『譎詭変幻』まさみゃ〜の二次創作設置所(*´ー`*) 作:まさみゃ〜(柾雅)
「……よし」
狼森カエデは計画する。決行日は明日、12月24日。
その日の為に、数週間前からアルバイトをしてお金を貯めてある。だから今日は、普段は気にも留めないコスプレ用の衣装を扱う店に来た。ネット掲示板の人たちの協力により、買うべき衣装はもう決まっている。画像を検索してみたが、露出度が高い。けれど、彼女が喜んでくれるなら彼は我慢できるだろう。
そしてカエデは、意を決してコスプレショップに足を踏み入れた。
「結構種類があったんだなぁ……興味は無いけど」
目的の物を買い残るは贈り物。これは今日まで考えていても何も良い案が思い浮かばななっかたらしい。
「……ってココ何処だ?」
考え事をしているうちに、どうやら裏路地に迷い込んでしまったらしい。けれど辺りを見回していた彼の視界に何かが映った。
「……あ、あれにしよ」
外の空気は少し肌寒い。けれど、彼の視界に入ったとあるお店は、ショウウィンドウからしてとても暖かそうだった。
案の定、入店してみればその空間の暖かさはすぐに感じることができる。
アンティークな木造建築のような内装に、石油ランプのような淡い光を放つ照明。冷えた肌を優しく包む暖気と、仄かに香るグリス。
カエデの五感の殆どが、不思議な世界へと旅立たせられていると、老人が奥の部屋から出てきた。
「おや珍しいお客さんだ。こんな辺鄙なお店に何か用かねお嬢さん?」
「あ、えっと、オレは、その……いつもお世話になっている人へのクリスマスプレゼントを用意しようと思って、その……」
一見、優しそうな雰囲気な老人ではあるが、カエデの狼男としての本能が警戒させる。
「そんなに警戒しなくても良いよ。それで……クリスマスプレゼント…だったかい? 時計をプレゼントするなんて趣があるねぇ。私は此処にいるから自由に見て回りなさい。きっと、良いものが見つかるさ」
カエデが老人に対して警戒をしていることは、直ぐに悟られた。老人は温厚な性格で、優しくカエデに語りかけた後にニッコリと頷く。
「えっと……失礼……しマス」
照明の灯りを反射する時計の金属の光沢。壁に掛かった振り子時計はそれぞれがバラバラに揺れている。けれど、秒針の時を刻む音にズレはない。
見て回るが、カエデには時計の良し悪しなんて分からない。けれど、異世界に迷い込んだような気分になり、とても心を踊らされている。
「……あ、コレ良いかも」
ふと、一つの懐中時計がカエデの目に留まった。その時計を見るために彼は軽く足を止める。
「結構綺麗だな……」
その懐中時計を手に取ってまじまじと彼は観察する。
少々鴉のように黒いが、どこか暖かい。金属冷たさと、ずっしりとした重さが手から伝わる。
カエデは気が付いていないが、懐中時計はハンターケースタイプである。その蓋の裏には、狼と雀が彫刻されている。
「あの、これ……」
「おや、良いものを掘り当てましたね。でも、本当にそれで良いのかい?」
「ま、まぁ……あ、でもお金が」
ここに来てカエデは思い出す。今の手持ちでは、まともに時計を買えるほど残っていない事を。
けれど、老人は笑顔でカエデに語りかけた。
「お代はコレくらいで良いさ。老人の暇つぶしに始めたものだしね。それに、元々私が昔集めていたもの達だからね。あ、でも、修理する時は此処に持ってきてくれるかな?」
「え、良いんですか!? わ、分かりました! ……と言っても、歩いてたら偶々此処に辿り着いたからなぁ……」
「なーに、その時計を持ってさえいれば自然と来れるさ」
「そんな不思議な事、あるわけ――」
「無いとは限らないよ?」
「…………」
カエデは言葉が詰まる。確かに自分の様な存在も、彼女も本来は不思議な事に含まれてしまうのだから。
「……ありがとう……ございます」
「いやいや、こちらこそありがとう、お嬢さん。それと、冷えるから帰る時は気を付けるんだよ」
こうしてカエデは不思議な時計屋を後にした。
――12月24日 クリスマスイヴ――
「キャーー!! え? え? 何その衣装!! とっても素敵よ! 具体的には今すぐ襲いたいくらい!!」
「ちょ、変なとこ触るな!」
カエデは現在、露出度の高いサンタの衣装を身に纏っている。小さなマントで肩は隠れるが、臍や太腿は露わになっている部分が多い。
「大丈夫? 寒く無い? 私が暖めてあげよっか?」
「い、いらんわ!! というかサッサとプレゼントを受け取れ! あーもう、あとで着替え――」
「あら? 今回の計画は、今夜だけ私のサンタさんじゃ無いのかしら?」
「っ!?」
カエデは、現在背を向けている相手……灰鳩スズメの方を恐る恐る見る。彼女の顔は意味有りげな笑みを浮かべて、ただ無言でカエデを見ているのだ。
「な、な、何故それを……知って……と言うかいつから……?」
「カエデくんがアルバイトを始めた時から」
「初期の方からじゃねーか!! ――ヒィッ!?」
突然、カエデの背筋に悪寒が走る。相手はただ、妖艶に舌舐めずりをしただけだと言うのに。
一歩、彼女がカエデの方へ足を踏み出す。カエデは筋肉が強張ってしまい、腰を抜かしてしまう。
「あらあら? どうしたの急に?」
一歩一歩スズメはカエデに近寄る。目は獲物を捕らえた捕食者そのもので有り、腰を抜かしたカエデは逃げられない。それに、カエデはあの時の快楽をまだ覚えている。故に、本能がその快楽を求めてしまっているのだ。
カエデ自身否定したい気持ちではあるが、もう喉が渇いている。首の皮膚の下から熱や何かが擽っている感覚もあり、本格的に力が入らなくなる。
「や、やめ……」
カエデの腰の上に跨ったスズメは、彼の顔に自身の顔を近づける。
さり気なく左手でスズメはカエデの顎をクイっとあげた。
「もう、そんなに怯えなくても良いのに……酷いわぁ」
「お、怯えてなんか……」
「あら、そうなの? じゃあ……」
――今夜は寝かせないわよ、私のサンタさん♪
接吻で狼は堕ちた。
聖夜の前日の夜、狼はか弱き雀に食べられたのだ。
ブレゼントとして用意されていた懐中時計は、二人が愛し合う音を聞く。
熱々な怪異調査相談室のクリスマスイヴの夜は終わらない。
ハロウィン回書けなかった(´;ω;`)<気が付いたら過ぎてたの