数年越しに感想返しできそうでウレシイ…
29:汽笛の終わり
ヴォルデモートとの戦いが進級試験の後でほんっとによかったなーなんて、僕は思うわけで。
あの日から、僕が叫んだあの日から、誰も僕に近づかない。冷たいとは思わないし、ありがたいとすら感じる。おかげで日常は穏やかだ。決まった時間に起きて、授業を受けて、ご飯を食べて、また授業を受けて、クィディッチで運動して、あったかいベッドで眠る。ただそれだけの生活を繰り返している。もう僕らをつけ狙う悪者はここにいない。ようやっと僕はぐっすりと眠れる。来年になったら別の悪者が来るからつかの間の休息に過ぎないけどね。なんにせよ、僕みたいな問題児にはふさわしくないまともな学園生活だ。あと1か月、こんな調子で過ごしていれば一年が終わる。そしたら来年も通えるホグワーツ。やったね。
アーニーも、ハーミーも、僕のことを気にかけてくれた。ときおり、朝にお迎えにきてくれたり、一緒にご飯を食べてくれたりする。さすがに添い寝とかはしてくれないけどさ。僕は二人を守ってあげたかったのに、まるで逆だね。
ふたりともすごく優しくしてくれて、僕もそれに何かをお返ししたかったのだけど、持ち合わせは何もなかった。情けなくて虚しくて、鬱陶しいとすら思ってしまった。それがつらくて、僕は嘘の作り笑いすらできなくなった。
好意にお返しできないと苦しいね。僕があげられるものが何もないと、ほんとうに虚しくなるね。ドリー。
ドリー、僕は君に本当にひどいことをした。君に謝りたい。けれど、君はうつむいてしまって、もう僕と話してくれないね。いいんだ、当然だよ。殺されないだけ御の字だ。人の気持ちをもてあそんじゃいけないんだって、昔の人はとっくにわかってたのね。悪い行いは、自分に返ってくるんだから。それに、僕はもう君の飼い犬じゃない。どうやって話しかければいいか、忘れちゃったよ。もう一度君が飼ってくれたらいいのに。僕が暴れだしてしまわないように。
ハーミーは僕に優しくする。それに嫉妬する飼い主はもういない。僕も遠ざかる理由はなくなったから、ようやく素直に話せるね。ああ、でも僕はちょうどまいっちまって、ひどくつまらないやつになってしまっているんだ。君と話したかったことがたくさんあったのに、輝いて見えていたのに、まるで砕けたガラス細工みたいにわからなくなった。すごく疲れるよ。返事するたびにおそるおそるさ。幸せの青い鳥とモノクロの世界なんてね。ほらね、冗談もつまらない。
僕を甘やかす役割はハーミーがとっちゃったから、アーニーはいつも通りにふるまっている。いつも通りに騒いでいる。きっとそれがいいとわかってる。勉強にうなり声をあげて、友達と笑いあって、いたずらに精を出している。いつも通りの日常が、僕に必要なんだって知っている。僕はそれが嬉しいよ。君は変わってしまったけど、それを気が付かせないようにしている。僕を安心させようとしてくれている。とってもとっても嬉しくて胸が痛い。僕はそんな風に笑っていてほしいだけなのにね。
それから時間は穏やかに流れて行って、寮対抗クィディッチ杯はアーニーの大活躍によってグリフィンドールが優勝した。スリザリンはあの負けが響いて惜しくも2位。間抜けな落箒者にみんな怒ってるだろうなと思っていたけど、より普通の反応だった。キャプテンが僕に近寄ってきたときは怯えたけれど、来年はとるぞと言われただけだった。僕はそれが不思議だった。そして、来年もやらなければいけないんだと泣きたくなった。悔し泣きだと勘違いされた。違うぞ。
修了式が行われた。優勝したのは、グリフィンドールだった。ダンブルドアのわけのわからない加点はアーニーに向けたものだけだった。まあ、普通に負けたってこと。敵がいた時のグリフィンドールの団結力はすさまじく、寮全体で必死に得点稼ぎと減点阻止をしてたのが効いたみたいだ。もちろん、ハーミーみたいな優等生がたくさん点を稼いだりもしたんだけどね。途中まで一位だったのに、アーニーへの加点で逆転されたときスネイプ先生は本当に嫌そうな顔をしてた。ちょっと笑えた。
そういえば…あれからスネイプ先生とは顔を合わせていない。お互いに避けているんだ。あの人は僕を見たら嫌な気持ちになるだろうし、僕もあの人にもう怒りたくない。きっと最初からこうしておけばよかったんだろう。仲良くしたら、そのぶんつらくなるもんな。僕らの関係は終わったんだろう。ヴォルデモートによろしく言っておいてほしい。あとダンブルドアにも。そしてスネイプ先生、甘んじて傷ついてくれ。そこで母との約束をかみしめていればいい。
もうすぐ修了式も終わりだ。ダンブルドアが高らかに演説を行っている。僕は無感動にあいつをみている。アーニーに母の愛の魔法について話した。ヴォルデモートについて話した。勝手な憶測のくせに、僕がみぞの鏡で何を見たのかを正確に話した。僕がダンブルドアに怒っていたことを話した。何をしていたのかを話した。そして、僕が中庭で叫んだことを話した。ヴォルデモートを倒させるために。アーニーを利用するために。何も終わっていない。何も、変わっていないんだ。これから始まるのだから。僕は何も変えることができなかった。何も……。
だから僕は眺めるしかない。始まりと何も変わらない水面を、無感動に眺めるしかない。石を投げ入れれば波紋が立つ。けれどそれだけ。やがて消えて元に戻る。石を投げ続けるのは疲れてしまった。身体はへとへとで、もう腕をあげたくないらしい。頭はずきずきとして、もう無駄なことだとわかっているらしい。それでも、心は投げ続けろと叫んでいる。おかげで僕はどうしたらいいかわからなくなってしまった。笑うことも、泣くことも、楽しむことも、怒ることも、全部が無駄に思える。なのに奥底では感情が渦巻いて、無力さを思い出して苛まれる。ごめんね、アーニー。僕はもうだめになってしまった。
汽笛が魔法の終わりを告げる。
生徒たちはは汽車に乗り家へと帰る。幸せな家へ、普通の家へ、不幸な家へ。
そして僕らはダーズリー家へと帰る。
このまま消えてしまいたいと思った。
隣に座るアーニーが手をつないでくれた。
そうだね、僕はどこにもいかないよ。
せめてふたりでさまよえたらいいのに。
悪いやつが僕らを殺そうとする。
僕らは何もしていないのに。
僕らに悪いやつを殺させたいやつらがいる。
僕らは幸せになりたいだけなのに。
愛してくれる人はどこ。
庇ってくれる人はどこ。
どこにもいやしなかった。
僕らはふたりぼっちで傷だらけだ。
そして、駅に着く……僕はホグワーツから帰ってきた。
――――――怒って泣いて叫ぶこと以外、僕には何もできなかった。
以下あとがきとかそれマジ?
マジです。
つたない処女作となりましたが、ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。手慰みで始めた自分用の小説だったため、わかりづらい部分も多くあり、構成上ラスト近辺にならないと主人公なんなんだこいつ…となってしまう問題を抱えたりもしていました。それでも評価いただけたことは、ひとえに原作の偉大さとによるものだと思います。ありがとうハリポタシリーズ。
書き始めた当時はアズカバン編まで執筆が終わっていたので、誤字とか修正して毎日投稿でサクッと…終わるやろ(クソガバ予測)とか思っていました。しかし、自分用に書いたものと他人に見てもらうものでは、(ここは描写しなくても私がわかってるから書く必要なんて)ないです。と思ってた部分が大事だったりで、もう頭のなかで文章がグルグルしている…と修正時に困惑した思い出があります。そう言った経緯で修正のハードルが上がり、私生活の変更から修正のエネルギーを捻出できなくなったためエターになりかけました。当時読んでいただいていた方にはほんとうに申し訳ない気持ちでいっぱいです。許してください!完結させましたから!!
感謝もそこそこに解説を少しだけ書きます。
どなたかが感想で、この作品はトミー君のギャルゲーでは?と言っていましたが、本来であればそうなる予定でした。3人のヒロインor庇護者たちのどれかに与して、闇の帝王を打ち倒す王道2次創作転生ものを書くことになるんじゃないかなぁと。しかし、あらすじにもある通り“予言の子”が困難に巻き込まれるのは変わりません。それがなんだか可哀そうに思えたのがこの作品の始まりです。
“アーニー(予言の子)を護ってあげたい”。しかし、原作で描かれている通り(そして多くの方が感想欄で指摘してくださっている通りに)ぶっちゃけそれは無理なんじゃないという現実がありまして。けれどなんとかしたい…とまあ、その矛盾は私には解決できそうにありませんでした。なので、そのまま葛藤として作品に組み込んだ結果、トミーくんはあんな感じになりました。
トミーくんですが、本来であれば誰かを選んでアーニーの代わりに(あるいはアーニーと協力して)各年の問題を解決していく話になったんですが、巻き込みたくないと誰も選べなかったので…自分で何とかしたいと言い張ったので…優しい子になってしまったのでむごいことになりました。ごめんね。あと、最初は女の子の予定だったんですが絵面がもっとむごくなってしまうので男の子になりました。各自で脳内TSして楽しんでください。
各ヒロインについてですが、アーニーやドリーはもはや別キャラだし、ハーマイオニーも愛称で同一性が薄れるんじゃ…とか心配になったりもしました(そしてロンの出番も!)が、二次創作の懐の広さにより事なきを得ました。ありがとうハーメルン。マジで。エンディング後のおまけはあるかもしれないですし、続編でやるかもしれません。未定です。あとスネイプ先生のルートはないです。
ダンブルドアについてですが、さんざんヘイト役を買ってもらうことになってしまい、ファンの方には申し訳なさでいっぱいです。が、同時に彼は非難も正しければ擁護も正しいキャラクターだと思います。やってると言えばやってる説があるので…。こんなに多くの側面を持ちながら愛される偉大なる魔法使いを創れるなんてやっぱりJ.K.ローリング先生はすごいってはっきりわかんだね。ちなみに私はなんだかんだで好きです。
本話で完結と扱うことについてですが、すこし補足させていただきます。
ハリポタ二次創作の問題点として、全部描き切ろうと思うととんでもない大長編になってしまうことがあります。原作が偉大過ぎる。こんなんじゃ気軽に手を出せないよ……(震え声)
なので、割り切って一冊目の範囲を書ききったら完結として扱おうと決めていました。結果、タイトルがこんな感じになったという感じです。エピローグ後の登場人物たちの変化は続編で描写しているので、続編が書きあがり次第また別作品として投稿するつもりです。でした。数年かかった前科があるのでなんもいえねぇ…となってます。
そのため、続編は書いてありますが世にお出しできるかはわかんないです。秘密の部屋くらいは…(震え声)。その場合、激おこぷんぷんに投稿するのがいいのか、また別で作品を立てるかとか悩んでます。ご意見あればお伺いしたいところです。
あらためて、こうして一区切りできたことを嬉しく思います。感想、誤字報告などマジで助かりました。これから感想返しやおまけをちょこちょこやりつつ、続編や別作品に手を出せたらなと思いますので、その時はよろしくお願いします。本当にありがとうございました。
最後に一言だけ。
エターしかけてすみませんでした! 許してください! なんでもしますから!!! (なんでもするとは言っていない)