その日、白玉楼では粉雪程度だが、雪がちらついていた。
冥界の入口に到着した楓と霊夢は白い息を吐きながら珍しそうに雪を眺める。
「珍しいわね。白玉楼で雪なんて」
「大抵は春爛漫な気候なんだがな」
白玉楼――というより冥界では地上と違い具体的な四季が存在せず、場所によって区切られるようになっている。
霊夢や楓、妖夢たちが普段から生活している場所は春の部分に該当し、他にも冬や夏、秋の季節を司った箇所がいくつか存在するようになっているのだ。
そのため楓たちの訪れる白玉楼では常春の気候になるはずだが、今日は春は春でも初春の頃、まだ肌寒い時期を表しているらしい。
「少し寒いわ。早く中に入りましょ」
「わかった。しかし雪が降る白玉楼というのもなかなか綺麗なものだな」
「それは同感。でも今の私は花より団子。食べることの方が優先度が高いわ」
「……まあ何も言うまい」
霊夢を連れてきたことが間違いだった可能性を一瞬でも考えてしまったが、今更戻れと言うこともできない。
これで何も起きなかったら妖夢や幽々子に嫌味を言われても粛々と受け入れよう。
冥界の入口を進み、粉雪舞う中でも咲き乱れる桜並木を通り抜け、白玉楼へ入ると妖夢と幽々子が二人を出迎えた。
「よく来たわね、楓。本当はあなたを誘ったのだけど」
「俺一人で独り占めして良い景色じゃない。それに誰かを誘うなとも言われてないのでな」
「ともあれお待ちしておりました。こちらへどうぞ」
幽々子と楓に話させると空気が悪くなりそうだと察したのだろう。妖夢が話を遮って奥の間へ案内する。
妖夢の後ろを歩く中、幽々子が再び口を開いて楓の近況を尋ねてくる。
「それで楓。そっちでは色々なことが起きたのでしょう? あなたばかりずるいわね」
「俺の代わりに人里の守護者でもやってみるか? 騒動には事欠かないぞ」
ちなみに楓が直接遭遇したもの以外はほぼ天子に丸投げしていた。
それを話すと幽々子はおかしそうに笑い、楽しそうだけれど、といって首を横に振る。
「それは遠慮しておくわ。これ以上の責任は背負えないもの」
「冥界がどの程度の大きさかは知らないが、一つの世界を管理するなど重責だろう」
「そうなの。おかげでゆっくり出歩くこともできやしない」
「妖夢、その辺どうなんだ」
「私が出歩けるんですから、幽々子様も問題ないですよ。単に出不精なだけです」
「明日から仕事倍ね、妖夢」
「しまったやぶ蛇!」
「いや、どう考えても自分から突っ込んだでしょ……。楓もよくこんなのと付き合ってられるわね」
「お前で慣れた」
「この世界一可愛い美少女を妹分扱いできる栄誉に浸れて光栄ってことかしら、それは?」
目の笑っていない笑みを浮かべて握りこぶしを近づけてくる霊夢をあしらいながら、妖夢に案内された部屋に行くと簡単な食事が並べられていた。
「花より団子、というわけではないですけど、こういう時はお団子でしょう。お茶はいりますか?」
「いただこう」
「美味しそうじゃない」
うへへと少女が浮かべて良い部類ではない笑みを浮かべながら霊夢がいそいそと座り、早速一本目を頬張り始める。
それが口に合ったのか、霊夢は蕩けるような笑顔になって団子を咀嚼している。
その顔を見ていると怒る気もなくなってしまう。楓と幽々子は顔を見合わせると肩をすくめ合い、互いに向かい合って腰を下ろす。
「まずは遠路はるばるよくお越しくださいました。ここ、白玉楼では常に美しく咲き誇る桜ですが、本日は粉雪が舞うということもあって、文字通りの雪桜を楽しめますわ」
「ああ。地上では見られない光景を堪能させてもらう」
「対価ではありませんが、その代わりに楓と霊夢には地上での話を聞かせてもらおうかしら。霊夢も、タダ飯を食べに来ただけでは罪悪感があるでしょう?」
「いやそんなのないけど……まあ、話すだけで良いなら安いわね。私からは最近あった異変について話そうかしら」
「俺は最近あった出来事で頼む。自分で言うのもあれだが聞いていて退屈しないことは保証しよう」
霊夢ですらお祓いした方が良いんじゃないかと他人事ながらに思うほどの日々であった。なお霊夢は楓にそれを話していないので、楓が知る由はない。
妖夢は歓談を始めた三人を穏やかな目で見た後、お茶を入れてくると言って部屋を離れていく。
妖夢を見送った後、楓と霊夢はそれぞれ直近の異変や騒動を話していくと、幽々子はその一つ一つに楽しそうに笑ってうなずいていく。
楓との文通で彼の周りであった出来事は文章の上で知っているのだが、やはり直接聞くこととは比べられないのだろう。
「――で、私が異変の元凶をぶっ飛ばしたわけ」
「とても頼もしいわね。私たちも同じようにやられたわけだけど」
「異変なんて起こす方が悪いに決まってんのよ。だから謝らないからね」
「謝罪を求めたわけではないわよ。それに今はあの桜についてもあんまり気にならなくなったし」
「あの桜、とは?」
十中八九西行妖のことだとわかっていたが、楓はあえて知らないふりをする。
幽々子の口から彼女がどの程度のことまで知っているのか理解しておきたかったのだ。
「白玉楼には決して咲かない桜があるのよ。これが咲いたらどんなに美しいのか気になって」
「それで春を集めるなんて異変を起こすんだからたまったもんじゃないわよ。咲かない桜があるなら咲きたくないんでしょう」
「そうかもしれないわね。それに異変も失敗したことだし、いつまでもあの桜に拘っていても仕方ないわ」
霊夢の皮肉も素直に受け入れ、幽々子は多少の未練こそ覗かせるものの、諦めをつけたような笑みを浮かべていた。
これなら自分の懸念は杞憂だったのかもしれない。封印の要である幽々子に封印を解くつもりがないのなら、これから先も解かれることはないだろう。
「楓はどう? その咲かない桜ってやつに興味があるのかしら」
「……霊夢と同意見だ。咲かないのなら、それ相応の理由があるのだろう。あるいは咲くと不味い何かでもあるのか」
「そんなものがあるのかしら。私が亡霊として目覚めた時から咲いた姿を見たことないし、かれこれ千年近くは咲いてないのよねえ……」
「木が枯れてないのが不思議な話ね……。死んでんじゃないの?」
「そういった様子はないのよ。確かに妖夢が集めた春を注いだら花びらもいくつか付けてたし」
「不思議な桜もあったもんね」
さほど興味がないのか、霊夢は適当な相槌を打って団子を頬張るのに夢中のようだ。
楓もこれ以上この話を続けて、幽々子がまた興味を持っても困るので話を切り上げることにした。
「今は咲かない桜より咲いている桜の方が良い。少し縁側に出ても?」
「案内しますわ。妖夢のお茶ももう少しかかるでしょうし」
幽々子が先立って案内をしてくれるため、楓もその後ろについていく。
部屋を出る直前に霊夢の方を見るも、彼女は団子を食べることの方が重要らしい。楓が出ていくことには一瞥すら寄越さなかった。
縁側をゆるりと歩きながら今度は楓が口を開き、幽々子の近況を尋ねる。
「そちらの方は何かなかったのか? 手紙からは俺の話をねだるばかりだった」
「何もないから退屈しのぎを催促していたのよ。冥界の管理も千年やれば流れ作業みたいなもの」
「天魔はそれに文句も言わずこなしている様子だが」
「あれは彼がおかしいのよ。役割の変化もなく、かつ全ての天狗を背負って立つなんて重責をなんてことのない顔で背負い続けられる。彼の精神は紫に匹敵するでしょうね」
「やはり天魔とは知り合いだったのか」
「私、天魔、紫は古い顔馴染みよ。彼の方から冥界に来ることは滅多にないけれど」
友人と言わない辺り、彼らの関係性は独特なものなのだと察することができた。
やはり時間、それも千年などという楓には想像もできない途方も無い時間を過ごすと、単なる友人とは言えない何かが生まれるのだろうと思う。
などとまだ若い楓が幽々子の死生観や時間に対する考えなどに触れながら話していると、不意にぷつり、と肉に何かを刺したような音が耳に届く。
「――」
「あ、ら?」
音の発生源は幽々子で――彼女の胸から桜の枝が生えているのが原因だ。
当の本人である幽々子も二の句が継げないらしく、咄嗟に楓が腕を伸ばして枝を取り除こうとする。
「っ、ダメっ!!」
しかしそれは幽々子の思いの外強い拒絶によって防がれ、楓は何事かわからないまま口を開く。
「――妖夢と霊夢! こっちに来てくれ!!」
「この枝に触っちゃダメ!! 触れたものを問答無用で死なせるわよ、これ!」
幽々子の言葉を受けて即座に枝の性質を理解した楓が抜刀。左の刀に風をまとわせて幽々子の肌に傷を付けることなく枝だけを斬り落とす。
術でまとわせた風が霧散するのを横目に、術を使用しても一度きりが限界でそれ以上は術式が死んでしまうことに舌打ちしながら、幽々子の状態を確認する。
「何が起きてる。これは一体なんだ?」
「私にもわからないわ。ただ、さっきの枝は私の能力に近い――いいえ、私の死を操る程度の能力以上の出力がある死をまとっていたわ――あぁっ!」
幽々子の言葉が途切れ、苦悶の表情を浮かべる幽々子の身体から今度は複数の枝が発生する。
一太刀で全部斬り落とすことは不可能と判断した楓は一度距離を取る。
するとそのタイミングで異常事態だと察した妖夢と霊夢が縁側に飛び出してきた。
霊夢は楓と幽々子を一瞥しておおよその状況を察したのか楓の側に飛んでくる。
「幽々子様!?」
「――触れるな妖夢! その枝は触れたものを殺す概念に近い!!」
楓の言葉よりも一瞬早く腕を伸ばしていた妖夢の手が枝に触れてしまうが、妖夢もそれで触れているものがどんなものか察したらしい。
弾かれたように腕を引いて慌てて楓の方へ近寄ってくる。
その顔はほんの一瞬枝に触れてしまったことによる憔悴と冷や汗が浮かんでいた。
「――危なかった! 私が半人半霊でなかったら間違いなく死んでました!! 楓、あれは一体何!?」
「半霊に救われたな。俺だったら触れた時点で終わる」
あるいは触れた部分を斬り落とせば助かる可能性も僅かに見える、といった程度だろう。
「それで? 幽々子の状態はどうなってるのよ。どう見ても放置したら丸く収まるような感じじゃないけど」
既に意識がないのだろう。眠るように目を閉じた幽々子の全身から桜の枝が何かを求めるように縦横無尽に伸び、さながら繭の如く彼女の身体を覆っていく。
「推測なら言えるが、より確実に知っている相手がいる。霊夢、スキマを呼べ」
「――なるほど」
霊夢が一瞬だけ目を閉じると、冥界にいる楓たちにすらわかるほど明確に博麗結界に穴が開く。
これ以上開いたら結界そのものが壊れるのではないか。そんな危惧すら脳裏をよぎるが、霊夢は涼しい顔で結界を緩め続ける。
そして楓にも妖夢にもわかる、越えてはならない一線を越える瞬間、スキマが空間に開いて強引に結界を修復する。
スキマの中から現れたのは眠そうに目をこすりながらも、明らかに気分を害しているのがわかる紫だった。
「ちょっと霊夢。これはさすがに看過できない――ここ、冥界?」
「俺が呼ぶよう頼んだ。説教なら後で受ける。それより幽々子のあの姿に思い当たる節はないか」
楓が指差した方向には幽々子の姿はなく、既に死そのものと化した枝に覆われて見えなくなってしまったものだった。
だが、それを見て全てを理解したのだろう。紫の目が大きく見開かれ、楓と霊夢を同時に見やる。
「――そう。事態は把握しました」
「だったら説明を――来るわよ!!」
霊夢の叫びと同時、獲物を求めたのか生者を求めたのか、無秩序に伸びていた枝が鋭くこちらに迫ってくる。
楓たちはその場を飛び退いて攻撃を回避し、追撃は楓が炎をまとった一閃で強引に薙ぎ払う。
赤々と輝く炎でさえも、枝に触れた瞬間黒ずんで消えてしまうことに楓は舌打ちを隠さない。
「炎すら通さないか。熱は残るから嫌がらせになるのだけが救いか」
「私の札も針も似たようなものよ。で、わざわざ呼んだスキマの見立てはどうなの?」
「……細かな経緯は省きますが、かつて幽々子の死体を媒体にして封印した妖怪桜の封印が解けかかっている。人の死を吸い取り、人に死を撒き散らした西行妖。あのまま放っておいたら幽々子を糧にして無差別に死を撒き散らす桜が復活するわ。あれに魅入られたら私ですら死んでしまう」
「対策は? あんたのことだから何かあるでしょう」
「…………」
霊夢の言葉に紫が返したのは無言だった。
苛立たしげに爪を噛み、額に焦りの汗を浮かべて必死に考えている様子を見せられ、霊夢は覚悟を決める時が来たかと肩をすくめる。
「楓、今すぐ思いつく対策はない?」
「……一つ、確実に効果のある対策はある」
それを口にして実行しないということは、紫と同じなのだろうと霊夢は気楽な調子で言い放った。
「別に私を犠牲にして丸く収まるならそれでも良いわよ。あれがヤバい代物だってのはわかるつもりだし、必要なら幻想郷のために死ねっていう役目にも納得してる」
「…………っ!」
他の手が浮かばないのだろう。紫の噛んだ爪先から血が流れるが、言葉は紡がれなかった。
しかし楓は最悪の手段だとわかっているからか、とりあえず思いついたことを口走っていく。
「お前が死んで封印の要になるのは最終手段だ。妖夢、何かないか?」
「え? ええっと……あの桜を斬ってしまうというのは?」
「あんたと楓に可能なの?」
「集中すれば一太刀は必ず!」
「刀を使い捨てる形になるが、おそらくは」
「で、それをやって全てが丸く収まる未来は見える?」
霊夢の言葉に返せるものがなかった。
それに先ほど、枝だけであれば楓が斬り落としていた。にも関わらず幽々子の身体から新しいのが生えてきている以上、単に目につく枝を全て斬り落としても事態は解決しないのだろう。
「……おそらくあの枝が襲いかかってくるのは、亡霊の幽々子だけでは力が足りていないからだと推測する」
「なるほど、続けて」
「であれば俺たちが注意を引きつつ、これ以上の力を吸わせないようにすれば幽々子は確実に消えるが、妖怪桜が咲く事態は避けられるのでは?」
「……許可できないわ。万に一つ幽々子だけで力が足りた場合、桜が満開になってしまったら時間稼ぎに徹していた私たちもお陀仏よ」
「もう一度亡霊の幽々子の身体で再封印は?」
「既に生前の幽々子の死体を使って封印しているの。ここから亡霊を使って封印を上書きした場合、肉体の在処を知ってしまった亡霊共々消えてしまう」
本当に八方塞がりか。
紫の顔からは焦りが消え、覚悟を決めた境界の賢者の顔になっていた。
博麗霊夢を失うのは確かに痛い。幻想郷の損失と言っても過言ではない。
しかし――西行妖が満開になったら幻想郷そのものが滅びかねない。無差別に死を振りまき、死に惹き込む妖怪桜に人妖の区別なく魅入られて死んでしまう。
どちらを選んでも痛みの伴う選択肢。だが、同じ痛みがあるのなら先に続く道を選ぶ。
一瞬の瞑目の後、紫はその決断を下し――
「博麗霊夢。幻想郷の賢者、八雲紫が命じ――」
「――待った。妖怪桜と言ったな?」
紫の言葉を遮ったのは楓だった。
彼は何かを確かめるように紫に視線を向けてきたため、紫は意図が読めないながらうなずく。
「え、ええ。もはや死そのものの概念に成り果てるほどの想念を吸い取った存在だけど、妖怪桜なのは確かよ」
「だったら――俺の目が視ているこいつは妖怪桜の魂だな?」
瞳の色が変わっていた。母親譲りの紅玉の瞳から、彼本来の瞳である碧玉の瞳に。
楓の言いたいことがわかった紫も目を見開く。魂を束縛し、一つの形に歪める魔眼。言い換えれば――死の概念を内包する魂すら捻じ曲げて在り様を変えることができる。
「霊夢、作戦がある。上手く行けば幽々子もお前も死なずに済む。八方丸く収まる……かは保証しないが概ね何とかなる」
「――乗った! あんたなら何かあると思って待ってたわよ!!」
「やることは単純明快! ――あの妖怪桜を俺の魔眼で阿礼狂いに堕とす!! 後は幽々子を引っ張り出せば俺たちの勝ちだ!!」
妖夢は楓の魔眼について知らなかったためぎょっとした顔になるが、すぐに落ち着いた表情に戻って幽々子を取り込む繭を睨んでいた。
ことこの場において大事なのは動揺ではなく、自分の剣であると半人前ながらに悟ったのだ。
「問題点は!?」
「魂を捻じ曲げられるのって相当苦しいらしいから激しい抵抗が予想される」
「他人事みたいに言うな張本人!」
そう言われても自分の魔眼を自分にかけることはできないのだ。他人の反応から推測するしかない。
「あと俺も妖怪桜の阿礼狂い化とか初めてなので、魔眼に注力するかもしれん。そうなったら守ってくれ」
「妖夢、任せた!」
「任されました! というか一番気になっているのは本当にそんなことできるんですか!? できませんでしたじゃ済まされませんよ!」
「――できる。どれだけ強力な存在でも、魂が剥き出しなら俺の魔眼で阿礼狂いに変えられる」
妖怪ならば問答無用で変えられる魔眼は伊達ではなかった。
西行妖という死の概念と化した妖怪桜でさえ、彼の魔眼は阿礼狂いに変えられる存在として認識する。
「残った問題は――幽々子の肉体から生えているので、下手すると彼女まで阿礼狂いに成りかねないところか。まあこれは紫と霊夢で彼女の身体を何とか引っ張り出してくれ」
「簡単に言うわね! でも乗った! 多分私と紫にしかできないだろうし!」
「……楓、仮にその作戦が成功したとしましょう。その場合、西行妖はどうなるの?」
「冥界に御阿礼の子が来ることはない。あの方は死後、転生のために是非曲直庁で閻魔大王の手伝いをするはずだ。ならばあの方が冥界に来る時があってもそれは――」
「……あの子が使命を終えたその時」
少なく見積もっても千年以上は先の話になるだろう。
阿礼狂いと化した後も死の概念を持ち続けるなら、稼いだ時間で別の方法を見つければ良かった。
「そういうことだ。その時だけ咲き誇る妖怪桜となるだろうさ。後はその時までに別の方法を施せば良い」
「なるほど。――なら行きなさい、魔眼持つ阿礼狂い! あなたの魔眼が誰かを助けることもあるのだと証明してみなさいな!!」
「承った。幽々子を取り戻すぞ」
楓の短い、しかし気迫のこもった言葉と同時に西行妖が狂ったように暴れ出す。楓の魔眼が妖怪桜の魂を絡め取り、不可視の鎖で縛り始めたのだ。
触れた時点で死んでしまう枝を前に相対するのは霊夢、妖夢の二人。紫は楓の隣で援護に回る腹積もりらしい。
「一回でも当たったらゲームオーバー。なかなかシビアなルールだけど――私に当てられると思ったら大間違いよ!!」
「何が何だかまだ飲み込めてませんが、楓の策に従えば幽々子様は助かると思いました。――ならば私に迷う道理などない!」
霊夢、妖夢はそれぞれ啖呵を切り、西行妖の操る枝葉を前に飛び込んでいくのであった。
Q.そもそもなんで西行妖が暴走を始めたの?
A.人の想念(死も含まれる)を吸い取って咲き誇る妖怪桜を前に、呪い殺されてないとおかしいような邪な思念をまといまくってる少年が来たらそら暴走するよ()
なので実は楓が来たから事件が起こっています。なぁに、ちゃんと解決すればプラマイゼロよ()