激おこぷんぷんトミー・ポッターくん   作:ぼんびー

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子供のころにはもう帰れないので初投稿です。
ようやくトミーくんのジェンガがつみあがったのでダンブルドアが笑顔で向かいます。



17:トミーの悪夢

17:トミーの悪夢

 

スリザリン寮クリスマス居残り組、点呼! ばんごーう、イチ! よし、全員いるな! …むなしいわーほんと虚しい。悲しくなるよねほんと。もっとこうさ、有るじゃん。普段は騒がしい校舎、しかし今は誰もおらずに二人きり…突然進む恋の予感――とかさあ! なのに一人でお散歩しかやることないとか徘徊老人かよ…つらたん。

 

ともかく今日はめでたいクリスマス。いくつか確認しなくちゃならないね。枕元とか! モミの木の下とか! ベッドの横にかけておいた靴下の中とかね! だってもしかしたら、ささささサンタさんからのプレゼントがあるかも知れないでござるからな。んふふ。かつて子供だったころの僕は兄弟が欲しいとか願っちゃう系男子だったから叶ったためしはなかったけど、今回は叶うかもしれんからな!

 

そういうわけで部屋の中を懸命に捜索したのだが、お目当ての物は見つからない。出てきたのはアーニャからの大量のチョコレートと、ハーミーからのクィディッチ用品の贈り物だけだ。うーん、あのクソ髭じじい。やっぱりアーニャの方に渡しましたね。知ってたけどほんと…手紙もガン無視して何もしねーし! あいつまじ男女差別しすぎだろおこだぞ! ぐ、ぐぬぬ。そっちがその気ならこっちも考えがあるからな! くそー傷ついたわ。散歩しよ。

 

ふらふらと当てもなく校内を歩く。看守もいなければ囚人もいない牢獄。古びたお城にひとりぼっち。そんなときにふとした物音。見渡してみるけど何にも無い。足音がひたひたと聞こえる気がする。何かが僕に近づいている。でも見えない。そこにはなにもいないはずなのに――気配がまとわりついてはなれない。

 

んっんー…これホラーだわ。透明マントってすごい。心当たり無かったら叫んでたわ。ところで我が姉よ、いとしいアーニャよ。もしかして痴漢するのが楽しい系だったりするの? なんで弟の尻をもむの? そういう趣味なの? 僕はどうかと思うねそういうの! 心臓に悪いのでやめてほちい。

 

“アーニャ!”

 

我が姉が透明マントを取り払い、笑いながらご登場。まったく!

 

「トミーのお尻はしっかりしてるね。もみ心地ランキング1位にしてあげる!」

“いままで何人もんだんですかね…”

「教師含めて12人! トミーで13人目だから居残り組はコンプリートだね!」

“もらってから半日もたってねえのにとんだプレイガールじゃねえのお姉ちゃんよぉ。ちょっと座りなお説教するから”

「やだぷー!」

 

いひひと笑いながら透明マントをかぶってアーニャが消えていく。やだぷーじゃねえよ、かわいい奴め! 僕がアーニャに甘いってわかってやってるからタチが悪いんだよなあもう。ま、君が楽しそうだし付き合ってやろう。見えない相手にむかって笑いながら飛びつこうとする僕の姿は、端から見たらとても滑稽だったことだろう!

 

僕たちはじゃれ合いながら校内を探索した。人の目がないっていいね。いつもの教室の中をゆっくりながめたり、景色のいいお気に入りの場所に行ってみたり…アーニャと行きたかった場所をいろいろ見た。そうしているうちに、何の因果かみぞの鏡のまえにやってきた。人の真に望む物を見せるという眉唾な代物だが、効果はマジである。アーニャは鏡にかかっていた布を取り払い、わあっと声を上げた。

 

「トミー! 私たちと…私たちと…!」

“両親が見える”

「そう! トミーも見えるのね! 私たちにそっくり! そのまま大人になったみたい…」

 

アーニャは目をキラキラさせて食い入るように鏡を見つめている。微笑ましいなあ。自分や僕の顔を両親と見比べて、どこがどう似ているとか解説してくれるのほんと尊い。家族おもいのやさしい姉よ。いとしいアーニャ。僕も同じ光景が見れたら良かったのにと残念に思うよ。だって僕の鏡に映っているのはダーズリー家がめっちゃ燃えている様子だぜ。中に何人か見知った顔が閉じ込められているやつ。心の底から燃やしたいとかどんだけ嫌いなんだよ笑うわ。やっぱ前言撤回、君が同じ光景を見て無くてよかったと嬉しく思うよ。いやあおっかない鏡だこと。

 

そうしてアーニャに話を合わせながらキャイキャイしていたら、ダンブルドアが音もなくあらわれてアーニャにみぞの鏡の講釈をたれながす。お前さてはアーニャのこと監視してたな? ロリコン変態腹黒校長とか役満で後送ものだぞ。

 

髭をひっつかんで抜いてやりたいという気持ちを隠しながら、適当に相づちをうつ。ダンブルドアの僕を見る目はなんというか、じっとりとした何かが込められていた。子供は意外と聡いんだぞう。お前それ絶対アーニャに悟らせんなよマジで。まあそんな気持ちを隠しながら、この鏡はあぶないんだぞうと警告していただいた。幸せにおぼれちゃうと苦しいからね是非もないね。

 

 

みぞの鏡に後ろ髪を引かれるアーニャを引きずり大広間に食事をしにむかう。ぽつぽつ居残りしている生徒達がアーニャをみて朗らかに挨拶をしてくる。アーニャはとっても人気者。僕は誇らしくてたまらない。いろいろ噂の絶えない僕にみんなよそよそしかったが、我が姉はコミュ力の権化だった。僕をさんざんに振り回すことでみんなの警戒をあっという間にといてしまったのだ。ふええ…お姉ちゃんしゅき…。

 

場も和やかになり大きなラウンドテーブルをみんなで囲んで食事になったのだが、となりに座るときスネイプ先生がじろりと僕たちをにらんだ。尻が犠牲になった後なのだろう。南無。しっかしそれでもなじらないんすねえ。ちょっとアーニャに甘すぎるんとちゃう?  

 

ならば僕も甘えておこうと朗らかに挨拶。鼻で笑われスルーされた。なにこの…好感度あがりづらすぎません? 顔か? 顔なのか?? …ちぇっ。すねるんだぞ僕だってぇ。うーんしかしごちそうがいっぱいだ。ホグワーツのこういうところだけはほんと好き。そしてはじまった僕とアーニャの食事風景はさながら大食い大会のようだった。二人とも細身なのに食べるのなんの。

 

「食えるときに食うべし。ポッター家の家訓第7条ね」

“ずっと一緒だったけど第1条すら聞いたことないんですがそれは”

「第1条は、姉に逆らうべからずよ」

“家訓なのに一方的すぎる…ず、ずるいぞ理不尽だぞ”

「姉への口答えは厳罰に処す。第2条はこれできまりね!」

"あーっ! 行儀が悪うございましてよお姉様!"

「わーっはっは! 我が弟よ、姉をさんざん我慢させた報いを受けるがいい!」

 

アーニャは笑いながら僕のまだたべかけの七面鳥を皿から奪い去った。戦争だろうが…! 食事に手を出したら…戦争ッ! 返せよ、僕のメインディッシュ…ッ! 僕の訴え虚しく鶏肉はアーニャの胃袋に消えていった。ヤケ食いしよ。

 

あまりの僕らの食いっぷりに双子のウィーズリーが実況と解説をやりだし、いつかトトカルチョをする算段を立てていた。ひとの家の食事風景を賭け事にするんじゃあないぞイタズラ坊主どもめ。アーニャはこの二人と非常にウマがあうらしく、よく一緒になってイタズラをしかけるらしい。やっぱ赤獅子ってクソだわ悪影響だろアーニャに! アーニャを変な道に引きずりこむんじゃないよと威嚇すると、アーニャはきょとんとした顔をしたあとに笑いだす。

 

「トミーが私をいたずらを好きにさせたのに気がついてなかったの? ムカつくダドリーたちにトミーがいたずらするのを見て楽しかったから、憧れてたのよ!」

“え? 僕なの? マジで?”

「そう! いちばん悪影響だったのはトミーよ。なのに…あーおっかしい! ね、うちの弟かわいいでしょう! いっつもみんなの前じゃすましてるけど、ほんとはヌケてるんだから!」

 

アーニャは僕をひっつかんでもみくちゃにしてきた。やめ、やめろんないすう! なんなのほんともう…ほんとなんなの…おねえちゃんしゅき…いっぱいちゅき…。くそう、アーニャには一生叶わない気がしてきた。ばかやろう僕はかつぞがんばるぞ!

 

ウィーズリーの双子が興味をもったのか、アーニャに昔の僕のことを聞いている。あっさり承諾したアーニャ。黒歴史ご開帳とか拷問かな? 享年11歳死因恥ずか死とかしゃれにならんぞ! 

 

そして掘り起こされる懐かしの日々。ダドリー魚拓作成事件。ロリコン教師一本釣り事件。いじめっ子宅カエル爆弾投入事件…他もろもろ。いやあプリペット通りは強敵でしたね。え、一緒にいたずらをやろう? これ以上やらかしたらスネイプ先生にすり潰されるからむり…。

 

「頷かないならトミーのこともつけ回しちゃおうかなー! すてきな贈り物もあったことだしー?」

“はははほんと誰だろーねあんなな素敵な贈り物を君によこしやがったやつはねー何考えてんだろうね”

「ほっほっほ」

 

こ、このじじい…! スネイプ先生どんな気分でこいつと付き合ってんだろう止めてくれよこのじじい。いろいろ大変なのもわかりますけどー、僕らがやらかしまくっておこぷんなのもわかりますけどおー、もっと甘やかしてほしいにゃん! え、ダメ? そんなあ…。

 

 

 

和やかな食事を終われば自由解散。アーニャは双子のウィーズリーと悪巧みをしに行った。標的は教授室に帰っていったスネイプ先生だろう。また白髪が増えなきゃ良いけれどなー。他の生徒達も教師達も、各々の日常に戻っていく。楽しかったクリスマスもこうして…終わるんだなって。寂しいクリスマスかと思ったが、久しぶりにアーニャと素で話せたしよかったなあ。

 

なんて感慨に浸っているうちに一人、又一人と席を立つ。

そして僕とダンブルドアだけがそこに残った。

 

 

 

 

 

やあダンブルドア。11年待ったよ。積もる話はいくらでもあるね。だけど僕が確かめたいのはひとつだけ。“はい”か“いいえ”でも応えられる。ダンブルドアは口を開かず、先ほどまでの微笑みを消して僕の言葉を待っている。だから前座もなしに切り込んだ。

 

“手紙は読んでくれましたか”

「読んだとも…わしは正直にいって驚いておる」

"まっとうな要求だと思いますけどね"

「君の推測の鋭さにじゃよ、トミー。クィレルの中にヴォルデモートが潜み、肉体の復活のために賢者の石を奪おうとしておること。禁じられた廊下やみぞの鏡が何の役割を果たしているか。わしらの暗闘を君は見抜いたのじゃな」

“そうです。僕はもう知っているんです。だから――――”

「君がクィレルを……ヴォルデモートを排除してほしいと強く望んでいることは、よくわかっておるよ。じゃがその上で言わねばならん。わしはやつとは戦わん。表立って排除もできん」

 

思わずテーブルを殴りつけた。ティーポットが倒れて紅茶がこぼれる。白いテーブルクロスが赤く染まっていく。頭にかっと血が上る。怒鳴りつけたいのを必死になってこらえながら、僕は声を絞り出す。

 

“…なぜ?”

「わしは老いた。もう…やつには勝てんよ。そして、理由をつけて解雇することも出来ん。ヴォルデモートはすでに君たちが打ち倒したと、魔法界ではそういうことになっておる。みなは奴の復活を認めたがらないじゃろう。故にクィレルの危険性を証明する手立てが無いのじゃ」

 

僕はもうこらえきれなかった。口が勝手に開き、悲鳴のような声が大広間に響く。

 

“そんな…そんなバカなことがありますか! いるじゃないかっ! 僕らの側に、あいつはいるじゃないかっ! あなたもそれを知っているじゃないかっ! ならなんで! どうしてっ!”

「なにもできないのじゃよ。わしは公正なホグワーツの校長でもあるからじゃ。難しいことじゃが…何をするにも立場は必要になるのじゃ。それに縛られ歯を食いしばる他ないとしても、仕方のないことじゃろうて」

 

それは明らかな挑発だった。むき出しの悪意に見えた。わがままを言う子供をたしなめるような面倒くささすら混じった見下しの言葉。悪い夢でも見ているようだ。胸くそが悪くて吐き気がする。なにかが僕の内側で暴れている。

 

こいつは本気だ。

こいつらは本気でそれでいいと思っているんだ。

僕らを残して歩き去るつもりなんだ。

 

“自分が何を言っているのかわかっているのか……アルバス・ダンブルドア”

「“校長先生”を忘れておるよトミー・ポッター。君は鋭い。じゃがそれ故に危うくもある。すでにわしらで打てる手は全て打ってある。あとは流れゆくままにじゃ」

 

ダンブルドアは心底悲しそうに目を細めた。その仕草に、僕は自分の中の一番やわらかい部分を思い切り殴られたような気持ちになった。ぐらりと視界が揺れる。頭の中で言葉がほどけていく。消化できなかったガラクタが溶け出していく。目の前が真っ暗になったきがした。

 

 

呆然とする僕を一瞥して、ダンブルドアは席を立つ。

 

 

「怒りを静めるのじゃ、トミー。その先には何もない。君もわかっておるのじゃろう」

 

 

ダンブルドアは大広間から出て行った。残されたのは僕と汚れたテーブルクロス。紅茶がしたたり落ちて床に落ちる。僕はどうすれば良い? 紅茶はもうこぼれてしまった。

 

杖を振ればいいのかな。

そしたら全部元通り。

魔法みたいに元通り。

 

 

 

 

 

「ばかにするな」

 

 

 

 

 

 

貴様らこそ穢れた血だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 




トミーくん今まではおこですんでたとかそれマジ?
マジです。
いまはマジおこです。


前編が終わりました。感想評価誤字報告ありがとナス!
完走したら感想に返信したいってはっきりわかんだね。かんそうだけに。

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