激おこぷんぷんトミー・ポッターくん   作:ぼんびー

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毎食パスタ食べても飽きないので初投稿です。
だいたいエマ・ワトソンのせい。


10:ハロウィン1~11:ハロウィン2

10 ハロウィン1

 

もう無理。一歩も動けない。寝たい。そんな体の叫びを無視して机に向かい、スネイプ先生がどっさりと出してくれやがりました課題に向き合っていますが僕は元気です。時が流れるのは早いもので、入学から約二ヶ月が経ち、季節は秋の終わりに差し掛かるハロウィンシーズンになりました。

 

いやクィディッチの練習がつらいのなんの。寒空を生身で飛ぶスポーツがきつくないわけがないし、スリザリンチームは強豪だから練習めっちゃきつい。しかもいかつい先輩がたはめちゃくちゃにシゴいてくる。才能があると褒めてくれるのはうれしいが、期待を練習量に変換しないでほしい。僕は黙々と練習を行う壊れたマシーンみたいになっちまうよ。

 

そんなむさ苦しいチームやキツい練習から少しでも現実逃避するためにも、僕はドリーを構いたおす。タオルや水分の準備からマッサージから荷物持ちまでなんでもござい、いまなら励まし応援愚痴聞き係のサービスまでつけちゃうぞ。媚びポイントを見逃す舎弟に未来はないからね! それに過酷な体験をともにすると距離が縮まるって聞きましたよ! ちがうこれは下心じゃないよグヘヘ…。ノーカウント、ノーカウントだ! きっと神様だって許してくれる!

 

ところがどっこい、神が許してもアーニャが許さなかった。僕がドリーを構いたおすせいで、アーニャはとてもおこなのだ。”なぜ私じゃなくそんな奴の世話をやくのか理解できないし許せない。すきあらば拉致してグリフィンドールの制服を着せてやる”と顔に書いてある。ふふ、愛が重いわ…。

 

ああ、いとしいアーニャ。世界で一番愛している我が姉よ! 僕がアーニャと仲良くしたくないわけ無いじゃないか、叶うなら一秒だって離れたくないとも! うん、ちょっと誇張したわ。アーニャと仲良くするとスリザリンから本格的にハブられるから出来ないだけなんだよう。ごめんよう。

 

考えてみてほしい。怨敵グリフィンドールの超人気者アーニー・ポッターは公然とスリザリンを罵倒し、純血の名家ドリー・マルフォイにたて突いている。閉鎖的でプライドが高いスリザリン生徒達にとって、アーニャはこれ以上ない明確な敵対者だ。そして自分たちの中にその親族がいるとなれば? もしそいつがスリザリンにたてつきそうな動きをしたら? そう、村八分からの私刑コースである。だからこそ叫ばなければならない。 

 

ぼくわるいポッターじゃないでぇーす! 純血主義バンザイ! スリザリンバンザイ! 汚れた血とかほんとマジあり得ないっすよねー! あーっドリー・マルフォイ様は今日もお美しい! 靴をおなめいたします! 何見てんだよ僕の飼い主は名家マルフォイの一人娘だぞオラァ! 控えろオラァ!  

 

…とまあこんなふうにイキって身を守るしかないのだ。 身分と派閥は貴族社会において大正義だってそれ一番言われてるから。後ろ盾なしに一人でいるとか危険すぎて夜も眠れないわ。眠るなら大きい傘の下だよやっぱ。そういうわけで僕はドリーにかいがいしく奉仕し、ドリーは満足げに笑い、アーニャにそれを見せつけ、アーニャはキレながら僕を奪還しにくる。おお、もう…。

 

おっと、誤解なきよう言っておくが僕は純血主義は憎いぞ。内容うんぬんでなく、こんなものに踊らされた奴らが大勢いて、そいつらのせいでアーニャが両親を失ったことが憎いのだ。まったくどいつもこいつもロクでなしだ。むなくそがわるくて吐き気がするね。アーニャが何をしたって言うんだクソったれ…閑話休題!

 

 

ようやっと課題を終わらせて僕は布団に潜り込む。疲労も相まって気分は最悪。こんなにたくさん人が居るのに、まるでひとりぼっちだね。いかんいかん、弱気になっちまってる。頑張るってきめたんだけどにゃあ…うまくはいかないよなあ。誰か側に居て欲しいなあにゃあ…。

 

そんなときに脳裏に一人の人物の影が浮かんでしまった。頭の中で悪魔が、もとい原作知識くんが甘く誘う。

 

”いま彼女は周囲に疎まれ孤独で辛いんじゃないか?”

”彼女なら君と友人になってくれるのではないか?”

”それにずっとそうしたかったんだろう?” 

”うまくやれば…うまくやれる…バレなければ…”

 

そして僕は孤独に勝てなかった。

 

 

 

 

 

11 ハロウィン2

 

ハロウィンパーティー! 大広間は大きなカボチャで飾り付け! 飛び交うイタズラに山盛りのお菓子! パンプキンジュースはもったかい? 今日はみんなが浮かれて大騒ぎだ! なんと本物の幽霊もいるぞ、首がニチャ…ってなるやつがな!

 

いやあ魔法界のハロウィンはガチもんでビビるね。僕はそういう怖い系のやつが苦手なのだ。魔法があるなら幽霊とか呪いとかそういうのがあってもおかしくないと考えると、前世で見たホラー映画の数々が現実味を帯びてしまってこう、ゾワッとなる。

 

それ故にお菓子の貯蔵は十分だ――だからイタズラしないでくださいなんでもしますから! 

 

そんな怖がりな僕とは対照的に、アーニャは全校生徒に対していたずらを仕掛けていた。道行く生徒を驚かし、ドリーの頭に1mもあるシルクハットをかぶせ、ウィズリーの双子の背中に24時間強力接着の間違った名札をはりつけたりしている。僕も顔に魔法のマジックペンで”アーニーの”と書かれた。ついでに犬耳をはやされた。ドリーが怒りながら笑うという器用なことをしていた。落とすのが大変だった。

 

アーニャのイタズラは教師にすら及ぶ。マクゴナガル先生のメガネを他人からだけ鼻眼鏡に見えるように魔法をかけ、クィレルにパンプキンパイを投げつけ(食べ物を粗末にするんじゃありません!)、スネイプ先生のロン毛を昇天ペガサスMIX盛りにする。す、すげぇ…! とうぜん怒り狂ったスネイプに追いかけ回されている。ゲラゲラ笑いながら逃げ回るアーニャ。君が楽しそうで僕は心の底から嬉しいよ!

 

そんなたのしいハロウィンパーティーであるけれど、僕はいまとてもしんどい思いをしている。なぜならば、目の前でハーミーがドリーに泣かされようとしているからだ。原因? 僕だよ(白目)。

 

ハロウィンが近づくにつれ、僕は人目を忍んでハーミーに話しかけるようになった。僕はどうしようもないくらい寂しかったし、それにハーミーが周囲から孤立していないか心配だったから…嘘でーす。本当はハーミーと他愛のない話をしたりするのが楽しかったからだ。そう、僕は楽しかったんだ! 

 

最初は戸惑っていたハーミーがだんだんと心を開いてくれるのが本当に嬉しかった! まるで友達みたいに話せるのが嬉しくてたまらない! 僕が声をかけるとさ、ハーミーが本から顔を上げてすこしはにかむんだ! それを見るのが舞い上がっちまうくらい嬉しくて、ニヤつきをこらえるのが大変なんだ!(ワオ! 僕はまるで11歳の無垢な少年みたい!)

 

”だからだよトミー、お前は浮き上がってポカしたのさ!”

 

パーティーの最中におしゃべり好きの幽霊が、僕がハーミーに会っていることをドリーに告げ口をしたのだ。ドリーはとっても不機嫌になって、僕の首根っこをひっつかんでハーミーのところに乗り込んだ。びっくりするハーミーを気にもとめず、ドリーはハーミーに身体的特徴から性格面にいたるまでたっぷりと嫌みをぶつけた。ハーミーが一番に気にしているだろう、彼女が他のグリフィンドールの同級生から疎まれていることも突きつけた。ハーミーの顔は真っ青だった。そしてドリーはトドメに言い放った。

 

「不細工な顔を見せるな、穢れた血め。あなたはホグワーツにふさわしくない」

 

ハーミーはついに泣き出してしまって、逃げるように走り去っていった。観客は誰も、近くにいたグリフィンドール生徒すら止めに入らなかった。ハーミーの背中を見送ってため息をつくと、ドリーは僕にやさしく言った。

 

「あまり勝手にふらふらしたらだめよ。立場をわきまえなさい」

 

ドリーの純粋な心配の声に、僕が感じた大きな感情は何だろう。嬉しさだろうか、恐怖だろうか。あるいは、怒りであったかもしれない。ただそれがなんであれ、僕の中に充満していた罪悪感と結びついて心の中をぐちゃぐちゃにしたのは確かだった。僕は……。

 

 

 

僕はひとことドリーに謝ると風のように走り出した。

 

 

ハーミーを追わなくてはならないと思った。他の誰でもない僕のために、僕が心を無くしてしまわないために、ハーミーに何かを言ってやらなくちゃいけないと思った。後のことを考えると足がすくんだので、やめた。

 

人並みでごったがえす廊下を走りハーミーを探す。女子トイレに入られたら手出しができないぞ思春期的に考えて。運良く中庭を走るハーミーを見つけたので、ここが二階であることも構わずに中庭へ飛び出した。…着地に失敗した。足をおさえて転げ回る僕を、ハーミーは困惑した目で見つめつつ心配してくれた。天使かよ。

 

それから僕らはあてもなく、何を話すわけでもなく並んで歩いた(追いかけてきたはいいものの、僕はなにを言うのか考えていなかったのだ。まぬけ!)。赤獅子と緑蛇の生徒が並んでいるのは珍しい光景なので、衆目をひく。しばらくそうしていると、ついにハーミーは怒った。くちびるを震わせて、目を真っ赤にして言う。

 

「ついてこないでよ、バカにするのもいい加減にして! そんなに私をあざ笑うのがたのしいの? 傷つけるためにわざわざ近づいて、裏切って! 頭でっかちの、でしゃばりの、嫌みな出っ歯女だってみんながいって…あなたもそう思ってたんでしょう! マグルのばか女をおちょくって遊んでさぞ満足したんでしょうね、最低よ! 嫌いだわ、大嫌い! こんな場所も、あなたも、みんなも!」

 

”違う!”と、思わず僕は叫んでいた。

 

”バカになんかしていない””君はかわいい””頭が良い””血なんか関係ない””近づいたのは仲良くなりたかったからだ””君はとてもがんばっていると知っている””こんなことにしてしまって、ほんとうにごめんよ”

 

他にも思ったことをいろいろと。でも、ハーミーはムキになってそれを否定する。だから僕もムキになって肯定する。

 

「嘘」

”嘘じゃない”

「嘘よ!」

”嘘じゃない!”

「やめて! 信じたくない!」

”僕だってもう嘘なんかつきたくない!”

 

なんかもうわけの分からない光景だった。それを見た誰かが叫んだ。

 

「あのトミー・ポッターがマグル女を口説いてる!」

 

僕らはぴしりと固まって、沈黙した。そして周囲を見渡して、人だかりが出来ていることに気がついて…冷や汗がドッと吹き出すのがわかった。やばい。なにがやばいって言い訳できそうにないことがやばい。そんな意図はないと否定するためにあわてて口を開く。頭の中はまっしろであった。

 

”いや、単に僕はただハーミーを慰めようと…”ちがう、否定になってない。

”もともと僕のせいで、だからその…”これもちがう! 照れ隠しか!

 

ダメだ、やばい! どう否定しても僕がハーミー大好きみたいに聞こえる! なんかハーミーももしかしたらそうなの?みたいな顔してるし! ちがっ…くないけど否定しなきゃいけないんですよ! こっちみないでなんかもう恥ずかしいから! あーっやばい顔赤い僕いまぁ!

 

あらあらうふふと生暖かい空気だけならばまだよかった。しかしことは大きくなる。犬猿の仲である二つの寮生同士が、しかも片方はマルフォイにべったりなポッターで、もう片方は学年一のマグルの優等生となれば、もう話題性はたっぷりだった。いまはハロウィンパーティー。お祭り気分。古今東西、若いやつは色恋沙汰が好きであり、ホグワーツは娯楽に飢えている。

 

”緑蛇の純血主義者トミー・ポッター、赤獅子マグル生まれの才女に公開告白? 禁じられた愛の始まりか!?”この大見出しは一瞬で、しかも誇張されながら広まって…めでたくホグワーツの秘密の仲間入りをした。そして、アーニャとドリーの耳にこの話が伝わるのもまた当然の帰結だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ホグワーツにおいて秘密とは皆が知っていることってマジ?
マジです。

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