宇宙戦艦ヤマト2202 恐れを知らぬ者《ドレッドノート》 作:お猿プロダクション
幾つか独自解釈&劇中明記されてなかったから勝手解釈した部分があります
西暦2203年 旧土星沖
土星沖に現出したガトランティス艦隊、その迎撃を任された迎撃第一陣の山南艦隊は、先遣艦隊たるバルゼーの第七機動艦隊と交戦、これを撃滅し押し返す事には成功したが、その後に現れた白色彗星本体を前に壊走してしまった。しかし生き残った数百隻のドレッドノート級は連邦航宙艦銀河を総旗艦とする迎撃第二陣と合流し、戦線を構築しつつある。
その、迎撃第二陣。主力はガミラスの快速巡洋艦、ケルカピア級航宙高速巡洋艦。これは同じく二等航宙装甲艦であるデストリア級と比して魚雷などによる直接打撃力に優れ、クリピテラ級よりもビーム兵装に優れる艦であった。逆に言えばデストリア級よりも砲煩兵器に劣り、クリピテラ級ほどの快速力のない、言ってしまえば“器用貧乏”な艦艇……しかし、この艦には他の同クラス艦艇には無い特徴があった。通常のミゴヴェザーコーティングに加え、微弱ながらも波動防壁ことゲシュ=タム=フィールドを装備していたのである。サイズに比して比較的重武装のデストリア級、元々サイズの小さなクリピテラ級にはなし得なかった、波動コイル──―ゲシュ=スプイル──―の装備を実現していた。地球戦役以前よりマゼラン銀河でガトランティス軍と戦闘を繰り広げていたガミラス軍にすれば、対ガトランティス戦においてはケルカピア級が最も威力を発揮した。器用貧乏であるが故に数が十二分に揃えば、その数以上の戦闘力を発揮するのである。
そして、その万に達しようかという数のケルカピア級の前には、“壁”がそそり立っていた──―否、それは“壁”ではあっても一枚の壁となっているわけではなかった。百を超す数の“盾”が連なって、まるで一枚の壁であるかの如く艦隊の前面に展開していた。盾の正体は、ガミラス臣民の壁と呼ばれる特殊な機能を有する、“壁”であった。厚さ十メートル以上ある重厚な“壁”はガトランティス艦隊の通常火力は勿論、火力転送型の特殊砲撃艦──―ガミラス軍の言う所の重戦艦、メダルーサ級──―の必殺兵器、火焔直撃砲も数発であれば耐えうるほどの頑丈さを誇っていた。更に、敵の侵攻を少しでも遅らせる為にワープ阻害機能を新たに装備している。これはガミロニア8こと第八浮遊大陸での海戦を戦訓に装備された物だった。火炎直撃砲の威力だけでなく、その超々長射程をも封じ「威力はそこそこだがチャージに時間のかかる単なる“大砲”」にまで貶めたのである。
当然、これらの物量、ガミラス・地球で単に製造したところで、とても間に合う物ではない。これらもまた、時間断層があるからこそ為せる技であった。
これらの艦隊の総旗艦である銀河もまた、時間断層工場で建造された物だった。
──―その、銀河艦内。
「ヤマトの元乗組員の収容終わり」
「データリンク完了、山南艦隊残存艦艇群、本艦の指揮下に入った」
「アンドロメダ、ワープイン」
「続いてアンタレス、アキレス、アルデバラン、及びD級108隻、緊急修理のため火星圏にワープしました」
「……」
体格に対してやや大きめな艦長席に身を埋める本紫の髪の女性は、機械的に鼓膜を震わせる報告の声を、帽子のツバに目を隠したまま聴いていた。
その彼女が、ピクリと眉を動かす報告。
「レーダーに感。零時方向敵艦隊第一波、数2000!」
「敵艦隊分析完了。カラクルム級とミサイル戦艦。ミサイル戦艦は、先の情報にあった反物質ミサイルを搭載している模様……接敵まで約30分。先遣隊と思われる250隻は間もなく会敵──────」
艦長席のモニターに表示された映像には、白色彗星のガス雲からシロアリのように這い出て来るガトランティス艦が映されていた。所々ノイズが混じり、粗い映像ではあったが、この一つ一つのゴマの実の様なツブがいずれも全長四百メートル超の艦艇であると考えると笑えない。
「先遣艦隊は拡散波動砲で殲滅。以後は指揮AIに任せます……収容したヤマトクルーと主要クルーを中央作戦室へ、私も行く」
──〜──
旧土星沖 対ガトランティス迎撃艦隊第2陣 地ガ連合艦隊
山南艦隊残存艦 デ・ロイヤル
ドレッドノート級でも最初期の生産ロットである、このドレッドノート級前衛航宙艦21番艦デ・ロイヤルは幸運にも白色彗星の重力場に捕まること無く、戦域からの離脱に成功していた。
『銀河より達する。前方展開中の敵艦隊を拡散波動砲の斉射を以て殲滅せよ』
「………だ、そうだ。拡散波動砲用意、エネルギー充填開始」
デ・ロイヤルの艦長、
「了解、艦内電源非常用に切り替え、回路開け。非常弁全閉鎖、強制注入機作動」
「強制注入機作動を確認、最終
「無人艦032番から040番は本艦とカウント同期、設定せよ」
ドレッドノート級の初期ロット艦は、同型無人艦の操作能力がある。土星沖の迎撃第一陣で山南艦隊が数千隻以上ものドレッドノート級を率いることが出来たのは、時間断層にものを言わせた大量生産によるところもあったが、それと同等程度に省人力化、無人化及びその制御技術の発展もまた大きいものがあった。
基本的に、二個戦隊八隻の無人D級を有人D級一隻が管制、制御する。
「発射十秒前……対ショック、対閃光防御」
艦橋前面の窓に暗いスクリーンがかかり、艦橋要員は眼球保護用のゴーグルを掛けた。
「カウント同期設定よろし、発射5秒前!」
「ガミラス艦、射線より離れる」
相変わらず何の為なのか理解出来ない謎な紋様塗装を施した黒いゼルグード級、そしてその前面に配された“ガミラス臣民の壁”が引いてゆく。必然的に艦隊の前面に出るドレッドノート級───
「────2、1、発射ッ‼︎」
カッ!───遮光処理のされた艦橋窓と、グラスを用いていても、波動砲の発射の閃光は人の目には眩しかった。
スプリッターで右旋波、左旋波に分けられた波動エネルギーは、互いが互いに惹かれるが如く螺旋を描きながら飛んで行き、敵カラクルム級艦隊の直前で収束、直後に拡散。青白い花火となって数百隻にのぼるカラクルム級を呑み込み、破壊の奔流としてその艦体を食い破り、溶融させ、破壊する。
そして────
ゴオオオオッ!!ビリビリビリ………!
白色彗星の撒き散らしたガスによって、衝撃波が伝搬する。それは、250隻ものカラクルム級の断末魔に等しかった。
「……」
目前で挙げられた戦果を前にしても、高城 二佐の顔は晴れることはなかった。
未だ暗色のスクリーンが降りた視界の先で煌めく輝きは、つい数瞬前まで強力な戦艦群だったものだ。
作戦なのか、それとも──────
「奴らのメンタリティは、我々とは全く異なる、だったか……」
数ヶ月前……ガトランティスによる地球圏への最初の本格的侵攻として記録される第11番惑星で、紆余曲折あり左遷にも近い形で現地の外洋防衛師団司令官となっていた───今は白色彗星帝国に呑まれた宇宙戦艦ヤマトの艦長を勤めていた───土方 竜 宙将の報告を反芻する。
奴らは第11番惑星での戦闘の折、形勢不利を悟りこれ以上の官民の犠牲者を防ぐために早期に打診した土方宙将の降伏を、逡巡する素振りすら見せず瞬時に蹴ったという…………奴らは敵にも味方にも、憐憫とか、慈悲とか、容赦とか、そうした生来人間が持ち合わせているべき情緒というものが無いのだろう──────彼はそう考え、そしてその事は大凡において間違いではなかった。
そうした感情を持ち合わせ無いように、ガトランティス人は造られていたからだ。しかし───彼らがそれを知るのには、今少し時間のかかることだった。
そして暫く──────
「総旗艦銀河より、作戦ブラックバードの実施が決定されたとのことです」
「何……?」
通信士の報告。聞き覚えのない作戦に高城 二佐は片眉を吊った。
「更に追伸……"D級全艦は艦隊前面に移動、作戦機の発進まで銀河の支援の下波動防壁を展開し艦隊を防護せよ"」
「作戦機だと?ウチの航空隊は出さないのか」
銀河からの通信に、高城 二佐ではなく副長の方が反応した。ドレッドノート級にはもとより20機程度の艦載機運用能力があり、少なからぬ遠隔打撃力を有する。ここにいるドレッドノート級が山南艦隊の損傷艦の寄せ集めとはいえ、集約すればそれなりの戦力にはなるはずだったが……?
「銀河の作戦機で全て賄うそうです……“他航空戦力の用無し、防御に注力せよ”と」
「そうか……」
「チッ」
副長の返事に重ねる様に、高城 二佐が微かに舌打ちした。彼もとより、銀河という"船舶"とAIに全てを委ね考えることを放棄したそのクルーが嫌いだった──────故の、舌打ち。
同時に、それは自分も含めた地球防衛軍人の不甲斐無さへの苛立ちでもあったが………。
「銀河、移動を開始!」
「本艦も前に出る。両舷前進微速、無人艦も追従せよ」
銀河の前身に合わせるように、デ・ロイヤルや彼女の率いる無人艦隊、他のD級も一斉にエンジンノズルに炎を灯し前進を開始した。
ガミラス臣民の盾を通過し、艦隊前面へ躍り出た地球艦隊──────
「レーダー探知、敵ミサイル戦艦が移動を開始」「反射源の大きさからして、
艦橋からは見えないが、今頃は銀河の艦体側面から生じた波動共鳴波が光輪となって周囲へと拡がっていき、ここに展開している全てのドレッドノート級が有人無人を問わず強靭な波動防壁にその身を包んでいるのだろう。そして、彼の乗るデ・ロイヤルもまたそうした光景の一つになろうとしている。
「波動防壁展開、最大出力」
「最大出力アイ……!」
申し合わせたように、艦橋から見える景色は青白いベールに覆われる。単艦では成し得ないほどの強力な波動防壁がデ・ロイヤルの艦体を覆ったのだ。
(手間の掛かる
銀河は武装を施されていないため、護衛となる艦が別途必須であることを彼等は告げられていた。戦闘能力のないフネが軍艦ならば、如何様なフネであっても軍艦と呼べよう。
そう考えを巡らせていた直後──────
「敵ミサイル戦艦より飛翔体分離!」「飛翔体に高エネルギー反応……反物質ミサイルです!」「舵そのまま!両舷停止、総員衝撃に備えよ……!」
艦隊と盾を守る必要から、D級は動けない。不動を命じ、
敵の巨大ミサイルの、その幾何学的な形状に至るまで見える至近───!
「弾着っ───」
ガァン!ガガァン!……ドガァ……ン!!
「……!」
閃光──────!青白い壁に蒼白の炎が強かに打つかり、それらは白色彗星帝国の撒き散らしたガスと相まって、まるで嵐のように吹き荒れる。ここが土星沖である事を忘れさせるほど、それは荒れ狂う洋上を思い起こさせる。
大昔、洋上で台風に遭遇した船乗り達は、こんな光景を見ていたのだろうか?
もし、そうだとして──────しかして彼らと決定的に違うことが二つ。
一つは、ここが宇宙であること。そしてもう一つは………
「───全艦、損害なし!」
「……!」
この報告に驚かないわけはなかった。如何に波動防壁といえども鉄壁ではなく、あの凄まじい威力を誇る反物質ミサイルを喰らえば、ただ一撃のもとに屠られるものと考えていたからだ。
「甘く見ていたのは、俺の方だったか……?」
独り言ちに呟いた自問にも似たそれは、誰に聞かれることもなかった。
だがそうした自問は遠からず確信に変わる。その後に発動されたブラックバード作戦…………何だあれは!?──────銀河の波動エネルギーの共鳴、それに伴う齎された決定的な破壊を目にし、高城 二佐は銀河の威力に改過自新せざるを得ないものと考えなければならなかった。
同時に、脳裏に焼き付く用に思い起こされたのは……波動砲艦隊に最後まで反対していた、ヤマトと共に白色彗星の中に消えた土方 龍 宙将と彼等の艦隊司令官、山南 修一等宙佐の姿。
この力は………俺は肯定できるのか?土方長官、山南さん、あんた達はこんなものを背負おうとしていたのか……?
彼の額の皺と冷汗は、暫く消えることはなかった。
一応二年半ぶりすぎてメモ代わりに書いておきますが、これは「2202本編で描かれなかった