鬼殺の隊士はとにかくモテたい

8話

――俺が鬼殺隊に入って、早数年。

それでも鬼舞辻無惨はおろか上弦の情報は一つも入らない。

仮に出会ったとしても、生き残る可能性は零に等しいからだ。

時折柱が行方不明になる時がある。

最後に向かった場所に捜索に向かえば、もはや原型を留めていない状態となって

発見される、なんてこともある。

それほどに上弦というのは次元が違う。

今は柱に穴が出来てしまっている状態だった。

きっと甲の中から優秀な者が選ばれるのだろう。

因みに俺の一押しは義勇と錆兎である。

あの二人なら柱としても十分やっていけるだろうが、なってほしくないと思っている自分も存在する。

柱となれば危険な任務に向かわされることも少なくない。

その危険を承知でなる、というのなら俺が言うことは何もないが。

俺も階級が上がり、今はもう戊(つちのえ)である。

漸く上から数えた方が早いまでになった。

義勇と錆兎はとっくに甲に上がってるし、何なんだろうねこの差は。

まあいいんだけどさ、給料はべらぼうに増えたし、何か屋敷も建ててくれたし。

いやでもさ、こんなでかい屋敷いらないんスよ。

ここで一人で暮らしてると一層寂しさを感じるんですよ。

何？　嫌がらせですか？　恋仲になる異性がいない俺に対して当てつけですか？

でもさあ、鬼が蔓延る中で彼女とか作りたくないんですよ。

俺もいつ死ぬか分からないしさ、彼女を悲しませる訳にもいかないし？

無惨を倒すまでは彼女も作れないっスわ。いやー、仕方ない仕方ない。

だから俺が彼女出来てなくても仕方ねえんだよ！

隊士として働いてたら出会いもないしな！！

そう思っていた時期が俺にもありました。

出会い、ありました！　女の子です！

鱗滝先生に弟子として育てられた真菰ちゃんです！

隊士に入ったばかりでまだ新人隊士な真菰ちゃんでえす！

はー可愛い。俺の初めての妹弟子になるんですなあ。

言葉がちょっとふわふわしてるしなんかぼんやりしてるけどマジ美少女。

こんなかわいい子には鬼殺なんてしてほしくないんだけどね。

鱗滝先生から俺に教わるといいって言われて俺を訪れてくれたんだけど、俺は泣く泣くこれを拒否。

女の子ときゃっきゃうふふしながらあの手この手でお触りしつつ教えるとかいう神イベントを血の涙で拒否。

まさに苦渋の決断だった。死ぬほど後悔した。

何故って断ったかというと。

――ここ半年、俺が水の呼吸を使っていないからです。

漸く俺だけのオリジナル呼吸が完成してからは、それをずっと使っている。

最初は名前を五大元素から取ろうと思っていたんだけど止めた。

風、地、水は元から存在するし、火は炎で存在する。

空は何か違うな、という感じで却下。

カッコよく夜とか月とか、厨二満載の呼吸にしようとしたが、羞恥心で死ぬので却下。

しかも技もそれ関連じゃないしね。

まあ俺の呼吸は置いておき、そんな訳で錆兎か義勇に行くように指示。

あの二人のほうがぶっちゃけ適正高いと思うし。

彼らからいろいろ学んだ方がいいと思う。俺教えるの下手な部類だし。

なんなら義勇は自分だけの型とか編み出してたし。

なんなんアイツ。カッコよすぎだろ泣きそう。

よくね、女性隊士が義勇さんかっこいいとか錆兎さんかっこいいとか言ってるのは聞こえるんですよ。

……俺のは何にも聞かないんですよね。なんだろう、泣きそう。

後最近変わったことは、鬼共に頻繁に狙われるという事である。

はい回想入ります。

『見つけたぞォ！　日の呼吸の使い手ェ！』

『あ？　火の呼吸？　いや、俺は違うけど』

『誤魔化すな！　貴様を殺して鬼舞辻様に認めてもらあばわっ！』

『し、死んでる……』

はい回想終わり。

まあ名前呼んで勝手に死ぬ馬鹿は一人だったけど、なーんか俺を勘違いして襲撃しに来てるんだよね。

火の呼吸なんて存在しねえよ馬鹿が。炎な？　ほ　の　お。炎の呼吸だから。

これ間違えると死ぬほど怒られるからね、ソースは俺。

まあ俺が狙われるのは別にいいんだわ。それでかわいい子が死ぬ可能性が減るっていうのなら幾らでも狙ってくれ。

たかが雑魚数体増えたところで俺にとっちゃ屁でもないし。

へっ、上弦でも連れてくるんだな！　ぺっ！

あとさあ……胡蝶姉妹が二人揃って何か隊士になってるんですよね。

あの子達べらぼうに美人だったから見間違えたりじゃないと思う。

この前俺の屋敷の廊下ですれ違ったから何かの間違いとかじゃないし。

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社畜の呼吸　終ノ型　休日夜勤から
社畜の呼吸　伍ノ型　伍連勤をした反動で俺は死ぬ。