ダンジョンに夢と希望を求めるのはまちがっているのだろうか。 作:しろくまお
最初、ペンギンを見てビートたけしの声が頭の中で再生されたのは内緒です。
ハク・トリトン
Lv.1
力: E 452
耐久: F 325
器用: C 687
敏捷: D 528
魔力: I 10
《魔法》
《スキル》
目標願望《オブジェクティブ・フレーゼ》
・目標達成時までのみ早熟する。
・目標への意欲により効果向上
「だいぶ成長したね。」
上半身の服を脱ぎ、うつぶせになっているハクの上にヴァーユは馬乗りになって、更新したステイタスを確認していた。
恩恵を刻んでから約1ヶ月、ランクアップ出来る可能性があるD以上のステイタスもいくつかある。特に器用が突出して伸びている。毎日、ダンジョンで弓を射っているので命中させることで器用の経験値がたまっているのだろう。
しかし、いくらなんでも成長速度が早い。これもスキルの影響なんだろうか?目標願望《オブジェクティブ・フレーゼ》に関する詳細は未だ刻まれたハクはおろか主神であるヴァーユも把握出来ていない。
(せめて、あまり目立たないようなスキルであってくれよ。)
ヴァーユは心の中でそう祈った。しかし、目標願望《オブジェクティブ・フレーゼ》は間違いなくレアスキルである。神のなかでは比較的、常識、教養があるヴァーユがその事を知らなかったのは自分の趣味、そしてこの前の神会《デナトゥス》での出来事が関係している。
ハクが豊穣の女主人で夕食をとったあの夜にヴァーユはどこか適当な宿をとり、そこで神会《デナトゥス》への準備を進めていた。ホームで出来なかったのはハクに見せたくないものをたくさん用意しなければなかったからだ。それは百合本、そう女の子同士がキャッキャウフフする本である。
彼女は女の子×女の子というカップリングを非常に好んでいた。しかし、下界に降りてきてからというものその手の本は手に入らなかった。やはり神と子どもたちの感性は違うのかと愕然としていたときに思い付いた妙案が神会《デナトゥス》である。子どもたちでは作れないとしても自分と同じ感性を持つ神ならば百合好きだっているだろうし、天界と下界の文化を調合させた素晴らしいものを作れるだろうと予想していた。
そのため、自分が天界で読んで記憶していた百合本の詳細を書き留め書類にして他の神からの情報提供を促そうとしたのだ。結果として作戦は成功、情報だけでなく現物をただで渡してくれる神もいた。その神いわく
「大丈夫、それは布教用だから。百合の素晴らしさを分かってくれる人には喜んで差し出すよ。」
とのことらしい。
そのため、ハクがダンジョンに行っている間、ホームの掃除や洗濯など日常生活を送っている傍らもらった本を食い入るように見ながら、神と人の奇跡を頭に入れていった。
そういった理由があるため、今、彼女はハクのことをあまり把握出来ていない。基本的に放任主義ではあったもののこれはあまりにもひどい。
だからだろうか。神の天罰がくだったのは(神が神の天罰をくらうというのも変な話だが。)
突然、ハクが心ここにあらずのヴァーユを座らせ少しかがんで目線を合わせこう、語りかけてきた。
「ヴァーユ様、僕は貴方にとても恩を感じています。出来ることならなんでもしてあげたいです。でも、今のヴァーユ様にはなんだか覇気がありません。今のままではこのファミリアは終わってしまいます。」
「僕も、これまでの行いに思うところはあります。」
「そこで、しばらく離れて暮らすというのはどうでしょう?お互い、自分を見つめ直せばなにか分かるかもしれません。安心してください。必ず帰ってきます。」
そういってハクは出ていってしまった。突然のことに空いた口が塞がらないヴァーユは少し経ったあと、急いでホームから飛び出したが、ハクの姿はどこにも見えなくなっていた。
「あぁ、ごめんよ。ハク君 私がこんなに頼りないから君は出ていってしまったんだね。」
大粒の涙を流しながらヴァーユはホームに戻っていった。己を見つめ直す。ハクに言われたことを実践するために。
所変わって、東のメインストリート。
ホームを出たハクは今夜からお世話になる宿へと足を進めていた。
「ヴァーユ様、これで心おきなくあの本を読めるよね。このときのために宿もとってたし、前から実行しようとしてたってバレたら怒られるかなぁ」
ハクには自分の主神の考えはお見通しだったらしい。