激おこぷんぷんトミー・ポッターくん   作:ぼんびー

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ペプシのよくわからん味が恋しいので初投稿です。
ハーミーに関するなにがしのような別視点です。
(番外編なので読み飛ばしても問題は)ないです。


間話
もしもあなたが


0 まぶたのうら

 

 

 

頬にのこった軽い口づけの感触。おもわず振ってしまった手のひらのしびれ。彼のあどけない顔にもみじ色の手形がのったけど…きっと私のほうが顔が赤いから謝る気にもならない。

 

なにするのよ、と言おうとしたのだけれど…うまく口はまわらない。

 

「な、な…な……!」

“あはっ、ごちそうさま! お手紙かくよハーミー! またね!”

 

そう言いのこして彼は足早に、誰もいない夜のお城へと駆けていく。私はしびれる手で頬をさわりながら彼の消えていった暗闇をながめていた。

 

これはハロウィンパーティーの夜のこと。

 

私はなかなか寝付けなくて、それは恐怖のせいではなくて……

 

まぶたの裏で笑う彼のことを、ちょっとだけうらめしく思った。

 

 

 

 

1 手をとって

 

トミー・ポッターと話すようになったのは、広い図書館のすみっこのほう。なんの変哲もない、人のすくない夕暮れのこと。

 

私は魔法薬学の授業のレポートを書いていた。担当教師のスネイプのいやみな性格がにじみ出ためんどうな課題。もう1時間もにらめっこだ。

 

「…スネイプ先生って絶対教師に向いてないわ」

 

思わず言葉をこぼしたけれど、返してくれる人はいない。ため息を一つこぼして伸びをする。天井からつられたランプの灯り。しばらく眺めてふと思う。

 

ここは魔法の世界なのだから、喋りだしたりしてくれないだろうか。

 

「まさかね」

 

こんなことを考えるのはやっぱり私が一人ぼっちだからだ。

 

親元をはなれ、魔法使いというおとぎ話の中の住人に囲まれながら遠く離れた学校で寮暮らし。

 

クディッチがどうとかチョコレートの空き箱やおまけのカードがどうとか…魔法使いたちの話題になんてついていけなくて。私の話したいことはいつも煙たがられてしまう。

 

…ルームメイトは私のことをどう思っているのだろう。

 

(鬱陶しいと思っているのかしら)

 

とたんに嫌気がさした。

気持ちを落ちつけるように、机においた杖をなでる。

 

大丈夫よハーマイオニー。

ここはすてきな魔法の世界なのだから。

私はとってもがんばってる。

呪文もたくさん知ってるじゃない。

なんてことないわ、へっちゃらよ。

 

しかし吐き出されたのは二度目のため息。

頭のなかの嫌なものは、どうにも消えてくれないらしい。ふくみ笑いの旋律にのせて陰口たちが踊りだす。

 

うるさい。やめて。黙って。

どれだけ拒んでも鳴りやまない。

大丈夫よハーマイオニー。

あんなのただのひがみだわ。

 

入学するより前にぜんぶの教科書を読み終えた。呪文の唱え方、杖の振り方、発音も完璧。先生からの質問だって、たくさん勉強しているから答えられる。

 

「素晴らしい。ミス・グレンジャーに10点追加…」

 

ほらね、私はやっぱりすごい。

 

ハーマイオニー・グレンジャーはみんなが認める優秀な模範生。人気者のアーニーにだって負けたりしない。みんなは私をひがんでいるだけ。だからあんな言葉気にする必要なんてどこにもない。

 

わかってるわ、そんなこと。

 

だけど――

 

「…つらいな」

 

あわてて口を手でふさいだ。

何かのまちがいだ。私はそんなこと考えてない。

ひとりでいることが?

アーニーみたいに人気じゃないことが?

みんなが陰口をいうことが?

冗談じゃないわ、わたしは平気よ。

そうよハーマイオニー、へっちゃらよ。

 

そんなことを思っていたときだった。

 

 

"ハイ、お嬢さん。もしかして僕らの先生のせいでおこまりかい?"

 

 

彼が声をかけてきたのは、そんなときだった。

だから私は驚いてしまって…つぶやきを聞かれてしまったのじゃないかとひやりとしてしまって…びっくりしながら彼を見つめることしかできなかった。

 

くしゃくしゃの黒い髪。

ハシバミ色のきれいな瞳。

彼の名前はトミー・ポッター。

生き残った双子の片割れ。

アーニー・ポッターの弟。

ドリー・マルフォイの忠実なしもべ。

そんなふうに呼ばれている男の子。

 

すこし前、ちょっとしたいざこざのせいで夜の学校をさまよっていたときに知り合った。

 

私が反応を返さないからか、彼は不安そうに切り出した。

 

 

"あー…ハーミー? もしかして僕、お邪魔なかんじ?"

 

「ちがうわ、ごめんなさい。トミー…よね。誰もいないとおもってたからびっくりしちゃって」

 

"ああ、よかった! ひょっとして僕、忘れられちゃったかと思ったよ。その課題ね、スリザリンにだけヒントペーパー配ってるのさ。やることがこっすいんだ、スネイプ先生って"

 

 

そう言って笑いながら、彼は解きかたを教えてくれた。彼の教えかたは上手だったのだけれど…私はなぜこんなことをしてくれるか不思議であまり集中できなかった。

 

…気がついたら課題はおわっていた。

 

 

「…ありがとう。助かっちゃった」

 

"どういたしまして! 僕もどうかと思ってたからいいことできて気持ちがいいよ"

 

 

彼はほんとうに嬉しそうに言う。

噂されているような人物ではやっぱりないらしい。

純血主義者のとんでもなくいやな奴の子分だと、グリフィンドールでは皆が言うけど…で…私の目に映る彼はとても優しい少年に見えた。

 

 

「私、スネイプよりあなたの方がよっぽと教師向きだと思うわ」

 

"あはっ、そこは人間向きと言ってほしいな。あの人よっぽど生きづらいんだから、職業程度じゃおさまらないよ"

 

「あなた、変な人ってよく言われない?」

 

“残念なことに”

 

 

私は思わず笑ってしまう。

彼も楽しそうに笑い返してくれる。

あどけない笑顔が、なぜか印象に残る。

 

それから私たちはいろいろなことを話した。

私が読んでいた本のこと。

おもしろいと思った授業のこと。

ホグワーツの変だと思うところ。

誰かに話したかったいろいろなこと。

 

こんなふうに誰かと話すなんて久しぶりで、それは自分がいつも孤独だったということなのだけれど…悲しい事実のはずだったのだけれど…そんなことが気にならないくらい、心地がよかった。

 

きっと、だからなのだろう。

 

 

"ねえ。ハーミーがよかったらまた話しかけてもいいかな"

 

「え? でも…大丈夫なの? あなた確かドリーの…」

 

"こっそりとなら、きっとなんとか。もちろんハーミーがよければだけどね。自分の外聞についての自覚はあるし。というわけでハーミー、セットメニューはいかが? いまならもれなくトラブルがついてくるよ"

 

「だれが買うのよ、それ」

 

"そうでしょう? みんなそう思うのさ。おかげで友達ひとりもできやしない。でもね、僕はけっこうさみしがりなんだよ。もう死んじゃいそうなくらいなんだ"

 

「さみしがりって、ほんとうに? なんだか信じられないわ。あなたってなんでも平気そう」

 

“あはっ、それほめてるの? ねえ、ハーミー。人の内面は外からじゃ分からないんだよ。だから相手に伝えなくちゃ始まらない。僕が言いたいのはそういうことで……わかった、降参。素直にいうよ。つまりね――”

 

 

そう言って彼は右手を差し出し、照れくさそうに笑いながら私に言った。

 

 

“君と話せると僕は嬉しいんだよ、ハーミー”

 

 

きっと、だからなのだろう。

彼のすこし震えている手とほんのりと紅くなった頬をみたとたんに、私が思わずはにかんで彼の手を取ってしまったのは…

 

きっと、私がとても嬉しかったからなのだろう。

 

 

「よろしく、トミー」

 

“よろしく、ハーミー!”

 

 

それからだ。

 

私が彼と話すようになったのは…それからだった。

 

 

 

 

2 からかい

 

 

とてもいやな夢を見た。

胸に残る恐怖と、荒い呼吸。

汗でぐっしょりとぬれた深いなシーツ。

最悪の目覚め。

 

「ハーマイオニー、大丈夫?」

 

ルームメイトが心配そうにこちらをみている。

 

「なんでもないの。最近、夢見がわるくて」

 

「あんなことあったもんねぇ。顔洗ってきたら?」

 

「うん…ありがとう」

 

冷たい水で顔をながし、顔を上げて鏡を見る。

顔をひどく青ざめさせた女の子がこちらを眺めていた。これは心配されもするだろうと、ひとり納得。

 

「前は心配されることもなかったのよね…」

 

複雑な心中をおさえつけるようにつぶやいた。

自分をとりまく環境が変わっていくことへの戸惑い。状況が良くなったのか、それとも悪くなったのか…嬉しいような困ったような。そんな気分にさせられるのも、あの噂話のせい。

 

私と彼が恋仲なのではないか…という噂話。つまり…

 

ハーマイオニー・グレンジャーとトミー・ポッターは恋人同士。

赤獅子のお姫様と緑蛇の騎士…。

純血主義にそむいて愛を…。

 

愛…恋人……なにをするんだろう。もしそうだったら――

 

そう考えかけてしまったので、もう一度顔に水をかける。

とても冷たい冬の冷水が、ゆだちかけた頭をひやしてくれる。

赤くなってはいないかと心配して見た鏡には、すこし顔色がよくなった私がいた。

 

「おしゃれとか…ママにならおうかしら」

 

ぽつりとつぶやいた独り言。

 

「あらやだ。ちなみにそれはなんのため?」

 

「だってかわいいほうが……きゃあ!?」

 

驚いて顔をそちらに向けると、にんまりと笑ったルームメイトが立っていて…おしゃべりな彼女の口に戸は立てられなかったので…私のささいなつぶやきは、お昼になるころにはあっというまに学校中に広まってしまっていて。

 

“マーリンのひげ”という言葉の使い方を、その日私は覚えたのだった。

 

 

 

3 アーニーと私と

 

 

あの日以来、私がどこにいっても噂についてのからかいがある。

すれ違いに、授業中に、何気ない会話のさなかに。いつでもだ。人の恋路というのはずいぶん面白いらしい。なんと返しても喜ぶので、もはや怒る気すらおき無くなってしまった。

 

恥ずかしいけれど前よりはいい…のかもしれない。

図書館のかたすみで本を読む。まばらにいる人のかげ。今までだったら、陰口が聞こえてきただろう。今は…形容しがたい好奇の目線ですんでいる。どちらがマシかとは、答えづらいので聞かないでほしい。

 

それに…噂をきっかけにしてアーニーと私は友達になった。

 

アーニーはいつも楽しそうに話しかけてきて私をふりまわす。ひとりで本を読んでいる私をひっつかんでは、みんなの元に連れ出してしまう。

 

私はそれに付き合うのがとても大変で…でもアーニーがあんまりにも楽しそうに笑うから断り切れなくて、そうするうちに仲良くしてくれる人も増えてきて。

 

そんなふうにアーニーと友達になって…手を引かれながら、私はみんなの輪の中に入っていく。

 

孤独で苦しかった日常がすこしずつ…すこしずつ時間をかけながらいい方向に変わっていく。私の居場所ができていく。穏やかさを感じれるようになる。でも、それをくれた人とは…あの日以来会えていない。

 

なんとなく…あの日のことを思い出した。

 

 

 

涙をこらえながら廊下を走る。

ぶつかるのもかまわずに、こちらを怪訝にみる人々を追い抜かす。

頭のなかで繰り返されるのは、金色の髪をした少女…ドリー・マルフォイの言葉。

 

「あなたはホグワーツにふさわしくない」

 

なんども、なんども、繰り返される。

 

悔しくて、悲しかった。自分がどう言われているかをつきつられて、ここに私の居場所はないと言い切られて…でも何よりつらかったのは彼がそこにいたこと。彼が私の悪口を知ってしまったこと。そして、彼がなにも言ってくれなかったこと。

 

見捨てられたんだと思った。

 

彼と話すのが楽しかったのに。友達になれて嬉しかったのに。きっとそう思っていたのは私だけ。勝手に期待して、勝手に裏切られた気分になって。バカみたいだとわかっている。

 

でも、私は本当にひとりぼっちになってしまった気がした。

 

気がつけば涙があふれていた。

みっともない嗚咽がもれる。

泣いてる理由がわからなくなるくらい、私は泣いていた。

 

でも――――

 

 

“ハーミーッ!”

 

 

それはとても聞き覚えのある声で

それはとても聞き覚えのある言葉で

それはとても見覚えのある顔立ちで

 

彼は私の目の前に――――

 

 

 

「…ちょっと、聞いてる? ハーマイオニーさーん、起きてますかー。アーニーちゃんが遊びにきましたよー……ダメか。紙とインクのお友達と旅行中ってわけね」

 

そう言いながらアーニーが私の頭を軽くこづいた。本から顔をあげれば、私の困った友人が笑顔でこちらをのぞき込んでいる。思わずドキリとしてしまったのも、しかたないことだと思う。

 

きれいな赤の長い髪。

宝石のような緑の瞳。

花の咲いたような朗らかな笑顔。

 

アーニーは同性の私から見てもとてもかわいらしい。だけれど…彼と顔立ちはあまり似ていない。どこか似ているところはないだろうかと眺めつづけてみると、アーニーは「にらめっこね、いいわ」といって変な顔をした。私がくすりと笑うと、彼女は腕をかかげて「私の勝ち!」と楽しそうに笑う。

 

「ねえアーニー。あなたとトミーって…双子なのよね?」

 

「当たり前でしょ。私が姉でトミーが弟。生まれたときからずーっとそうよ。え? なに、ハーマイオニーったらトミーのこと考えてあんなにボーッとしてたの? …もしかしてほんとに好きなの?」

 

「ち、ちがうわよ! そんなんじゃないわ! ただ…あれから会えてないなって」

 

返事代わりにアーニーが口笛をふく。そして指と指をくっつけてハートマークを作り、にやりと笑った。

 

顔が赤くなるのがわかる。

 

「からかわないでったら!」

 

「んー…前向きに検討しまーす!  はい、しました! じゃあ七年間よろしくね、ハーマイオニー!」

 

「アーニーっ!」

 

「きゃあ怒った! ハーミーマーミーおっこりんぼー!」

 

私の困った友人はいつもこうだ。ふらりとやってきて、みんなを引っ張って、笑わせてくれる。元気が過ぎるのは玉にきずだけど、アーニーのことを好ましく思う。

 

そのあと私たちは、騒ぎすぎと司書さんに怒られてしまった。

巻き添えもいいところ。目をつけられたらどうしてくれるのか。

しかし、非難しようと顔を向けてみれば…アーニーはとても楽しそうに笑いかけてくるので…すとんと心にはいってきてしまったので。

 

ズルい子だなあと思いながら、いつものように許してしまった。

 

もう私はひとりじゃない。

ここには私の居場所があって、私に笑いかけてくれる人がいる。

あのとき彼が追いかけてきてくれてよかったと、胸のうちでつぶやいた。

 

だから…私も変わらなくちゃね。

 

 

 

 

3 もしもあなたが

 

 

クリスマス休暇も近くなったある日のこと。

図書館での自習で遅くなってしまったせいで、私はひとりで夕暮れの校内を歩いている。

 

広く大きな廊下の先。

木の扉のギィと開く音。

ふと窓から眺めた中庭。

何気ない日常の一場面。

 

そこには危険な何かが潜んでいる。

そんな疑惑がこびりついて離れない。

 

胸が締め付けられるように苦しい。喉が渇いて、足が震える。

恐怖をごまかすために、腕のなかの本を強く抱え込む。

 

「だいじょうぶよ…大丈夫。平気だわ」

 

ホグワーツが怖い。

それを自覚したのはいつからかだったか。

ハロウィンが終わったあの日以来、冬が近づくにつれてその思いは強くなった。

 

わかってる。

トロールなんてもういない。

あれは何かの間違いだった。

頼りになる先生達がいる。

私を見てくれる友達もできた。

もうここは安全だ。

わかってる――わかってるのに。

 

悪夢が私をさいなむのだ。

怪物がそこからあらわれて…私を殺すと囁いてくる。

自分の中に根付いた恐怖がいつまでも消えてくれない。

 

私はまだあの日の幻影に襲われている。

 

暗い廊下に足音がひびく。

大きく息を吸いこんで、吐きだした。

 

「変わらなきゃだめよ。わかってるわ」

 

こびりついて離れない嫌なもの。

どうしようもなくよみがえってくる嫌なもの。

きっとあなたのくれた言葉があれば大丈夫。

きっとアーニーが側にいてくれたら大丈夫。

でも――――

 

「そんなのらしくないわ。守ってもらってばかりなんて、イヤよね。らしくないわよ、ハーマイオニー」

 

本にしおりがわりに挟み込んだ手紙を眺める。

他愛のない内容の、なんの変哲もない手紙。

私と彼の二人だけの秘密の約束。

 

"クリスマスイブ、キングズクロス駅で"

 

これは私が変わるためのきっかけ。

 

私はあなたに言えるだろうか。

あなたは受け止めてくれるだろうか。

私の中にあるものを全部、あの時のように。

押しつけてしまうのが怖いけれど。

拒まれるのが怖いけれど。

 

「勇気をだすのよ、ハーマイオニー。相手に伝えなくちゃ始まらない」

 

私は変わるきっかけがほしい。

守られるだけの女の子はもう終わり。

そう言えるだけのきっかけがほしい。

 

もしもあなたに言うことができたなら

もしも私が勇気を出せたなら

もしもあなたが受け止めてくれたなら

 

きっと私は変われるだろう。

いいや、かならず変わってみせる。

それはあなたがくれたきっかけだから。

 

「どうかもう一度だけーー受け止めて」

 

そうつぶやいて歩きだした足は、もう震えていなかった。

 

だって私はわかってる。

 

彼ならきっとーー

 

 

 

 

 

 

 




でもトミーくんアヘ顔してただけってそれマジ?
マジです。
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