物語の始まり
――お前は失敗作だ。
ある日、稽古の後でそう父から告げられた。
常ならば愕然とし、親の愛情を疑うべき場面だろう。
だが、少年の目に映る父親の顔は生まれてこの方見たこともない感情が浮かんでいて――
阿礼狂い。
かつては侮蔑と畏敬、双方の意を込めた。今は畏敬の念がやや強いその通称は、楓たち火継の一族が背負い続けるものだ。
幻想郷縁起を編纂する使命を持ち、人の身では危険極まりない妖怪への取材をする一族――御阿礼の子と呼ばれる子供らを守護することが彼らの役割である。
亡くなった父含め、楓の一族はこれを忠実に守ってきた。――他者の命、己の命、矜持、魂、何もかもを涼しい顔でなげうって。
そういった教育を受けるでもなく、ただ彼らが生まれ落ちた時からこれは変わらない。半人半妖の楓でさえも、それは変わらなかった。
やがて父親は遠くへ旅立ち、自分が阿礼狂いの使命を継ぐことになった。
父があらゆる意味で偉大な人間だった、と思い知ったのはすぐの話だ。それで心折れるほど
なにせ父は死に、自分は生きている。ならば一秒でも早く彼を追い越せば良い。
余計な時間など使命を受け継いだ時に尽き果てた。混ざり物の身であることなど使命の前には何の意味も成さない。
己に時間などないことを自覚した後、多くの知り合いから父親に似てきたとよく言われるようになった。
それもそのはず、少年の瞳にはかつて多くの妖怪が彼の父親に見出したそれと同種の――苛烈なまでの強い意志が片鱗をのぞかせていたのだから。
今よりも、何よりも、誰よりも。あらゆる意味で強くなり、父を超えることができた時、自分は胸を張って主の従者であると名乗れるのだ。
半人半妖――白狼天狗の血と阿礼狂いの血の双方を引いた少年、火継楓は今日も愛しい主とともに一日の始まりを告げるのであった。
「おはようございます、阿求様。本日は気持ちの良い晴天ですよ」
「ん、おはよう――お兄ちゃん」
兄、と呼ばれることにはややくすぐったいものがあると同時に、心胆にみなぎるものがあった。いや、阿礼狂いが御阿礼の子の信頼を受けて奮い立たない、ということはあり得ないのだが。
彼女から家族として頼られている、というのが楓にとって思いの外嬉しかった。一層の奮起と精進を誰にでもなく誓う程度には。
そして彼は今日も御阿礼の子に見合う側仕えになろうと己の鍛え上げているところだった。
「月がおかしい?」
「ええ、そう。心当たりはない?」
火継の庭にて朝の修練を行い、滝のような汗を流しながら楓は縁側に佇む母親に顔を向ける。
犬走椛。父と結ばれ、己を成した白狼天狗の少女。
楓から見た彼女はよく自分と父を見ていて、こちらの考えていることをなんでも見抜いてしまう強い母だった。
すでに力量では上回っている自信があるが、この人に自分は生涯勝てないだろう、とこの歳でもう悟っていた。
そんな彼女は困ったように頬に手を当てて、楓を見る。
「妖怪には月――特に満月に影響を受けるものも多くいるの。白狼天狗も多少だけど受ける。あなたはなんともない?」
「うん、特には。母上は?」
「私もそこまでは。満月の影響と言っても、せいぜいちょっと気持ちが浮かれる程度だし、私は白狼天狗になって長いもの。そういった変化にも慣れたものよ」
「じゃあなんで今になって話を?」
「――続くのよ」
続く、という椛の言葉を聞いて楓は反射的に空を見る。
父母の血の影響だろう。彼の赤い瞳は椛の持つそれと同種の、千里を見張る眼だった。
実際は多少違うのだが、ここでは割愛する。今ここで知るべき情報は彼が通常よりよく視える瞳を持っていることだけだ。
ともあれそれで空を見れば昼であろうと月を見ることができる。
しかし、楓の目に映るのは何の変哲もなく、太陽の輝きを受けていないくすんだ色の月だけだった。
「昼間に見る月は変わりないように見えるな……夜の月が?」
「ええ、そうなの。夜の月だけ、不自然に満月が続く。最初は満ち欠けを微妙に見間違えたかと思ったけど、こうも続くのはさすがにおかしい」
「……異変?」
「可能性はあるわ。私みたいに月の影響が少ない妖怪ばかりじゃないもの。影響にしたって一日程度ならともかく、続くとどうなるかはわからない」
理性のない妖怪も例外じゃないわよ、という母の言葉を受けて楓は思考を真面目なそれ――人里の守護者であり、阿求の従者であるものに切り替えていく。
「慧音先生に話してくる。確かあの人も満月の影響を受ける半獣だったはず」
「そうね。私も夜になって月が怪しかったら里内の見回りに参加するわ。霊夢ちゃんはどうする?」
「俺から伝える。異変解決はあいつに任せるつもりだし」
仮に異変だったとするなら、楓が人里を離れるわけにはいかない。
ずっと里を守り続けた父はすでに亡く、今の人里における最大戦力は間違いなく自分と、父と結ばれることで正式に人里の所属となった母の椛ぐらいなのだ。
物心ついた頃から父よりあらゆる手管を教え込まれ、阿礼狂いとして阿求の側仕えに就任してからはより一層の鍛錬を行ってきた自負はある。
妖怪としての身体能力と剣術を組み合わせれば、並大抵の存在に遅れは取らないだろう。
だが、あくまで大抵の存在には、となる。大妖怪と呼ばれる存在――父をもってして霊力を使わねば辛い相手の場合、妖怪の血が混ざって霊力が使えない楓には厳しい相手となる。
父は人間の肉体であったが故の脆弱さを抱えていたが、同時に霊力という妖怪に対して比類なき効果を発揮する力を扱うことができた。
楓は半分妖怪の血を持つため、父のような脆弱さはない。片腕が切り飛ばされようと力を集中すればものの数分で再生する。
しかし半分は妖怪である影響で霊力が使えない彼は、格上殺しの手段に欠けるのだ。
力量で上回っていれば順当に勝てるが、上回られていると順当に潰される。それが今の楓である。
無論、そうならないための隠し玉は用意してあるが――それはさておき、と楓は思考を切り上げて母親へ口を開く。
「じゃあ行ってくる。母上も無理はしないで」
「大丈夫よ。楓も頑張ってらっしゃい」
縁側から微笑んで自分を見送る母親に軽く手を振って、楓は幻想郷の空に飛び立っていくのであった。
真っ先に向かったのは慧音の寺子屋だ。彼女の話も聞いて異変であるという疑いが強まったら改めて阿求に報告し、霊夢たちにも伝えに行く予定だった。
「慧音先生、おられますか?」
「……ああ、今行くから少し待っててくれ」
格子戸の向こうから返ってきた言葉は、普段の慧音からは想像もつかないほど、憔悴したものだった。
しばらく顔を合わせていなかったが、今の異変は彼女に重大な影響を及ぼしているのかもしれない。
「……すまない、待たせたな」
「いえ……それより、大丈夫ですか?」
やがて出てきた慧音は目の下に色濃い隈を浮かべ、ここ数日ロクな睡眠が取れていないことが誰の目にもわかるような状態だった。
「ああ、これは……」
「夜の月がおかしい、という状況に関係してますか?」
「……どこで知ったかと聞くのは野暮だな。君の母親は白狼天狗。狼の属性も持ち合わせている彼女なら、気づいてもおかしくはないか」
「母から聞いて来ました。母上は多少気分が浮つく程度だそうですが、先生は?」
悲しそうに首を横に振られた。どうやら慧音は満月の影響をかなり強く受ける部類のようだ。
「……正直、この状況が続くのは私にとって苦しい。お前が調査に乗り出してくれるならありがたい話だ。上がってくれ、詳しいことを話そう」
「ありがとうございます」
楓は家の奥に向かおうと覚束ない足取りの慧音を横から支える。見るからに消耗している様子の恩師を放っておくほど冷血漢ではなかった。
慧音はやや驚いた顔をしたものの、本当に身体が辛いのか小さくすまない、とつぶやいて楓に体重を預けるのであった。
「先に言っておくが、私のこれは過労のようなものだ」
「……影響があるのは夜だけのはずです。昼間は休まれては?」
「一日、二日程度なら問題ないと思っていたんだがな。明日以降も続くようならそうするつもりだった」
これはお前の父親にも詳細は話してないが、と前置きをしてから慧音は口を開く。
「まず、私は半獣と呼ばれる妖怪の要素を半分、後天的に取り込んだ人間だ。取り込んだのは物心すらついていない頃だがね」
「存じております。半獣故に先生は人里に住まい、長らく民に学問を教えていると」
「ここまでは真面目に勉学に励めば誰でも知っている内容だな。――じゃあ問題だ。私が取り込んだ妖怪とは一体何だと思う?」
「……ハクタクではないかと。先生の歴史を隠す程度の能力の由来を考えると、歴史を作れる妖怪の性質が変化したものだと思われます」
慧音の質問に対し、楓は一瞬だけ考え込んで過去の幻想郷縁起などの知識を掘り起こして見つかった答えを話す。
その内容に慧音は相違ないと破顔した。
「その頭の回転の速さは父親譲りだな。――その通り。あいつは私のルーツにはほとんど興味を示さなかったから知らなかっただろうが、私はハクタクの性質を受け継いだ半人半獣となる」
「…………」
「半獣の……いや、ハクタクの性質を取り込んだ存在は満月の影響を受ける。今でこそ人の姿を保っているが、満月の時には髪の色が変わったり角が生えたりする」
こんな風にな、と慧音は頭に指で二本角を立てる。
自分が人間でない、ということに悲観した様子もなく実にあっけらかんとした話し方だった。
とうの昔にその手の悩みと向き合い、彼女なりの答えをすでに出しているのだろう。あるいは眼前の少年も自分と同じ半人であることも働いているかもしれなかった。
「見た目の変化以上に能力の変化、性格の変化が大きい。気分が昂揚するというか、浮ついた気持ちになるというか、とにかくじっとしているのが辛くなる」
「それで夜に休めていない、と?」
「何とか騒ぎを外に出さない程度の自制心は身につけたが、それ以上となるとな……。それに普段は歴史書の編纂等もこの時にやってしまうようにしていた。半分は妖怪である以上、一日や二日程度の徹夜なら特に消耗にもならないんだ」
しかし、それ以上の日数が続いた場合は今のように消耗が表に出てしまうほどになるのだろう。
頭痛に耐えるようにしている慧音を見て、楓は改めて口を開く。
「事情はわかりました。私はこの後阿求様に事の次第をご報告し、博麗の巫女に伝えようと思っています。あれは異変であると理解すれば動くのも早い。上手く行けば今日中に片がつくでしょう」
「ああ、だったらありがたい。自分で言うのもあれだが、半獣時の私は気が立っていてな。夜に誰かと会ったら何をするか自分でも予想がつかない」
「今夜はどうされます?」
「満月が続く影響で妖怪が凶暴化しないとも限らない。念のため里の歴史を隠して、なんとか家に引きこもらせてもらうよ。お前がいるから外の見回りは大丈夫だろう?」
慧音からの信頼を感じられる言葉に楓はうなずく。
話が終わったと判断し、楓は席を立って慧音にいたわるような視線を向けた。
「そろそろお暇いたします。今夜には解決する可能性があるとはいえ、先生もお疲れのご様子なので、夜まで休んでいてください」
「そうさせてもらおう。今回の異変は月の影響を受ける妖怪には辛い異変だ」
ふらふらと部屋の奥に戻っていく慧音を見送って、楓は再び外に出るのであった。
慧音に被害が出る、ということは人里にも被害が出ているも同然。
まだ直接的な被害が出ているわけではないが、気づくのがもう少し遅れていたら慧音も倒れていたかもしれない。
母上には感謝せねば、と楓は気づくのが遅れた己への自戒と一層の精進を課しながら、阿求に報告すべく足を早めるのであった。
「異変が起こってる?」
「はい」
稗田の家。かつて祖父が控えていた場所に今はまるで違う、けれど確かな面影のある少年が静かに頭を垂れて、自身の集めた情報を報告していた。
「夜の月が満月のままになる異変……確かに、人間である私やお兄ちゃんには気づくのが遅れるものね」
「はい。私も母上から話を聞かなければ、すぐに気づけたかはわかりません」
「それと慧音先生。もう少し探せば人里で暮らす妖怪にも影響が出ているのがわかるかもしれないけれど、お兄ちゃんは異変と判断しても良いと思ったのね?」
「慧眼の通りでございます。話したところ、慧音様は非常に憔悴しておられました。月に一度の満月程度ならば静かに過ごせる妖怪も、連日満月が続くとあらば何らかの動きがあるやもしれません」
満月を見ると気が高ぶる、というのも楓にはわからない感覚である。わからないが、慧音の様子を見る限り長時間耐え続けるのが難しいのだろうということは予測できた。
「私はこれより集めた情報を博麗の巫女に伝えるべきかと愚考いたします。阿求様の裁可をいただきたく」
「……ふふっ」
「阿求様?」
平伏して言葉を待っていると、愛しい主の口から小さな笑い声が溢れる。
何事かと頭を上げると、阿求はくすくすと笑いながら楓を見る。
「ううん、やっぱりお兄ちゃんはお祖父ちゃんとは違うなって思っただけ」
「……確かに私はまだ父上には及びませんが」
「ああ、違うの。私が思ったのは、物事への対処の仕方が違うって感じたの」
「対処の仕方?」
「うん、お祖父ちゃんは私も異変に気づく頃には、もう対策とか情報とか全部打てる手は打った後に報告に来るの。それ自体は本当にすごいことで、きっとお祖父ちゃんは私に危ないこととかしてほしくない一心だったと思うし、私もそんなお祖父ちゃんを心から尊敬してた」
でも、と言葉を切って阿求は自分のわがままな心に困りながらも自身に仕える――阿求と一緒に問題を解決しようとする少年に親愛のこもった笑顔を向けた。
「――ちょっと、蚊帳の外にいるみたいで寂しかったの。だからお兄ちゃんみたいに接してくれるのが嬉しいんだ」
「あまり意識しているつもりはなかったのですが……阿求様が喜ばれるのであれば、望外の幸福です。では、阿求様。私に命じてください」
「うん。――稗田阿求が命じます。私、慧音先生、椛姉さん、霊夢さんにもっと大勢の人たち……それと、お兄ちゃん。みんなの力で、今回の異変を乗り越えましょう!」
「――ご下命、確かに賜りました」
阿求の言葉に力強く応え、楓は異変解決に向かって歩を進めるのであった。
霊夢と楓はお互いに鍛えられた人物が同じであるため、兄妹に近い間柄だった。
歳の頃で言えば楓の方が僅かに年上であり、一応は兄とも呼ばれる関係なのだが彼女に兄と呼ばれた場合、大体ろくでもないお願いも一緒についてくるのであった。
普段はお互いに愚妹、バカ兄貴と罵り合いながら稽古をしている関係と言えばそう違いはない。腐れ縁と呼ぶのがちょうど良いだろう。
「おい、いるんだろう」
阿求の側仕えをしている時とは全く違う無愛想な楓の言葉に、少女の声が反応する。
赤い巫女服を可愛らしくアレンジした装束を纏った少女――博麗神社の主、博麗霊夢は訪ねてきた楓に澄ました顔を向けた。
「おい、なんて名前の人はいないわよ。それと素敵なお賽銭箱はあっち」
「敬う神の名前もわからない神社に入れる賽銭はない」
「ったく、バチ当たりなこと。悪い妖怪として退治してくれようかしら」
「所属は人里だ」
売り言葉に買い言葉を続けながらも、二人の間に険悪な空気はない。
大体いつもこのぐらいの言葉のやり取りは日常茶飯事であることと、二人とも幼少の頃は情け容赦ない師匠の教えを受けて励まし合っていた間柄なのだ。相手への言葉に対する許容範囲などとうの昔に覚えていた。
「で、何の用? 妖怪退治ってわけでもないでしょう」
「ああ、実は――」
楓は自分の足で得た情報を霊夢に全て隠すことなく伝えていく。
最初は半信半疑の様子だった霊夢だが、慧音の話を出したところで表情を真面目なものに切り替える。
「なるほど、もう被害は出ていると」
「明確なものではないが、続くとさすがに厳しいらしい」
「ん、わかった。夜になったら私の方でも見てみるわ」
あんたはどうなの、と目で聞かれたため、楓は首を横に振る。
「今見ても普通の月が見えるだけだ。推測だが、夜だけ普段見えている月とは違う月を出しているんじゃないか?」
「どうやって?」
「それを調べるのはそっちの仕事だ」
「役に立たないわねえ」
「異変だと認識したのが今日だからな。夜になったら俺もちょっと注意して観察する。ひょっとしたら術者もわかるかもしれない」
千里眼を所持している楓ではあるが、全く同時に幻想郷全ての情報を入手できるわけではない。
余人に理解を得られる感覚でないことを承知の上で話すならば――空に浮かぶ視点を動かして見たいものを見る、という感覚なのだ。
無論、その範囲が広いのは当然であり、人里を上空から俯瞰する程度なら博麗神社にいる今であっても造作もない。
「ま、わかったわ。夜になったら私も動いてみる」
「頼んだ」
「あんたはどうするの?」
「先生が念のため里の歴史を隠すと言っていた。俺は里の外で見張りだな」
人里で最も強いのは自分であり、守護者としての責務も父親から引き継いでいる。
里に被害を及ばせない、ないし最小限にするために動くのは楓の義務である。
「じゃあ頼んだぞ。俺もこの異変の間は寝ずの番になる。早めに終わらせてくれ」
「そう言われるとのんびりやりたくなるわね。私は昼間寝てても良いんだし」
「別に良いぞ。博麗の巫女に頼むという話は里に知らせている。お前の解決が遅れるならお前の評判に直結するだけだ」
「人の評判なんて気にしたことないわよ」
「評判の悪い巫女と神社に参拝する人は余計に減るぞ」
ぐむ、と霊夢は言葉に詰まった様子で楓を見る。
「だからさっさと解決してこい愚妹。終わったら宴会ぐらいやってやる」
「愚妹言うな。ちょっと人より生まれたのが早いからって」
むすっとした顔の霊夢に睨まれ、楓は肩をすくめて笑う。
血の繋がりこそないものの、同じ人物に鍛えられた霊夢と楓は互いを兄妹のようなものだと認識していた。
物心ついた時から稽古に明け暮れ、ひたむきに己の力を磨いていた頃からの付き合いなのだ。
なので霊夢の性格はとうの昔から熟知していた。このように素直でないのも、そのくせ餌をぶら下げるとすぐやる気になるのも予想通りだった。
そして――
「霊夢」
「なによ、まだなにかあるの?」
「頑張れよ。俺は同行できないが異変解決、応援している」
「……博麗の巫女が異変解決するのは義務だっての。別にいらないわよ」
彼女が一番喜ぶのは打算もなにもない、ただの激励の言葉であることも知っているのだ。
楓のそれを聞いた霊夢は楓に背を向けて、しかし隠しきれていない喜色を声に乗せて後ろ手にしっしっ、と帰るよう告げるのであった。
そして夕刻。大地を赤く染め上げていた夕暮れが消えて夜の帳が下りる頃。
美しく、金色に輝く満月が空に現れたのと同時、人里は幻想郷の大地から姿を隠すのであった。
後に語られる異変――永夜異変の始まりだった。
これより、阿礼狂いの英雄を継いだ少年の物語は始まっていく。
これは未だ父の背を追う少年が、一人の阿礼狂いへと至っていく物語である――
いい加減なにか書きたいと思い、浮かんだものがこれでした。はい、ゴメンナサイ(土下座)
拙作は前作でちらっと出ていた楓を主人公に据えた物語となります。異変解決にはある程度関わりますけど、ガッツリ解決に絡むかは未定。
前作未読でもわかるように説明は割とくどく入れていくつもりです。それでもわからなければ前作読んでください(100万字超えを勧める作者の屑)
書きたいように書いていくので、マイペースに進めると思います。気長に付き合っていただければ幸いです。
・妖怪の血が流れているので霊力が使えない&霊力に弱くなった
・流れる妖怪の血が割と微妙なので再生力が戦闘に使える程じゃない
・千里眼(?)所持
など半人半妖の主人公ですが、プラスマイナスで言うと多分マイナスの方が大きいです。
Q.楓ってどんな少年?
A.頑張って父親の真似をしている子供。阿礼狂いとしてもまだまだ未熟