ソード・アート・オンライン デュエル・オブ・オナー 作:TTオタク
今回で回想編は終了です。なので詰め込み気味で文字数が多いです。急いで書いたので誤字脱字があればご指摘をお願い致します。
その後、私たちが連れてこられたのはMobがポップしない安全地帯となっている洞窟だった。襲撃により麻痺させられた者もここに集められたらしく、全員が知った顔ぶれだった。
ストレージにあるアイテムの提出を要求され、武装も取り上げられた。今いる部屋は出入り口が一つしかない大部屋で、出入り口に武装した
私が部屋に入れられてしばらくすると、誰かが寄ってきて話しかけてきた。
「モニカさん、無事だったんですね」
話しかけてきたのはワルサーだった。
「ええ。貴方も無事なようで良かったです」
ワルサーは安堵した様子を見せる。私の生存を喜んでくれいているのだろうか? だとしたら本当に人の良いい男である。
「それでワルサーさん。この襲撃について何か心当たりはありますか?」
するとワルサーは首を横に振った。
「申し訳ありませんが何が何だか。いきなりレッドプレイヤーに拉致されて、ここに閉じ込められただけですし。今も正直現実を受け入れられていません」
「そうですか。アキラについて何かご存知ですか?」
「アキラさんですか? ここには連れてこられていませんが」
ワルサーは心配そうな顔で言う。この様子ではアキラが主犯である事を知らないようだ。
───となると、アキラの本来の仲間はあのレッドプレイヤーどもで、このパーティーはただの獲物だったってわけね。反吐が出るわ。
それにまだノンナはここに連れてこられていない。その事が気がかりで仕方がなかった。
するといきなり派手な音を立てて扉が開いた。ぞろぞろとレッドプレイヤーの連中が入ってくる。そしてその後から、この犯罪集団の
「アキラさん! どうしてここに?」
困惑するワルサーや周囲を横に、私はレッドプレイヤーの面々に疑問を抱く。
───アリサとか名乗っていた奴が居ないわね。まるでアキラの一味みたいな口ぶりだったけど、実は違うのかしら。それとも門番でもやらされてるとか?
私がそんな事を考えていると、アキラはいつものような口調で話始める。
「あー、悪いなお前たち。お前らの困惑は最もだ。本当に申し訳ない事なんだが、俺はレッドギルドのリーダーなんだ」
その言葉に、ワルサーが怒りの声を飛ばす。
「裏切ったんですか! どうして? 信じてたのに!」
周囲の困惑が大きくなる。対するアキラは本当に申し訳なさそうな素振りで言葉を続ける。
「いやすまん。本当はお前らを一人前に育てるのも悪くないと思ってたんだぜ。でもな、どうしようもない理由があったんだよ」
「どうしようもない理由?」
ワルサーが答える。
「ああそうだ。本当にどうしようもない理由だ」
アキラはそう言って、深刻そうな声色で言う。
「俺がお前たちを
驚愕か困惑か、あたりが死んだように静かになる。それを意味が通じていないと受け取ったのか、補足を付け加えた。
「ああ、いや。お前らを殺したいって言うのは誤解が生じるな。正確にはお前たちを殺し合わせたいって思ったんだ」
静寂を肯定と受け取ったのか、アキラは話を続ける。
「俺はさ、思ったんだよ。攻略組の未来を担うであろう人材が、ギルドの垣根を越えて切磋琢磨する。それはとても素晴らしい事だ。友情が生まれ、絆が生まれただろう。目覚めた愛もあったろう。そういう通常では生まれなかった関係は
アキラは自分の言葉に酔い、まるで悲劇の主人公であるかのように言う。
「ああ、だからな───」
大仰に間を挟んで───
「
「劇的に生まれ、劇的に散る。素晴らしいと思わないか? 俺はそのチャンスを逃せない質なんだよ。まったくどうしようもない」
アキラは盛大笑い言う。
「な?
その言葉を最後にアキラはゲラゲラと笑い出す。その声を皮切りに、今まで黙っていた面々が口を開いた。
「ふざけるな! てめえの勝手な嗜好で殺されてたまるか!」
「信じてたのに! この変態! 早く帰してよ!」
「黙れクソ野郎! 信じた俺がバカだった!」
皆が口々に罵倒を浴びせる。その罵声を浴びながらアキラは満足気に頷き、部下に合図する。
そうすると部下はA〜Zまでが描かれた布を持ってきて、壁にかけた。そこにアキラが投剣を構え、投擲する。その投剣は綺麗にMの字のところに当たった。
「よし、じゃあマルガメ。こっちに来い」
マルガメと呼ばれた男性がびくりと震える。先ほどの騒ぎの中でも黙っていた人だった。日常生活で人混みの中に紛れていたら、誰の記憶にも残らなさそうな顔立ちをした少年だった。
「ほら、いいから来いよ」
アキラはそう言うが、マルガメは震えて動けない様だった。仕方なしとアキラは部下に合図をする。
すると部下は私たちの中に分け入って来て、マルガメの前に立った。
「へ?」
マルガメが怯えた様子で顔を上げる。すると、部下はいきなり抜剣しマルガメの胴を斬り払った。
「うああぁぁぁああ!」
マルガメは情けない悲鳴を上げる。怯えて蹲ったマルガメに、部下は容赦なく命令する。
「立て」
マルガメは怯えからか恐怖からか、言われた言葉を理解できていない様だった。
部下は苛立ったようにもう一度剣を振り上げ、振り下ろした。今度は周りから悲鳴が上がる。
「わかりました、わかりましたから。立てばいいんですか? 」
マルガメは震える足で立ち上がる。それに部下は命令をする。
「歩け」
マルガメは震える足で壇上へと上がった。それを確認したアキラは、次の指示を飛ばした。
「おい、ワカを連れて来い」
今度はワカと呼ばれた、先ほどアキラに文句を言っていた女性だった。女性の私から見ても容姿端麗で、男女比の偏ったアインクラッドではさぞ引く手数多だろう。
そしてアキラの部下が、マルガメの時と同じようにワカに向かって抜剣する。それを見たワカは恐怖に裏返った声で言う。
「わかったわよ。壇上に行けばいいんでしょ?」
そうしてワカは壇上に上がる。壇上に上がった彼女はアキラに向かって言う。
「上がったわよ。次はどうすればいいの?」
声が震えている。怯え故の従順さなのだろう。そんなワカに対して、アキラは菓子でも手渡すかのような気軽さで、ある物を渡す。
それは片手剣だった。
狂気を差し出し、気軽な口調でアキラは命令する。
「ワカ、こいつを殺せ」
ワカは首を振って言う。
「できるわけないでしょ。だってそんな、人殺しだなんて」
その様子を見てニヤつきながら、アキラは言う。
「二つに一つだぜ。お前がマルガメを殺すか。俺がお前を殺すか。マルガメがそんなに大切なら大人しく俺に殺されてくれりゃ良いぜ。お前の自由意志さ」
ワカの動きが固まる。死の恐怖と、人を殺す恐怖の板挟みになっているようだった。それを見て、アキラはさらに楽しそうに言う。
「嫌か? 最近マルガメの事が気になってるって言ってたもんなぁ。とんだ豚に真珠だぜ。誠実な所が良いんだっけ?」
アキラはコードに抵触しない程度にワカに接近し、言った。
「コイツな? 全然誠実な奴じゃねえぜ? 俺が知ってるだけで何回お前の裸を覗こうとしたか。お前以外も含めたら両手両足の指じゃ足んねえよ。とんだ変態下衆野郎だ? 前なんか、NPCにわざとぶつかって水の中にに落として、濡れ透け? って奴を楽しんだらしい。これでもコイツのことが大切かい?」
アキラの言葉にマルガメが叫ぶ。
「ち、違う。俺はそんなことしてない! デタラメを言うな!」
「さあどうだかな。犯人ってのは皆否定するらしいぜ。で、どうするよ、この変態とお前の命。どっちが大切だ? 」
未だ踏ん切りが付きやらぬワカに、アキラは一押しをする。
「なあ、一回お前の装備が全損して恥かいた事あったろ?」
「ええ、そうだけど」
ワカの顔が恥辱に歪む。死の恐怖に際してなお思い出すあたり、酷い思い出のようだ。
「これもこの変態のせいだぜ」
ワカの顔が驚愕に染まる。もしかしたらなにか心当たりがあったのかもしれない。
「まったくとんだ下衆だよな。公衆の面前で下着姿になって恥ずかしがるお前に興奮してたらしいぜ。理解に苦しむよなぁ。好きな女を苦しめるのが大好きな変態だ。そんなのがお前の命に釣り合うのか?」
アキラはもう一度片手剣を差し出して言った。
「ほら、やれよ」
ワカがアキラの差し出した片手剣を掴み、一歩前に出る。そして、剣を振り上げる。
「ほら、早く。なんならカウントダウンしてやろうか? ゼロまでに殺さなかったらお前を殺すぞ。それ、ごー」
アキラの呑気な声が響く。
「よーん」
ワカの手に力が
「さーん」
「やめてくれ、殺さないで」
マルガメが怯える。
「にー」
「な? 一緒にデートも行ったじゃないか。プレゼントだって一杯した。だから」
マルガメは説得をしようとする。
「いーち」
「だから、頼む。頼むよ」
マルガメは頼み込んで。
「ゼ───」
マルガメの首が飛んだ。
減少していたHPには致命傷だったのか。マルガメの体は爆散する。マルガメの声が聞こえなくなり、あたりは静寂に包まれる。
そんな中、アキラは拍手をして言った。
「いやぁお見事。ちなみにさっきのやつデマだぜ。服が爆散したあの事件は前しょっ引かれた別の変態の仕業だ。まあ恋人と自分の命天秤にかけて自分選んでるあたり、どのみちクズだったんだろうけどな」
その言葉を聞いてか、ワカはその場にへたり込んでしまう。頭を抱え込んで、ぶつぶつと何かを言っているようだった。
アキラはワカの存在を無視し、私たちに言う。
「そんな訳で、お前らには殺し合いをしてもらう。トーナメントだ。完全決着のデュエルで、
その言葉に、もはや抗議する者は居なかった。
「んじゃぁ一回戦だが、まずはモニカとワルサー。お前らがやれ」
「私が、モニカさんと?」
ワルサーが困惑して言う。
「そうだ。武器はお前らの返してやるから、デュエルで決着をつけろ。もちろん、武器やレベル差で決着が着かない様にフェアモードでな」
アキラはこれまた一層楽しそうに笑った。
───クズ野郎が。武器を返した瞬間、そのクソみたいな声を出す喉を斬り裂いてやるわ。
私は内心心に決め、従順なように、無言で振る舞う。
そして部下に私とワルサーの武器を渡した所で、思い出したように言った。
「ああすまん、観客が足りなかったな」
アキラが指を鳴らす。すると扉が開き、連れてこられたのは。
「ノンナ?」
紛れもなくノンナその人だった。だが、その目に光は無く、心ここにあらずという様子だった。服装も変わっており、ボロ切れのような布に変わっている。
私の中に怒りがこみ上げて来る。たまらず、私はアキラに叫んだ。
「ノンナに何をした!」
アキラはいたって真面目な顔で説明をする。
「いやな、さっき話題に出した変態野郎。実は俺の部下に居てな。小さい胸のガキみたいな女が好きだってんで、睡眠PKと同じ要領で倫理コードと装備を解除してやったんだよ。あとはまぁ、お前の想像通りじゃねえかな?」
「
私はアキラに憤怒の視線を向ける。アキラはノンナと戦った時にも使用していた細身の大剣を引き抜き、ノンナに向けた。
「おい待てよ。そんな今にも殺しに来そうな顔をしなさんな。言う事を聞かないと、こいつも一緒に殺す事になるぜ」
まるで武器があろうとなかろうと負ける気はさらさら無いと言った様子で言う。実際問題、武器を持っていようがアキラとの戦いは厳しいだろう。その上ノンナを守ることを考えれば、不可能に近かった。
「そら、お前らの武器だ」
アキラは部下をよこし、武器を取らせる。
「武器を持ったな。どっちからでも良いぞ、始めろ」
私は憤怒を抑え込み、ワルサーにデュエルの申請を送った。
「モニカさん」
ワルサーが困惑した声を出す。
「ごめんなさい。でも、今はこれしか方法が無いみたい」
私は抜剣し、構えをとる。
無論、アキラの蛮行を許すつもりはない。今から無実の人を殺そうとする私も同罪だろう。それでも、私にとってノンナはかけがえのない存在だった。
「ほらワルサー。申請を受けろよ」
アキラの言葉に、ワルサーは毅然と言い放った。
「私は戦いませんよ。人殺しもしません」
「おいおいそれは困る。そうなると俺はノンナを殺さなくちゃならん」
言葉とは裏原に、アキラの声は笑っていた。アキラの言葉を無視してワルサーは言う。
「さあモニカさん。私を殺しなさい。私は殺人者として生きるより、人として死にます。家族には申し訳ないが、血塗られた手で家族を抱くわけにはいきません」
「ワルサーさん………」
「すみませんモニカさん。貴女を人殺しにしてしまいますが、私は自分の命惜しさに人を殺したくないのです。親友の命がかかっている貴方は理由が違う。さあ、やりなさい」
こちらを向いたワルサーの目に迷いはなく、覚悟を決めた表情だった。
きっと、彼は私と2人でノンナを守りつつアキラを殺せるならそうしてくれただろう。だが不可能だ。だからこそ、自分の命を捨てるつもりなんだろう。
「わかりました。貴方の本名を聞いても良いですか?」
ワルサーは頷いて。
「はい、私はマトバと言います。マトバ、セイジュウロウ」
「ありがとうございます。では」
ワルサーは───マトバは決闘申請を受けいれ、あぐらをかいて座った。
そして、私は彼の首に片手剣単発スキル《スラント》を叩き込んで、首を刎ねた。続く数撃でHPは全損し、爆散した。
そして私の頭上に掲げられるwinner表示。それを無視し、私はアキラを睨みつけた。
「すげえ死に様だったな。満足だ」
そんなものどこ吹く風とアキラは満足げにうなずく。そして部下が寄ってきて、私に武器を渡すように請求する。
「っ!」
逆らうこともできず、私は武器を渡した。
こうして、私は無実の人を殺した。
それはこの後も続けられ、私は人を殺し続けた。その中には、マルガメを殺して以来正気が戻らなかったワカも居た。
殺して、殺して。その生活を一ヶ月ほど続けた。
私も無策に日々を過ごした訳ではなかった。ある人物を利用し、アキラを狙うタイミングを作ろうとした。
そして、その時が来た。私とノンナの決闘の時である。
ノンナはずっと観戦役であり、たまにどこかに連れて行かれる立場だったが、私がトーナメントで他を皆殺しにすると、最後の対戦相手として選ばれたのだった。
こうなる事はある協力者から聞き及んでおり、なおかつ人払いも頼んであり、アキラと部下2人の他は私とノンナだけだった。
そして、私とノンナは武器を渡されて向かい合った。
一ヶ月間話していなかったが、ノンナは無二の親友だとしんじている。きっと私がアキラに攻撃をかけたら、間違いなく続いてくれるだろう。
そうして私は、申請を送るフリをしつつ、剣を抜いた。
ノンナが話しかけて来る。
「ひさしぶりだね、モニカ」
ノンナのはつらつとした気配は消え去り、虚ろになってしまった瞳に、抱えきれんばかりの悲しみを映していた。
「ええ、ひさしぶり」
なんて声をかければ良いのかわからなかった。子供のように純真だった彼女が、人の欲と暴力に晒されて傷ついていないはずが無かった。
「ごめんね、私のせいで。あの日モニカの言う通りにしておけば良かったのに。私ってバカだよね。本当に、何もできない癖にでしゃばって。全部台無しにする。本当に、ごめんね」
ノンナの声は泣いていた。だがもう涙は枯れてしまったのか、涙を零す事は無かった。
「そんな事………」
なんて返して良いのかわからない。私が迷っていると、ノンナはまた話し出す。
「それでね。私、もしモニカと戦う事になったらどうしようって、ずっと考えてたんだ。こんな私でも、誰かの迷惑にならない方法をね」
「ノンナ………」
───ノンナ、また自分を悪く言ってる。自分で思っているより遥かに良いこだって言ってるのに。ここから出れたらまた言ってあげなきゃね。
そろそろだろうと、私はアキラの方へ駆け出すために重心をずらし始める。大丈夫だ、きっとうまくいく。
「だからね、モニカ」
私の方は準備ができた、後は駆け出すだけだった。
「ごめんね」
その言葉を残し、モニカは自分の胸に槍を突き立てた。
何度も何度も、私が止めに入るより先に、ノンナのHPは全損した。
それからのことはよく覚えていない。私はアキラに斬りかかり、いつのまにかカーソルをグリーンに戻していたアキラに傷をつけた事で、私のカーソルはオレンジになった。
3人相手に殺し合いを続けていた先に、血盟騎士団の団員が救援に駆けつけたらしい。
その事すら、私には曖昧だった。きっとどうでもいい事だったんだと思う。