「…………」
メレメレの海の岩の上で現在、釣りの途中。
胡座をかき、俺の頭の上にはシェイミが寝ている。
いい天気………
「釣れますか?」
「うぉうっ!?」
背中を叩かれ、声をかけられた俺は、
驚きのあまりシェイミを落としてしまう。
『くげ!?』
「うふふ、凄い驚きようですね」
「…………そりゃ驚くぞ」
「すみません、つい悪戯心で」
にこり、と俺の背後で笑ったのは、
青髪の小柄な少女だ。
「まぁ狙ったんですけどね」
「確信犯じゃねぇか」
『………シードフレ』
「落ち着けシェイミ」
シェイミが″シードフレア″を撃ちそうに
なったので軽く撫でる。
「あら怖い」
『ギガドレイ』
「待てって!?お前さんも煽るな!」
「うふふ、面白い」
「死にたいのか!?」
『ぶっ殺すでしゅ、シン。
グラデシアよこすでしゅ』
「人間だぞ、落ち着けっての!?」
シェイミには落ち着いてもらい、
少女と向き合う。
「煽ったお前、名前は?」
「スイレンと申します、海パンやろ……
こほん、シンさん、でしたっけ?」
「………」
「あいたっ」
無表情の無言でデコピンを食らわせて
海へ突き落とす。
「あーれー」
「反省しなさい」
『シードフ』
「お前も落ち着け」
流石にキレるわ。誰が海パン野郎だ。
「まぁ泳げるのですが」
「はぁ、取り敢えず俺はシン。
こっちがシェイミだ」
『死ねでしゅ』
「言い過ぎだ」
「それで………釣れますか?」
最初の問いか。
「ぼちぼち、かな」
「そうですか。そういえば、
この辺では赤いギャラドスがいるらしいです」
「へぇ………色違いか」
「らしいですね。とても狂暴だとか」
『見てみたいでしゅね』
「そうだな、釣るか」
俺は釣り糸を巻き上げ、
餌を確認して再び投げる。
「中々様になってますね」
「これでも結構、歳くってるからな」
「まだ15程度に見えますが?」
「さぁ?まだまだ上かもな」
『聞かない方がいいでしゅ』
スイレンも釣り竿を取り出し、
糸を海へと垂らす。
「私も釣りますよ」
「そうか、楽しみだな、赤いギャラドス」
「ふふふっ、そうですね」
『…………』
5時間後
「………粘りますね、シンさん」
「忍耐力には自信あってな」
「…………実はあれはう」
『シン!竿が凄い引いてるでしゅ!』
「「え」」
シェイミに言われて、竿を握り直す。
重い………!!?
「なんだこのバカみてぇな重さは……!?」
『頑張るでしゅー!』
重いが、引けないことはない。
全身の力を入れ、竿を振り上げる。
「ギャァォォォォオ!!!!」
「ッ、デカぁ!?」
「う、うそ………!?」
赤いギャラドスだ。
ちょっ、デカくない?
普通の2倍くらいあるけど!?
『………コイツ、ヤバいでしゅ!
シン、バトルの準備でしゅ!』
「あぁ、任せろ!」
俺は腰のモンスターボールを取り出し、投げる。
「ニンフィア!」
「フィア!」
ボールから飛び出したのは、
イーブイの進化形態の一匹、ニンフィア。
首元から出ているリボンのようなものが特徴だ。
「ギャァォォ!!」
ギャラドスが尻尾を持ち上げる。
尻尾には水流が巻き付いている。
″アクアテール″か。
「ニンフィア、目を潰せ!
″マジカルシャイン″!」
「フィアァッ!!」
ニンフィアが眩しい光を放ち、
ギャラドスの目を潰す。
ギャラドスのアクアテールは全く別の場所、
海の上を叩き、大きな水飛沫が飛ぶ。
「ギャァァォ!」
ギャラドスは今度は水を纏い始める。
″アクアジェット″───!
素早い技を使ってきた、
足場の狭い岩の上では回避が出来ない。
「ニンフィア、
″ようせいのかぜ″を纏って受け流せ!」
「フィ、ア!」
「ギャァォォォォ!?」
「″ムーンフォース″!」
反撃をしかける。
ニンフィアの上空に光の玉が作り出され、
それはギャラドスへ命中する。
「ギャァォォォォォォ!!!」
「″とっておき″!」
「フィィ、ア!!」
ニンフィアが巨大な星を作り、
それはギャラドスへ命中、
その後気絶したのか、浮き上がった。
「ごめんなさい、私の
あのギャラドスの話、実は嘘なんです」
『やっぱりそうでしゅか!!
流石に怪しいと思ったでしゅ!』
そこまで怒ることか………?
あの赤いギャラドスだが、
あそこはギャラドスの縄張りのようだ。
荒らしたのは俺たちの方なので謝ると、
なんとギャラドスは岸の方まで
運んでくれたのだった。
てゆーか。
「何言ってるんだ?」
「え?だからあれは嘘で──」
だってな…………
「ギャラドス、いたじゃねぇか」
「────ぁ」
『………ま、確かにそうでしゅね。
例え嘘でも、本当になれば真実でしゅから』
「…………ふふ、そうですね。
一本、取られてしまいました」
「はははっ、だろ?」
「ええ…………
釣るつもりが、釣られてしまいましたか」
その時のスイレンの言葉は、
小さくてよく聞き取れなかった。