ダンジョンに夢と希望を求めるのはまちがっているのだろうか。 作:しろくまお
見慣れた部屋、ゴツゴツとした岩の上に建っている部屋、家の様相はなくただ、剥き出しとなった部屋だけがそこにある。そう、帰ってきたのだ。我がホームに。
「ヴァーユ様はどこかな?帰っているかな?」
強く押せば壊れてしまうであろう戸をそっと押して僕は中に入った。あまり長い間家を開けていたわけではない。けど、久しぶりに入った部屋はなんだかとても懐かしい気持ちにさせた。
一通り探したがヴァーユ様は見つからない。どこかに出掛けているのだろうかとヴァーユ様が行きそうな場所を頭に思い浮かべていると、何かが足元にぶつかった。
ふと視線を下ろすと、そこにいたのはくたびれた毛布にくるまって眠っていた一人の女性。耳がピンとたっていることから猫人だろう。
少し良く見ようと近づいたとたんに彼女は素早く起き上がり、俊敏な動作で毛布の中に一緒に隠していた長剣を僕の方に突きだした。
「何者だ、お前。」
「僕の方こそ聞きたい。あなたは誰なんだ?ここは僕とヴァーユ様のホームだぞ。」
彼女はヴァーユ様の名前を聞くとピクッと耳を動かしてこちらを訝しげに見てきた。
「白い髪とその明るい緑の目、そうかお前が眷属のハク・トリトンか、。」
彼女はそういって長剣を納めるとこれまでの経緯を話し始めた。
彼女はもともと、冒険者だったらしい。しかし、運悪くお世辞にもあまり良い神に巡り会わなかったらしく、先日ファルナを消されたらしい。その後、空腹で倒れたところを助けたのがうちの主神であるヴァーユ様ということらしい。
行く宛が決まっておらず、途方にくれていた彼女にヴァーユ様はうちのファミリアに入らないかと誘っているらしい。
「それで、すぐには決められないから少し厄介になってるってとこだ。」
彼女はどこかバツが悪そうにそう答えた。
僕が見た感じ、彼女は悪い人ではないと思う。そりぁ、初対面で斬りかかられたことは第一印象としては最悪だが、このファミリアに悪影響を及ぼすものではないはずだ。
そうなると後は彼女の気持ち次第の所があるので僕はこうなると何も出来ない。気ままに待たせて貰おうといつもの所定場所である椅子に座った。彼女がチラチラとこっちを見てきているが気にしない。元来、人と話すのはそんなに好きではないのだ。いずれは直さなければならないものだとも理解しているがまだそのときではない。
暫く無言の時間が続く。彼女もこちらを気にするそぶりをやめ落ち着かないのか長剣をずっと触っている。
暫くすると、戸が開いてヴァーユ様の声が聞こえた。
「シェン、いる?起きてる?」
入ってきたヴァーユ様は
こちらに気づくと目尻に大粒の涙を浮かべ一直線にこちらに飛び込んできた。
「ハク君、ハク君なのかい?」
僕はヴァーユ様をしっかりと抱き止めると出来るだけ優しい声音で言った。
「はい、ヴァーユファミリアのハク・トリトンです。急に出ていったりしてごめんなさい。」
「バカ、本当にそうだよ。でも、良かった。見放されたかと思った。」
「よっぽどのことがない限りは大丈夫ですよ。必ず戻ってきます。」
そういうとヴァーユ様は、そこは、どんなことがあっても見放さないくらいは言って欲しかったなと満面の笑みで言った。
ヴァーユファミリア、ここに小さな小さな復活である。