ソードアート・オンライン アリシゼーション Imagenary Fabricte ~光を照らす執行者〜 作:熊0803
ここまでラストになると、言うこともなくなってきますね。
今回も楽しんでいただけると嬉しいです。
「……なあに? 今の。せっかく良いところだったのに」
最高の瞬間に水を差され、アドミニストレータは怪訝な顔をする。
それはキリト達も同じことであり、切り離されたこの空間に響いた異音に周囲を見回した。
やはり窓の向こうには宇宙のような暗闇が広がるばかりで、何もありはしない。
──ィイン
「っ──?」
その時。キリトの耳に甲高い音が聞こえてくる。
どこかで聞き覚えのあるそれに、はてと心の中で首を傾げた。
──ィイン
「く……」
同じものが、ユージオにも聞こえた。
聞いていると、何か心が透明になっていくような、清涼な音色。
──ィイン
「これは……」
当然のように、アリスもまた眉をひそめる。
そこでようやく、音が規則的かつ断続的に響いているのだと三人は理解した。
これは、一体何なのだろうか。
アドミニストレータの攻撃、あるいはカーディナルが密かに自分達に何かを施しているのか。
そう思い、賢者と女神の顔をそれぞれ見比べても、彼女達すら不思議そうにするだけ。
誰もが言いようのない不安と疑問を抱く中で、その音は徐々に大きくなっていく。
それに伴い間隔も短くなっていくと、まるで音波攻撃のようになってキリト達は眉根を寄せた。
ついには部屋全体に木霊するような規模に発展すると、音がいくつも折り重なり、思わず耳をふさぐ。
(いったい何なんだこれは! まるで、音波を利用したソナーみたいな……っ!)
何か止める手立てはないのかと、キリトが考えようとした時。
それまで一度も余裕を崩すことのなかったアドミニストレータが、弾かれたように顔を上げた。
────イイィイイイイイ!!
そして、ついに。
共振が最高潮に達したその瞬間──アドミニストレータの眼前の空間が音を立てて壊れた。
それは彼女が発動した、この部屋の術式にも似た、硝子を粉砕するような激しい音。
生み出された、人一人が余裕で通れそうな純白の空間の歪みから──同じ色の殺意が飛んできた。
「ッ────!?」
歪みに同化するようなその剣を、かろうじて視認した彼女は瞬時に回避する。
即座に背後に引いたにも関わらず、生きているように蠢いたそれは軌道を変えて彼女の頬を掠めた。
直後、完璧な美貌に一筋の赤い線が生まれる。彼女はそれをグリンと瞳を回して睨んだ。
しかし、それに怒りの声を上げるよりも早く、十字に振るわれた刃によって歪みが切り裂かれた。
更にけたたましい音で、歪みが大幅にその規模を広げる。
ソードゴーレムすら余裕で入れるだろうそこに、ゆっくりと刃が引いていき、中へ消えた。
「キリト、あれは!?」
「俺も知るか! 何だ一体……!?」
「今のは剣……いいえ、何かの尾の先端……?」
口々に疑問を叫ぶ三人。
突然の異変に理解が追いつかず、狼狽える彼らの前で──カーディナルが食い入るように歪みを見た。
おおよそ人のものではない、機械的な輝きを仄かに放つその瞳が、歪みを解析する。
「馬鹿な……」
「カーディナル?」
「完全にアドレスを切り離されたこの空間に、無理やりパスを繋げたじゃと? ありえぬ。そんな権限を、我々以外の誰が……!」
焦りと驚きの入り混じった彼女の台詞に、今度はキリトが驚いた。
まるで、カーディナルシステムを取り込んだクィネラと、リセリスと呼ばれていた彼女と同等の権限を有する存在がいるかのような口ぶりだ。
確かにありえない。メインプロセスとサブプロセスがここに揃っている以上、他に空間を操作できるような神の如き者はいないはずである。
一瞬、この世界のメンタルヘルスケアAIたるスワロウを思い浮かべた。
だが、彼であるならばカーディナルがここまで狼狽し、あそこでアドミニストレータが歪みを不審げに睨んでいる説明がつかない。
そんな彼らに答えを示すように、歪みに変化が起こった。
内側から、刃とは違うものが出現する。
それは白い鱗と、水晶のような4本の鉤爪を持った何かの生物の腕だった。
息を呑むキリト達の前でその腕が歪みの縁を掴み取り、更にもう一方の腕が現れる。
両の腕を用いて、出口である歪みを捉えたそれは、ゆっくりと全貌を現した。
「な……!」
その姿に、キリトが漏れ出たように声を上げる。
最初に現れたのは、尖った鼻先。腕と同じく硬質な白鱗に包まれた、細長い口が露わになる。
鋭い牙の並ぶそれの次には、アリスの鎧よりも鮮烈な黄金の、青い光彩を湛えた瞳が出現した。
両目の上には、四本で二対の雄々しい角が後ろへ向けて伸びている。その頭に繋がるのは太くて長い首だ。
それからはあっさりとしたもので、一気に白と淡い青色の鱗に包まれた流麗な胴体や翼が現出していった。
最後に、歪みに後ろの右脚をかけて。ソレは己を引っ張り出す。
遠目にも巨大な体が、真っ直ぐに赤絨毯の敷き詰められた床へと落ちる。
見た目に見合う重量で振動を発生させ、キリト達はよろめいた。
落下の衝撃を十分に緩和すると、硬直していた、胴体より長い尻尾がゆらりと揺らめく。
そして。キリト達四人と、ソードゴーレムを従えたアドミニストレータの間に立ったソレは。
グルルルルル……
ゆっくりと顔を上げ──女神に対して、低いうなり声をあげた。
「りゅ、竜!?」
「ただの竜ではありません! 飛竜よりもっと巨大で、強大な……!」
ユージオとアリスが、体高八メルはあろうかという背中に驚嘆する。
今まで見たこともない美しい剛体からは、凄まじいまでの覇気が溢れ出ていた。
同じように、その白い竜を凝視したキリトは。ようやく、あの音の正体を思い出していた。
(そうだ。あの音は。ライオス達と戦っている時、あいつがやって来た時に。そして、死んだあいつを霜が包み込んだ時に聞いた──!)
自分の思考が導き出した答えに、ソードゴーレムの正体を知った時に匹敵する戦慄が迸る。
そして、ゆっくりともう一度白い竜のことを観察した。
今まで彼が多くのVRMMOで戦って来たドラゴン型モンスターと比べ、やや小柄な体躯。
その身体構造は、完全な竜のそれではなく、人の体が変化して巨大化したように見えた。
次に目につくのは、竜の頭部の双角の間に生える、長くて美しい体毛。
人間における毛髪に相当する位置にあるそれは──限りなく白に近い、灰色。
(──まさ、か)
そして、最後に。
その全身をくまなく見渡したキリトは、竜の片腕の手首にあるものを発見した。
四つの花弁を持った、赤い宝石の飾り物。
表面がひび割れ、今にも天命が尽きて消失してしまいそうな小さな花が、鱗の間に挟まっている。
キリトはそれを知っていた。
いつも〝彼〟が肌身離さず身につけ、大切にしていた、大事な人からの贈り物を。
(まさか。まさか、まさか!)
疑問は確信に変わり、確信は驚きと恐怖に変わる。
体の中に留めておくにはあまりに恐ろしくて、喘ぐように、吐き出すように。
「ルー…………ク。なの、か?」
その名前を、口にした。
●◯●
それを聞いた瞬間、ユージオとアリスが凄まじい速度で振り向いてくる。
見たことのない、この世で最も恐ろしい真実を知った時のような驚愕の表情。
しかしそれは、キリト自身が彼らよりもっと深く浮かべている表情だった。
「キリト……今、なんて言ったんだい?」
「お前は……今、あれが、誰だと。何者だと、言ったのですか?」
詰問するように、確かめるように、二人は問いかける。
戦慄く唇や睫毛が、それを信じたくないことを如実に表していた。
キリトは答えようとして、けれど、二度もその名前を口にすることが、どうしてもできなかった。
「…………なるほど、の。そういう、ことじゃったか」
代わるように呟かれた言葉に、三人は振り返る。
歪みから竜に視線を移していたカーディナルは、悲痛そうな面持ちをしている。
まるで、大事なものが壊れてしまい、それを心から悲しんでいるかのような、そんな顔。
彼女が再三言っていたような、世界を調律するプログラムらしからぬ悲哀に満ちたものだった。
「カーディナル。一体何がわかったんだ。あの竜は……あいつは、どうしてあんな姿に?」
未だに信じきれていない二人の分まで代弁して、キリトが恐る恐る問いかける。
振り返った賢者は、悲しみの表情を消し去り、静かな声で返答を提示した。
「キリトよ。その答えは、もうお主も知っているはずじゃ」
「もう知っている……?」
鸚鵡返しするキリトに、ヒントを与えるように彼女はあるものへ視線をよこす。
一瞬そのブラウンの瞳が向けられたのは……アドミニストレータを守護するように立つ剣人形。
どういうことだと言おうとして──次の瞬間、キリトは雷に打たれたような衝撃を受けた。
あらゆる情報と記憶が、五秒にも満たない時間でキリトの中で統合されていく。
そこから算出され、分析と取捨選択を繰り返し、一つの限りなく正しい答えを導き出した。
(記憶、解放術。剣と一体になり、強い思いを込めて解放した神器の力を、さらに一段階上へと昇華する奥義)
この場で、おそらくは自分だけが未だに発動したことのない、最高峰の術式の一つ。
またそれは、人を捨て去った女神アドミニストレータが、醜くも恐ろしい剣人形を操る術でもある。
疑似人格に接続されている、剣人形の本来の姿である人間達は──彼女の術により、剣に変換されたのだ。
「…………フラクトライトの、心的パターンの完全一致」
「そうじゃ。あれは……あの竜は」
カーディナルは、一度言葉を切り。
そして、キリト達を。自分をも守るように立ちふさがったその竜を見上げた。
「守護竜のフラクトライトの感情パターンを完全に、コンマ一つの誤差もなく一致させ、記憶解放術によりその姿を変えた──お主らの友、ルークじゃ」
告げられた真実に、愕然とする。
キリトも、ユージオも、アリスも。賢者の言葉に打ちのめされるようだった。
「嘘、ですよね……?」
「……ユージオ?」
「ただの冗談なんですよね? 僕達を、からかっている……だけ、なんですよね………?」
「残念ながら、ほぼ確実な事実じゃ。あれは紛れもなく、かつてルークだったもの。今はまだ生まれたての、竜の幼体じゃよ」
そして今は、もうルークではないのだろう。
全ての記憶、感情、人格を失い。ただ守護する者として生まれ変わった、新たな白い竜。
人界を守護する、聖なる四柱の真竜の一角──カーディナルの話を思い返し、キリトは歪めた顔を伏せる。
きっぱりと断言されたユージオは、ぐっと震える拳を握りしめ、黙って俯いた。
何も反論が思いつかない。人界一……いや、この世界一の智慧者の憶測を崩す言葉が、何もない。
何よりも。ユージオの中にある、彼の思い出が、その有りようが、肯定してしまう。
(でも、でも。そうだとしたら、あんなに頑張ったルークの心は……魂は、報われないじゃないか!)
何もかもを忘れ、その魂さえも消し去られて、別物になってしまったら。
それはきっと、整合騎士と同じほどに──あまりに救いのない、終わりではないか。
「…………か、もの」
「アリス?」
ふと聞こえた、聞き逃してしまいそうなほど小さな呟きに、キリトはそちらを見る。
床を見ていたユージオも顔を上げ、振り向いて──はらはらと左目から涙を流すアリスに、目を見張った。
「馬鹿、もの。本当に、お前は、馬鹿者、です。そんなことを、したら……誰も、誰もお前を、ルークだと……分からないではないですか」
ぎゅっと、その手が青いドレスの裾をきつく握りしめる。
嗚咽をこらえているのか、下唇を噛んだ口元からは吃逆が漏れ出ていた。
細い金の眉を歪に歪めて、青い瞳を濡らした彼女は、心からの悲壮に従うままに泣いていた。
「どうして……どうしていつも、貴方は一人で…………なんでよ、
彼女の口から紡がれた名前に、キリトとユージオはハッとする。
ルーク兄さん。アリスは今、そう口にした。
勿論、彼女とルークが実は兄妹だったなどという事実は存在していない。
それはむしろ、本当の家族のように慕う相手に対する愛称のようなものなのだろう。
ユージオは昔、まだ五、六才の頃に彼女がルークをそう呼んでいたことをはっきりと覚えていた。
(だが、ありえない。今のアリスは記憶の欠片を抜き取られ、モジュールによって記憶を封じられているはずだ。セルカの名前を聞いた時も、過去の記憶を鮮明に取り戻しはしなかった)
ならばこれはどうしたことかと、キリトは考える。
考えられるのは……記憶や人格が別物であろうと、魂に強く染み付いたものが露出した、という可能性。
実の妹のセルカのように、アドミニストレータの枷を超越するほどの親愛を、きっとルークに抱いていたのだ。
自分のその予想を、キリトは何故かあっさりと確信することができた。
「ああなってしまっては、もう元には戻らんじゃろう。彼奴の鉄人形と同じく、フラクトライトに刻まれた思いを果たす為だけに戦う存在よ」
なおも突きつけるように言葉を投げかけるのは、カーディナルなりの誠意だろうか?
だが、三人の表情は当然のように明るくなることはなかった。
「──ふうん。そう、そういうこと」
その瞬間、頭上から響いた声に一瞬で意識が引き上げられる。
四人が空中へ視線を戻すと、ルークだった竜を見ていたアドミニストレータが何かに納得していた。
カーディナル同様、竜を解析していた彼女は、ふむとおとがいに指を当てる。
「確かに、あの忌々しい守護竜なら私の術に介入することも可能ね。カーディナルシステムほどでないにせよ、その次くらいには高い権限を持っているのだもの」
説明するように言う彼女に、キリト達はそういうことかと理解する。
今のルークは、《白竜の剣》と一体化することで守護竜の肉体のみならず、権限も受け継いだのだ。
予想外に強大な戦力の登場に、しかしアドミニストレータは微笑みを崩さない。
「でも、だからどうしたというの? 生まれたばかりの竜のなり損ないが、私と対等だとでも? それとも、こんなところまでわざわざ殺されにきたのかしら?」
ガシャン! と大きな音を立て、ソードゴーレムが一歩踏み込む。
最悪の兵器の再起動に、キリト達三人が反射的に剣を向けた。
人形は紫の双眸を輝かせ、闇のオーラを全身の刃に纏いながら、白い竜の前に屹立する。
「いくら奴らの権限と中途半端に再現した肉体があったって、私の人形を倒せはしないわ」
絶対の確信を持って言うアドミニストレータに、剣人形が呼応したように震える。
身の毛のよだつその咆哮に、されど、白い竜の体は微動だにしなかった。
その代わりに、人の身など容易く噛み砕けるだろう大きな口をガパリと開き。
ギュラァアアアアアアァアッ!!!
戦意に満ちた雄叫びを、高らかに上げた。
●◯●
翼を広げ、白い竜が文字通りソードゴーレムへ飛びかかる。
ソードゴーレムも刃の四本足で地面に火花を散らしながら、猛然と突っ込んでいった。
ギュラアアッ!!
一瞬早く肉薄した白い竜が、鋼よりも硬い鉤爪で一撃を加える。
即座に反応したソードゴーレムは腕で防ぐも、カーディナルの術以外では微動だにしなかった体を傾かせた。
それだけで白い竜がソードゴーレムに匹敵する、あるいは格上の膂力を持っていることが伺える。
「そのなり損ないを始末しなさい!」
アドミニストレータの命令に従い、ソードゴーレムは反撃を開始した。
二十度ほど左に傾いた体を四本の足で巧みに支え、鋭い一撃を白い竜に見舞う。
長い首を屈めた竜は毛の幾許かを切断されるに留め、渾身の頭突きを食らわせた。
再びよろめいたソードゴーレム。だが、押し倒すことはできず、高速開閉した肋骨の剣で顔の鱗を削られる。
オオォオオオッ!
ギュラアアッ!
雄叫びを上げ、凄まじい音と振動を起こしながら戦う様はさながら怪獣大合戦。
女神の生み出した殺戮兵器と、願いの力で己が身を昇華させた竜が、正面からぶつかり合う。
「っとと!? なあ、カーディナル! これはどうなるんだ!?」
戦闘の余波で転びかけたキリトが、なんとか持ち直しながら叫ぶ。
術で僅かに地面から浮かんだカーディナルは、難しげに幼い顔を変化させた。
「分からぬ。本来であれば、神器級の剣が三十本……その素材とされた三百人分の天命と
「そんな……! じゃあルークは!」
「が、わしですらこの戦いばかりは決着の行く末が予測できぬ」
悲痛に叫んだユージオにかぶりを振って、賢者は剣人形と取っ組み合っているそれを見やる。
「なにせあやつは、不完全とはいえ、たった一匹でダークテリトリーの侵攻を三百年以上防ぎ続けた、白き竜になったのじゃからな」
その言葉に三人は目を見開き、白い竜へと願うように視線を送った。
カーディナルの予想通り、ソードゴーレムは圧倒的優勢を失っていた。
白い竜の苛烈なまでの攻撃性と、無機物故に自身には不可能な動きで翻弄されている。
ギュラアァ!
大きく腕の一方を弾かれたソードゴーレムに、白い竜は尾を振るった。
強靭でしなやかな太尾が剣の胴体を打ち据え、更には先端に生えた《白竜の剣》に酷似した棘が傷を作る。
二段階の強烈な攻撃によって、剣人形は一歩後ろへたたらを踏んだ。
その隙を見逃さず、正面に体を戻した白い竜は野生的なタックルをお見舞いする。
甲高い音で鱗に包まれた体と剣の体が衝突し、一種の衝撃波が発生した。
ギュラァアァア!
さしもの白い竜も反動で数歩後退し、苛立ったように咆哮した。
一方で、痛みといったものが存在しないソードゴーレムは二本の腕を使って即座に立ち上がる。
そして、お返しと言わんばかりに竜巻のような勢いで体を回転させ、腕を一閃した。
ギュガァッ!!
寸前で気がついた白い竜は、しっかりと見定めて両手でその腕を掴み取る。
ギリギリと鈍い音がソードゴーレムの関節から鳴り、剣腕を押し込もうとした。
掌から黄金の血を垂れ流しながらも、白い竜がそれを押し返す。
ギュリァアァア!
すると、白い竜は驚くべき行動に出た。
両足を床がひび割れるほど力ませたかと思うと、全身を使って剣腕に力を流す。
そして、一際大きな鳴き声と共にその身を持ち上げてしまったのだ。
「なっ──!?」
「嘘でしょう──!?」
「ちょ、おい、あいつこっちに振りかぶって──!」
「三人とも、避けるのじゃっ!」
ギュラ、ァアァアッ!
浮き上がったソードゴーレムを、白い竜は狙いも定めず投げ飛ばす。
奇しくもそれはキリト達の方向で、飛んできた鉄塊に慌てて四人はその場から退避した。
一際盛大な地響きを立て、居室を取り囲む柱の一つを破壊しながら剣人形が墜落する。
「…………へえ。中々やるじゃない」
濛々と立ち上る土煙に、アドミニストレータが少しだけ興味深げに呟いた。
その視線の先で、誇るようにまた雄叫びを上げた白い竜は、ずんずんとソードゴーレムに近づいていく。
──オォォォオオオッ!
途端、全身を震わせて叫んだソードゴーレムが土煙を突っ切って現れた。
粉塵を切り裂いて突き出した、超高速の腕は竜の頭部を狙っている。
白い竜は首を捻って回避し、だが完全には避けきれず、左肩に剣腕が深く埋まった。
ギュラァアァア!!
それまでより高い声が、白い竜の口から発せられる。
悲鳴にも似たそれで空間を叩き、後退した竜に向けてソードゴーレムは前進した。
咄嗟に右腕で掴むも、片腕だけではソードゴーレムのパワーに抗しきれずに押されていく。
まるで鏡合わせをしたように、今度は彼の方が強く壁に叩きつけられた。
再び振動が居室を震わせ、竜は少量の血を吐き出す。
ギャガァアァァアァア!!
オォォォオオオッ!
憤怒が色濃く反映された雄叫びが、二つ重なった。
ソードゴーレムがトドメを指すためにもう一方の剣腕を振るえば、竜は尾の剣で弾いた。
そして人形の頭部分に頭突きをお見舞いすると、密着していた体を引き剥がす。
同時に肩の剣も引き抜かれ、両者はよろめきながらも倒れることはなかった。
そうして、互いを睨みつけ。
ギュラァアァアァアァア!!
オォォォオオオ!!
また、殺し合った。
読んでいただき、ありがとうございます。
デカいのvsデカいのはロマン。