激おこぷんぷんトミー・ポッターくん   作:ぼんびー

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深夜のポテチがうますぎるので初投稿です。
入学式は子供の晴れ舞台ってそれいちばん言われてるから。


5::組み分けー6:いっちねんせいの魔法薬学

大広間に集められた新入生諸君。古くさい帽子をかぶってさあ組み分けだ! ホグワーツには4つの寮がある。勇気の赤獅子グリフィンドール、誠実な黄穴熊ハッフルパフ、知性の青鷲レイブンクロー、狡猾な緑蛇スリザリン。それぞれが個性豊かな風土と歴史をもつすてきな寮で、これからの7年間を左右する重要な組み分けだ。まだ幼い少年少女たちは不安と期待で胸をおどらせていることだろう。

 

…が、正直僕はどこでもいい。いや、学生生活をマトモにおくる余裕はほぼないし…ボッチになる気しかしないし…絶対問題起こしまくるし…もう諦めの境地だよね。強いて言うなら寮長がスネイプ先生のスリザリンとかですかね、気兼ねなく迷惑かけれるし。ほら、手がかかる子ほどかわいいっていうし喜んで手助けしてくれる……してくれるよな? というかしてくださいお願いしますこちとらリリーの息子だぞもっと可愛がってくれないと困りますよ!  

 

なんて考えているうちに、アーニャの組み分けの番が来ている。やはりポッターブランドは注目されるようで、みんなが息をのんで見守っていた。叫ばれたのはグリフィンドール。大広間は拍手拍手の大喝采。アーニャはその歓迎っぷりにびっくりしながら、しかし嬉しそうに赤獅子のテーブルに迎え入れられた。君が楽しそうで何よりだ、いとしいアーニャ。素晴らしき我が姉よ。今日からはじまるシンデレラさ。

 

次にやってきた僕の番だが、たっぷり悩まれたあげくスリザリンにぶち込まれた。双子の姉と同じ寮ではないのか、という空気が流れたが知ったことではない。気にすることなく緑蛇のテーブルに向かう。ちらりとアーニャを見てみると、先ほどの楽しげな顔から一変し、今にも燃やしそうな目で組み分け帽子をにらんでいた。マジで破くぐらいしそうで怖い。そ、そんなに怒ることですかね…帽子の冥福を祈らざるを得ない。 

 

組み分けがおわり、憎きアルバス・ダンブルドア校長先生様のふざけたスピーチを聞き流せば、新入生の歓迎会が始まった! テーブルの上を見よ! 嗚呼、なんと豪勢な食事だろうか! 人間はいい奴もわるい奴もいるけれど、飯を食わない奴はいないのだ! 僕は今までの栄養不足をとりもどすべく、会話もそこそこに聞き流して一心不乱に食事をした。肉野菜肉肉野菜カボチャジュースにパウンドケーキ! 全部とっても美味しかったです(小学生並みの感想)!

 

前世ぶりの満腹感に涙を流していると、隣に座っていた少女が話しかけてくる。金色の長い髪を緩やかに波うたせた美しい少女はドリー・マルフォイと名乗った。マルフォイ家の一人娘だそうだ。まさかの展開に困惑する僕を気にせずに、ドリーは意気揚々と絡んできた。スリザリンが如何に素晴らしい寮なのか。魔法界における純血の名家マルフォイ家が如何に素晴らしいのか。マグル(魔法使いでない人々のこと)が如何に害悪なのか、そして、よければ友達にしてやってもいいという上から目線…うん、マルフォイ! 僕は迷うことなく彼女の手を取った。もちろん媚びるぜ…かなり媚びる。一も二もなく褒め殺しだ。目指せ運命共同体、なってみせます太鼓持ち。姉ともどもお世話してくれると嬉しいな!

 

 

6 いっちねんせいの魔法薬学

 

不思議で素敵な魔法の授業だ! やったあ! さっぱり分からない! くっそお! 何言ってんのかわかんねえよ専門用語おおすぎんだよ! つーか羽ペンとインクとか使いづらいわなんだ羊皮紙っていつの時代だ18世紀かよ! 普通にノートと鉛筆でいいだろ畜生!

 

ホグワーツでの授業がはじまってから1週間、前世があったぶん余裕があるなんて考えはバキバキにへし折れていた。科学の世界の常識からかけ離れた魔法のお勉強はまさしく未知の世界。当然授業は分からないことがいっぱいで、なめてかかれないのは明白だった。それに加えて出される課題のなんと多いことか! 予習復習もあいまって、毎日ひいこら言いながら机にかじりつく羽目になった。勉強って辛いな…辛い。

 

そんな中でもなんとかやっていけるのは、ひとえにドリーによる献身的なフォローのおかげだ。かわいいドリーちゃんは、魔法界の超有名人ポッターくんが子犬のように頼り全肯定してくる状況をいたく気に入ったらしい。自尊心とか庇護心とかもろもろが刺激されたのか、気がつけば僕はすっかり彼女の舎弟となっていた。そして、彼女は身内にゲロ甘かったのだ。やったぜ。

 

僕はドリーを信仰する。ドリーは僕を保護する。下心と実益のかみ合った、げに美しき共存関係である。それに一人の男であるのでかわいい女の子と一緒にいられるのは正直テンション上がるわ。う、うるせーっ! 仕方ないだろかわいいもんはかわいいんだよ! 精神年齢とか関係ないのこういうのは魂で感じる者なんですぅー。

 

ところで、いつの時代も平穏というのは長続きしないのである。このまま平穏な学生生活を送りたいという僕のささやかな願いは、早くもむなしく崩れ去るのだ。あれはスネイプ先生の楽しい魔法薬学の初回授業、スリザリンとは犬猿の仲であるグリフィンドールとの合同授業が行われた時だった……。

 

ポッター絶対目の敵にするマンとして名をはせているスネイプ先生であったが、僕たち双子に対してはそこまであたりはキツくない。理由は僕らの容姿と立場にある。アーニャは彼が献身している僕らの母親にそっくりだし、僕は(大嫌いな父親にそっくりだけど)彼が露骨に贔屓をしているスリザリンの生徒だからおおっぴらにはいびらない。スネイプ先生が内心とても穏やかでないことは明白だが、僕らとしてはとてもありがたいことである。とくに何もしてないけどほんとすまんな! 

 

そんなわけで心なしか不機嫌なスネイプ先生は嫌みを垂れ流し合間にスリザリン贔屓を差し込みながらも順調に授業をすすめる。お鍋でおできを直すお薬を作りましょうね~という実習を、僕はドリーの手を借りながら(ついでに鼻の下を伸ばしながら)真面目に授業に取り組んでいた。アーニャはすっかりグリフィンドールの人気者になったようで、友人達と楽しそうに談笑していた。しかし赤獅子と緑蛇が同じ場所にいながら和やかに終わる訳がなかったのだ。

 

いつ誰が言い出したかは定かでないのだが、スネイプ先生の露骨な贔屓を切っ掛けにして両者悪口のジャブラッシュの打ち合いが発生していた。そして最初のストレートをねじ込んだのは、いとしの我が姉アーニャであった。僕に対して自慢げに知識を語るドリーのことを、知ったかぶりの先輩気取りの嘘つき女と非難したのである。アーニャよ、あんまりそういの表に出さなかったじゃんどうしたのさ。突然のことに僕が仰天している間にも、カチンときたドリーが応戦する。二人は口論しながらおでき薬を作るという高度なことをしつつ、どんどん内容をエスカレートさせていった。僕は助けを求めるように手を上げてスネイプ先生を見たが、そっと目をそらされた。職務怠慢だぞばかやろー。気持ちはすっごいわかるけどな! 

 

口論の内容を聞いているうちに、だんだんアーニャが何を言いたいのかが分かってきた。弟のトミー坊やをたぶらかすな。スリザリンなんてクソ食らえ。さっさとグリフィンドールに引き渡せ。要するにこの姉、弟離れが出来ていないのである!(なんてこったい!) ドリーもそれに気がついたのか、アーニャを挑発するべく僕を抱き寄せる。そしてにんまりと笑って言い放った。

 

「トミーはもう、わ・た・し・の・も・の。おわかり?」

 

ああー…なんか良い匂いがする。いや…現実逃避したっていいだろ僕にどうしろというのだ。こういうのは当人が出張ってもたいていロクなことにならないってそれ古事記にも書いてあるから。11年間連れそった双子の弟がとられて気にくわないアーニャの気持ちはもちろん理解できる。しかし友達も沢山できたみたいだし、寮はもうわかれちゃったし、僕は僕でドリーちゃんと共生関係をつづけたいから否定もできないわけで。表情筋を殺しながら頷いてみれば、アーニャが怒りでわなわなと震え、ドリーは満足しながら僕に頬ずりをして…

 

「いっそのことわたしの弟になる?」

 

あっ、ヤバいと思ったのもつかの間。アーニャがぷっつんとキレたのがわかった。アーニャはできたて熱々瓶入りのおでき薬をひっつかむと、ドリーに向かって思い切りぶん投げた。や、野蛮! 

 

美しい縦回転をしながら宙を進む薬瓶は、ドリーをかばうように射線上に割って入った僕の顔面に直撃した。めちゃくちゃ痛い。そして衝撃で蓋ががはずれて熱々の薬液が頭から降り注ぐ。めちゃくちゃ熱い。僕はぎゃあと叫び声を上げながら、教室の床を転げ回る羽目になった。

 

グリフィンドールの生徒達はゲラゲラと笑い、ドリーはあわあわと僕を心配し、アーニャはぎゅうと自分の手をにぎりしめていた。あわてて立ち上がって平気ですぅと強がったものの、目にたまった涙はごまかせていなかった。だって痛いんだもん! 人に物を投げるのは危ないからやめようねアーニャ! 素行が悪くなると弟くんは悲しいぞ!

 

そうしているとスネイプ先生がほくそ笑みながらようやく止めに入った。双子のポッターは騒ぎを起こしたから厳重注意と追加課題。ついでにグリフィンドールは減点。憂さ晴らしをする口実にうまく使われましたねこれは…個人的にはもっと早く止めてほしかったんですけどそこんとこどう? あ、父親に似てるからダメ? そう……。

 

その後、デカいたんこぶと火傷のせいで僕は診療所にたたき込まれたが、怪しい薬を飲まされた数十分後にはケロッと治っていた。魔法、こわっ!

 




トミーくんグリフィンドール適正ないとかそれマジ?
マジです。

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