またしばらく間隔が空いてしまうと思いますが、絶対書きます。
もうしばらくお付き合いください。
それでは第2話、どうぞ!
~俊太side~
入学式からも数日がたち、この学校にも少しずつ慣れてきた。
クラスで話す人も増え、クラスにも馴染んできたように思う。
それにしてもこの学校は広いよな。
校舎は教室棟と特別棟に分かれ、体育館にホール、テニスコートに食堂。そして更にはグラウンドが2つもある。オレは大丈夫だったけれど、はじめてきたら間違いなく迷うような大きさ。
グラウンドのうちの一つは最近作られたらしい。きっと新しい男子生徒を呼び込むためなんだろう。
そういえば今日は部活の説明会、か。そんなことを思っていると矢部くんが話し掛けてきた。
「結城くん、部活動はどうするんでやんすか?
オイラはもちろん中学でもやっていた野球部でやんす!」
彼はそう言うと、更に
「かわいいマネージャーとキャッキャムフフしたいでやんす。何部から引っ張って来るのが良いでやんすかねぇ?茶道部?チア部?料理部でも良いでやんすねぇ〜」
とまくし立てた。
ここまで来るとただの変態おじさんである。
しかし、そんな矢部くんに対して亮から正義の鉄槌がくだされた。
「矢部......ここに、聖ジャスミン高校には野球部は、ないぞ?」
「......も、もう一回言ってもらえるでやんすか?」
「だから、野球部はここにはないんだよ、矢部くん」
残酷だが、聞き直す矢部くんに優しくオレが現実を突きつける。
「な、そうなんです……やんすか?」
矢部くんが出会ったときと同じように崩れ落ちてしまった。
「正確にいうと、今は活動していないッスね」
彼女は川星 ほむら(かわほし ほむら)さん。
この学校に来て仲良くなった女の子で、とんでもない野球好きだ。
野球規約はもちろんのこと、いろいろな記録やアマチュア野球までもを網羅するような知識を持っている。これはもうマニアと言ってしまったほうが近いのかもしれない。
「去年は同好会としてあったんだよね。ただ、部員が全く集まらなくて......」
と、夏野さんが付け加える。
そりゃあそうだ。共学化一年目の学校で男子は30人もいないのだ。それで新設の野球部に部員が9人も集まるのなんて奇跡に近い。
「矢部くんはそれを確認しないでここに来たの?」
とオレが聞くと、彼は
「パンフレットのカワイイ女の子のことしか見ていなかったんでやんす......」
とうなだれてしまった。
矢部くんらしいんだけど、でもそれで良いんだろうか?
いや、オレにはなんの関係もない話だ。
もう、野球は辞めたのだから......
「結城くんは野球部だったんだって、しかもあのあかつきの!」
夏野さんが嬉しそうに話しかけてくる。
「ああ、そうだよ」
「そうなんでやんすか?オイラたちとは比べ物にならないでやんす」
気持ちの抜けた返事しか返すことのできない自分が情けない。
猪狩に対しても、また彼女に対しても。そして、矢部くんに対しても。
こんな猪狩の輝きから目を背け、逃げ出してきたようなやつにこんな気持ちを持たせてしまって。
そうだ、あのときも。猪狩と話したあの時も心配をかけまいとして、本当は心配をかけていたのかもしれない。そもそもそれは心配を掛けるないためじゃなくて、ただ自分のメンツだけを守るためだったのかもしれない。
でも、オレにはあの時一体何ができたんだろう。今日もそうオレは思ってしまうんだ。
〜俊太Sideout〜
〜亮Side〜
俊太のやつ、どことなく表情が暗かったな。無理してでも明るさを、笑顔を造るようなやつなのに。
ケガ......なんだろうか。
どうにもならないけれど、どうしようもなく辛いことだ。大切にしていたものを一瞬で奪われるというのは、すぐそこにあったモノが突然なくなるというのは。
そして、あいつはここでも何も言わなかった。あかつきに進まず、聖ジャスミンに来た理由を。一体、どうしてなんだ?
〜亮Sideout〜
〜俊太Side~
ハァ......
なんでこうも面倒なことを生徒に押し付けるんだろうね、新田先生は。
俺ってそんなに「頼まれたら断れない性格ですよ」って顔にかいてあるのかな。
まあ流されて引き受けてしまうから、あながち間違ってはいないんだけど。
おかげで俺は日直だっただけなのに校門を出たのは授業終了の2時間後、すなわちもう夕方である。明日からは仮入部期間だから、早く入る部活を決めないとな。
そう思いながら、オレは一人でグラウンドの横を通り過ぎる。この時間ならもうグラウンドには誰もいないはずだ。
なぜなら聖ジャスミン高校の部員数の多い運動部はソフト部とバレー部。活動が盛んなのはほとんど文化部であるからでもある。
ただ、聖ジャスミン高校には暗黙のルールがある。オレも入学してから知ったのだが、それは「勉強に集中するため」として基本的に水曜日は部活をしないことになっている。
ただ、実際は生徒たちの貴重な休日になっているのだが。
とにかくそのために、どちらの部活も今日は自主連だけで活動しないからだ。
しかし、いた。広いグラウンドに一人だけ。
金属バットを黙々と振っている。
ソフト部なのだろうか、明らかに経験者のものである足を小さく上げるアベレージヒッターの打ち方。そして左打ち。
こちらに気がついた彼女と目が合う。黒髪のショートカットで、野球のユニフォームを身にまとっているおとなしそうな娘。
きれいなレベルスイングで思わず見返してしまった。何故これだけのレベルがあるのにソフト部としての活動をしていないのだろう?
「あの、あたしがどうかしましたか?」
「いや、何でもないよ」
「............」
彼女との無言の会話が続く。
その音比べに負けてしまったオレは、
「練習、頑張ってね」
と声を掛けて、逃げるようにその場を後にした。
まだ夕方なのに、冷たい風が吹いていた。
〜俊太Sideout〜
〜???Side〜
小学校の頃からずっと「女は野球をするな」と言われ続けてきた。
それでも、いやそれだからこそかな。アイツらを「見返してやろう」という気持ちでここまで頑張ってきた。
結果として中学でもエースナンバーを背負えたし、野球を選んで後悔したことは一度もない。でも、あの人からはそんな差別的な気持ちは全く感じられなかった。
もしかしたら......いや、そんなことあるわけないか。
そう思ったあたしは下げていたバットを再び構え直した。
女性だとあの聖地――甲子園にはどんなに力があっても届かない。そんなの間違っている、と声をあげられたらどんなに良いだろう。
でも、あたしにはそれすらできない。声を上げられるような力もない、ただの道端のアリなのだから。
なんか、悲しくなってきちゃったな。今日は遅いし、もう上がろうか。そう思ったあたしは首にかけていたタオルで汗をぬぐい、教室へと駆け出した。
〜???Sideout〜
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