Unlimited Fantasy Online ~カス共の狂騒曲~   作:普通の燃えないゴミ

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はい、2話目です
こっちは大分短いよ


Episode:002【血みどろレア泥アオミドロ】

 猪突猛進。その言葉通りにビッグボアはビニール袋を轢き殺さんとばかりに駆ける。木の根ででこぼこした地面も何のその、転んでくれる気配は無い。

 発砲するも、威力が足りないのかスーパーアーマーなのか、怯む気配も無い。

 

「マジかよ!」

 

 効かないなら避けるまで。というより避けないと死ぬ。問答無用で一発アウト、擦り硝子のように砕け散ってお陀仏だ。幸い(?)な事に相手の攻撃方法は突進、ひとまず横に走る。走るしかない。

 

「退避!!」

 

 10メートル程はあった彼我の距離があっという間に縮まったが、なんとかギリギリで避けることに成功。真横に走れば回避は可能のようだ。相手が一直線に走る猪で助かった。

 ビッグボアは大きな音を立てて後ろにあった大きめの木に激突、なぎ倒して停止した。避けられた事に腹を立てたのか、こちらを向いた時に目付きがよりキツくなっていた。避けたらキレられるとか理不尽が過ぎる。

 

「逃げよう、うん。今の私じゃまず勝てない」

 

 踵を返し、全力ダッシュ。しかし悲しきかな、ビッグボアの突進の方が速度は早いのである。AGI0(クソ鈍足)が獣の走りに勝てる訳が無い。そんなことは火を見るより明らかだ。

 再び開始されるビッグボアの突進。予備動作として2,3回前足で地面を引っ掻くように蹴るので発生がわかりやすい。軌道も走行開始時に向いていた方向へ一直線で回避行動も取りやすい。その代わり当たったら問答無用で即落ちするが。

 だからといって諦める理由にはならない。

 

「…HP減ってる?」

 

 回避時にふと見えたHPバー。ビッグボアの頭上に表示されているそれは、僅かながら減少していた。緑のバーが削れて、右端が白くなっている。先程から木に激突していたからだろうか。

 

(とっしんやすてみタックル系?)

 

 ヒットの度に反動ダメージを受けているのか、実は防御力が低いから気にぶつかる度にダメージを負っているのか。何にせよ相手のHPが大体1割ぐらい減っている。

 

(2回の突進でおおよそ1割…って事は、あと18回木にぶつければワンチャン…?)

 

 少しでも避けやすくする為、全力で距離を取りながら思考する。視線は常にビッグボアの挙動に注がれている。だからといって思考力が落ちる程ヤワな頭でもないのだが。

 ビッグボアが1度鳴き声を上げ、突進開始。そしてそれを全力で横に走ってギリギリ回避。ビッグボアは勢いそのまま、木に突撃しへし折る。

 

(よし、減ってる…あとはこれをこのまま…)

 

 減り具合から見ると残り17回。予備動作を見逃さないようにビッグボアを注視しつつ、木の根っこで凸凹した地面を全力ダッシュ。

 

「いや無理だよ畜生!」

 

 もたない。UFOにはスタミナという概念が無い為このまま全力でダッシュし続ける事は別に問題無い。無いのだが、敵が自滅するまで逃げて避け続けをこのままというのはとてもしんどい。ゲーマー精神的に。ついでに言うと、

 

「ヴェッ!?」

 

 ビッグボアから目を逸らせないので、こうして木の根っこに躓いて転んでしまう。さらには衝撃でHPが441から200にまで減少するという体たらく。

 そして極めつけは、走り出したビッグボアだ。

 

(あっ、死んだわコレ)

 

 回避は、間に合わない。残念だがもう1回リスポーンかぁ。

 そうして、諦めた瞬間だった。

 

「《フリーズスピア》!!」

 

 氷塊を纏い冷気と共に高速で飛来する、1本の槍。ガラスが割れるような大きな音を立てて、一直線にビッグボアの側面へと突き刺さった。

 

『ボモォォァァァ……』

 

 倒れ伏し、動かなくなるビッグボア。HPバーは空になっていた。

 一応弾丸でダメージが入っていたようで、経験値だけはしっかりと貰えてしまった。流石はレアエンカウント、経験値も多く、レベルが一気に2つ上がった。

 

「一撃っておま…マジかよ…」

 

 一体誰が。レベルアップによって増加したステータスポイント20を全てDEXに振りつつ、槍が飛来した方向に首を向ける。

 最初に目に入ったのは白。全体的なシルエットでいえばずんぐりむっくりとした体型。白い布地の胸部に大きな蜘蛛のような赤い紋様が刻まれている。頭部は兎で、返り血まみれで舌を出してウィンクしている腹立つ顔だ。遊園地で子供達に風船を配っているような、デフォルメされた着ぐるみだった。左手にはチェーンソーを持っていた。

 間違いなくさっきの氷槍を投げた人物だろう。

 

「子供泣くぞ…」

 

 そんな微妙にズレた感想を呟きながらビニール袋は立ち上がる。何はともあれ助けてもらったお礼を言わなければならないので。

 

「ん、やっぱプレイヤーだったか。すみません獲物取っちゃって」

「いえ、大丈夫ですよ。倒せなくて逃げ回ってただけなんで」

 

 そう言って彼―――低くて格好良さげな男声に聞こえるので便宜上彼とする―――はビッグボアが消えた位置に落ちている槍を拾う。西洋のものでも東洋のものでもない、機械チックな見た目の槍だ。ただ、どういう訳か所々ひび割れている。

 

「ならよかったです。…そういえば、1人なんですか?」

「あぁ、はい。友達はテスト版からのプレイヤーなんで、レベル上げがてら少し慣れてから合流しようかな、と。多分この森のどっかに居ると思うんで」

「なるほど。じゃあ合流まで一緒にやります?」

「え、いいんですか?」

 

 思いがけない誘いだった。どう考えても足でまといにしかならないプレイヤーと一緒に居たいなんて何を考えているんだろうか。

 

「ええ、大丈夫ですよ。実を言うとこっちも似たような感じで。製品版からの友達が居るんですが、連絡取れなくて。多分ここら辺りに来てると思うんですよねー」

「なるほど。人探しなら2人の方がいいですね。じゃあ、よろしくお願いします」

「はい。じゃフレコ交換しますか」

「ですね」

 

 メニュー画面を開き、目の前の相手にフレンド申請を送り―――

 

「…え」

 

 ―――言葉を失った。

 

「…く」

「…ふ」

「「あっはっはっは!」」

 

 2人して大きな声を上げて笑う。

 

「マジか。おまっ、マジか」

「そう来たか。そっかー、そう来ちゃったかー」

「ビニールさんっ、初対面の相手には、あんな感じなんだ」

「それ言ったら、さんっゴミも、ひっ、結構ちゃんとした敬語、使うんだね」

 

 笑いながら互いに感想を述べる。

 そう、この血みどろの着ぐるみこそが探していたさんゴミ…正式名称、粗大ゴミ。気付かぬうちに合流し、互いに気付かないままパーティを組もうとしていたのだ。

 

「そりゃだって、初対面だし」

「顔見知りだけどな」

「ほんそれ」

 

 くつくつと笑いを抑えつつ話す。ひとしきり笑って、肩で息をする。

 

「あ、そうだ聞きたいことがあるんだけど」

 

 唐突にビニール袋が口を開く。

 

「えっ、何」

「さっき…いやさっきって言う程さっきでもないんだけど…この辺から空に向かって青い斬撃みたいなのがとんでったの見てさ。アレもしかしてさんゴミの仕業?」

「あーアレか。うん。やったやった。見る?」

「マジ?いいの?見たい見たい。さんゴミの格好いいとこ見てみたーい」

「ふっふーん。しっかったなっいなぁ。次あのビッグボア出たらな」

「いぇーい、そうこなくっちゃあ!」

 

 パチン、笑顔でハイタッチする。

 こうして晴れて合流した2人は正式にパーティを組む事となった。

 

「は?DEX極振り?えっ、正気?」

「正気で同人活動が出来るか」

「ゲームだよこれ」

 

 途中、ステータスの話になったのでビニール袋が振り方を明かした。おかしいとしか言いようのない振り方に、粗大ゴミも笑う。

 しかしこの男、笑ってはいるが自分も準極振りなのである。割合はSTRとINTに1:1。既にレベル21にして、装備品の分も含め200を超えている。ちなみに一般的なバランス型のプレイヤーであれば高くても100と少し程度である。

 

「しかしDEXでどう戦うんだ?銃火器にボーナスが入るとはいえ、火力足りる?」

「足りないに決まってるでしょうが。寄生すんだよお前に」

「寄生宣言は草だわ」

「いや実際ね、命中率はいいんだけどね、ダメージ全然伸びないの」

「でしょうねぇ」

 

 本当に困った事に、ザコ敵なら兎も角、レアエンカウントとなると分が悪いってもんじゃない。ある程度レベルが上がってスキルや装備が整うまでは寄生するしか選択肢はないのだ。

 

「まぁ別にいいけどさ、寄生したって。とりあえず他のメンバー探さない?」

「ダンボールハウスの?」

「そう」

 

 粗大ゴミは首肯する。ダンボールハウスとは、ビニール袋や粗大ゴミの所属するとあるゲーマーチャットのサーバーの事だ。正式名称は「燃え盛るダンボールハウス」。火事だ。バーニングダンボールという名で活動している動画投稿者が管理するサーバーであり、よくゲームしては録画や生放送をしている。

 

「構わぬぜ。ニャルさんとチキンさんはもう居るんだっけ?」

「あとおソイくんももう居る筈」

「おソイくん名前入ったのかな…?」

「どうだろう…?」

 

 ニャル、チキン、おソイ。いずれも燃え盛るダンボールハウスのメンバーであり、ゲーム仲間だ。フルネームは順に、✝無貌の堕天使()✝、七色チキン味噌、おしゃれクソガイジ。酷いネーミングセンスである。内、✝無貌の堕天使()✝は粗大ゴミのリア友であり、無貌からかの這い寄る混沌を連想され、そう呼ばれるに至った。他の2人は四半期に一冊のペースで同人誌を作っているらしい。ニッチなジャンルらしく詳しくは聞いていないのでわからないが。そしてそんな2人がこんな時間のかかるゲームをするような余裕があるのかはわからない。もしかすると寿命を削ってでも自感を生み出している可能性もある。良い子も悪い子も絶対に真似をしてはならない禁忌だが。

 他にも燃え盛るダンボールハウスには色んなメンバーが居るものの、今回は割愛する。が、マトモな名前をしている者は稀である事だけ補足しておく。リーダーの名前がリーダの名前なので、仕方が無いといえばそれまでだが。

 

「ッ、居たな」

「あー…さっきのドスファンゴ」

 

 前方右奥。丁度木々の陰になっていて向こうの視線は通っていないようだが、はっきりと敵影を確認した。

 

「よーっし、約束通りカッコイイとこ見せちゃうかな。…ところでビニールさん、アレ撃てる?」

「んー…多分いける」

「じゃお願い。一応近接技だから、突進して来て欲しいんだ」

「OKOK任せておくんなし」

 

 腰のホルスターからコルト・シングルアクション・アーミーを取り出し、広く射線の通ったところで発砲。有り余るDEXによって射程と威力が上昇したそれは見事にビッグボアの頭部に命中し、そのHPを僅かに削る。

 そして攻撃がヒットした事により、ビッグボアがこちらを捕捉。戦闘開始だ。

 咆哮をあげ、3度地面を引っ掻く。突進の予備動作だ。それを確認するとビニール袋は数歩下がり、粗大ゴミの邪魔にならない位置まで離れる。同時に、ビッグボアは突進を開始した。

 

「《蒼填》」

 

 腰だめに構え、チェーンソーを起動。殺意の篭った音が鳴る。さらにアクティブスキルを使用。刃を蒼いオーラが包む。名前の所に表示されているアイコンから見るに、STRとINTにバフをかけているようだ。ちなみにこのチェーンソー、見た目が独特なだけで、分類上片手半剣にあたるらしい。

 ビッグボアが迫る。彼我の距離は、あと1メートル。

 

「《星霜一閃》!」

 

 攻撃スキルの名前を叫び、発動。唸りを上げるチェーンソーを、太刀を抜刀するように逆袈裟に振る。回転する刃はビッグボアの頭部へと牙を折り、根元から食い込み、強化された膂力を以て頭部及び首、胴体の首に近い部分までをも断ち切り、巨体を蒼い衝撃波と共に打ち上げる。内側から爆ぜるように裂けたビッグボアは鳴き声1つ上げることなく、空に伸びる柱の中で消滅した。

 ドロップアイテムと経験値が落ちて、戦闘は終了。僅か数秒、1ポイントもダメージを受けずに勝利した。

 

「かっこいいかよ…」

「へっへ、だろう?火力は正義だ。楽しいぞー?」

「確かに楽しそうだが私はDEX極振りから変えん」

「まぁ、そう言うとは思ってたけど」

 

 ビニール袋はレベルアップしたのでDEXに20ポイント割り振り、147となった。いい具合に伸びていっている。一方の粗大ゴミは元々レベルが20を超えているのでまだまだレベルアップには遠いようだ。

 

「で、素材出たの?」

「出たけど足りない」

「じゃまだまだ探す感じか。綺麗に居たけどあれってレアエンカウントでしょ?気が遠くなりそうだなぁ」

「そうでもない」

「マージー?」

「まーじー」

 

 粗大ゴミは1つのアイテムを取り出す。『シンボル・ポーション』という、小瓶に入ったアイテムだ。使うと通常エンカウント確率が下がり、レアエンカウント確率のアップするアイテムを使っているんだとか。使用者のレベルがレアモンスターのレベルより高ければ高い程効果も上がるらしい。それならばまだ楽そうだ。

 

「そんじゃあ、頑張っていこー」

「おーー」

 

 気の抜けるような雑なテンションで、森の奥へと踏み込んでいく。期待に胸を膨らませ、しかし警戒は怠らず。ゲーマー達の長い夜は更けていく。しかし、この時彼ら2人は知る事はなかった。

 

 ―――2人共LUCが0なばかりに、素材アイテムのドロップ率が半減しているという事に。




粗大ゴミ
・STRとINTに振ったアホ
・血みどろのウサギの着ぐるみ
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