映画版のハーマイオニー超かわいいいってそれ一番言われてるから
16:ハーミーと家族
ホグワーツの最寄り駅! 雪がぱらぱらと降っているけれど、生徒達はみんな明るい顔だ! なぜなら今日はクリスマスイブ! 今からみんなお家に帰ってレッツパーリーィだ! ドリーがマルフォイ家主催のパーティーがあるとかで、準備のために昨日のうちに帰ってしまったものだから僕はひとり寂しくクリスマスイブの朝を迎えた。か、悲しくなんてないやい!
ま、イギリスではクリスマスは家族と過ごすのが当たり前だからねしかたないね! 恋人と過ごすなんて邪道ですよ、邪道! というわけで僕とアーニャもあのクソ叔父叔母の待つダーズリー家に帰る……わけねえだろ! ホグワーツに居残りするんだよ当たり前だよなあ…! こちとら寮暮らしやぞ舐めんな!
では何故来たのかというとハーミーの見送りをするためだ。ハロウィンの事件のあと、僕とハーミーは一度も面と向かって話せてない。その理由は廊下で僕とハーミーがすれ違うだけではやし立てる野次馬のせいであり、吹けば飛ぶような僕の立場のせいでもあった。僕は人々の好奇心とかを甘く見ていたらしい。例えばである……。
”おはようハーミー、元気?”
「おはようトミー。元気よ」
この二言だけで騒げる噂好きの女子達よ! 君たちの頭には一体何が詰まって出来てんだ? 何をどうしたらこれが二人だけの愛の睦言になるのか、僕に教えてくれ! スリザリンの生徒たちも噂なんて馬鹿らしいと言ってくれれば良いのに、どれだけ僕の信用がない…というかポッター嫌いだというのか。アーニャ…やっぱり開祖スリザリンをハブられたマヌケ呼ばわりするのはみんな怒るみたいだからやめたほうがいい僕のために。
それはさておこう。とはいえ全く接点をなくしたわけじゃない。実はハロウィンのあの夜から、僕らは校内文通をしているのだ。人目を忍んで手紙を書いて読むのはなんだか悪いことをしている気分になるね! バレると面倒だからたしかに悪いことだと言えてしまうのかもしれないが…だが、わかるだろう? 悪いことにはいつだって暗い快楽がつきものなのだ…。ようはそれでもハーミーと話したいってだけだけどね!
だってだって毎日大変なんだもん。授業やクィディッチで疲れるのにみんな周りできゃあきゃあ騒ぐんだ。アーニャとドリーは仲良くしてくれないし…赤獅子も緑蛇も放っておいてくれないしスネイプ先生は課題出しまくるしホモじじいはなんも反応返さないしクィレルは死んでくれないし! 僕だって生きてるんですよ!
そんな中でなんかもうほんと、ハーミーは癒やしなんだよ。あの真面目さがマジで癒やし。気軽に授業のことや趣味のこと、読書の感想とか…他愛のない言葉を交わすことのなんと心安らぐことか。たまに僕の心配とかしてくれるもんマジ天使だよハーミー。それにずっと気になっていた赤獅子の中でアーニャがどんな生活をしているのかを教えてくれるし。これがとってもありがたいんだ。二人が友達になってくれてほんとうに良かった。僕は心配性なのでアーニャがグリフィンドールの野蛮人どもに悪影響を受けているのじゃないかと気が気じゃなかったから。
まあ…むしろアーニャが一番グリフィンドールらしい(良くも悪くも!)と言われたときは膝から崩れ落ちそうになったが、それはいいだろう。元気に健やかに育ってくれればいい…いいのだ! やっぱもう少し加減して! ドリーと笑顔でお手々繋いでホラ……。違うそれはデスマッチ用の握手じゃない! 脳内シミュレーションですら敗北するのか…。
話がそれたが、そんなこんなで仲良くなりつつあるハーミーもクリスマス休暇はお家に帰るということで、さすがに今日ぐらいは話したいと僕はハーミーを見送りに来たわけだ。噂は大丈夫なのかって? クリスマスイブだぞ聖人様が愛を確かめろってお墨付きを出してんだ、連中だって許してくれるさ! うーん…我ながらなんというザマ。僕はすっかりハーミーにまいっちまってるなこれは。だってホラ、彼女のふわふわの栗毛が見えただけでもこんなに胸が高鳴るのだもの。
”おーいハーミー! ふわふわハーミー! はーまいっおにーぐっれんじゃぁー!”
高らかに名前を呼びながらハグを要求! ハーミーは顔を赤くして小走りでやってきて、返事代わりに僕の頬を軽くつねった。やーん、かわいい!
汽車の発車まではまだ結構な時間があったので、僕たちは人通りの少ない場所にあるベンチに腰掛けてひさしぶりにおしゃべりをする。やっぱり声が聞けると嬉しいね。人間、じかに話すのが一番だ。会話のさなかでハーミーがお礼をいってくれた。
「あのとき助けてくれてありがとう。あなたは命の恩人ね」
“んー、どういたしまして。お礼はほっぺにちゅーしたあれでもう受け取ってるよ”
「へ、変なこといわないでよ!」
あ、ほらすぐそーやって叩くぅーもーこれだからグリフィンドールは。絶対悪影響だよあそこ。ハーミーだけはそのままでいてほしいとおもいました。健気なハーミー、からかいにめげずにまだ続けます。
「あの時あなたが追いかけてきてよかった。学校やめちゃおうかなって悩んでたから」
”え、ほんとに? ハーミーが学校をやめたかった?”
「な、なに。そんなにおかしい?」
”…ちょっと意外だったかも”
ハーミーはくちびるをとがらせて黙り込んでしまった。はい、おとなしく聞きます。せきばらいひとつして、ハーミーは続ける。
「だってほんとうに辛かったの。ホグワーツからの招待が来たとき…特別になれるってすごく期待してたから、その分ね」
“ああ…だよね。わかるよ”
きっと、僕も同じだったろう。物語の世界に入り込んで自分が魔法使いになれるって聞いたら、僕も胸を躍らせて小躍りして飛び込んだだろう。何も知らない僕なら、きっと。
「”ありえない”日常にとびこんでやっていけるか不安で、必死になって勉強したけど…はじめて魔法ができたときは感動しちゃったわ。まるで物語の中の主人公だもの。私は今日から魔法使い、平凡で退屈な女の子はもうおしまい。…不安もその分強くなったけどね。だってみんなは魔法使いの子供なのよ。みんなにとっては、きっと普通のことだわ。笑われちゃうくらい下手なのかも知れない」
“ふたをあければ、君がいちばん優秀だったけどね”
僕らは笑いあった。でも、ハーミーはどこか自嘲しているように見えた。
「いざ入学してみればみんなは四苦八苦してて変な気分だったわ。私が練習通りにやるだけで先生達はすごいと褒めてくれる。鼻にかけちゃった」
“しかたないさ。素晴らしい、ミス・グレンジャーに10点! よく聞いたもの。ドリーがいっつも悔しそうに愚痴ってたよ”
「それはちょっと…ごめんなさい、うれしいかも」
“内緒にしておいてあげようじゃないか。僕は悪い子だからね”
「どこらへんが?」
“君をからかって楽しんでる”
「…アーニーと双子だってようやく実感したわ」
はっはっは。そうだろうそうだろう。
「私、アーニーに嫉妬してたわ。明るくて奔放でイタズラやケンカばっかりして…なのにみんなから人気もので。私がどれだけ頑張って勉強して得点を稼いでも、みんなは認めてくれないのにどうしてって…そんなのおかしいってひがんでた。意固地になって、口うるさくいったりもしたわ。相手にされなかったけどね」
“トロフィー室がなつかしいよ…”
「最たる例だわ…」
ハーミーはため息をこぼした。しばらく何かを考え込んで、意を決したように口を開く。
「悪口、そんな風だったせいなのかな」
“ハーミー…”
「言わせてよ、楽になりたいわ。あなたに全部押しつけちゃいたい。いろんなものと一緒に…」
“…聞くよ”
遮ってしまいたい。言わなくていいよ、頑張ったねって言ってあげたい。その気持ちを抑えつけて、先を促す。
「最初はくすくすって笑い声。私が本を読んでいるとき。授業で手を上げたとき。先生に褒められたとき。誰かがひそひそ話し合って笑うんだわ。“みろ、あの頭でっかちがまたでしゃばってる”って。パパゆずりの茶色のくせっ毛もママのすこし大きな前歯も悪口になった。卑怯だって思ったわ。ただのひがみだって思った。悔しくて聞こえないふりをしてた。ほんとは…悔しくて悲しかったから。だって…噂話をする友人すら、私にはいないんだって気がついたから。必死にごまかして耐えてたの。ドリーに突きつけられちゃったけどね」
“やっぱり、僕のせいだね”
「違うわ。遅かれ早かれ…いつか私はみなくちゃいけなかった。自分の中にあった嫌なもの。何もかも思いどおりにならなくて、誰にもわかってもらえなくて、消えてなくなってしまいたいと思わせていたものを全部。でも…やっぱりドリーはひどいと思うけど」
“あー…うん。それもごめん”
す、すいません…ドリーはほんとはいい子なんです…だいたい僕が悪いんです…。うう、ごめんなさい。
「いいのよ。あの時あなたが追いかけてきてくれたから…隣を歩いて、嫌なものを全部を受け止めて、励ましてくれたから、私はいまここにいれるわ。だから、ありがとう」
“あれは自分のためだった。ハーミーに感謝されることなんて…”
「どっちでもいいわ。頭がいいって努力を認めてくれた。かわいいって髪の色を褒めてくれた。生まれなんて関係ないって、私はがんばってるって言ってくれた。あなたの言葉が嬉しかったもの…。人って不思議よ。認めてくれる人がいるって思えると景色がまるでちがって見えるの」
ダメだ! 胸がいったぁいー! 思い返されるのは僕の浅ましさよ。一人がさみしくて近づいた。僕がきっかけで傷つけた。なのにそんな風に言われたら、よかったと言ってしまいたくなるじゃないか!
「あの後、話題になっちゃったから…いろいろ悪口も言われたわ。でもあなたが言ってくれた言葉が悪口を全部跳ね返してくれた。それですこし余裕が出来ちゃって、いろいろ噂とかあなたの言葉を思い返してしまって……急に恥ずかしくなった。だ、だってみんながはやしたてるんだもの! 意識しちゃうわ…」
ハーミーお顔が真っ赤っか! 天使か。そんなに恥ずかしがらないでハーミー、いじらしくってたまらない! ああもう、なんてかわいいんだ! 僕がこのにやけ顔を必死におさえているのがわかるかい? 分かられたら困るね、バレたくない! まさかこの僕に見栄なんて気持ちがあろうとは! アーニャのためなら人に言えないこともするよ。ドリーに命令されれば喜んで靴を舐めるよ。でもそんなところを君に見られたら、僕は恥ずかしくて息ができなくなってしまう! この気持ちに気づきたくないよ。蓋をしなくちゃいけないのに! ああ、ハーミー!
「それでひとりになりたくて女子トイレにいたの。そしたらトロールが…杖のことなんか考えられなくて…私は特別なんかじゃなかった。目をぎゅっとつぶって縮こまるしかできなかった。だから言わせて…本当に…ありがとう」
“ハーミー…”
「ここで死ぬんだって思ったわ。もう帰れないって…もうパパとママに会えないんだって思ったわ! 怖くて…怖かったのよ! あなたが来てくれなかったら! もうすこし遅かったら! 怖いのよ、あなたが受け取ってくれないと私! だからぜんぶあなたがもっていって! あの時みたいに…甘えさせてよ…」
僕はもう我慢が出来なくて、ハーミーを思わず抱きしめた。このまま君を小さく丸めて隠してしまおう。全部の怖いものから君を守ってあげたい。君の体温を雪が奪うのが許せない! 君が怖くて震えることが許せない! 僕のハーミー! 君が気にしている前歯が好きだよ! 君のくしゃくしゃなくせっ毛も! あの天文台から叫んでやりたい、僕は君が大好きだって! どこにも君を行かせないよ! ――そんなことを僕が言えたらよかったのに。
“ほら、警笛が鳴るよハーミー。君はお家に帰らなきゃ。大好きなパパとママが、どでかいケーキを用意して待っているよ。ロウソクは何本立てたらいい? 誕生日じゃないから、いらないかな”
「うん…ごめんね。ほんとうに、ありがとうトミー。汽車に行かなくちゃ、乗り遅れちゃう。…せっかく帰れるんだものね」
僕はハーミーを汽車に乗せて、言った。
“メリークリスマス、ハーミー”
「メリークリスマス、トミー」
僕は君が見えなくなるまで手を振るよ。その汽車が無事に駅にたどり着いて、君を家族の元へと送りとどけてくれるように祈りながら。キングスクロス駅では君のパパとママが手を振りながら迎えてくれる。かわいい子供の帰りを待つのはいつだって親の特権だからさ。君はお家へ帰らなきゃ。
メリークリスマス、ハーミー。どうか君が大きな屋根の下で眠れますように。
今生の別れっぽいけど普通に新学期で会うってそれマジ?
マジです。