ダンジョンに夢と希望を求めるのはまちがっているのだろうか。   作:しろくまお

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準備と問答

あの埃を被った部屋の中で入団を済ませた数日後、僕は周りの掃除をただひたすらにしていた。なにしろ今のままでは人が住めない、それほどに汚かったからだ。神様は神様だから大丈夫だとしても僕は人間だ。あまりに不衛生な場所にいると病気にかかってしまう。そのためここ数日間はずっと掃除に精を出していた。おかげで部屋はだいぶ綺麗になりなんとか2人が住むのには問題ないほどの環境になった。掃除が終わりその辺に転がっていた椅子を立て座って休憩しているとヴァーユ様が右手に何かを持ってこちらに近付いてきた。

「これ、君が倒れてた横に落ちていたやつなんだけど何だか分かる。?」

 

そうやって見せてきたのは弓矢と注射器の混ざりあったようなものだった。薬品を入れるシリンジから矢柄が伸び矢羽が付いている。きっと注射針が矢尻の役割を果たす物なんだろう。そしてこれが僕を傷つけたもの。弓矢のように放たれたのだからあの量の出血は納得出来る。そこでふと、今更ながらのような気もするが疑問が生まれた。

「ヴァーユ様、そういえば僕の傷ってどうやって治ったんですか?」

すると、神様は高く積まれた棚から緑色の液体が入ったフラスコを取り出してきた。

 

「これは、回復薬《ポーション》といってね体にかけるとけがが治ってしまうというすぐれ物さ。効果の強さや何に効くかなんてのはそれぞれ種類があるから全部は説明しきれないけどね。なんせ今、私の手元にはこれしかない。」

 

「そんな大事そうなものを僕のために、、あのお代を出しますので。」

 

「そんなお金君には無いだろう?というか治療のため少し体をいじらせてもらったけど、君、何も持ってなかったじゃないか。」

そういわれると痛い。田舎育ちだったので大都市に要るものが分からずなんとかなるさの精神で僕はここまで来てしまったのだ。

 

「まぁ、これから何らかの方法でお金を稼いでくれれば良いさ。ところで、君は何しにこのオラリオにやって来たんだい?」

僕は特になにを考えるでもなくずっと温めてきたおもいを打ち明けた。

「僕は、冒険者に憧れてこの街に来ました。貪欲に夢を求めて冒険するその姿に憧れて。」

 

それを聞いたヴァーユ様は少し顔をしかめたあと

「悪いが、その考え方をしてるうちは私は君が冒険者になることには反対だな。」

突然の否定に一瞬、頭が真っ白になったが僕はすぐさま聞き返した。

「どうしてですか。この考え方のどこがいけないんですか?」

 

そう聞くとヴァーユ様は僕の目をしっかり見て諭すようにいった。

 

「冒険者に憧れる。それは良いだろう。だがこの街では冒険者にはすぐになれてしまう。そしたら次はなにを求めて君は冒険する?もう冒険者になりたいという夢はかなったじゃないか。」

「その先の目標を自分で見つけないと、君はきっと堕落する。」

 

衝撃を受けた。自分が追い求めてきたものはスタート地点に過ぎないとそう言われた。そこからなにを成したいと問われた。でも、僕には分からない。今まで冒険者になるためだけにここまで来た。どうしても次の目標が見付けられない。僕が呆然としていると、いつの間にか近くにいたヴァーユ様が僕の頭を撫でるのを感じた。顔をあげると。彼女は静かに微笑み

 

「君が自分の危うさをきちんと自覚してくれたら嬉しい。目標はダンジョンの中で見つけちゃえば良いよ。」

そう言った。

そうだ、一つ夢を叶えたくらいで満足しちゃいけない。だって僕は貪欲に全てを求める冒険者になりたかったのだから。

 

「さあ、まずは冒険者にならなくちゃ。ステイタス刻むよ。こっちにおいで。」

 

準備をする神様を横目に僕は再び希望を胸に灯した。

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