僕が僕であるために   作:なだかぜ

5 / 5
 更新遅くなってすいません。冬休みはしっかり更新したいと思っています。
 小鷹さんがメッチャ悪役になってますがファンの方、お許し下さい。
 話が長くなってしまいましたがそれでは第3話、どうぞ!


第3話:野球しようよ

 〜俊太Side〜

 翌日。オレはクラスのソフトボール部の人に、彼女について聞いてみた。

 すると、どうやら彼女は毎週水曜日の放課後に一人きりで練習をしているらしい。そもそもあの時間でしかも一人では、できることも限られる。それにあの実力があるならソフト部でも活躍できるはず......

 一体どうしてなんだろう?

 〜俊太Sideout〜

 

 

 〜矢部Side〜

 結城くんは野球を辞めたと言いながら、野球にすごく心残りがありそうでやんす。

 しょうがないでやんすね、この優しいオイラがその背中を押してあげるでやんすよ。そこから先、どうするかは君自身でやんす!結城くん......

 

 「結城くん、野球部に入る気はないでやんすか?」

 「今更どうしたの、ココには野球部はないんだよ?矢部くん。はやく夢から戻ってこーい」

 

 せっかく声を掛けたのにボケているみたいな扱いを受けたでやんす......結城くんはやっぱり野球が嫌いになってしまったんでやんすか!?

 〜矢部Sideout〜

 

 

 〜俊太Side〜

 「オイラと一緒に野球部をつくるでやんす!もう友沢くんにも声は掛けてあるでやんす!」

 熱く語ってくる矢部くん。そんなにオレと野球がしたいのだろうか。

 

 「で、亮はなんて言ってるの?」

 「俊太が入るなら俺も、って言っていたでやんす」

 亮にそう言われたのなら仕方がない。

 

 「......分かった。考えておくよ」

 矢部くんの表情が一気に明るくなる。

 

 「ただ、一個聞いていい?」

 「ん?なんでやんすか?」

 それでも、これだけは聞いておかなくちゃならない。

 

 「矢部くんはさ、女の子が野球をやるのってどう思う?」

 オレは昨日であった彼女のこと、そして――アイツのことを聞いてみる。

 

 「オイラは実力があるなら、野球が好きならウェルカムでやんすよ。でもできればカワイイ娘が良いでやんす」

 良かった、矢部くんはいつも通りだ。そして、そういった色眼鏡で見るようなやつでもないらしい。高野連の人たちもこんな人ばっかりだったらいいのに。いや、矢部くんみたいな変態はダメだけれどさ......

 

 それでも矢部くんは動いてくれたんだ。ココで迷っていてどうする、次はオレの番だ。

 「野球経験者の夏野さんも呼んでおくでやんす」

 ......やっぱり訂正。矢部くんはそんなイイやつなんじゃないのかもしれない。

 〜俊太Sideout〜

 

 

 〜亮Side〜

 野球か。肘を壊した自己管理の甘い俺のような奴でも野球に誘ってもらえるんだ。

 俊太にも声をかけてみたが、前向きに考えてくれるらしい。

 

 母さんに聞いたら”自分のしたいことをしていい”と言われた。もしかしたら考えすぎていたのかもしれないと我ながら思ってしまう。

 ただ、家族には迷惑は掛けられないからな。そう思うと俺はバイトに行くためにカバンを背に掛けた。

 

 バイト帰りにミゾットスポーツにでも行って野球用具を買うか。ちょっと手痛い出費だが、ココまで頑張ってきたんだ。少しくらい自分にご褒美があったって良いだろう、そう思う俺の心は晴れ晴れとしていた。

 朝から降っていた雨も止んだみたいだ。空には虹が掛かっていた。それはそう、夢への架け橋みたいに。

 〜亮Sideout〜

 

 

 〜矢部Side〜

 夏野さんに声を掛けるって勢いで言っちゃったでやんす......

 女子に全く人気のないオイラでやんすが当たって砕けろでやんす!それに結城くんの名前を出したらきっと乗ってくれる......はずでやんす。

 ともかく明日があるでやんす。

 〜矢部Sideout〜

 

 〜向日葵Side〜

 「ええっ、野球部に入ってほしいって?」

 「そうでやんす!結城くんも入るって言ってくれたでやんす。オイラたちには夏野さんの力が必要なんでやんす!」

 入学式から2週間ちょっとがたった今日。そろそろ入る部活を決めようかと思っていたアタシに

 そうは言われてもなぁ、アタシたち女子は甲子園には行けないしなぁ......

 

 正直アタシも迷っていた。結城くんが野球部をつくろうとしているっていうウワサを耳にしてから。それでも女子は甲子園に行けない、そのことに引っ張られて諦めたんだ。

 でも、こう誘われたなら、断れる気がしない。アタシも自分に正直になったほうが良いのかな?

 

 そう自問自答していると、矢部くんが核心を突いてきた。

 「女子は甲子園に行けない、そう思っていないでやんすか?」

 「ええっ?」

 まさか、そんなわけ......

 〜向日葵Sideout〜

 

 

 〜矢部Side〜

 夏野さんが驚いた顔をしているでやんす。これはもう貰ったでやんすね!

 「野球がやりたいのなら、続けたいのなら。オイラたちはもちろん力を貸すでやんすよ!」

 

 「そうだね、アタシも力を貸してもらうよっ!」

 「ありがとうでやんす!」

 すごく明るい笑顔でやんす。やっぱり夏野さんは笑顔じゃなきゃいけないでやんす。

 

 「ところで今から結城くんに挨拶に行っていいかな?」

 オ、オイラじゃダメなんでやんすか?それでも夏野さんの眩しい笑顔を見れたからそれで満足でやんす。

 〜矢部Sideout〜

 

 

  一方、同じ頃......

 

 

 〜俊太Side〜

 1週間後の水曜日。オレは彼女に会うために、また同じ時間にグラウンドへと向かった。絶対に会えるなんて保証はどこにもない。それでも、何故か彼女が待っているような気がしたんだ。

 そして、こういう直感はだいたい当たる。

 

 もう薄暗いグラウンドのやはり先週と同じ場所に、今度は壁に向かってボールを投げている彼女の姿が。きれいなスピンのかかった真っ直ぐ、壁ギリギリで曲がる変化球。

 

 しっかりと見たいけれど、今は大事な用事があるんだ。

 「ごめん、練習中に。ちょっと良いかな?」

 アイツがあの時どう思っていたのかなんて分からない。それに勝手に考えられるのは迷惑だろう。

 

 それでも、それだからこそオレにはこうすることしかできない。進む道は間違っているのかもしれないけど、アイツの夢はココで終わらせられるようなものじゃないんだ!

 〜俊太Sideout〜

 

 

 〜???Side〜

 「えっと、あたしに何か用があるんですか?」

 いつもこうだ。初対面の人となると必ず硬くなってしまう。

 

 「ああ、自己紹介がまだだった。オレはあかつき中出身の結城 俊太」

 「あ、あたしは太刀川 広巳」 

 そういえば一週間前に会った人だったっけ?あかつき中といえばあの強豪校か。そんな人がこの学校にいたなんて。

 

 「ところで、こんなところでなんで一人で野球をやっているの?」

 唐突に投げかけられた質問が衝撃的すぎて、理解に時間がかかってしまう。

 

 野球をやる理由、か。そこにあるのが、いつもしているのが当たり前すぎて今まで考えたこともなかった。よく言う”失ってから大切さに気がつくもの”の一つなんだろう。

 ただ、強いて言うのなら―――

 「甲子園に行きたいから、かな」

 

 それを待っていたかのように登場するタカ。いや、こういうことを言うのを待っていたのだろう。

 「ヒロ!そんな無謀な夢はいい加減に捨てなさいよ!」

 タカ、ソフトボールにはもう疲れたんだ。ゴメンね、でも説得は受けないよ?

 「女の子は甲子園には行けないのよ!」

 それはそうだ。あたしはタカの意見になにも言い返せない。

 

 「確かに、今のルールのままだったならね」

 そのときだった。さっき会って今まで影を潜めていた彼から、驚きの発言が飛び出したのは。タカもキョトンとしている。そんなことができるの?

 〜広巳Sideout〜

 

 

 〜俊太Side〜

 「ハハッ、笑わせてくれるのね。たかが一高校生が高野連を動かせるわけがないでしょう?」

 たしかあの娘だ。そう、入学式で新入生代表の挨拶をしていたあの娘。

 

 頭は良さそうだが、それと同時に冷静でウラがありそうな感じもしたのを覚えている。野球部を作るのにこんなに優秀な娘はほっとけないんだ。

 それに、彼女は野球がやりたいという真っ直ぐな目をしていたから。この事実からは誰も目を背けることはできない。

 

 「あたしは今まで野球をやってきた。」

 悲痛に響く太刀川さんの声。

 

 そうだ、一番優先されるべき、いや、されて当然なのは彼女の気持ち。

 それなら――

 「野球しようよ、太刀川さん」

 

 「なに、奇跡を起こそうとしてるの?そんなの無駄よ。奇跡なんて起こらないのだから」

 少しイラッと来た。君だって女性なんだよね?それなら、これだけは言わせてもらおう。

 

 「誰も信じないようなことがあるから、奇跡っていう言葉があるんだろう?今誰も女性が甲子園に出られるだなんて思っていないだろう。それでも女性が出られるようになったらどうだ?奇跡って呼ばれるだろう?」

 オレはひと呼吸おいて続ける。

 

 「それなら、高野連だろうが世間だろうが、そいつらに価値を、実力を認めてもらうしかないんだよ。女性選手でも関係なしに行けるんだ、ってね」

 すごく勝手な話だけど、これで少しは償えたのかな、アイツに対して。

 

 「......」

 「結城くん、オイラたちも混ぜるでやんすー」

 そんなところに空気も読まずにどこからともなく現れた矢部くんと亮、それに夏野さん。そうだな、最初からみんなに声をかければ良かったのに。今更ながらあの時一人で抱え込んだ自分をちょっと後悔した。

 

 「なんだか楽しそうだね。あたしも入れてもらってもいいかな。」

 「ま、また今度ね。ヒロ」

 あ、逃げちゃった......

 

 一歩出て夏野さんが聞いてくる。矢部くんは勧誘に成功したのだろうか。

 「アタシも野球部に入れてもらっていいかな?ねぇ、いいでしょ?」

 「うん、むしろこっちからお願いしたいくらいだよ。よろしくねっ!」

 オレは精一杯の笑顔で答えることにした。夏野さんも嬉しそうだ。

 

 それでもこれで野球同好会の部員は5人。矢部くんと亮、太刀川さんに夏野さん、そしてオレ。

 この調子で部員...いや会員を増やしていければいいな。

 

 そう思っているオレの横で、今日も矢部くんがはしゃぎまわっていた。それはまるで、無心で野球を楽しめたいたあの頃のオレのように。

 空の虹ももうすぐ消える。その後の空は透き通っているのだろうか、それとも曇りきってしまうのだろうか?

 〜俊太Sideout〜




 矢部くんの話し方が難しい......
 ご意見、ご感想よろしくお願いしますm(_ _)m

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。