皇歴2018年改め光和元年。世界は少しずつであるが、確実に変化の一途を辿っていた。
第99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはゼロレクイエムにおいて、これまでブリタニア帝国が築きあげた歴史、文化を全否定。貴族制度の廃止、財閥の解体、エリア11と呼ばれた日本を含む全エリアの解放など。その行いはまさしくブリタニアを壊すものだった。
その行いの1つに、『情報の開示』も含まれていた。
例を挙げれば、イレヴンに対する出来レースに等しい裁判、ブリタニア兵が各エリアで犯してきた犯罪、政府高官が裏で行なってきた横領や密輸。これまで表舞台に出ることなく、ひた隠しにされていた真実が明るみになると、市民に衝撃が走った。
そして開示された情報の中には、世界各国で起こった凶悪事件の内容も含まれており、内容が内容なだけに公開されずに闇へと葬り去られた猟奇的事件に関する情報がネットでアップされると、一目好奇心から見てみようとたちまち人々の関心を集めた。
今回取り扱う事件も、そんな歴史の闇に埋もれた1つである。
皇歴2017年、日本解放戦線の本拠地、ナリタにて『ブリタニアの魔女』と恐れられるコーネリア率いるブリタニア軍と、ゼロが率いる黒の騎士団が交戦。いわゆるナリタ攻防戦が繰り広げられ、結果ブリタニア軍が敗北し撤退。
丁度その頃、遥か北の大地、ホッカイドウのアサヒカワにて、ラルナ・ガーネットはいつも通りのデスクワークに励んでいた。彼はブリタニア軍人であり、周りからはガーネット卿と呼ばれている。
ガーネットは自他共に認める変わり者である。まず彼はブリタニア人の中では珍しく決して日本人を差別しない。そして彼はこのホッカイドウの地を大層気に入っていた。
ホッカイドウではトカチやシラオイ、ヒダカなどの広大な平野部で大規模な農業や酪農が盛んに行われている。しかし冬になると1メートル以上雪が降るのは当たり前という土地なため、ブリタニア人からはよく左遷の地だの都落ちだのと言われていた。
富士山のようなサクラダイト採掘場も無い上に立地的に戦略的価値は低いとみなされており、軍が配備されているのはこのアサヒカワのみ。後はそれぞれサッポロ、オタル、ハコダテ、クシロなどの地方都市に小規模な駐屯地が点々と点在しているだけだ。
前述した通り、この地はまさしく左遷の地でここに配置されたら出世の機会はまずないと悲観する者もいる。しかしこのガーネットはなんと自ら進んでアサヒカワへの転属を申し出たのだ。
アラスカの広大な自然の中で生まれ育った彼は軍でも優秀な成績を収め、帝都ペンドラゴンで働いていたが、都会の水が合わなかったガーネットは地方の辺境の地への転属を希望。その結果戦略的価値が低く、かつ環境も不便な土地を幾度となく渡り歩いてきた異色の経歴を持つ。
自然環境の保護にも力を注いでいた故クロヴィス皇子がエリア11の総督に就任。ホッカイドウを視察するとその広大な自然に感動したりしていた。
以前からホッカイドウへ興味を持っていたガーネットはそのタイミングで再び転属。今年の春、晴れてホッカイドウの大地を踏んだ。
「失礼します」
ドアをノックし、入ってきたのは自身のサポートを担っているサリカ・エームルだ。緑色の長髪を結い、ポニーテールのようにしている彼女はガーネットの元に数枚の報告書を提出する。まだ20代前半と若いが、しっかり者で助かっている。
「ん、ありがとう。君も席にかけてしばらく休みたまえ」
「はい」
お言葉に甘えてサリカは自身の席につき、コーヒーを一口すする。ガーネットはデスクワークの傍ら今日の新聞を読む。新聞はナリタでの出来事が紙面を飾っている。もっとも、ガーネット達には関係のない話だ。
いつも通りの、何が起こるでもなくゆったりと流れるライフワーク。思わず欠伸が出そうになったガーネットが眠気覚ましにコーヒーを飲んだ時、突然ガーネットがいる机の上にある電話がけたたましく鳴る。トウキョウ租界辺りからの電話だろうか。
「はいもしもし、ガーネットですが」
何の気なしに電話を取るガーネット。
しかし、何気なく取ったこの電話からのちにエリア11を、果てには世界を震撼させる事件の針は動き出したのだ。
人間は、時にか弱い存在になる
狂気という概念の前では、その瞬間、ただのモノになる
その狂気が暴走すれば、ヒトには到底、太刀打ちできるはずがない
その狂気が、もし、もしも自分に向けられたら?
ガーネットは思い知ることになる
どんなに進化しようと、どんなに超越した力を手に入れても、母なる大自然の中では、人間は恐ろしく、無力であることに
コードギアスシリーズで九州とかは出てきたけど北海道はあんま出てきてねぇなぁと思いながらプロローグを書きました。
そしてこのお話のモデルとなった事件は皆さんご存知三毛別羆事件です。ウィキペディアは必見、アレはもはや1つの読み物です。