見てみたいと思ってな」

 

フレイは笑顔でそう言った。

 

「ふふ、そうですか。ならもう止めることはありませんね。フレイさん、これを持っていってください」

 

そう言うとフラウはフレイに何かを手渡した。

 

「……これ、魔導石じゃないか。どうしてフラウが?」

 

「魔女だった私の姉の形見です」

 

「いいのかよ、そんな大事なもの?」

 

「ええ、魔女であるフレイさんが持っていた方が、きっと意味があるはずです」

 

「……分かった、ありがとな!」

 

そう言うとフレイはフラウから魔導石を受け取った。

 

「フレイさん、どうか気を付けて」

 

「ああ!」

 

フレイはフラウに手を振ると、森に向かって歩き出した。

 

 

 

 

「うおりゃあ!」

 

森の中に入ったフレイは早速、花の姿をした魔物二匹との戦闘に入っていた。そして、フレイの振る剣が魔物の一匹を切り裂いた。

 

「次!」

 

そう言って体の向きを変えたフレイに、すぐさまもう一匹が襲い掛かり、毒の花粉をフレイ目掛けて吹き出した。

 

「その攻撃はもう見てる!」

 

フレイはそう言って、魔物の花粉をかわし、背後に回り込むと、炎の剣で魔物を切り裂いた。

 

「ふう。しかし、急に襲ってくる魔物の数が多くなったな。この先に親玉のベノムフラワーがいるってことか!」

 

フレイは森の中を魔物を葬りながら疾走し、やがて、森の奥に到達した。そしてその目に巨大な花の姿をした化け物を捉えた。

 

「……こいつがベノムフラワーだな……よし! 行くぞ!」

 

フレイは魔法剣を力強く握り、その刀身に炎を灯すと、ベノムフラワーとの距離を一気に詰め、構えた剣を振ろうとした。

 

(待てよ、こいつもあの小さい花みたいな奴と同じで、花粉を吹き出すんじゃ……)

 

フレイの予想は当たっていた。ベノムフラワーは突如、自らの周囲に大量の花粉を吹き出し、まき散らし始めたのだった。

 

「あっぶね!」

 

いち早く感づいたフレイは魔物から距離をとった。そして、魔物がまき散らした花粉は、その周囲に密集し、まるで魔物をガードする結界のようになった。

 

「……困ったな、近づかなけりゃ、剣を当てられないぞ」

 

フレイはそう言って、顔に冷や汗を浮かべた。

 

(どうする、剣を使わないで炎魔法の玉を飛ばすか? いや、それじゃあ威力が低すぎる……)

 

そう考えこむフレイの頬に激痛が走った。魔物がまき散らした花粉の一部がフレイの頬に触れたのだった。

 

(このまま、ここに長居するのはまずいな。一気に型をつけないと!)

 

フレイはバッグからフラウから貰った魔導石を取り出した。

 

「……フラウの姉ちゃん、力を貸してくれ!」

 

そう言うとフレイは魔法剣に魔導石をスキャンした。

 

『ウェイブ』

 

魔導石から音声が鳴り、魔法剣の刀身に灯った炎が、僅かに形を変えた。

 

「何だ、特に大きな変化はないな……」

 

そう言って、フレイが構えた剣を振ると、剣に灯った炎が刀身から分離し、そのまま剣を振った方向に三日月型に飛び、近くの木を切り倒した。

 

「斬撃が飛んだ……これが魔導石の効果か! よし!」

 

フレイは花粉に囲まれたベノムフラワーの前に立つと、剣を構えた。

 

「この技なら、近づかなくても、お前を切れる! 食らえ!」

 

フレイの振り下ろした剣から放たれた炎の斬撃が、花粉の結界を切り払い、そのまま、本体のベノムフラワーに到達した。そして、ベノムフラワーは真っ二つに切り裂かれ、光の粒子となって消えた。

 

 

 

 

数日後、ウォルタ、フレイ、フラウの三人はかつて花畑のあった荒れ地の前にいた。

 

「魔物を退治するつもりが、すっかり世話になっちゃったわね」

 

ベノムフラワーの毒が消え、元気を取り戻したウォルタがフラウに言った。

 

「そんな、私は大したことはしてませんよ。それに、フレイさんがベノムフラワーを倒してくれたおかげで、毒を浴びた村の人々も元通り元気になりましたし、フレイさんには感謝してもしきれません!」

 

フラウが笑顔でそう言った。

 

「ホントよね、ありがとうフレイ」

 

ウォルタが笑顔でそう言った。

 

「よ、よしてくれよ、ウチがベノムフラワーを倒せたのはみんなの協力があったからだよ」

 

フレイが照れ臭そうに頭かきながら言った。

 

「……けど、毒が消えて人が元気になっても、花たちはそうはいかないみたいだね……」

 

フレイが荒れ地に目をやって言った

 

「……ええ、毒を浴びている期間が長すぎて、花たちはすっかり枯れ果ててしまいましたから……ですけど!」

 

フラウは両拳に力を入れると、二人の顔を真っ直ぐ見た。

 

「必ず、村のみんなの力を合わせて、この花畑を甦らせます! どれだけ時間がかかるか分かりませんけど必ず! ですから、もし再びこの村が花でいっぱいになったら、お二人共またいらしてください!」

 

フラウは笑顔でそう言った。

 

「ああ、もちろん! 約束だ、フラウ!」

 

フレイは笑顔でサムズアップした右手を突き出した。

 

「ええ、楽しみにしているわ!」

 

ウォルタも笑顔でそう言った。

 

「はい! 約束です!」

 

そう答えたフラウに手を振って、二人はハナ村を後にした。いつの日か花でいっぱいになるであろう大地を踏みしめて。

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