祝! 階級が上がりました!
うふふふふふ! これでお給料もちょっと増えるし、甘い物もっと買えるぞ!
え? 錆兎と義勇? ふふ、あの二人はね――
俺より五段階も上なんですよ。あいつ等可笑しすぎない?
俺の方が一年ちょっと先輩なんだよ? まあ原因は分かってるんだけども。
隊士はまず鎹鴉が伝令を受け、その伝令を聞いて任務に赴く。
そして鬼の討伐が終われば鎹鴉が本部に伝える、となっている。
本人の自己申告制にすると嘘とか吐けちゃうからね。
下弦の壱倒しました! みたいな。
だから鎹鴉が、誰がどういった活躍をしたか、誰が頸を撥ねたかを事細かく本部に伝えてくれるという訳だ。
流石に下弦や上弦――十二鬼月――となると単純に伝令するぐらいしか出来ないだろうけど。
俺の鎹鴉ねえ。任務は伝えてくれるのに討伐報告はしてくれてなかったみたいなんだよね。
つまりね、俺は一年弱ほぼほぼ鬼を倒さずただ何もしていなかったって事になるんですよね。
他の隊士と共闘とかしていた時はその仲間の鎹鴉が報告してくれていたから最低限の報告はいっていたみたいでだから階級相応の働きだねって本部も勘違いしちゃってたって事なんですねえ。
その問題が発覚した時は泣きそうになったよね。
なーんか錆兎と義勇は階段を上がるようにポンポン上がっていくなあとは思ったんだよ。
それに対して俺なんか全然上がる気配見えないなーって。
五十体くらいもう斬ってるとは思うんだけどなあー?
柱の条件の一個達成したよ? って。
なのに上がらないから疑問に思って問い合わせたら……発覚した、と。
本部の方もちょっと混乱してたみたいで、任務を伝えたはずなのに達成報告が来ねえみたいな。
でも任務の場所での鬼の被害出なくなってる……って。
本来なら原因を突き止めるんだけど、タイミングが悪かった。
何でも鬼を朝日が昇るまでボコボコにしてぶち殺して回っている何者かがいるらしく、その子がやったのだろうと納得してしまったらしい。
テメェふざけんなよ、独学で倒してるとか化け物じゃねえか。
顔みたら一発はぶん殴ってやるからなお前。
さっさと誰か突き止めてくれや。
過去に遡って申請しようとも思ったけど流石に倒した数なんて覚えてないし。
これはもう泣き寝入りするしかない……とはいかないんだなあコレが!
――柱だ。柱にさえなってしまえば給料など思うがままだ。
しかも屋敷とかもポンと頂けるらしい。
いよっ、お館様太っ腹ぁ!
いや許さねえからな。流石にこれは温厚な俺もブチ切れよ。
痣出しながら暴れるぞマジで。この怒り鬼共にぶつけるからなマジで。
お館様におねだりすれば多少はくれるんだろうけど、それは俺のプライドが許せない。
隠の人に何で報告しなかったんですか? って言われた時なんて笑って誤魔化したんだからなクソが。
「――つうわけでおらァ死ねェ!!
最早鬼狩りなど作業に等しい。技名を叫ぶ時間すら惜しい。
唯の雑魚鬼など省略だ省略。
「次行くぞ次! おい鴉お前ホントにしっかりがっしり報告しろよ!!」
「カァー! 北西、北西!」
「
――泡沫夕凪、階級壬
水の呼吸の使い手であり、恐らくは――――――(黒く塗り潰されている)。
基本的に任務達成の報告はせず他者に譲る傾向にあるため、階級と実力に差異が存在する。
胡蝶家に訪れた下弦の壱及び部下数名を瞬殺。子供二名の救助に成功。
この時の戦闘は岩柱も目撃していたとの事。
常中も会得しており、実力的には甲と比べても上位に位置する。
岩柱である悲鳴嶼行冥と木刀での試合形式でも善戦が可能。
岩柱の主武装が鎖斧であり、本来は扱わない刀であっても彼相手に善戦が出来る者は極少数。
とはいえ、彼の健康状態によっては一瞬で負ける事もあれば、長時間持ちこたえることもある。
この一年間で藤の家を使用した形跡もなく、ほぼ全ての任務に於いて軽傷程度で済んでいる。
本人が報告していないだけで、恐らくは下弦の数体も討伐に成功している模様。
だが、本人は階級にあまり頓着しておらず、飽くまで鬼を倒すことに集中している。
鬼に対しては異常なまでの殺意を示しており、珍しく暴言を吐く姿も時折目撃されている。
これは彼の両親が鬼に殺されたことに起因するものと思われる。
また隊士には珍しくない事だが、恋愛などといった事にもさほど興味は無いらしくそういった話を聞くこともない。
気性も穏やかで、分け隔てなく接する事から同期、後輩からの人気は凄まじい。
特に彼の同期は彼を見て成長した者も多く、階級上位者も多数いる。
「――彼の情報はこんなところだ」
悲鳴嶼が手渡した資料に目を通していた少女は顔を上げた。
「夕凪は後悔していた。もっと早く辿り着けば、あの子たちの両親が死ぬこともなかったのに、と」
「……そう、ですか」
「自分と同じ思いをさせたくはない……きっとそんな思いで彼は刃を振るっている」
少女――胡蝶カナエ――は彼の事を最初は恐怖してしまった。
鬼の存在も知らず、家族と平和に暮らしていたあの最後の日。
多数の鬼を瞬殺した彼に、怯えてしまった。
「怯えて、震えていた私たちを……彼は、悲しそうに笑って……」
その直ぐ後、命の恩人になんて態度をしてしまったのだろうと後悔した。
彼がいなければ私たちは死んでいたのだから。
自分が怯えられていることを悟った彼は直ぐに悲鳴嶼を呼んで後を頼んでいた。
隠の人たちもとてもよくしてくれて、親戚の家へと送ってくれたが……。
自分としのぶはこうして悲鳴嶼さんのもとに訪れた。
鬼殺隊に入れてくれと頼みに。
「私も……私たちも、自分と同じ思いを他の人にさせたくないんです」
「悲鳴嶼さん、お願いします」
そういって頭を下げれば、悲鳴嶼は涙を流しながら言葉を紡いだ。
「女の子は、普通に生きて、普通に結婚をして幸せになるべきだ」
「……え?」
「君達を救った男の言葉だ。以前女性の隊士を見て小さく呟いていたのを
私は聞いた」
それは、今のカナエとしのぶの意思に真っ向から反対する言葉だった。
化物との戦いなどに関わらず、平穏に暮らしてほしい。
そういうことなのだろう。
「――それでも、私達は」
決意に溢れたその瞳に、彼は説得を諦めたようだった。
数珠を僅かに鳴らしながら口を開く。
「……私の出す課題に合格することが出来たなら、それぞれに相応しい育手を
紹介することを約束しよう」
「はいっ!」
必ず二人で合格してみせる。
そんな表情をする二人に悲鳴嶼は僅かに苦笑した。
この事が知られたらきっと夕凪に叱られるだろうな、と。
お休みで浮かれてたら一日で結構投稿してしまった。
明日からまたお仕事なので更新頻度はあまり期待せずお待ちください。
2020/2/24追記
感想で「下弦倒したのなら柱になるんじゃないの?」といくつかご質問を受けたので
こちらにて回答させていただきます。
柱になるための条件がいくつかありますね。
前提条件として「甲」であること。
①鬼を五十体倒す。
②十二鬼月を倒す。
①か②を達成することで柱となれます。
今現在の主人公の階級が壬ですのでまず前提条件を満たしておりません。
甲まで上がって、尚且つその時点で柱に欠員が存在すれば柱に選ばれるでしょう。
(「柱」という漢字の画数が九画である為、定員は九名)
今後の投稿について
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1話事短いが投稿が早い
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1話事長いが投稿が遅い