今日の魔女の仕事~魔女達が照らす明日~   作:ジョン5

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魔女と熱烈ファン1

「はぁ……」

 

都市ドマンナカにある、魔女達、行きつけの食堂。そこで食事中のウォルタは深いため息をついた。

 

「いやー、ここの食堂のカレーは最高だな!」

 

向かいの席に座ったフレイは、大きめの皿に盛られたカレーライスを頬張っていた。

 

「……」

 

「どうしたんだウォルタ? いつにも増して浮かない顔だな」

 

無言のウォルタが気になりフレイは尋ねた。

 

「いつにも増しては余計よ……実は最近困ったことがあってね」

 

「困ったこと?」

 

「ええ、その、いわゆる熱狂的なファンってのが、私についちゃったみたいで……」

 

フレイはカレーをすくうスプーンを握る手を止め、目を丸くした。

 

「おいおい、まさかそのファンに好かれすぎて困っちゃう、なんて言うんじゃないだろうねぇ」

 

フレイはニヤついた顔をウォルタに向けた。

 

「そんなわけないでしょ! ……そのファンがここのところ毎日、私にサインを求めに来るのよ」

 

「いいじゃないかサインぐらい、書いてやれよ」

 

「……書いたわよ。何十枚と」

 

ウォルタが眉間にしわを寄せてそう言ったとき、ウォルタの背後から、声が聞こえてきた。

 

「ウォルタ様ぁー!」

 

その声の主は、水色の髪をした小柄な少女だった。

 

「……来たわね」

 

ウォルタの顔は一段と陰りが増した。

 

「ウォルタ様! 今日の分のサインよろしくお願い致しますわ!」

 

少女はウォルタに色紙とペンを差し出した。

 

「……あのね、私、あなたには何十枚とサイン渡したはずだけど」

 

ウォルタは右手で頭を押さえながら、少女の方を振り返った。

 

「いいえ、ウォルタ様のサインは何枚あっても足りませんわ! 是非ともお願いしますわ!」

 

少女はテーブルの上に、色紙とペンを置き、深くお辞儀をした。

 

「この子が?」

 

「……そうよ」

 

すると、少女は今気づいたかのようにフレイの方を向き、言った。

 

「初めまして、わたくし、アンと申します。あなた、ウォルタさんのお友達でいらっしゃいまして?」

 

「うん、まあ、そんなとこかな。フレイっていうんだよろしく。よかったらウチがサインしようか?」

 

フレイが机の上の色紙とペンに手を伸ばそうとすると、アンはそれらを取り上げた。

 

「結構ですわ。わたくし、ウォルタ様以外の魔女の方に興味ないんで。それにお友達となれば、わたくしのライバル同然じゃなくて?」

 

「ら、ライバルぅ?」

 

フレイの頭の中は疑問符でいっぱいになった。

 

「フレイ、これで分かったでしょ?」

 

ウォルタはうなだれたながら、フレイに同意を求めた。

 

「うーん、でもまあ、好かれるってことはいいことなんじゃないか?」

 

フレイは笑顔でそう答えた。

 

「……あんたねぇ」

 

ウォルタは観念したのか、アンから色紙とペンを取ると、渋々サインをした。そしてそれをアンに渡して言った。

 

「いい、私のサインはこれで最後よ。分かったら、もう私に付きまとうのはやめて」

 

「はい! ありがとうございますわ!」

 

アンはお辞儀をすると、色紙を抱きかかえ、去って行った。しかし、アンの熱烈なアピールはこれでは終わらなかった。

 

 

 

 

次の日も、その次の日もところ構わず、アンはウォルタの前に姿を現し続けた。そして、一週間が過ぎたある日。

 

「お帰りなさいませ、ウォルタ様」

 

自宅に帰った、ウォルタとフレイの二人を、アンは笑顔で迎え入れた。

 

「うわぁ!! なんで私の家にあなたがいるのよ! どっから入ったの⁉」

 

ウォルタは絶叫した。

 

「それは……秘密です! それより、お昼食の支度ができてますわ。腕によりをかけて作りましたの。今日は外で何も食べてきてないはずですわよね?」

 

アンはそういうと、テーブルの上のごちそうを手のひらで指した。

 

「なんで、あなたがそのこと知ってるのよ! フレイ! この子を外につまみ出して!」

 

「まあ、何も食ってないのは事実だし、ありがたく頂こう」

 

そいうと、フレイはテーブルの上のごちそうに手を伸ばしたが、その腕はアンによって掴まれた。

 

「ダメです。このお料理はあくまで、ウォルタ様のために作ったのですから」

 

「えー、なんだよケチだなぁ」

 

そのやりとりを見ていたウォルタはの怒りはとうとう爆発した。

 

「アン! あなた、ちょっとそこに座りなさい!!」

 

そのあまりの迫力に、アンは思わずその場に座り込んだ。ついでにフレイも。

 

「あなたは私のファンだなんて言っているけど、明らかに行動が異常だわ! いったい何が目的なの?!」

 

ウォルタはアンに顔を近づけ、問い詰めた。

 

「別に、他に目的はありませんわ。わたくしはただ一途なウォルタ様のファンですわ」

 

アンはウォルタの目をまっすぐ見てそう答えた。

 

「……気になってたんだけど。あなた以前、ザワの森に変な箱を置いたりしなかった?」

 

「箱……ええ、木の実の場所を記した地図を入れて、そばに置きましたわ。あのときのわたしくしは、まだウォルタ様に話しかける勇気が出なくて……せめてお仕事の力になれたらと思いまして」

 

アンは照れながらそう答えた。

 

「あの時の地図、あれ、アンのおかげだったのか。ありがとなアン!」

 

フレイはそういうとアンに握手を求めた、しかし、アンにそれは無視された。

 

「あなたのためじゃありませんわ、わたしくしはあくまでウォルタ様のために……」

 

「あーもう分かったわ」

 

アンの言葉を遮り、ウォルタは言った。

 

「あのときの地図はありがとう、とても助かったわ。でも私に対するあなたの行動は行き過ぎよ」

 

「……ごめんなさい」

 

ここで初めてアンは反省の色を見せた。

 

「……でもまあ、せっかく私のファンになってくれたのだから、お礼になんか一つお願い事を聞いてあげるわ」

 

「お、お願い⁉」

 

アンは顔を上げて、目を輝かせた。

 

「ええ、その代わり、そのお願いを叶えたら今後、私に付きまとうのは控えること。いい?」

 

「はい!」

 

アンは笑顔で返事をした。

 

「よろしい、なら願いを聞こうじゃない」

 

「はい! わたくし、ウォルタ様のお仕事にご一緒して、目の前でその活躍を拝見したいですわ!」

 

予想外の返答にウォルタは一瞬頭を抱えた。

 

「いいじゃん! 明日の仕事、連れってやろうよ」

 

フレイは笑顔でウォルタに提案した。

 

「はぁ、特別よ」

 

三人はアンのごちそうでお腹を満たした。

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