ソードアート・オンライン アリシゼーション Imagenary Fabricte ~光を照らす執行者〜 作:熊0803
今回はオールスターって感じです。
さあ、復活したルークの力をとくとご覧あれ。
楽しんでいただけると嬉しいです。
引き上げた《白竜の剣》を、腰だめに構える。
そうして纏われた覇気にただならぬものを感じ、アリスは無言で数歩引いた。
「ふぅ…………」
深呼吸をひとつ。
それだけで心がどこまでも凪ぎ、あらゆる雑念が遠ざかっていく。
無我の境地に至ったルークは、固く《白竜の剣》の柄を握りしめた。
(──耳を澄ませ。奴らの魂を、聞き取るんだ)
もはや、完全に操ることのできる竜の耳に、その音を感じ取る。
捻れた魂。激しい衝動に突き動かされ、全てを飲み込み、破壊していく黒い渦。
それらが何十と村の中に巣食い、北の方角には《果ての山脈》にまで数百と点在する。
(──見極めろ。斬るべきものを、在るがままに)
湖面を揺らす波紋のうち、三百あまりの弱々しい音を排除する。
村人達を
「ハッ────!」
刹那、抜刀した剣を大上段に振り上げると、その場で振り下ろした。
──イィン
ゴブリンやオーク達の耳に、甲高い共鳴が鳴り響く。
殺意や飢餓をかき消すほどのそれに足を止め、首を傾げた彼らは、ふと上を見上げ。
次の瞬間、どこからともなく降り注いだ一筋の光に、魂を打ち砕かれた。
圧倒的に研ぎ澄まされた心意の刃が、何十という魂を一息に両断する。
防ぐ、という概念を最初から欠如したその一撃は、彼らに痛みも感じさせず命を断ち切った。
怪物達が、得物を取り落としていく。
けたたましい音が幾重にも重なり、思わず顔をしかめたアリスの前で、次々に倒れ伏していった。
地面に転がった骸からは、一滴の血も流れることはなく。
その瞳から意志の一切を消して、絶命していたのだ。
「っ……なんという絶技…………!」
思わず、戦慄のままにそう口走る。
そして、ゆっくりと地面に触れる寸前に留めていた剣を戻し、姿勢を正す兄を見た。
彼は自らが作った死の道を、黄金の虹彩が輝く銀の瞳で静かに睥睨した。
「──五十四、ってところか。まだまだいるな」
「……おそらく、度々侵攻を妨げていた貴方を確実に討ち取るために全勢力を投入したのでしょう。その総数は数百に上るかと」
「嬉しくない人気だ。だが、闘争を望むというのなら最後まで付き合ってやろう」
どこか超越した雰囲気を湛えたルークは、そう宣言すると北門の方へ歩き出した。
アリスは、一旦後ろに振り返る。
広場には既にほとんどの人がおらず、避難民の最後尾が南側に見えるだけ。
懸念はないだろうと確信し、兄の背中を追いかけることにした。
「……全て、燃えていくな」
隣に並んだ彼女に聞かせるように、ポツリと呟くルーク。
崩れ落ちる家々や、黒焦げになって転がる家畜だったもの、遠くに見える炎上した麦畑。
愛する故郷を包み込む戦火に、哀愁の籠った目を向ける彼に、アリスは答える。
「これ以上、この炎を広げるわけにはいきません。奴らを退けて、人々を守らねば」
「……いいのか? もう十分、お前も苦しんだだろう?」
慮るように言う兄の変わらなさに、淡い微笑みが口元に広がった。
彼はきっと、この村で受けた粗悪な扱いだけのことを言っているのではない。
公理教会の威信が偽りだと知ったアリスの苦悩をも見抜いて、剣を置くこともできると言っているのだ。
「ルーク兄さん。私は決めたのです。教会の騎士ではなく、一人の剣士として。己で考え、剣を握り、人々を守る為に戦うと」
愚昧なまでに法に従い、何もできなかったルーリッド村の人々を見た時。
やはり、アドミニストレータは間違っていたのだとアリスは確信した。
(我ら整合騎士に、本来彼らに与えられるはずだった力を注ぎ込み、長い時の中で考える力さえも奪ってしまった。それは力を持つ者の、その周囲の人間にも苦悩を生んでしまう)
その迷いが、偏りすぎた巨大なものが、彼女自身を人ならざるものとしたように。
ならば、全てを搾取し続けてきた騎士達や、自分がすべきことは、たった一つなのだ。
「セルカを、父母を、キリトやユージオ……そして貴方が守ろうとした、この人界の人々を救う為に。私はもう一度、剣を取ります」
「……そうか」
相槌を打ったルークが、不意に立ち止まった。
つられてアリスも足を止め、何事かと彼を見上げる。
その頭に、ルークの手がぽんと乗せられた。
驚いた彼女に、竜の鉤爪のように尖った指先に気を配りながら、ルークは手を左右に動かす。
「よく決断したな。あのお転婆だったアリスが、随分と立派になったもんだ」
「ルーク兄さん……」
「安心しろ。お前がそこまで啖呵を切ったんだ、きっちり背中は守ってやる」
「それはこちらの台詞です。生半可に腕を磨いてきた訳ではありません」
そう返し、笑おうとした時。
不意に、全身を駆け巡っていた熱が右の眼窩に集約し、あまりの痛みにアリスは顔を顰めた。
突き刺すような激痛はいくつもの筋のように広がり、何かを形作っていく。
「……っ!」
それが治まった時、アリスは一つのことを悟った。
そして、ルークの前で顔を覆っていた眼帯を取り払い──右の眼を見開いた。
長い間閉じ続けていたそこには、左と同じように蒼穹の色を持つ瞳がしっかりと存在している。
白い光に包まれていた視覚は、徐々に物の輪郭を結び、二つに重なると……やがて、一つの視界に纏まった。
「……アリス」
「……もう、大丈夫です」
アリスは、手の中の眼帯に視線を落とす。
色落ちした、かつてあの少年の黒衣の一部だったそれに、そっと唇を落とした。
そうして、ずっと自分が守っているとばかり思っていた彼に守られていたことに気がつく。
「……ありがとう、キリト。私は、これからもいろいろ迷うし、立ち止まるだろうけど。それでも私と貴方が望んだ未来へ、歩き続けるわ」
すると、アリスの宣言を聞き届けたように、眼帯は光の欠片となって散っていった。
虚空へ溶けるそれを最後の一粒まで見送って──アリスは、毅然とした顔を兄へと向ける。
「行きましょう。我々の明日を、手にする為に」
「望むところだ」
そして、二人はまた歩み始めた。
●◯●
北門まで辿り着くと、そこにはもうゴブリンとオークがひしめいていた。
怪物達は、先に進んで突然事切れた同胞の姿に警戒を覚え、桟橋に踏み出せないでいる。
ざっと数えても先頭だけで百匹以上はいるであろうその軍勢に、二人の騎士は正面から立ち塞がった。
「我、人界の騎士アリス! 我々がここにいる限り、お前達が望む血と殺戮が得られる事はない!」
「同じく、騎士ルーク! 我が聖域を踏み荒らし、人の世界へ不遜にも踏み込んだ愚か者共よ! その罪は死をもって贖うがいい!」
声高に叫ばれた言葉に、怪物達は殺気立つ。
たかが小娘と男が一人だけの分際で、自分達の侵攻を止めようとは片腹痛いとでもいうのだろう。
圧倒的な力の差も理解できぬ知恵足らず共は、ギラギラと欲望に目を光らせる。
「……ルーク。雨縁を呼び寄せて、熱線で大部分を削ります。それまでにどれだけ倒せますか」
「やれと言うのなら、最後の一匹まででもこの剣で斬り殺してやろう」
「上等ですね」
自信に満ちたルークの返答に、アリスは彼らを撤退させるという考えを捨てた。
先の一撃で十分にその力は理解できた。
どの道、何度も成り損ないだった頃の彼に敗北している彼らに退却の二文字はないだろう。
ならば、兄と共に戦い抜くまで。
そう思った矢先────遥か先で、凄まじい火柱が噴き上がった。
ルーリッドを燃やす炎よりも猛々しいそれが、宙にいくつもの影を打ち上げ、焼き消す。
ルークやアリス、桟橋の前で騒ぎ立てていた連中も、何事かとそちらを見た。
《果ての山脈》側に繋がる道から、断続的に怒号や悲鳴、断末魔の叫びが上がる。
それはゴブリンやオーク達のものであり、何者かによって後方から襲撃を受けているのは明らかだった。
「一体誰が……?」
「…………!」
アリスが訝しみ、その隣でルークが何かを悟ったように息を呑む。
そうしている間にも、次々と火柱は略奪者達を討ち滅ぼしていき、村へと接近した。
三百メル、二百七十メル、二百二十、百九十──目に見える場所まで、みるみるうちに近づき。
そして、ついに一際大きな炎の大華が、何十かの怪物達を蹴散らした時。
「──我が故郷を手にかけし下郎共。貴様らの一匹たりとて、闇の国に帰れると思うな」
現れたのは、炎を支配せし最強の騎士だった。
「あれは、バルド殿!」
再び赤竜の鎧を纏い、黒盾を携えて現れたその騎士に、アリスは声を上げる。
この上ない最強の助っ人だ。騎士長ベルクーリに匹敵する頼もしさと安心感が、彼女の心に生まれる。
「………………騎士、バルド」
彼女の内心とは裏腹に、真剣な面持ちでルークは彼の姿を見た。
その目には言い知れぬ感情が宿り、複雑に絡み合って混在している。
手の中の《白竜の剣》が、力を込められるのに併せて微かに音を鳴らした。
一方の闇の軍勢は、もはや完全な混乱状態に陥っていた。
北の洞窟に残っていた後続部隊は、バルドが悉く灰燼に帰したことで既にこの世にいない。
そして、暗黒領域側に繋がる通路を破壊した彼は、洞窟までの道のりを遡って侵攻部隊を壊滅させていた。
もはや、その総力は二百を割るか割らないかといった所。
「ブガァアァッ! たかが白イウムの分際で、この《足刈りのモリッカ》様をコケにしやがってェ!」
一際大きな体をしたオークが、怒りの吠え声を撒き散らす。
この部隊の大将格であるその怪物は、両手持ちの大斧を握りしめて前方と後方の騎士を睨む。
暗黒領域側で《果ての山脈》付近に駐屯し、数ヶ月に渡って洞窟を守護する生き物を殺そうとしてきた。
悉く偵察部隊を餌食にするあの怪物が姿を消し、ついに殺戮と闘争を楽しめると思った矢先に全てを台無しにされたのだ。
「こうなったらあの白イウムどもは叩き潰して、逃げた白イウムを追いかけて食い殺してや──」
欲望を叫ぼうとした彼を、空より降り注いだ一閃が両断した。
大口を開け、両腕を広げた姿勢のまま、モリッカは目を見開く。
直後、ズルリと縦にも横にも分厚い体が左右に分たれ、重々しい音で地面に転がった。
血溜まりを広げた大将格の骸に、周囲にいた主力部隊は俄にざわめいた。
混乱を強めた怪物達を、上空から冷めた目で見下ろす人物が一人。
「ンなことさせる訳ねえだろ、豚野郎が」
モリッカを空飛ぶ蒼星の背から音刃で断ち殺したライオットは、冷酷に告げた。
イーディスと手分けしてルーク達を探し、《果ての山脈》を飛んでいた彼は、偶然にもバルドと遭遇した。
そして、ルーリッドに向けて侵攻を始めた闇の軍勢を彼と共に掃討し、ついにここまで辿り着いたのだ。
「………………」
無言で、村の方へと視線を向ける。
そして、両目を取り戻し、黄金の鎧を纏い直したアリスに薄く微笑んで。
次に、その隣にいるルークを見ると──心から嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ったく。ようやく戻ってきやがったな、あの馬鹿」
罵りながらも、その言葉には隠しきれない喜色が滲んでいた。
半年前できなかった説教をたっぷりしてやろうと考えながら、彼は怪物達へ向けて戦意を高めるのだった。
(……後でこれでもかと怒られそうだな)
同様に、しっかりとライオットの存在を感じ取っていたルークは内心で苦笑する。
自分の目を覚ましてくれた緋髪の騎士へ、不思議なほど強い友情を覚えていた。
〝彼女〟共々、自分はつくづく世話になりっぱなしだと微かに口元でも笑う。
「──ルーク兄さん」
「──ああ」
だが、それもここまで。
一切の憂いなく自分の名を呼ぶ声に、はっきりと答えを返す。
そうすると、《金木犀の剣》の切っ先を空へ掲げた彼女に倣うように、抜刀の姿勢を取った。
見据えるのは、大きくその数を減らして狼狽えている、無様な侵略者達。
彼らへ、今こそ引導を渡そう。
「《エンハンス・アーマメント》!」
アリスの剣が、無数の黄金の小片となって舞う。
「ヌゥン…………ッ!」
刃を分割し、空高く伸ばしたバルドの豪剣に、極大の炎が灯る。
「こいつで終いだ、外道共」
琴の形態となった《蒼竜の琴剣》の弦を引き、ライオットが宣言して。
「──冥府へ堕ちろ、闇より出でし悪鬼達よ」
全ての魂を見定めたルークが、その鯉口を切った。
直後。
降り注いだ花弁に、音刃に、極炎に、魂斬りの一閃に。
一匹残らず、悪鬼達は撃ち滅ぼされた。
●◯●
「フッ!」
気合を込め、《白竜の剣》を地面に突き立てる。
清涼な音で石畳を紙のように貫き、沈み込んだ剣に深く意識を馴染ませた。
その上で、未だに轟々と炎が燃え盛っている村の光景を水路の外側から見つめ、式句を口にする。
「システム・コール。ジェネレート・クライオゼニック・エレメント」
隣で聞いていたアリスからしても、整合騎士に匹敵する滑らかな詠唱。
それを受けた白竜の剣は、地面を通して周囲に転がる無数の骸を光の粒に変え、神聖力に変換した。
生成された凍素の数は、なんと二十五。アドミニストレータに匹敵する力だ。
「ウェザー・コントロール、タイプ・スノウ・クラウド。エリアポインティング。システム・ネーム:ルーリッド。ディスチャージ」
竜より受け継いだ、人界の管理者とほぼ同等の術式行使権限。
それを以って、ルークは女神や賢者のみに許されたはずの奇跡を引き起こす。
凍素達は、一つに凝縮すると、小さな光を放って真っ白な雲に変身した。
上空へ舞い上がりながら肥大化していくそれは、やがてルーリッド全土を覆う規模になる。
十分な大きさに成長した、その雪雲からは──同じ色の霜が、村へと降り始めた。
音もなく降り注いだ大量の霜は、家を、畑を、人々の営みを破壊した炎を覆い、かき消していく。
「綺麗……」
深々と降り積もり、ルーリッドを白く染め上げていく霜に、ほうとアリスは感嘆の溜息を吐いた。
ルークは《白竜の剣》を鞘に収めながら、自らが作り上げたその光景に目線を向ける。
「ソルスの光で二、三日もすれば溶ける程度の優先度にしておいた。あとは、皆が立て直すのに任せるしかないな」
「……そう、ですね。今の貴方であれば、家屋を全て修復し、豊かな恵みをもたらすことすらできるのでしょうが」
それでは、アドミニストレータが与えた偽りの安寧となんら変わりがない。
肝心な事には自分にも他者にも厳しい兄がそれをするとは思えず、実際に彼は頷いた。
「……不思議なものですね。あれだけ居心地が悪いと思っていたのに、こうして見ると悲しくなる」
「それが故郷ってもんなんだろうな。まあ、俺は洞窟に引きこもっていたわけだが……」
「ええ。その事についても、後でたっぷりと話をしましょう。言いたい事が山ほどあります」
間髪入れずに返された言葉に、ひくっと頬が引き攣るのがわかった。
今の彼女が、昔馴染みだからと容赦してくれないことは、よく知っている。
これはしばらく、色々な人間から説教の嵐か。
思わず苦笑いを浮かべたところで、背後から近づいてくる気配を感じて振り向く。
すると、宵闇の中でもよく目立つ炎に身を包んだ騎士が、泰然とした足取りで近付いてきた。
「…………残党は見つからなかった。取り零しはないだろう」
「そうか……ライオットは?」
「念の為、空からの探索を行っている。奴の目が見逃すことはない」
「だろうな」
……その返答を最後に、会話が途切れた。
ルークもバルドも、それぞれ口を引き結んで、じっと互いのことを見ている。
不思議と張り詰めた雰囲気に、アリスが少し心配そうに細い眉尻を落とした。
「………………ルーク」
やがて。
ルークの名を呼んだバルドが、武具を地面に突き立て、両手で兜を取り外す。
露わになった銀色の瞳は……あの炎の騎士とは思えぬほど、弱々しいものだった。
「私は…………私は、お前の…………」
「────父さん。そうだろ?」
その言葉に、バルドが言葉を止め、僅かに目を見開いた。
背後でアリスが大きく息を呑む音を聞きながら、ルークは彼を……父のことを見上げる。
「お前…………」
「母さんに聞いた話、思い出したよ……今ならわかる」
そして、同じ色をした瞳でその目を真っ直ぐ見つめて。
「貴方が、俺の父親だ。炎の騎士バルド……いいや。父さん」
バルドは、今度こそ限界まで切れ長の瞳を見開いた。
しばらくその表情のままであったが……やがて、目を伏せると低い声で答える。
「…………すまない。私は、お前に何もできなかった」
改めて胸の中に満ちるのは、取り返しのつかない後悔だ。
使命を優先するあまり、父としての責務を果たさず、その存在さえ知らなかった。
その成長を見守ることも、剣を教えることや、他のあらゆる思い出を共に作れなかった。
このような気持ちを、よもや三百年の放浪の果てに抱く事になろうとは、思いもしなかったのだ。
「お前に父と呼ばれる資格は、私には…………」
「──母さんは。ずっと貴方との思い出を支えにしてた」
不甲斐なさからその資格を捨てようとして、被せたルークの言葉に止められた。
「辛い時も、苦しい時も。いつも貴方と生きた僅かな時間を笑顔で語って、慈しんでいた。俺だけじゃ、母さんを支えることはできなかったよ」
「…………彼女が」
信じられない。そんな顔をする父親に、ルークは優しげに微笑む。
そして、一歩踏み出すと……軽く握った拳を、彼の鎧の胸当てにそっと置いた。
「なあ、父さん。俺にはそれで十分だったんだ。たったそれだけで、よかったんだよ」
「…………こんな私を、許してくれるのか?」
最強にして無双の騎士が、恐れるように言えば。
「貴方が言った通り、俺達はようやく出会ったばかり。だから、これから積み上げていこう。親子の思い出をさ」
新たに生まれた、至高の竜騎士は純粋な子供のように明るい笑顔を贈った。
しばらく、彼の言葉を吟味するようにバルドは黙して……
「……そうだな。こんな父だが、よろしく頼む。息子よ」
「ああ。一緒に人界の未来を守っていこう、父さん」
やっと、笑い合うことができた。
その後、アリスがバルドに改めて自己紹介をする。
これまでの騎士団との蟠りを解くような光景を見守っていると、不意に異音を聞きつけた。
「……戻ってきたな」
小さく呟き、ルークは上を見上げた。
遅れて同じ音を聞いたアリスやバルドも顔を上げる中で、一匹の飛竜が現れる。
上空十メル程の場所で静止したその背中から、人影が飛び降りてきた。
「っと! 偵察が終わったぜ、バルドの旦那」
危なげなく着地した緋髪の騎士──ライオットは、立ち上がるとまずそう言う。
無言で頷いた彼へ首肯を返して、それからようやく後ろにいたルークに振り返った。
「…………ルーク」
「…………ライオット」
彼らの視線が絡み合う。
半年という長い月日を経て、ようやく再会を果たした二人。
アリスやバルド、他の誰もがそうであるように、互いの存在を確かめた二人は──
「へへっ!」
「ははっ!」
男臭い笑みを浮かべると、がっしり前腕を組み合った。
胸の内に抱いた熱い思いを伝えるには、それだけで十分だったのだ。
「よう、随分と立派なナリしてんじゃねえか。中々似合ってんぜ?」
「お前も、相変わらず大した男前だよ。兄弟」
ルークの呼び方に、一瞬キョトンとして。
「おうよ、兄弟!」
その後に、やはりとびきり嬉しそうにライオットは笑った。
こうして。ようやく、ルークは帰ってきた。
読んでいただき、ありがとうございます。
彼女の出番も?