激おこぷんぷんトミー・ポッターくん   作:ぼんびー

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世間がハロウィンだったのにカボチャのひとつも用意できなかったので初投稿です。
もうすぐ前期が終わるのにサボり続けるホモ校長にトミーがおこです。




14:アーニャの心配

14:アーニャの心配

 

ホグワーツにはハグリッドという用務員がいる。めちゃくちゃでかい大男で、割とアホだ。どのくらいアホかというと学校の敷地内で違法になるくらい危険な生物の飼育をするくらいアホだ。そしてそれを学校の裏の森にリリースして大繁殖させているくらいアホだ。つまりすごいアホだ。なぜこんなふうにアホアホ言っている相手の元に僕が転がり込んでいるかというと、校内にはとてもいれたもんじゃないからだ。

 

 

ハロウィンの晩に起きた一連の事件は、翌日に赤獅子と緑蛇に大量追加された得点が話題を呼んだこともあいまって、誇張に誇張をされて爆発的に広まった。

 

噂いわく、”さらば純血主義よ! トミー・ポッター、愛のために鎖を引きちぎる”

噂いわく、”血のつながりよりも濃い愛が、赤獅子と緑蛇の溝を飛び越えた!”

噂いわく、”トロールキング対トミー・ポッター、そして伝説へ…”

 

いやもうわけわかんねえな! そんな虚実いりまじったあらましをみんなは面白おかしく楽しんでいる。改変と誇張しながら拡散し、気がつけば学校中が僕たちのことについて噂をしているのだ! 僕とハーミーは完全に騎士とお姫様状態だった。ロミオとジュリエットだった。いやそれ僕ら死ぬじゃねーか! ハーミーに失礼すぎるわ!

 

噂のせいでスリザリンの僕への疑惑の目はグッと強まった。視線を感じるし上級生に絡まれたりもする…。"よう、騎士クン。グリフィンドールに駆け落ちでもする気か?”と、クディッチチームのキャップに言われた時は心臓が止まりかけた。全力で否定したものの、その日の特別練習はゲロが出るまで続いた。ふふ、逃げたい。

 

そんな僕を助けてくれているのは、やっぱりドリーなのである。愛想を尽かされても仕方ないのに、ドリーは僕をあっさりと許して側に置いてくれている。まあちょっと束縛は強くなったけど安い物だ。ああ、なんて飼い犬に甘いご主人様。僕の心の尻尾はもうびゅんびゅん揺れてるぞ。

 

とはいえ…歩いているだけで野次馬どもが群がってきてハーミーを連れてこようとするのはさすがにうんざりしたらしく、ほとぼりがさめるまでどっかにいってなさいとお暇をだされた。その間にドリーは根まわしをして、スリザリンでの火消しをしておいてくれるらしい。女神か…。部屋に祭壇たてとこ。

 

 

とまあそんな背景がありまして、ハグリッドの小屋にたどり着いたのだ。

 

獣臭い小屋の中でお茶をすすりながらハグリットとドラゴンの話をする。ふーん、へー、ほー。聞けば聞くほど室内で飼える動物じゃねえな! しかもそれ違法なんだろ飼う望みとか捨てとけよ! と、一応の忠告はしておくけれど、やだやだやだもんとだだをこねてきた。ええい、さては貴様アホだな! アズカバンに送られてもしらねーかんな! 

 

つーかハグリッドに良い印象はあんまりないんだよ僕は! 敵にする分には楽なんだけど味方にするには怖すぎるぞこいつ! よくダンブルドアこんな奴雇ってるな弱みでも握られてんの? 隙見せたら脅されるんだよ? まったく笑いがでてくるね!

 

とまあ内心ぼろくそに言いながら談笑をしていると、アーニャが小屋に入ってきた。僕の顔をみてビックリしているけれど、家族には自然体で接するべきだと弟は思いますよ! 昔みたいに砕けた調子で話しかけると、アーニャは笑って昔みたいに返してくれた。やっぱり僕の姉は世界一かわいい。

 

何をしに来たのか伺ってみると、なんでもハグリッドからニコラスフラメルについて聞き出そうとしているらしい。…ん? 僕が硬直しているあいだにアーニャは続ける。禁じられた廊下の先になにかが隠されていること、その番をしている三頭犬からハグリッドにあたりをつけて尋問したらポロっと名前を出したこと、なんかロクでもないもんが絡んでいる気がすることを教えてくれる。…んんん?? ちょっと待ってお姉ちゃん、弟くんそれ聞いてない…! いつのまに侵入してたんですかね。クィディッチの試合順が入れ替わってたから大丈夫だと思ったのに…! 我が姉ながら恐ろしい運命力だ。焦る。本当に焦る。

 

僕の反応から何か知っていることを察したのか、アーニャは僕に詰め寄ってきた。いとしいアーニャはグイグイくるタイプぅ…。黙秘は通用しそうになかったので、じゃんけんを仕掛けた。勝った(初手でチョキだす癖がかわってないね!)。よし、勝ったから教えなーい。なんて理屈を展開していたら、アーニャにヘッドロックをかけられた。いたいいたい! あ、すっごい力強くなってる! いっぱいご飯食べてるから? やったなアーニャ、ホグワーツバンザイ! だからそこらへんで…ギブ、ぎぶあっぷ! うわぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

二人で散々ばかをやって時間を潰したあと、校庭を歩いているとアーニャがぽつりとつぶやいた。

 

「私、トミーがわからなくなっちゃったな…」

 

なにを言っているのかが僕はわからん…というのはもちろん冗談だ。アーニャが本気で悩んでいることも、その内容も僕はきっとわかっている。生まれてからずっと一緒にいてなにをするにも共有していた片割れ。いつも自分の代わりに周りにたてついていた弟。目に入れても痛くないたった一人の家族。自分よりも幸せになって欲しい双子の弟が、ホグワーツに来てからは人が変わったみたいに過ごしてる。その変化は、アーニャから見て良いものには映っていないのだ。

 

「どうしてドリー・マルフォイなんかに媚びてへつらうのよ。四六時中ついてまわって、あいつが何か言えばなんでもうなずいて。純血主義で性格が悪くて人を傷つけるのが趣味の最低女にばかみたいにデレデレしてる。ねえ、トミーがグリフィンドールのなかでなんて呼ばれているか知ってる? ドリーの奴隷。犬畜生。ポッターの…いいや、もう言いたくない。聞くのだっていやだよ。みんながトミーのことを悪くいう。私は…私はそれがたまらなく嫌だ」

 

ああ、やっぱり。僕はアーニャをとても心配させてしまっていた。胸がずきりといたい。でも君にだけは弱音は吐けないね。僕には僕の事情があるからさ。

 

"スリザリンはちょっと…複雑だからね。ドリーの側にいるのは自分の意思だよ。感謝してるくらいさ”

「冗談言わないでよ。あんな奴につきあって好きでもない純血主義なんかあがめて…私、ホグワーツに来てからトミーが笑ってるところ見てない。いつも難しい顔ばっかりしてる。それがスリザリンのせいだって言うなら、変えてもらえるようにマクゴナガル先生に相談してみる。グリフィンドールにきたら楽しいよ、絶対」

 

息が止まるかと思った。純血主義が嫌いなことも、笑顔が作りわらいなことも、何も知らない人たちのことはだませてたんだけど、やっぱりアーニャはだませない。それに…君と過ごせたら楽しいと僕も思うよ。思ってしまう。

 

「一緒にクィディッチをやったり、昔みたいにイタズラしたりして遊ぼう。ウィーズリーの双子が面白いものをいっぱい持ってるのよ。トミーも絶対気に入ると思う。ああ、うわさのハーマイオニーもいるよ。鼻につくから無視してたけど、話してみるといい子だね。からかうと面白いよ、トミーが構うのもわかるわ。仲良くなっちゃった。三人で遊びに行こう。ほら、考えただけで楽しそうでしょう! 今からダンブルドアに一緒にお願いしに行こうよ。きっと聞いてくれる。そしたらトミーを毎日笑わせてあげられる。ドリーの側に居ちゃダメ、スリザリンなんかに居ちゃダメだよ。辛そうなトミーなんて、私見たくないよ…」

 

アーニャがつらそうに顔をゆがめて、僕の手を握る。ひどいぞアーニャ。とってもひどい仕打ちだ。ぬれて痩せそぼった犬の前にご飯と暖炉を用意して、こっちにおいでと誘うなんてあんまりだ。君にそんなことを言われたら、そんな顔をされてしまったら、ふらりと行ってしまいたくなるじゃないか。もしそんなふうに毎日をすごせたなら、思うがままに生きられたなら―――それはなんて幸福だろう。アーニャ、世界で一番いとおしい我が姉よ。僕はほんとうに君の額の傷が憎い。

 

“ごめんね”

 

僕は他になんにも応えられなくて、アーニャの額にキスをした。子供のころのおまじない。“明日はきっといい日になるよ”っていいながら、アーニャがつらいことを我慢できるように祈ったおまじない。何の根拠もなかったけど…僕はよくこうしてた。

 

「…もうすこしだけガマンする。弟を信じるのもお姉ちゃんの役目だもの。でも…もうすこしだけだよ」

 

アーニャは僕の手を痛いくらいに握った。やっぱり力が強くなったねアーニャ。僕ら、ご飯もたいしてたべれてなかったもんな。何も言えなくてごめんね、いとしいアーニャ。僕は何にも変わってないよ。君のことが大好きだよ。ずっとずっと大好きだよ。一緒にいても、離れていても、ほんとだよ。何があってもそれだけは変わらない。だって僕たち二人ぼっちの家族じゃないか。

 

 

 

ダンブルドアに手紙を書こう。いつまでもそうして見ているだけなんて、虫が良いとは思わないかい。僕にプレゼントを贈ってくれよ、あと一月もすればクリスマス。ぜんぜんいい子じゃないけれど、どうか僕にプレゼントをおくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

  




赤獅子と緑蛇のクィディッチ戦は後に回すってマジ?
マジです。

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