『譎詭変幻』まさみゃ〜の二次創作設置所(*´ー`*) 作:まさみゃ〜(柾雅)
という事でifルートです
※ヤンデレ注意
何かの物音で狼森カエデは目を覚ますだろう。しかし瞼はまだ重い。
その音は自宅では普段耳にしない音であり、具体的には何かをかちゃかちゃと叩いている音だ。
――この音は……?
そして思い出す。その音は灰鳩スズメが偶に使用するパソコンへの出力機の一つであるキーボードを叩く音だった。
――それにこの匂いは……スズメ?
「あら? カエデくん起きたの?」
足音がカエデに近付くと、普段通りの相棒と変わらない声に彼は安心する。
「あ、ああ……でも瞼が重くて開けられねぇ……」
「……そう。でももうじき開けられるようになると思うわ」
「それなら良かった……」
安堵の溜息を吐くと、スズメがカエデに問いかける。
「ねぇカエデくん。貴女は今起きる前の記憶はある?」
「起きる前の記憶……?」
分からない。と言うか思い出せない。それが彼の答え。確か昨日の夜道は明かりが少なく、視界が悪かった。その後は……覚えていない。ただ知っている匂いが仄かに香った事は覚えていた。
「分からん。でも……首筋辺りが少しビリッとしたような……?」
「そう、なら落ち着いて聞いて欲しい事があるの。貴女は昨日、暴漢に拉致されそうになってたの」
嫌な記憶が呼び起こされる。初めて彼女と出会ったあの日を連想してしまう。
「こーら、落ち着きなさい。でも安心して、私が奴らを退治してやったわ!」
やっと開けられるようになった瞼。解放された視覚がまず初めに写したのはスズメのドヤ顔だった。
「はは、そりゃ安心だ……っと」
「あら、まだ少し麻痺しているのね。もう、か弱い乙女になんて事をするのよ」
態とらしく彼女は頬を膨らませる。
そうか、だからあの時スズメの匂いがしたのか、とカエデは納得する。心の何処かで少し彼女を疑っていた自分を殴りたい。
「あ、そうだ、今から朝食を作るから待ってて。まだ痺れているのだから動いちゃダメよ?」
「分かった。身体が動かしニクイ状態で動くのはメンドーだからな。あと、最近は言ってないけど俺は男だからな」
「あらそう。それでも、私は……好きよ?」
そう言って、彼女は部屋から出て行ってしまった。
「好きって……いつも言ってるから知ってるっての」
しかし、カエデは照れない。既に知っていることだし、自身も彼女の事を意識している事ぐらい彼女も分かっているはず。ただこの「探偵とその助手」と言う距離が丁度いいのだ。
「まだ痺れが抜けないし寝よ」
こうしてカエデは再び瞼を閉じた。
◆
「ちゅんちゅん」
カエデは知っている声に起こされる。
「……おい、なにしてんだ?」
「何って……起こしてあげてるのよ?」
「だからって頬っぺた突っつく必要はねーだろ」
「えー、ちょっとぐらいいいじゃない。減るものでも無いじゃない」
「そりゃそうだけどさー……」
ぷいっとそっぽを向くカエデ。そこにスズメは彼のご機嫌をとるように言う。
「朝食出来たわよ。もう大丈夫でしょう?」
「っ! ああ、もう痺れはないぜ」
ヒョイっとカエデは起き上がり、ベッドから降りる。親切にもスリッパが用意されていた為、彼はそのスリッパを履くとスズメの後を追った。
◆
こうしてカエデは一週間灰鳩スズメの家で過ごすことになる。しかも一度も外出はしていない。
「なー、そろそろ外出られるんじゃねーのか?」
「え、ええそうね……」
しかし、カエデから見てスズメはどこか焦っている様子だった。その焦りは四日ほど前からカエデは感じ始めていたが、日に日に増す焦りでスズメは自身の腕を傷つけるようになっている。
「おっと、また血出てるぞ」
カエデは自らの腕に爪を立てているスズメの腕を掴んで自傷を止める。
「あ、あら、ごめんなさい。私としたことが……」
「本当だ、全然らしくない。日に日にお前、焦っているように見えるぞ? どうかしたのか?」
「……そう、だったの」
「あー……なんつーかさ、俺……いつも通りのお前が好きなんだよ。だからその……」
恥ずかしそうにカエデは頬を掻く。視点は自身の発言に対しての羞恥でスズメからズレるが、はっきりとは言った。
すると、スズメはカエデの両頬に手を伸ばし、自分と真正面から向かいあわせるようにカエデの視線を矯正した。ふわり、とスズメの普段愛用している香水がカエデの鼻を掠め、カエデは少し緊張する。
「ねぇ、もう一回……もう一回今の言葉言ってくれるかしら?」
「なっ!? なんでオレがそんな事――」
「言ってくれたら多分いつも通りに振る舞えるかもしれないの、お願い!」
「……あーもう……いつものお前が好きだよ」
「ええ、私もカエデくんがだーい好き、よ」
気が付けばカエデはスズメと唇を重ねている状況に置かれていた。首には片腕を回され、片手で頭を抑えられている。スズメという名前である彼女の目はもう、猛禽類の様に鋭くなっている。
舌を入れられ、息が途切れ途切れになっても吸われ、鼻で酸素を補給する度に彼女の甘い匂いが脳を刺激する。
どれくらいの時間が経ったのだろう。カエデはすっかり茹でダコの状態となり、腰を抜かしてその場に座りこけている。スズメは妖艶な笑みでカエデを見た後、彼に近付き言った。
「もう、すっかり女の子じゃない……カエデくん。でも、それでも私はあなたが好きよ。その目、腕、脚、胴……髪の毛も爪先も余す事なく貴女と言う存在が……だーいすき」
カチリ、とカエデの首元で何かが鳴った。それはチョーカーのような物であるが、装飾のストラップの先に何かが付いている。
「これは私からのプレゼントよ、カエデくん。でも絶対に外さないで……ね?」
スズメはさり気無くカエデにそのチョーカーを装着させると、彼に……いや、彼女に甘えるようにもたれかかる。
「貴女がいけないのよ? 私をここまで貴女でいっぱいにさせたのだから……責任とってね♡」