今日の魔女の仕事~魔女達が照らす明日~   作:ジョン5

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魔女と謎の少女再び2

それから二人は洞窟内を、周囲を警戒しながら進み、やがて開けた場所に到達すると、二人の耳に手拍子が鳴り響いた。

 

「……お二人とも、第一関門突破、おめでとうございます」

 

そう言って手を叩くニールの姿がそこにはあった。

 

「……ニール」

 

フレイはニールをにらみつけた。

 

「あなたがここにいるってことは、手紙の内容は事実ね。アンはどこにいるの」

 

ウォルタとは語気を強めてニールに尋ねた。

 

「……あちらの檻の中にいらっしゃいますよ。最も、今は魔法の効果で夢の中ですが」

 

ニールは自分の後方に置かれた檻を指さして言った。檻の中には眠りに落ちたアンの姿があった。

 

「アン! 待ってろ、すぐ助けてやる!」

 

そう言うとフレイは檻に駆け寄ろうとした。

 

「……おっと、させませんよ」

 

ニールがそう言って指を鳴らすと、どこからともなく一体の狼の様な姿をした魔物が現れ、フレイに体当たりを食らわした。

 

「うおっ、なんだこいつ!」

 

フレイは受け身を取ると言った。

 

「あれは、グルの森のグルウルフ。今度はこいつを使って、私たちを葬ろうって訳?」

 

ウォルタがニールに尋ねた。

 

「……そうです、呑み込みが早くて助かります」

 

ニールはそう言うとお辞儀をした。

 

「……ふざけやがって、アンは無関係だろ! 解放しろ!」

 

フレイがニールに向かって叫んだ。

 

「……それはできません、彼女はあなた方をここから逃がさないための措置ですから」

 

ニールが笑顔でそう言った。

 

「どういう意味だ」

 

フレイが尋ねた。

 

「……彼女が捉えられている檻は、特殊な魔法がかけられていて、そこにいるグルウルフを倒さないと、開かない仕組みとなっています」

 

「関係ない! そんな檻、力づくでぶっ壊す!」

 

「……言うと思いました。閉まった状態の檻に衝撃を与えると、内部に高圧の電流が流れる仕組みとなっています。彼女を生きたまま取り戻したのなら、それはよした方がいいですよ。

 

「……なんだと」

 

フレイは唇を噛み締めた。

 

「……ニール、あなたがここまでして私たちを始末しようとする理由はなに?」

 

ウォルタが眉間にしわを寄せながら尋ねた。

 

「……あなた方の存在が、私たちの大いなる計画の為の実験の邪魔になるからです。それ以上の理由はありません」

 

ニールは笑顔でそう答えた

 

(私たち?)

 

ウォルタの頭の中に疑問符が浮かんだ。

 

「……さあ、お話はこれくらいでいいでしょう。始めますよ」

 

そう言うとニールはどこからともなく一本の剣を取り出し、それをグルウルフの背中に突き刺した。グルウルフは咆哮を上げると共に体に、目に見える青色のオーラをまとった。

 

「……では、お二方、せいぜい頑張ってください」

 

そう言い残して、ニールは姿を消した。

 

「おい! 待てニール! ……くそぅ!」

 

フレイは右手の拳を強く握りしめた。

 

「どうやら、アンを救い出すには、ニールの言葉通り、このグルウルフを倒す他ないようね」

 

ウォルタは魔法銃を取り出した。

 

「こんな奴、すぐ倒して、アンを救い出す!」

 

そう言うとフレイは魔法剣を取り出して構え、グルウルフとの距離を詰めようと、駆け出した。しかし、このフレイの動きに対応するように、グルウルフは俊敏な動きで、向かい来るフレイに距離をとった。そして、グルウルフはフレイに向けて、口から炎の玉を打ち出した。

 

「うおっ! 何だこいつ、速い!」

 

火の玉をかわしたフレイが言った。

 

「どうやら、私たちから距離を取って戦うタイプらしいわね。ならこちらも、遠距離で攻めるわ!」

 

ウォルタはそう言いとバッグから魔導石を二つ取り出し、魔法銃にスキャンした。

 

『ラピッド』

 

『デュアル』

 

魔導石から音声が鳴り、二丁のガトリング型の銃が出現し、ウォルタはそれを魔物に向けて構えると、引き金を引いた。しかし、グルウルフはウォルタが放った銃弾の雨を華麗な身のこなしでよけた。

 

「速っ! 何こいつ」

 

ウォルタは片方の銃の射撃で魔物の進路を塞ぎ、もう片方の銃の射撃を魔物に食らわそうと試みたが、魔物はその策など通用しないほどの速さで、銃弾をかわし、ウォルタを攪乱した。

 

「くそぅ、これなら、どうだ!」

 

フレイはそう言うとバッグから取り出した魔導石を、魔法剣にスキャンした。

 

『ウェイブ』

 

魔導石から音声が鳴り、剣が炎の斬撃を発射可能になると、フレイはその剣を魔物のいる方へ向けて振り下した。刀身から三日月型の炎の斬撃が、グルウルフに向けて放たれたが、グルウルフはこれもいとも簡単にかわしてしまった。

 

「……なんだよこの魔物、動きが速すぎないか!」

 

フレイがウォルタに言った。

 

「……ええ、通常のグルウルフはここまでの動きはできない。おそらく、この驚異的なスピードこそが、ニールが魔物に新たに加えた力ね」

 

そう言うウォルタをよそに、グルウルフは二人から距離をとったまま、炎の玉を連続して放ってきた。二人はなんとかこれをかわした。

 

「意地でもこちらに近づかないつもりね。あの炎の攻撃自体はさほど驚異ではないけれど、このまま攻撃を当てられずに長期戦に持ち込まれたら、こっちの魔力がもたないわ」

 

ウォルタは顔に冷や汗を浮かべた。

 

「この……当たれ! 当たれぇ!」

 

フレイはグルウルフに向けて、がむしゃらに何発もの斬撃を放ったが、全てかわされて終わった。

 

「……あ、当たらない」

 

フレイは息を切らし、肩で息をした。

 

「まぐれ当ては難しそうね、何とかして動きを止めないと。デコ山で戦ったストーンブルの時みたいに空中に投げ飛ばせればいいんだけど……」

 

「あいつに近づけないことには、それはできないよぉ」

 

「……そうよね、どうしたものかしら」

 

そう考え込むウォルタを魔物の放った炎の玉襲った。

 

「ああ、もう!」

 

そう言って身をかわそうとするウォルタであったが、一瞬、地面に足をとられ、その場に転倒した。

 

「いたた、もうついてないはこんな時に……」

 

幸いにも火の玉をかわしたウォルタが体を起こそうとした時、自分の足元を見てあることに気づいた。

 

(……ここの地面、随分とぬかるんでるわね)

 

ウォルタの思った通り、この滝の裏の洞窟内の地面は、周囲の川の水が流れ込んでいる為、酷くぬかるんでいた。

 

「ウォルタ! 大丈夫か?」

 

フレイがウォルタに駆け寄った。

 

「……フレイ、思いついたわよ、奴の動きを止める方法を!」

 

そう言うとウォルタは立ち上がり、二丁のガトリング銃を構えると、魔物の周囲の地面に向かって水魔法の銃弾を乱射した。

 

「おい! どこ撃ってんだよ!?」

 

フレイが驚きながら言った。

 

「まあ見てなさい、これで準備は完了よ。フレイ、剣を構えて。今から私が奴の動きを止めるから、炎の斬撃を食らわせてやりなさい!」

 

ウォルタは口元に笑みを浮かべた。

 

「よくわからんが、分かった!」

 

そう言ってフレイが剣を構えたのを確認すると、ウォルタはグルウルフに向けて、銃を構え、引き金を引いた。グルウルフは放たれた無数の弾丸をかわそうと、脚に力を入れ横に跳ぼうとした。しかし、その脚は異常なまでにぬかるんだ地面よってつかまれ、勢い余ったグルウルフはその場に倒れ込んだ。

 

「それ見たこと。ただでさえ川の水で浸った地面を、私の水魔法の銃弾でさらにぬかるむようにしたのよ。当然、そんな足場に力を入れたら、足は地面に飲み込まれるわ……ってことで、フレイ!」

 

「ああ!」

 

フレイが放った三日月型の炎の斬撃が、起き上がったグルウルフの体を切り裂いた。

 

「ここを戦いの場所に指定したのが間違いだったわね、ニール」

 

ウォルタの言葉と共に、グルウルフは光の粒子となって消えた。

 

 

 

 

「……う、うーん……ここは?」

 

無事、檻から解放されたアンが目を覚ました。

 

「おっ、アン! 気が付いたか!」

 

木の幹に体を預けているアンに、フレイが駆け寄った。

 

「フレイさん? それに、ウォルタ様も。なぜここに? ……そうですわ! 私、何者かに捕まりそうになって……それで……」

 

混乱して頭を抑えたアンの肩に、ウォルタが手を置いた。

 

「アン、あなたはある悪党によって捕まって眠らされていたの。でも、もう大丈夫よ、そいつらは私たちが追っ払ったから」

 

ウォルタはそう言って優しく微笑んだ。

 

「……そ、そうなんですの? ……よく状況が飲み込めませんけど、また、お二人に助け頂いたのですわね。ありがとうですわ」。

 

アンはそう言うとふらついた体を起こして、二人にお辞儀をした。

 

「れ、礼なんてそんな……それに、今回のことはウチらが原因で……」

 

そう言いかけたフレイをウォルタが止め、フレイに耳打ちをした。

 

「ニールのことはアンには内緒よ、これ以上、彼女を巻き込むわけにはいかないわ」

 

「わ、分かった」

 

「お二人ともどうしたんですの?」

 

アンが二人に尋ねた。

 

「べ、別に何でもないよ! こっちの話、ハハハ!」

 

フレイは作り笑いをしてごまかした。

 

「……そうなんですの。まあ、いいですわ」

 

アンが納得した次の瞬間、ウォルタとフレイの二人の腹の虫が同時に鳴いた。

 

「……そう言えば、朝から何も食べてなかったわね」

 

ウォルタは頬を赤くしながら、腹を抑えた。

 

「まあ! それは大変ですわ! すぐに、帰ってお昼食を作りませんと!」

 

アンは目を輝かせてそう言った。

 

「ちょ、アンが作るのか? うれしいけど、体は大丈夫なのかよ?」

 

フレイがアンに尋ねた。

 

「ええ、お二人の為を思えば、これくらいどうってことないですわ! さあ、都市に戻りますわよ!」

 

そう言ってアンは我先に歩き出した。

 

「……よかった、体に異常はなさそうね」

 

ウォルタは安心して、ひと息着いた。

 

「そうだな……なあ、ウォルタ」

 

フレイがウォルタに尋ねた。

 

「何よ?」

 

「ウチ、前にニールに会ったときは、人の魔導具を盗むおかしな奴だとしか思わなかった。けど、今回アンをさらったことで気づいたよ。あいつは異常で危険すぎる奴だって」

 

「……そうね。それに、彼女の発言からして、一連の行動は彼女の独断ではなく、他に協力者がいると考えられるわ。自分は魔女ではないと言っていた彼女が、魔法でアンを眠らせていたことからもね」

 

「大いなる計画の為とかも言ってたよな……ちくしょう! 何が目的なんだ」

 

「分からないわ。けど、どうも嫌な予感がするわ」

 

 

そう言って、ウォルタが見上げた空には、暗雲が立ち込めていた。

 

「お二人共、何をなさってますの! 早くしないと雨に降られますわよ!」

 

遠くのアンが二人に向けて手を振りながら叫んだ。

 

「ああ! 今行くよ! ウォルタ、腹も減ったし、今はもう帰ろう」

 

フレイが腹を抑えながら言った。

 

「……ええ、そうね」

 

今にも雨を降らしそうな暗雲のもと、三人はサラ川を後にした。

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