駄文を読んで一日頑張ってください。
それでは本編一話、どうぞ!
第1話:始まりの日に
〜俊太Side〜
桜が舞う中で行われた4月の入学式。それは聖ジャスミン高校の共学化後2度目の入学式だった。舞い散る桜の花びらが春風にのって新入生の肩に落ちる。オレの心も期待で舞い上がっていた。
オレは亮と一緒に高校の最寄り駅から学校までの道を歩いていた。それは入学式の日だということを除けばごく普通のなにげない日常のはず、だったのだがそれはとある男子生徒によって妨げられることになる。
「もしかして、君たちは帝王の友沢くんとあかつきの結城くんであっているでやんすか?」
と瓶底眼鏡をかけた少年に声を掛けられたのだ。
「そうだよ。ところで亮、こいつを知っているか?オレは会ったことがないと思うんだけれど」
とオレは亮に聞いた。......というか「やんす」ってどんな語尾なんだろう。
すると、「俺も良くは覚えていないんだが、パワフルシニアのセンターじゃなかったか?」という答えが返ってきた。
やっぱり隣の地区か。しかも最後の夏にパワフルシニアは帝王シニアにサヨナラ負けを喫して、ベスト8止まりだったはず。どうりで彼とは会ったことがないわけだ。
そうしたら、突然目の前の男子生徒はまるで漫画のように白くなり、ガラガラと崩れ落ちた。
「この美少年の人読んで『パワ中のスピードスター』、矢部明雄を知らない人がいるだなんて......でやんす」
なんか出会って早々に矢部くんの裏の顔を見てしまったような気がする。うん、気にしないでおこう。オレは今なにも見なかった。
あと最後に無理矢理でも「やんす」をつけるんだね。
「じゃあ、改めて自己紹介をするでやんす。オイラはパワフル中の矢部 明雄(やべ あきお)でやんす」
「オレはあかつき中の結城 俊太だよ」
「俺は帝王シニアの友沢 亮だ」
「二人もおいらと一緒で元女子高のここでピンク色の学園生活を送るために、ここに来たんでやんすね?」
と言うか、矢部くんが聖ジャスミンに来た理由ってそれなの?
矢部くんはオレらのドン引きによる沈黙を肯定と捉えてしまったようで、
「さすが女の子だらけの学園生活。どこを向いても目が癒やされるでやんす。そして最終的にはキャッキャムフフなハーレムがオイラを待ってr......」
「ちょっと黙ろうか」
(ギュッ)
「ムググ、苦し...でやんす」
何やら変な妄想を矢部くんが熱弁しだしてしまったので、周りの人に変な目で見られないように少し黙っていてもらおう。しかし初対面の人にそんなことを話すのかなあ、普通。
そんなことをしているうちに、これから三年間通うことになる学校の校門が見えてきた。
オレは亮と出来れば矢部くんとおなじクラスになれるように、見たことのない神様をイメージしながら祈った。
そして迎えた運命の瞬間......
オレは矢部くんと亮といっしょの1年B組だった。
「二人ともおなじクラスでやんすか?嬉しいでやんす、これで開幕ボッチは回避でやんすー」
横でおもちゃのおまけ程度としか考えていなかった矢部くんが大喜びしている。ちょっと可哀想だなと思ったけど、矢部くんってこういうキャラなのかな。
矢部くんは横で見ていてすぐに表情がコロコロ変わっていくから面白い。きっと中学でもムードメーカー的な存在だったのだろう。
共学化に合わせて建て替えられたらしい真新しい教室に入り、オレは自分の席につく。やはり元女子校だからか男子は3割くらいしかいない。
そんなことを考えていると、となりから声を掛けられた。
「もしかしてキミ、あかつき中の結城くんかな?」
「えっと、君は?」
俺がそう聞くと、彼女は明るい笑みを浮かべながら
「アタシは夏野 向日葵(なつの ひまわり)、よろしくね」
と挨拶をしてくれた。
茶色い髪をヘアピンで止めた、まさしく名前の『夏のひまわり』のような元気そうな印象を受ける娘。
「先に言われちゃったけど、オレは結城 俊太。でも、俺のことを知ってるっていうことは野球をしていたの?」
「まあね、中学ではちょっとやっていたかな」
「何処の中学出身なの?」
「山吹中学っていうところ。でも地区大会の3回戦で負けちゃったからね。これでもエースだったんだよ?」
やっぱり野球をやっている人とは会話が弾む。
すると突然、高校生活最初のHRの始まりを告げるチャイムが学校中に鳴り響く。オレたちは雑談をそこそこにやめて席につくと、これから一年お世話になる担任の先生について、そしてこれからの学校生活に思いを巡らせた。
〜俊太Sideout〜
〜???Side〜
春、それは出会いと別れの季節。ただ、僕にもう出会いはないみたいだ。
そして、ココがワタ...僕が今日から通うことになる聖ジャスミン高校か。それにしても大きい学校なんだなぁ。そう思っていると、ふと隣から女の子に声を掛けられた。
あぁ、今日からは”異性”として過ごしていかなきゃいけないのか。
彼女と別れた後、ふと思った。
僕はこの学校で男としてやっていけるのだろうか......
いや、今更考えたって仕方がないね。それにどうせ騙すのなら、僕だって割り切って夢を見てみたいんだ。
その夢は何かって?それは聖地――甲子園に行くこと、あのグラウンドに立つこと。
野球をしていたら誰もが一度は夢を見るところ。それは、性別なんて関係ないはず。それでもそこに女子は立つことを許されないんだ。
でも、もし僕が”男”なら?僕は立てるよね、甲子園に。その”男子”は空想にしか過ぎない存在だったとしても。
そんな思いを抱きしめる僕に、春風がそっと吹いた。僕の気持ちも幾分か軽くなったみたいだ。
春は恋の季節。僕にも春は訪れるのだろうか?
〜???Sideout〜
〜亮Side〜
なんでこうも世の中の入学式というものは長いのだろうか。
おそらくみんな真面目に聞いていないであろう、ありがたい校長先生のお話に始まって、来賓のこれまたありがたい祝辞。
そして現在、式の終盤には新入生代表の挨拶が始まろうとしている。
『新入生代表の言葉 一年E組 小鷹 美麗(こたか みれい)』
このときの俺は思いもしなかった。
彼女と同じチームで戦うことになる、ということを。
『やわらかく暖かな春の陽の光に、草木も色づき始めた今日という良き日に、私達は今日......』
真新しい広いホールに響き渡る彼女の凛とした声を聞きながら、俺はこれから始まる人生最後の学校生活に想いを巡らせた。
学校生活と言えば部活動。それを三年間目一杯楽しもう。
そう俺以外のこのホールにいる人間は考えているのだろう。
俺の野球人生は中学卒業まで。家の状況は誰よりも俺が知っているし、野球なんかをしているような場合ではない。
そうとは分かっていても、野球への想いはそうかんたんに捨てられるようなものではなかった。
俺は蛇島先輩に肘を壊されかけたり、危険なスライディングタックルをされたりといった選手生命の危機に何度も立たされた。
それでも野球への思いは消えるどころかどんどん強くなっていき、俺は更に練習に打ち込むようになっていった。
そんな昔の完全な惰性ながら、帝王の推薦がなくなってしまった今でも未だに基礎練習は続けている。素振り、キャッチボール、走り込み、筋トレといった類だ。
無論、バッティングセンターなんかには行く金も時間もないが。
そんなやめると決めたはずなのに、けじめのつけられない自分が俺は嫌だった。
でも、このことはとりあえず忘れてみよう。限りある学校生活を楽しむためにも。ここでつかの間の夢を見るためにも。
いいだろう、少しくらい目をそらしたって。小さいときからイヤというほど、この世界の現実を見てきたのだから。
そう思う頃にはもう挨拶も終わりかけ。
『......ときに温かく、ときに厳しくご指導していただきますようお願いいたします。』
そうだ、俺は孤高のヒーローなどではないし、一人なんかじゃない。頼れるやつもいる。
また頼らせてもらうぞ、悪いな俊太......
〜亮Sideout〜
11/16追記
ごめんなさい。ちょっと現実が忙しいので更新は遅れます。
待っててください。失踪はしませんから。
12/14追記
???Sideを追加しました。
新話は頑張って来週までに上げます。お待たせしてすみません。