「作戦会議は終了? じゃあ、続きと行きましょうか!」
ウォルタはニールが繰り出した突進をかわすと、二つの魔導石をバッグから取り出し、魔法銃にスキャンした。
『ラピッド』
『デュアル』
魔導石から音声が鳴り、二丁のガトリング型の銃が出現した。ウォルタはそれらをニールに向けて構えると、彼女の翼目掛けて引き金を引いた。しかし、放たれた銃弾は彼女の華麗な身のこなしによって、かわされた。
「ほう、やる気になりましたか。そうこなければ!」
そう言って、笑みを浮かべたニールに、別角度から炎の斬撃が襲い掛かかった。フレイが放った斬撃だ。斬撃は左の翼をかすめた。
「狙いは、翼か……面白い!」
ニールは急降下による突進を、ウォルタとフレイは翼を狙う攻防が幾度となく繰り返された。
「……動きが早すぎる、一瞬でも彼女の動きを止める必要があるわね」
ニールの攻撃をかわしながらウォルタが言った。
「どうするんだ?」
同じく攻撃をかわすフレイが尋ねた。
「私に考えがあるわ。こいつの出番よ!」
そう言うとウォルタは背中に背負っていた、カンカからの餞別である魔法砲を構えた。
「何だ、あの馬鹿でかい魔法銃は?」
空中に戻ったニールが呟いた。
「ウォルタ、そいつって確か、弾速が……」
「分かってるわ! フレイ耳を貸して!」
ウォルタはフレイの言葉を遮り、耳打ちをした。
「……分かった、あそこに誘い込めばいいんだな」
「頼むわよ!」
フレイはウォルタの言葉に頷くと、剣を構え空のニールに対して炎の斬撃を連続して放った。
「ふん、そんな攻撃、何度やっても当たりませんよ」
ニールはフレイの放った斬撃をことごとくかわした。
「これならどうだ!」
フレイは再び斬撃を放った。
「……だから、当たらないと……」
「ウォルタ! 今だ!」
ニールの言葉を遮るようにフレイはウォルタに合図をした。そして、ウォルタは魔法砲をニールに向けて構え、その引き金に指を掛けた。
「食らいなさい!」
引き金が引かれた魔法砲からニールに向かって、巨大な魔法弾が放たれた。しかし、ニールはこれも軽々とかわした。
「そんな遅い弾、私がよけられないとでも?」
ニールが口元に笑みを浮かべた。
「いいえ、よけてくれてありがとう」
ウォルタが対抗するように口元に笑みを浮かべた。
「何を…」
ニールがそう言いかけた、次の瞬間、彼女の背後にあった時計塔に、よけた魔法砲の弾が当たり、その時計塔は木端微塵にはじけ飛んだ。
「なっ⁉」
ニールは何とかその飛来して来た時計塔の破片を左の翼でガードした。しかし、そのせいで、彼女の動きは空中で一瞬止まることになった。
「今よ! フレイ!」
「ああ!」
ウォルタの言葉に答えたフレイは、ニールに向けて炎の斬撃を放った。そして、放たれた斬撃はニールの注意がそがれ、フリーになった右の翼に命中し、これを切り裂いた。
「しまった!」
片翼を失ったニールはバランスを崩し、地上へと落下した。
「……やっと、下りてきたわね。こうなれば私達の勝ちも同然よ」
そう言うとウォルタは銃の照準をニールの翼に合わせた。
「くっ! まだまだ!」
ウォルタが引き金を引こうとした次の瞬間、ニールは両手から巨大な漆黒の火の玉をウォルタ目掛けて繰り出した。
「そいつで焼き消えろ!」
しかし、ニールの叫びもむなしく、放った火の玉は一閃の斬撃によって、切り裂かれ消滅した。それはフレイの振り下ろした剣によるものだった。
「そんな攻撃効かないよ」
ウォルタの隣に立ったフレイが言った。
「……くそ、何なんだ……何なんだお前らは……何なんだその力は!」
地面から立ち上がったニールが眼前の二人に言った。
「これが魔女の力よ。一人では小さな物かも知れないけど、他の誰かと手を取り合うことで、その力を何倍もの大きさにできる。この力で私達は幾度も魔物を退けて来た。今更、あなたがその魔物の力を手にした所で、たかが知れているわ」
そう言うとウォルタは再びニールに向けて銃を構えた。
「認めるか、そんな力……」
「ええ、認めさせてあげるわ、この一撃で!」
ニールの言葉を遮り、ウォルタは魔法銃の引き金を引いた。放たれた銃弾はニールの残りの片翼を打ち抜いた。
「馬鹿な、私が……最高の実験成果である私が……負ける?」
そう言い残すとニールはその場に倒れ込んだ、そして、その翼は、まとっていた邪悪なオーラと共に消滅し、彼女の体は元の人間の状態へと戻った。
「……やった……勝ったんだなウチら」
決戦を終え、肩の力を抜いたフレイが言った。
「ええ、でもまだ仕事は終わってないわ、街と神殿前の魔物がまだ残っているもの……でもまあ、取り敢えず……」
そう言うとウォルタはフレイに向けて右拳を突き出した。
「……ああ」
フレイもウォルタに向けて同じく右拳を突き出した。
「お疲れ様、フレイ」
「お疲れ、ウォルタ」
二人は互いの拳を打ち付けた。
そして、二人と魔女達の活躍により、戦いは終結した。結果としてクリア神殿は無事守り切ることができ、都市も建物のへの被害は出たものの、奇跡的に死者はゼロに抑えることができた。そして、ニールの身柄は都市と連携を取る、魔女部隊に引き渡された。
こうして、激しい戦いは幕を閉じたように思えたのだが。
「ありゃりゃ、ニールの奴、負けちまったよ。やっぱダメだね、“入れ物”じゃ」
「……そうね、でも、いいデータ収集にはなったわ」
そう言って、都市を見下ろす、二人の少女の姿が高台にあった。