戦姫絶唱シンフォギア 鳳凰麗舞   作:ac!d

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烈風拳要素はありません。


第一話 鳳月凰譜と風鳴翼

AM5:30

鳳月 凰譜はその日もいつもと変わらない朝を迎える。

道着に着替え、道場の床を拭き、精神を研ぎ澄ませる。

その心に映し出すは水面。

波一つない静かな水面に、己で一つの波を起こす。

 

「破ッ!」

 

大きく踏み込み左の掌底を繰り出す。

仮想の敵をイメージし、流れるように次の行動へ、さらに次へと身体を動かす。

 

踵落とし

掌底

裏拳

手刀

足払い

回し蹴り

下段蹴り

返すその足で蹴り飛ばす

 

一通り身体を動かした彼女はそこで一度動きを止める。

幾度となく繰り返されてきたその鍛錬に、呼吸は一切乱れていない。

 

吐き出す息、構える身体。

その脳裏には父から教わった最大にして最強の技が焼き付いている。

胸の前で交差したその両の腕、吸った息を身体へ取り込み左足を前へと踏み出す。

 

先ず左肩───!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

AM7:30

鍛錬を済ませ制服へ着替え家を出る。

今日もいつもと変わりのない一日が始まる。

───はずだった。

 

認定特異災害と呼ばれる存在、ノイズ

人なる身が触れればたちまち炭化してしまう存在と、彼女は遭遇してしまう。

幸いな事にまだ距離がある上に曲がり角なのも相まってノイズは凰譜には気付いてはいないようだ。

凰譜の知る限りノイズへの対策はただ一つ。それも凰譜ではできない方法だった。

それ故に彼女の選択は迅速だった。

通学用のカバンから電話を取り出し、この状況を打開してくれる唯一の存在へと連絡を入れる。

無論、音で気付かれてはマズいので小声で電話相手へと手短に事態を説明する。

 

「わかった、直ちに現場に翼君を向かわせよう!」

「ありがと、じゃあ切るね」

 

あまり長く話してノイズに気付かれたりしたらまずい。冷静な判断が出来る程度には凰譜はまだ平常運転だった。

ノイズと遭遇して平常運転でいられる女子高生というのも珍しいのだが、それは日ごろの鍛錬のおかげなのだろう。

 

十分もしないうちにバイクに乗った青い髪の女性が現れ、唱い、ノイズを切り伏せた。

全てのノイズが消失した後、陰からひょっこりと顔を出す凰譜。

ノイズを切り伏せた女性の無事を確認し、その身に纏うモノを解除したのを見ると穏やかな笑みを浮かべて話しかける。

 

 

「ありがと、助かったよ翼」

「私は防人として当然の──」

「固い、固いよ翼」

 

凰譜はムスっとした顔で翼と呼ばれた女性に歩み寄る。

「私達は友達なんだからもっとフランクでいいんんだよ?ほらスマーイル♪」

翼の口元に手を持っていき強引に口角を挙げる。

「や、やめないか凰譜!」

「ちゃんと話してくれるまでやめません!だいたいだよ?ライブでのじk「やめて!」」

 

明確な拒絶がそこにはあった。

先日のツヴァイウイングのライブ中に発生したノイズとの戦いで、喪ったモノ。

それが翼の心に影を落としているのは凰譜の目で見て明らかだった。

翼にとってそこは今一番触れてほしくない部分なのだろう。

しかし、それでも凰譜は触れるのをやめない。

何故ならば───

 

「やめません!!そもそもあの日の出来事を自分のせいだと、自分一人で背負おうとするお馬鹿さんだから私はここまで気にしてるんだよ?わかってる?」

ビクリと翼の体が震える。

「反省するのも後悔するのも止めないけど!それで自分を責めないの。それを一人で背負い込まないの。わかった?」

「し、しかし私には」

「いい加減にしなさい!私が見ればすぐわかるんだよ、無理な特訓!ロクな睡眠もとらない!身体が悲鳴上げてるのが丸わかりだよ!それが祟って死んだりしてみなさいな!それこそ命を賭けたヒトが報われないよ!」

「それでも私は!」

 

プツッ。と

何かの切れる音がした。

 

それは堪忍袋の尾?それとも血管?はたまた両方?

どれかは定かではないが、次の瞬間に笑顔の凰譜によってもたらされた鈍い音と共に翼の意識は刈り取られていた。

 

「思い込み過ぎるのは体に毒だよ、翼」

 

───私はあなたの友達だから。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

翌日

AM2:00

「ここは...?」

どこかで見たことのある天井、懐かしい匂いにだんだんと意識が覚醒していく。

「ッ!」

意識が覚醒すると同時に腹部に受けたダメージも蘇ってくる。

「また私は...凰譜を怒らせてしまったのだな...」

 

翼は過去に三度ほど凰譜を怒らせてしまったことがある。

どれも決まって翼が暴走気味だった時に、だ。

必ず意識を失わされており、凰譜の力には毎度驚かされる。

冷静になって振り返ってみれば凰譜が怒るのも頷けるもので、自分の未熟さを思い知らされる出来事だ。

 

「また、私はきっと助けられたのだな...」

そう独り言ちて起き上がろうと身体を動かすと、何かが手にあたる感触があった。

翼はその正体を確認するとフッと微笑む。

 

「ありがとう、凰譜」

 

すぐ傍で、心配をして着替えもせずに見ているうちに、恐らく寝落ちしてしまった凰譜の手を握り、自分の意志で、翼は夢の世界へともう一度羽ばたいていった。

 

~~~~~~~~~~~

 

第一話

鳳月凰譜と風鳴翼

 

鳳月凰譜は夢を見る。

彼女にとって憧れたセカイ

それは玉虫色の夢?

いいや違う、それは100人が見れば90人は修羅の道と答えるだろう。

なぜならそれは

ヒトならざる存在と対峙する己と親友なのだから。

 

「はぁ、またこの夢ですか...」

目を覚ました凰譜は慣れた事だとため息をつく。

ここしばらく毎晩のようにあの夢を見るので、ため息も出るというものだ。

「...まあ実際、私もあのように戦えたのなら翼の助けになれるのでしょうね」

そう、あれはあくまで夢なのだ。

実際の所凰譜はノイズとは戦えない。戦う術を持っていない。

隣を見れば安らかに眠る親友の姿

「まったく...昔から頑固な所は変らないんですから...」

凰譜は身じろぎ一つしない翼の耳元にそっと口を近づけ囁いた。

 

「起きてるの、わかってますよ」

 

AM5:00 今日の鳳月亭は翼の声にならない悲鳴とともに始まるのであった

 

~~

 

朝の道場の空気は凛としていて心地良さすら感じるものだ。

決してこの心地良さは翼を虐めた快感ではないと言っておこう。

 

「まったく...凰譜は何故こうも毎度毎度...」

「そろそろ機嫌を直してくださいよ翼、久しぶりの朝稽古なんですから」

はぁとため息をつく翼

「仕方ない、続きは床の間で聞かせてもらおう...」

「ヤダ、翼ってばダイタン♪」

 

既に軽く体を動かし、互いの身体の準備は出来ている。

向かい合う凰譜と翼

構えるは拳と木刀

先程までの和んだ雰囲気は霧散し、満ちるのはただ闘志のみ。

 

永遠とも一瞬とも形容しがたい張り詰めた時間の後、先に動き出したのは翼だった

前に一歩踏み込み鋭い突きを繰り出す。

壱撃 弐撃 参撃と続けざまに繰り出される必殺の突きはまさに豪雨と言っても差し支えないだろう。

それに合わせ凰譜は一突き一突きを縫うように上半身を反らして躱していく。

凰譜の接近に合わせて翼も前へと踏み込み木刀の柄で───

 

「相変わらず良い突き!」

「受け止めた女が何を言う...」

 

───突いた筈の柄は凰譜の両の手によって受け止められていた。

凰譜に攻撃受け止められるとはどういうことか。

それは即ち攻守の入れ替えを意味する。

掴んだ柄を思い切り引き寄せ翼の体勢を崩す。振り向く暇を与えずに先ずはその背に一撃。

翼はその衝撃を殺そうとせずにそのまま前へと転がり追撃を逃れる。

「逃がさないって!」

が、その行動を予測していた凰譜は既に次の動きを始めていた。

前へと低く飛び右の掌底を左に薙ぎ払う。飛燕失脚と呼ばれる鳳月流古武術の技だ。

しかし翼も素早く起き上がりその一撃を木刀で受け止める。

「雷光!」

右足を浮かせて前に滑るように移動しながらの回し蹴りを放つ。

雷光回し蹴りと呼ばれるこの技も木刀で受け止められる。が、気にせず脚をそのまま振りぬく。

 

お互いに体の内側が沸々と熱くなっていくのを感じる。

 

もっと

 

身体と木刀がぶつかる度に身体は一層熱を帯びる。

 

もっとだ

 

攻める度、防ぐ度、自分の中の何かが溢れていくのをしっかりと理解する。

 

ありったけを!

 

「そこまで!!」

 

その声で身体を支配していた熱は消え去る。

声のした方へ振り向くと赤いシャツを着た男性が立っている。

 

「司令」

「弦十郎さん」

「全く、昨日は突然凰譜君から「翼君を休ませる」と連絡が来て、迎えに行けば朝から賑やかだと思えば...」

 

この男性の名は風鳴弦十郎、風鳴翼の叔父にあたる人で、特異災害対策機動部二課の司令官である。

 

「だって翼ボロボロのボロ雑巾だったんですよ?普通止めませんか?力づくになっちゃったとしても」

「まぁ...それは何だ...助かっているのだが...」

「翼の大丈夫なんて一夜漬けで挑んだテストの大丈夫と同じ位しか期待できないんですから弦十郎さんももう少し気にしてあげてください!」

「グッ...」

 

酷い言われようなのだが実際そうなのだろうから翼は何も言い返せない。

最も、一夜漬けでテストに挑んだことなどなかったが。

 

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