宇宙戦艦ヤマト2202 恐れを知らぬ者《ドレッドノート》 作:お猿プロダクション
西暦2203年 太陽系 土星沖
「ヤマト、機関停止した模様・・・彗星帝国の重力に捕まりました!」
「何だと⁉︎」
ヤマトに何が起きた⁉︎・・・地球連邦艦隊旗艦AAA-1アンドロメダの艦橋で、この艦を、そしてかつては数百は下らない大艦隊を率いた人物、山南 修 一等宙佐は額に冷や汗を浮かべながら、艦橋天井部に備え付けられたメインパネルを注視していた。
きっかけは、今よりほんの数分前・・・彼ら山南艦隊が半壊した直後、突如として白色彗星にヤマトがワープアウトしたのだ。
そこから波動砲の発射プロセスを開始するのに時間はかからなかった。
ヤマトの目的は明白だ―――報告にあった、トランジット波動砲。通常の波動砲の何乗倍にも達するという大エネルギーを持つあれの威力を以って、白色彗星の本体、彗星都市帝国に痛撃を与えるつもりだ。
波動砲艦隊全艦の収束波動砲の一点集中砲火・・・それすら防いだあの強敵に、ヤマトたったの1隻で撃破出来るのか、と心中の疑問は隠せなかったが、撃破出来ようができまいがヤマトに託す以外、山南は為す術を持たなかった。
「ヤマト、エネルギー値上昇中・・・凄まじいエネルギー量です!」
「これは、いけるかもしれない・・・!」
(ヤマト・・・!)
メインパネルに表示されるヤマトの輪郭は、見たこともないほどの光の環の中に浮いていた。口径200サンチもある砲口に収まりきらぬほどのタキオン粒子光が、ヤマトの前面に、ヤマトより遥かに大きな球となって収束していた。
「あれでは、ヤマトの艦体がもたない・・・。」
「どういう事だ?」
情報士官が徐に漏らした言葉に、山南はただならぬ表情で問う。
「あのエネルギー量を一撃で投射すれば、ヤマトの艦体強度では、最悪の場合崩壊を起こす恐れがあります。もし崩壊は防げても、単艦重力アンカーでは反動を受け止めきれません・・・亜光速で吹っ飛んでしまいます。」
「土方さん・・・⁉︎」
あんたは、まさかヤマトが刺し違えてでも白色彗星帝国を屠る気なのか!
「いかん!ヤマトを援護する。本艦の他に、至近の宙域で動ける艦は⁉︎」
「ドレッドノート級4隻と、本艦の後方にアンタレスが。他の友軍艦は既に戦線を離脱!もしくは離脱直前です。」
「それでいい。ドレッドノート2隻をアンタレスの両舷に接舷させ、ギリギリまで援護出来るようにするんだ。」
「了解。」
アンドロメダ以下5隻は白色彗星に向けて180°反転、ヤマト援護の為に向かった・・・が、しかし。
「・・・⁉︎ヤマトの波動エネルギー値、急速に消失!」
ーー〜ーー
「ヤマト、機関停止した模様・・・彗星帝国の重力に捕まりました!」
「何だと⁉︎」
メインパネルに映るヤマトは、既に重力傾斜の魔の手に掴まり、その艦体を傾かせていた。333メートルを誇る(地球基準では)巨艦とは思えぬ程に、ヤマトの艦体は嵐に吹かれる木葉の様に弱々しく落ちてゆく。
「アンタレスに命令、直ちにヤマト乗員の救助に当たれ。本艦は後方で援護に当たる・・・!」
「り、了解!」
艦橋の窓から、アンタレスとドレッドノート級2隻が重力アンカーで接続し、高度を下げてゆく姿が見えた。
『我、ヤマト後方に待機せり。長くは持たない、ヤマト乗員は急ぎ退艦を!』
「・・・ヤマトより、艦載機が発艦しつつあり。」
「アンタレス、ヤマト艦載機の収容作業開始。」
ヤマト艦載機の収容を始めてから暫くして、アンタレスから通信が入る。
『ヤマトからの艦載機、収容完了!』
『間も無く離脱限界・・・これより離脱する。』
「ヤマト・・・必ず・・・!」
山南は拳を握り締める。何としてでも、あの艦を、ヤマトを失う訳にはいかない。地球人類にとっての希望の艦を、白い闇の中に永久に屠らせておく訳にはいかない。
「白色彗星帝国より、高エネルギー反応!」
(
波動砲艦隊全艦による波動砲の一斉斉射の直後、突如として飛来した敵の新型ミサイル。あれの攻撃の為に、地球艦隊は半壊したと言っても過言ではなかった。
「反転、急速離脱!」
ズドン、とアンドロメダの側面部スラスターが火を吹く。444メートルの艦体はものの数秒で180°回頭する。
しかし、機関を損傷したアンドロメダでは出力が足りなかった。白色彗星帝国の重力に捕まらない程度には機動出来たが、回避機動を行うには推力が足りなかった。
「回避、間に合わない!」
「くっ・・・!」
これまでか⁉︎機関の万全でない艦で、この宙域に留まるのは浅はかだった――――――
スマン、安田・・・!
死を覚悟し、山南は心中で詫びた。自分を、
だが覚悟した死は訪れなかった。
一体何が?・・・気付くと、艦橋窓からは青白い光が蕩揺(とうよう)としていた。そして、彼はこの光に見覚えがあった。
「増幅した波動エネルギーを観測・・・発生源は前方2万キロ。これは―――銀河です!」
「銀河・・・!」
山南はその名を聞き、軽い衝撃を覚える。
元々は、ヤマトの副長を務めている真田 志郎 三等宙佐が次元波動理論を研究するための実験用の艦として設計した、
「・・・銀河より音声通信です。」
「繋げ。」
艦長席、山南の目前に“Sound Only”と表示されたホログラム映像が表示される。
「―――こちら、連邦航宙艦 銀河。』
美しい、高らかな女性の声。この声を山南は知らないわけではなかった。地球連邦防衛軍統括司令長官 藤堂 平九郎の一人娘、藤堂 早紀・・・今はたしか、三等宙佐。何度か目にかかった事はある。「
中世ヨーロッパに、「
今聞こえる、一定のトーンに抑えたこの声も、彼女が常に本心を吐露しない為に取り繕っているように、山南には感じられた。
「山南艦隊のこれまでの健闘に敬意を評します。」
声に紛れて、ザカッ、という小さな音が聞こえた。敬礼をしているのだと、山南は分かった。それはそれで、軍人としては素直に受け止めたい。山南も、姿は見えないが敬礼を返す。
だがそれ以上に山南は、自身の思った疑問を口にする。
「援護感謝する、藤堂艦長。しかし非戦闘艦がなぜこんな前線に?」
『それは・・・』
藤堂の声が答えを言い終わる前に、山南は答えを知る。モニターが銀河の姿をとらえたのだ。その後方には・・・。
「これは・・・!」
驚きを隠さず、山南は声を漏らした。
ヤマト級三番艦を謳うだけあって、銀河の艦体はヤマトそのものだった。決定的に違うのは、その艦橋―――空母型AAAにも似た、異様に後方へと張り出した艦橋と凄まじい範囲をガラス張りにしたドーム状の艦橋が目を引いた。それ以外にも砲口に艦名を記した栓がされていたり、艦の側面に窓があったりと、やはり戦闘艦には見えない。
が、山南の驚きはそこにはない。
銀河の周囲・・・最初は唯のデブリだと思っていた、無数の影だったそれはやがて輪郭となり、その姿を現す。
『我々が、戦線を引き継ぎます。』
数十隻に迫る数のガミラス臣民の盾。それを展開しているだろう同数のゼルグード級一等航宙艦戦闘艦、その周囲を固めるガミラスの快速艦であるケルカピア級航宙高速巡洋艦、数千隻。
更に、つい先ほど、戦線を離脱した、山南艦隊の隷下艦艇、ドレッドノート級前衛航宙艦が数百隻以上。
「・・・了解した。本艦は機関に重大な損害をきたしている。この上は時間断層工場で修理、改装を行い、再度前線に戻るつもりだ。」
『了解しました。アンタレスに収容したヤマトのクルーは、本艦に移譲させます・・・宜しいですね?」
「かまわん。断ってもG計画を後ろ盾にされては、俺とて何も言えん。」
『・・・・・・感謝します。』
通信はそこで終わる。
「通信士、友軍全艦に通達。“本艦はこれより時間断層工場にて緊急修理を行う。然る後、必ずや前線に戻る、それまでどうか耐えてもらいたい”・・・以上だ。」
数十分後、エンジン―――それも波動コアそのものにすら―――に重大な支障をきたしていたアンドロメダは、僚艦のドレッドノート級二隻を両舷に重力アンカーで接続、ワープブースターとして用いることにより土星圏を脱出、地球圏にワープした。
ーー〜ーー
『本艦は・・・・・・・層工場にて緊急・・・・う。然る後、必・・ 前線に・・・・・・どうか耐えて・・・・い』
「アンドロメダの、友軍艦艇全艦に向けた通信です。出力が大きかったのでなんとか拾えましたが、こちらからの発信となると・・・」
「分かっている。だが、この付近だけでいい、通信を回復出来るか試してくれ・・・我々以外にも他に、必ず友軍艦艇が他にいるはずだ。」
「ヤマトは・・・?」
「まだ、何処に堕ちたかわからん以上、不用意に動けん。今は辛抱だ。」