鬼殺の隊士はとにかくモテたい   作:KEA

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夜勤の休憩中からこんばんは。



10話

痛い。最後に喰らった一撃がマジで痛い。

あの野郎、最後の最後で一矢報いられてしまった。

つうか一対二って卑怯じゃん……。

 

そりゃあ全力でかかってこい的なことは言ったよ?

決して二人同時にかかってこいって意味じゃないからね?

流石にそこで待ってっていうのは情けなさすぎるから頑張ったけどさ。

 

痛む頬を摩りながら自分の屋敷へと戻り、救急箱を探す。

本当はあの後も試合を続けようと思ったんだが辞めておいた。

 

あのまま続けてたらそれこそ殺し合いに発展しそうだったし。

というか二人相手とはいえ、あそこまで追い込まれるのは意外だった。

俺、これでも兄弟子なんだけどなあ……。

 

「――はい、救急箱は此方ですよ……ここに座ってくださいな」

 

「ん、ありがとう」

 

言われるがまま救急箱を持ち、手招きをする彼女の目の前へと座り込む。

 

あの二人が予想以上に強くなっているのか、俺が弱いのか。それとも両方か?

……駄目だな、これ以上考えてると悲しくなってくる。

 

「いづっ」

 

「あっ、ごめんなさいね」

 

消毒液が染み込んだ布が頬へと当てられた時、鋭い痛みが走った。

声に驚いたように、布が離れた。それから恐る恐るといった様子で布が当てられる。

 

「…………」

 

「……あら、どうかしました?」

 

頭の左右に蝶の髪飾りを付けた、とんでもない美人な女の子がニコニコと俺の手当てをしている。

……やっぱりそうですよね、どう見ても胡蝶カナエちゃんですよね本当にありがとうございました。

 

「なんでさも同然といった感じで俺の屋敷にいるのか訊きたいんだけど」

 

「あら? なんでと言われても……泡沫さんが許可くれましたよね?」

 

「あーはいはい、あげたわ。あげてたわ」

 

覚えてないとは言えない。つうかなんでそんな大事なこと覚えてないんだよ、馬鹿かな?

こんなかわいい子に屋敷に住む事許可したとか覚えてないはずないんだけどなあ。

 

「怪我は大丈夫ですか? まだ痛みます?」

 

「いや、大丈夫。ただの打撲みたいなもんだし」

 

ぶっちゃけ手当てするほどのもんでもないし。

あ、嘘嘘。こんな美少女に手当てしてもらえるのなら必要なくても頼むわ。

 

「――姉さんっ!!」

 

黙って手当てを受けていると、ドタバタと屋敷内を駆ける音がしたあと勢いよく襖が開かれる。

吃驚してそっちを見ると、カナエちゃんの妹であるしのぶちゃんが息を切らしながら立っていた。

 

「どうしたの? そんなに慌てて」

 

「どうしたの、じゃないわよ! 横見たら姉さんいないんだもの!」

 

「……あら? 私、先に屋敷に戻るって言ったわよね? その言葉も聞こえないくらい

真剣に泡沫さんの動きでも見てたの?」

 

其処で漸く俺がいることに気づいたのか、ゆっくりと此方へと視線を向けるしのぶちゃん。

うっす、と軽く手をあげればその場で頭を下げた。

 

「さ、騒がしくして申し訳ありません!」

 

「いや、うん。気にしてないから別にいいんだけどさ」

 

最早訊くことは無い。どうせこの子の住む許可もあげてるんだろ? 知ってる知ってる。

いいよもう、良くないけど。俺の屋敷は客間多いからよ。好きにしてくれや。

 

「それと……本日の任務同行。よろしくお願いします」

 

「はいはい……うん?」

 

なにそれ。俺聞いてないよ? 

詳しく聞けば、なんでもしのぶちゃんは鬼の頸が切れないとの事だ。

それは精神的な問題ではなく、彼女の腕力的に問題があるらしい。

最終選別の弱い鬼でもギリギリといった程度。

 

自身の腕力不足を補うためにも、毒を刀に仕込んで戦うという戦法を使うのだが、その刀が漸く

完成したらしく今日の任務で試し切りをする。

そこで武器に問題があった時の為に俺が護衛兼指導役として手伝う、と。

丁度彼女達も水の呼吸とのことで俺に白羽の矢が立ったらしい。

 

……え、俺もう水の呼吸使ってないよ? なんてことは言えない雰囲気だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほー、刃に藤の花の毒を、ねえ……鞘に入れて補充する、と」

 

しのぶちゃんに手渡された刀をまじまじと眺める。

確かにこの形状の刃だと、斬るというよりも突く事を重点に置かれている。

突いた切っ先から毒を注入してぶち殺す、と。

 

「……随分と凶悪だ」

 

「仕方ないじゃないですか!」

 

「普通頸斬れなかったら先ず鬼殺隊を諦めるでしょ。よく諦めなかったね……凄いね」

 

「え、あ、ありがとう、ございます……」

 

いや、本音を言えば諦めて欲しかったけどさ。

多分お姉ちゃんだけを鬼と戦わせるってのが嫌だったんだろうね。

置いて行かれるってのはキツイもんだしねえ。

 

「南! モウ少シデ到着! 到着!」

 

鎹鴉の言葉に、顔を引き締めて柄に手をかけておく、

 

「もう少しだね、とはいえ俺はあまり手を出さない。

飽くまで君の武器の具合と指導みたいなものだからね」

 

まあ危なくなりそうだったら遠慮なく手を出させてもらうけど。

 

「これまでに消えた人の中で共通点はある?」

 

「整ッタ顔立チノ女ガ多数行方不明! 男ハアマリ消エテイナイ!」

 

「ふうん……なるほどね」

 

足を止め、少し考える。

そしてカナエちゃんとしのぶちゃんを見て、口を開く。

 

「うん。二人とも(隊服を)脱ごうか」

 

瞬間、拳が俺の顔面に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 




今週は夜勤週なので投稿が少なくなりそうです。
ごめんなさいね。

Q.主人公の呼吸早よ

A.待たれよ。出すところは決まってるから…



ぶっちゃけ皆さんの感想とかお気に入りとかで元気になるタイプなので
体調は全然元気です。

今後の投稿について

  • 1話事短いが投稿が早い
  • 1話事長いが投稿が遅い

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