鬼殺の隊士はとにかくモテたい   作:KEA

1 / 23
1話

転生って知ってる?

こう、神様とお話してチート貰って異世界に行くみたいなの。

手違いで死んじゃって、神様のミスだからお詫びで転生させてあげるよーみたいなの。

 

まあ俺は神様との対話とかなかったんだけどね。

つーか死んだっていう記憶も無いんだよね。寝て起きたら何か違うとこにいんのよ。

あれえ? 誘拐でもされちゃった? と思って起きたら背縮んでんの。

どこぞの名探偵かな? って思ったんだけど、様子変なの。

 

転生っていうとさ、こう、外国的な? 中世ヨーロッパ風? っていうの?

 

なんかねえ、ここ日本何だよね。畳とかあるしお布団だし襖あるし。

これは異世界転生じゃなさそうなんだよねえ……。

 

俺を育ててる爺ちゃんと婆ちゃんがいるんだけど、明らかに日本人なんだよねえ。

多分これ異世界転生じゃなくて過去にタイムスリップしてるわ。

いやでも見た目変わってるし過去に転生したっていうのが正解なのかな?

 

んで、俺を産んだ親はどうしたんだろうって思って聞いたのね?

 

「じーちゃん、とうさんとかあさんは?」ってね。

 

そしたら爺ちゃんすっげー泣きそうな顔してさ

 

「お前の両親は……鬼に喰われてしまったんだよ」

 

って言うの。

 

俺ここで察したよね。

 

あぁ、両親蒸発したんだなって。

まあこのご時世、子供一人育てるのも結構大変だしね。

そんなの年端もいかない子供に伝えられないから、爺ちゃんは俺のためを思ってウソをついたんだろうなって。

俺も話合わせてさ

 

「じゃあおれがそのおにをたおすよ!」

 

って言ったら、もう泣きながら抱きしめてきてさあ。

ほんと爺ちゃん婆ちゃん暖かいわ。俺を捨てた両親なんて知らん。

 

 

 

 

 

俺がこの時代に来て結構な年月が経った。

んで、今は大正時代みたいなんだよね。

大正時代って結構微妙じゃない? 確かもう廃刀令とか施行されてなかったっけ?

俺も男だからさあ、刀とか握ったりしてみたかったなあなんて思っちゃうわけよ。

 

 

んなこと思ってたらあったわ、刀。

納屋にポツンとたてかけられてたんだよね。

え? 本物? って思って抜いてみたらすっげー奇麗なの。

 

刀身が仄かに水色を帯びててさ、刃毀れもなくてさ、素人目に見てもこれは名刀ですわって分かるレベルなの。俺速攻で爺ちゃん呼んだよね。刀あんだけどっつってさ。

 

そしたら刀みて何か目見開いてさ。

何か覚悟決めた顔して言うの。

 

「両親の仇を取りたいか」

 

って。やだなーもう、俺もう十三歳よ? もうそんなのいいってー。

分かってるよ、親が俺を捨てたのは。

まあでも話は合わせておこうかなって思って俺は無言で頷いたのね。

 

「――そうか。お前の気持ちは分かった」

 

そう言って爺ちゃんは踵を返した。

 

狭霧山(さぎりやま)に、儂の古くからの友人――鱗滝(うろこだき)左近寺(さこんじ)という男がいる。儂の名前を言えば、育ててくれるだろう」

 

「鱗滝、左近寺……」

 

「両親の仇を取りたいという強い意志を持ち続ければ、きっと鬼殺の剣士になれる。お前なら、きっと……」

 

「――うん、任せて爺ちゃん。俺、立派な鬼殺の剣士になるよ。なって、絶対に仇を取るよ」

 

 

爺ちゃんの後ろ姿だったから分からなかったが、涙を拭うような動作をしているのが分かった。

うーん、何だろう。なんか取り返しのつかない選択肢をしてしまったような気がするんだけど。

 

まあいっかぁ! 要は刀の扱い方を教えてくれる先生的な人がいるってことでしょ?

もー、爺ちゃんってば大袈裟に言うのが好きなんだから!

刀持って悪者と戦うっていう妄想は男の子なら誰しもしちゃうよね。

それが現実になるかもしれないんでしょ? 喜んで教わりに行くわ。

可愛い女の子が襲われているときに颯爽と助けちゃったりしちゃうんでしょー?

 

「もう大丈夫だ」とか、「後は任せろ」とか言っちゃってさぁ!

 

うへへ……妄想が広がるね! じゃあ行ってきます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――爺ちゃんに言われて、貴方に――鱗滝さんに会いに来ました」

 

そう言った少年――泡沫(うたかた)夕凪(ゆうなぎ)――は、そう言って頭を下げた。

それに対し、天狗の面をした男――鱗滝左近寺はジッと彼を見る。

 

彼の言う爺ちゃんからは、事前に手紙が届いている。

曰く、既に日輪刀を自身の色に染め上げる実力を持っている、と。

そして彼の両親は鬼に殺されている。

 

鬼殺隊に入りたいというには十分な理由、素質を持ち合わせている。

 

「お前の持つ日輪刀(にちりんとう)を見せてみろ」

 

「え? にちりんとう……? あ、これか……どうぞ」

 

背中に担いでいた刀を外し、夕凪は鱗滝へと手渡した。

刀身を見れば、僅かに青色を帯びている事が分かる。

日輪刀は別名で色変わりの刀と呼ばれ、持ち主によって刀身の色が異なる。

 

仄かに水色に輝く刀身を見れば、確かに彼は水の呼吸に適正を持っているのだろう。

彼がこれからの修行についてこれるのか、見定めなければならない。

 

「……これから山に登る。お前は儂についてこい」

 

日輪刀を家に置き、丸腰で山に登り、そして罠を掻い潜って時間内に戻ってくる。

 

これが一番最初に行う事だ。これすらできないのでは、鬼を殺すことなど夢のまた夢。

鬼殺隊に入ることは諦めてもらう。

 

頂上付近にたどり着けば、後ろで息も絶え絶えといった様子の泡沫がいる。

呼吸を整える間も無く、今すぐに山を降りることを告げれば中々に絶望的な顔を見せる。

 

「夜明けまでに麓の家に戻って来ること。それがお前を育てる条件だ」

 

「この、山を……? ちょ、鱗滝さぁん!? 待って――」

 

泡沫を一人置いて山を下る。

仕掛けた罠を退け、時間内に山を下ることが出来るか。

手紙には、泡沫が何かしら能力が突出しているとは書かれていない。

だからこそ罠の難易度は低いが、普通の子供なら夜明けまでには確実に帰ってこれないだろう。

 

本音を言えば、朝方に戻ってきてほしいものだ。

 

――子供を死なせたくはないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおああああああああ!?」

 

山を死ぬ気で走る。駆ける。駆け抜ける。

足が何かに――紐らしきもの――引っかかる。

 

瞬間、悟る。

 

右から何かが来る!

 

その感覚を信じて即座にしゃがむと、頭の上を丸太が通過していった。

 

「っぶねぇ……!」

 

この山を下っている最中、俺は自身の異能に気が付いた。

それは何と呼べば良いだろうか。虫の知らせ? 直感? 第六感? スパイダーセンス?

兎に角、どの方向から何かが来る、と何故か分かる。

その何かまでは分からないが、多分危ない何かだ。

 

この時代に生れ落ちて、危機的状況になったことが無かったからだろう。

こんな特殊能力が俺に備わっているとは思わなかった。

だけど

 

「あだぁ!!」

 

放たれた丸太が背中にクリティカルヒットし、悶絶する。

 

――何かが来るのが分かっても、それを避けられる身体能力が無ければ意味が無い。

ジンジンする痛みを堪え、目元の涙を拭ってまた走り出す。

 

きつ過ぎる。だが、剣術は教わりたい。

カッコよく刀を振るって可愛い子を助けてキャッキャウフフしたい!

それはもうイチャイチャしたい!!

その思いだけが俺の体を動かした。

 

「おらあああああ!」

 

己を奮い立たせるために声を張り上げ、俺は息が苦しくなるのも無視して駆け抜け続ける。

 

俺が戻った時間は鱗滝さんにとっても驚きだったみたいで

今までの子の中で誰よりも早いとお褒めの言葉を頂きました。これで少なくとも認められたということで、改めて俺は鱗滝さんに教わることになる。

 

 

 

 

 

 

――どのくらい、月日が経っただろうか。もう少しでここで修行して1年になるかもしれない。

めっっっっっちゃくちゃ修行がキツイ。鬼を斬るための全集中の呼吸というものがとてもキツイ。

だが、これが出来ないようではあっという間に死んでしまうらしい。キツイ。

 

一般隊士は鬼との戦闘中、技を繰り出す瞬間に全集中の呼吸を行うと説明を受けた。

だが、これは一般的な、それこそ鬼殺隊に入ったばかりの隊士だ。

熟練の隊士は戦闘中常に全集中の呼吸を行っているし、最上位の者は四六時中全集中の呼吸をしているらしい。

化け物かな? いや、鬼と渡り合ってる時点で化け物だったわ。

 

あとね、鬼はマジで実在するらしい。爺ちゃんの言ってた事は嘘じゃなくてガチらしい。

先生に鬼の説明を受けた時体が強張ったよね。え、マジでいんの? みたいに。

え、じゃあ俺の両親は本当に鬼に殺されたってことになるんですかね……?

それ聞いてから死に物狂いで修業をした。正直相手にするの人とかだと思ってたし。

 

四六時中全集中の呼吸を行う事を、全集中の呼吸 常中というらしい。

寝ている間もそれを行うのは無理なので、先ずは修行中のみ、起きている間、と徐々に呼吸する時間を延ばしている。

最近は寝ている間以外は常に全集中の呼吸を続けることに成功している。

というか、常にやらないと先生に思いっきりお腹ドつかれる。辞めてください吐いてしまいます。

 

因みに、もう教えることは無いと言われて修行は付けてもらっていない。

鬼殺隊に入るための最終選別に行くための条件として、岩を斬れと言われた。

 

そう、岩。それも馬鹿でかいのを。自分より大きい岩である。

これ無理ゾ。

 

斬る以前に当たった瞬間刀がぽきーんと折れる未来しか見えない。

何だろう、俺先生に嫌われるようなことしたかな。

これ選別に行かせる気なんじゃないかって感じで無理難題な気するんだよね。

こんな岩に刀振り下ろす気になれないよ俺。

そんな感じでうだうだしてたら三か月くらい経ってしまった。

 

その期間で弟弟子が二人増えました。

冨岡(とみおか)義勇(ぎゆう)錆兎(さびと)という少年たちだ。二人とも身内が鬼に殺されてしまったらしい。

でもさあ、この二人明らかに違うんだよね。顔良し、声良し、動きも良しと来たもんだ。

欠点が無いイケメンとか何なの? 俺が一週間かかるような修行を二日三日でポンポン達成してくんだけど。

やばい、このままじゃ「嘘、俺たちの兄弟子って弱い……?」ってなる。両手で口覆って言うんだきっと。

でもねえ、この二人凄いいい子なんだよね。「泡沫さん」っつって! 可愛いのなんの。

俺の実力バレたらきっと幻滅しちゃうんだろうなあなんて思いつつ俺も出来る限り手ほどきしてあげてる。

 

ただ、「なぜ最終選別を受けに行かないのか」という質問は二度とするな。

どう言い訳しようかめっちゃ焦ったわ。「俺は慎重なんだ(震え声)」って言ってごまかした。

そら死ぬ可能性がある試験なんだから慎重になっても何も問題はない。

決して未だに最終選別に行くための条件を満たしていないという訳ではない(震え声)。

 

彼らが来て二か月程経った。俺が修行をつけられなくなって五か月経った。

突然錆兎に「型を見せてほしい」と乞われた。……これ、アレだよね。そろそろバレたかな。

弱い男など兄弟子として認めない! みたいな。

コイツ最終選別に行かないのではなく、行けないんじゃねえの? みたいな。

だが甘いぞ錆兎。俺は水の呼吸の型は全て会得しているぞ。見せるくらい訳ないのさ!

 

錆兎に一つ一つ型を丁寧に見せていく。そういえば、人に見せるのはコレが初めてかもしれない。

先生は教えるだけ教えて、技を見せてみろなんてことは言わなかったしね。

壱ノ型から始まり、肆ノ型まで出していたところで、錆兎の目がこう、冷めてるような気がした。

 

動きおっそ、威力ひっく、とか思われてるのだろうか。泣きたくなってきた。

とは言え、あまり錆兎の方に意識を向けることはできない。玖ノ型で縦横無尽に駆け巡り、最後に拾ノ型を適当に放つ。

 

拾ノ型は結構動き回るし回転するしで目回しそうになるんだよね。

だが自分の出した技で目を回すようなダサい姿を見られるわけにはいかん。

パチンと刀を鞘に納めて、どうよ? と錆兎に目を向ける。

 

錆兎は俺の型に満足してくれたらしく、流石だな。と一言言って踵を返していった。

……ほんとぉ? 俺まだ兄弟子として認められてる? やっぱアイツゴミだわとか義勇に話したりしてない? 兄弟子年甲斐もなく泣くよ?

まあいっかあ、実力バレるのも遅かれ早かれだったし、ここでバレてもしゃあない。

 

適当にぶらぶらして俺も鍛錬してこよーっと。

 

 

 

 

その日の晩、先生に何故か最終選別に行くことを許可された。

絶対に生きて帰ってこいなんて言って抱きしめられたけど、突然何でえ?

今後の投稿について

  • 1話事短いが投稿が早い
  • 1話事長いが投稿が遅い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。