ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話   作:カルディス

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ちょっとやさぐれた、カルデア職員の話 #3

カルデアの施設は多岐に渡る。

自分にとってはもはや見慣れた景色だが、外は凄まじい吹雪である。

それ故に、必然とも云えるだろう。

 

例えば、大浴場。

職員や英霊を含むカルデアに滞在する人々が利用出来る大きな風呂。

もっぱらローマ出身者や日本出身者が利用する。

 

例えば、地下図書館。

紫式部が司書を務める図書館で多くの英霊、職員が利用する。

マスターである藤丸立香も新たな英霊が召喚されるたびに籠っているようだ。

 

例えば―――――そう、自分が居るこの温室もそうだ。

花も咲くこの温室は、元来食料確保のためのものだった。

ある職員によって種が蒔かれたのを期に、一区画だけ花壇になっている。

自分がカルデア(ココ)に来た時に既に咲いていたが。

 

この区画に居れば、話しかけられることはほぼない。

口下手な自分にとっては、部屋以外で唯一気が休まる場所だった。

 

そう“だった”のだ――――――。

 

「やぁ」

このウーパールーパーみたいな魔術師(英霊によってはグランドロクデナシ)が現れるまでは。

 

このウーパールーパーもどきは、『アーサー王伝説』に登場する宮廷魔術師である。

人と夢魔の混血で、人格こそあれど感情はない。

その上湖の精霊(ヴィヴィアン)を誑かし、果ての塔に幽閉されている。

人理焼却といった事態でなければ召喚もできないとは本人談である。

 

「おーい職員君?」

「……」

「無視はよくないぞぅ!」

「……なんなんですか、御用は」

「御用?御用はないともさ!」

 

このキャスターは何故どや顔なのだろうか。

ここ最近、ずっとキャスターに付きまとわれている気がする。

そう思い、自分は

「そうですかさようなら」

とその場を離れようとした、が。

 

「わーっまってまって!ね、話だけでいいから!」

「御用はないんでしょうが」

「まぁまぁすわって!」

 

流石に筋力Bにはかなわず、自分はここに長居するはめになった。

こんな風に表情をコロコロさせるが、感情というものはないらしい。

 

「ふふん」

「何をそんな上機嫌なんです?」

「だってウワサの職員君と話せるんだよ?喜ばないわけないじゃないか」

 

“ウワサ”?

(自分が?何故?)

「あはは、なんでって顔してるね。ほら王サマ――――賢王ギルガメッシュに噛みついただろう?」

「誤報です。ただ問いに答えただけです」

「あの言い方じゃあ噛みつくでも間違いないと思うなぁ」

「……まさか」

「そのまさかさ!」

「……はぁ」

 

マーリン(この男)は本当に質が悪い。

賢王との対話を千里眼(現在視)で見ていたのだ。

 

「プライバシーとかわからないんですかね?」

「なんだいそれ」

「これだから魔術師は……」

「嫌だって王サマが職員――――一職員にちょっかいかけにいくんだよ?面白いに決まっているじゃないか」

 

これだからウーパールーパー(グランドクソ野郎)なのである。

 

「あの問答を、アンデルセンさん達が知っていたのは――――」

「あぁ、僕の仕業(せい)さ」

 

マーリンはのんびりと答えた。

つまるところ、自分があのキャスター二人に絡まれ、この男にも絡まれているのはあの問答のせいだったのだ。

 

「あの事を知っているのは誰です?」

「キャスタークラスは皆大体知ってると思うな。別クラスが知るのも時間の問題さ」

「なんという……」

「だって面白そうだからさ」

「そんなんだから職員に反発する人が出るんですよ」

 

昔ほど酷くはないが、それでも未だに反発する人は少なくはない。

これは現在(イマ)のカルデアの重大な問題のひとつだろう。

マーリンは笑うだけで、何も答えなかった。

あずかり知らぬ、と言いたいのだろうか――――――。

 

「あぁそうそう、藤丸立香(マスター)の事だけど」

藤丸立香(マスター)がどうかしましたか」

「マスターに対しては、そのままであってほしい。先達として、人生の心配として、ね」

「珍しい、貴方にとって大切なのはアーサー王だけだと思っていました」

「そりゃあ、アルトリアは大事さ。でもマイロード(マスター)だって大切なんだよ」

 

「マスターは、夢の中ですら休みがないから、ね」

 

マーリンは遠い明後日をみて言った。

 

「夢の中ですら……」

「そう。例えば狂王を暗殺しそこねて散った英霊達・“聖罰”によって虐殺されたムスリム達」

「聖なる槍で散った英霊、村人たち――――特異点で死んだ人々に対する後悔。そんな辛い“味”ばかりだ」

 

(マーリン)は夢魔だ。

藤丸立香(マスター)のサーヴァントとして、いくつもの夢を喰べたのだろう。

 

「辛い味、ですか」

「あぁ、むしろ幸せな味を喰べたのは片手で数える程さ。きっと、もっと救えたはずだって、そう思ってるんだよ」

 

「そうですか、ですが――――それは傲慢です。藤丸立香(マスター)の傲慢さが見せる夢ですよ」

「……というと」

「単純です。今でこそ、多数の英霊―――無論貴方も含めますが―――がいます。きっと、藤丸(マスター)

これだけいるのだからと」

「思っているのでしょう。えぇ、ですが、救えないもの(・・・・・・)救えない(・・・・)

 

「例えば、特異点Fへの強制レイシフト前の管制塔爆破。これによって出た死傷者をここにいる英霊で全て救えますか」

「……それは」

そういうこと(・・・・・・)です。例え抑えられたとしても藤丸(マスター)は救えたはずと言うでしょう。……これを傲慢といわずしてなんというのですか」

 

 

「君はやっぱり、変わってるよ」

キョトンとこちらを見ていたマーリンが笑みを浮かべて言った。

 

「どこがです」

マイロード(マスター)の味方なのに斜に構えているところ」

「だからどこがです」

「さっきのところとか特にそうさ。うんうん、そういう人物(キャラクター)も、マイロード(マスター)には必要さ」

まるで、おもちゃを見つけたかの様に笑うマーリンに、自分は引いていた。

 

「よーし次は、そうだな、君について教えておくれ」

「イヤですよ」

「え、どうして。私と君の仲じゃないか」

「たかだか30分ですよね?」

何を言っているのだろうこの夢魔は、と思っていると

「おーい、ちょっと……げぇマーリン!?」

「やぁロマニ・アーキマン」

「ちょっと!職員に手を出してないよね!?」

「もちろん、どっちかっていうとおも」

「ちょっと!?君大丈夫!?」

「は、はは……」

 

自分は、苦笑いを浮かべる他、なかったのだった……。

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