「………」
爆煙が舞い上がり、晴れていく。
「やったか?」とは言わない。
フラグって怖いからね。
「ゲノ………」
「逃げた、か」
爆煙が晴れると、あったのは今まさに
閉じようとしていたウルトラゲートだった。
飛び込んでもいいが、危険だからな。
辞めとこう。
「ゲノセクト、流石だな。ほれ、ご褒美な」
「ゲノー!」
俺はゲノセクトにポフレを投げる。
ポフレはカロス地方のお菓子だ。
ゲノセクトはこれが好物、
手も使わずに食らいついた。
食べ終わったのを確認し、
俺はゲノセクトをボールに戻した。
「さて、リザードン、お前もお疲れな」
「グオオォ」
リザードンが「忘れられてなくてよかった」
という感じのことを言う。
いやー、ポケモンの言葉が分かるって便利ですわ。
「じゃ、ミズキのとこまで頼むぜ?」
「グオオォォ」
俺はリザードンの背中に飛び乗った。
少し飛ぶと、島の外れにある家が見えてくる。
あそこに、アローラの新チャンプ、
ミズキが住んでるんだったよな。
何気に会うのは3年振りかー。
………あれ、会いたくなくなってきたな。
「グオオ」
「到着っ、と。
サンキューな、リザードン」
「グオオォ」
リザードンをボールに戻し、
インターフォンを押す。
すると、扉が開かれる。
「はぁーい。あら、あなたは………」
「お久しぶりですね、カナミさん、
俺です、シンです」
「あら!?シン君、あれから3年なのに
全然変わってないわね~、羨ましいわ~」
出てきたのは、ミズキのお母さん、
カナミさん。
「ミズキー!起きてるー!?
シン君が来たわよー!」
「あ、大丈夫ですよ。
まだ起きてないならまたあとで」
「ええ!?ちょっ、待ってお母さん!
今っ、今起きたから待ってー!!」
「だ、そうね。ごめんなさいね、
チャンピオンになって疲れてるのよ」
「ですよね………急に来てしまいすいません」
「いいのよ~、ゆっくりしていってね」
まあ、ミズキも大変だろうしな。
俺は家に上がらせてもらう。
「ぬにゃあ」
「ニャースか!久しぶりだなぁ」
「にゃあ!」
ニャース。
カナミさんのポケモンだ。
実はカナミさんもトレーナーだったりする。
「シーンッ!!!」
「ぐへぁっ!?」
「にゃー」
「あら、おはようミズキ」
唐突な背中からの衝撃が、
ニャースとふれあって腰を下ろしていた
俺の頭が床に打ち付けられる。痛い。
「久しぶりー!」
「離してくれー」
「えへへ、3年振り?
元気だった?ねーねー!」
ミズキ。
そう、コイツは、人の話を聞かない。
「とりあえず離せ」
「当ててんだよ?
シンも男だもんねー?」
「苦しいんだけど」
チラッとカナミさんを見て助けを──
「ミズキ、朝ご飯できてるわよ?」
「もうちょっとー」
駄目だコイツら、カナミさんが
ちょっと普通なだけじゃねぇか。
「苦しいっつーの!」
「うわっ」
「あら」
「えー、大胆」
成り行きで押し倒した形になってしまった。
「ねぇシン、嬉しいんだけどお母さんの前だよ?」
「私も混ざっていいかしら?」
「違うわ!何もかも!」
もうやだこの家族。
理性蒸発してやがる。黒いのより嫌いだ。