この世には悪魔の実というものがある。
一口食べれば、ゴムになったり、雷にはたまた動物にすら変貌する事の出来る、魔法の果物だ。
現代社会を生きてきた俺にとって、そんなものは創作上の存在でしかないと鼻で笑っていたものだ。しかし、この海賊が蔓延している時代にあり得ないなんて事はあり得ないの一言。
その洗礼を受けたのは、孤島で一人ぼっちの俺が奇妙な果物に口をつけた時だ。
親もおらず、同じ人間もいない。ただ食料だけには困らない島で、暇を物凄く持て余していた俺はこの時が人生の中で一番の転機だったといえる。
味はゲロマズ。しかし果物を口にした後、俺自身の身体に言い寄れぬ動悸が襲いかかった。まるで身体が破裂しそうな苦しさに包まれる。
「ウオオオオオォ!!!」
全身に纏ったボロ切れの布が裂け、自分の視点と地面が遠くなっていく。明らかに俺は巨大化していくのがわかる。
手が仰々しく肥大化し、それは最早人間の手ではなかった。足も、そして何より物凄くお腹がぽっこりしている事に驚いた。
孤島でサバイバル生活を行い、身体は鍛えられるとはいえ、食べてるのは野菜と果物ばかりだ。肉などその辺の打ち上げられた魚ぐらいしか口にしていない。
俺はすぐさま自分の姿を見る為、海面へとその身を捩らせる。
「な、なんじゃコリァァァ!?」
3つの目、大きく曲がった角。無造作に生えた牙。そして蝙蝠のような翼が背中へと立派に生えていた。
そう、俺はアクアクの実の悪魔人間へと変貌してしまったのだ。
そんな訳で、悪魔の実の能力者になった俺だ。…ん?何で悪魔の実の名前を知ってるかって?それは孤島で拾った悪魔の実図鑑を拾った時に知識を得たのだ。世界情勢も恐らく、遅れ遅れではあるが新聞も拾っている。
最初はカナヅチになってしまったのと、悪魔にしてもちょっとスレンダーな悪魔にして欲しかったもんだ。
姿は俺が前世でプレイしていたゲーム、デモンズソウルに登場した”拡散の尖兵”という敵に似ている…というかそのものだ。
翼も飛べるにしちゃ、飛べるのだが、この図体でちょこっとしか生えていない翼で持ち上げるには至難だ。数メートル程浮かぶ事はできるのだが、何せそれが数秒とも持たない。
ただ、筋力はやはり凄い。近くにあった大木を片手で引きちぎり、それを青空に待っているカモメに命中させるほどの力。
これなら無双できるのではないか、俺はそう考えた。
所謂、異世界転生という機運に巡り合わせた俺にとってこれは神様からの俺tueeeプレイしろという天啓なのでは?
ならば、俺はこの実の力を持ってして最強の海賊になるのが王道というものよ。
こうして、俺の海賊生活が始まった…
天気は快晴。風向は拾った方位磁針によると西向き。順風満帆な出航です。
ただ、船はイカダな為にお手製のオールで漕いでいる。休む時間がないのも少し残念だ。こういう温かい日は一眠りしたいところなのに。
というわけで、孤島から俺は遂に出て行った。物心ついた時から島の森にいて、そこから10年程は経っているから恐らくは俺は10代半ばぐらいだろう。まだ少年ではあるものの、心はもう十分なおっさんだ。
海図もないから、どこに向かっているかは不明。全ては運任せでこの航海は行われている。どこの島へと到着し、出会いを繰り返し、そして様々な出来事に巻き込まれていく。まさに冒険は浪漫だ。
そんなウキウキ気分で漕いでいると、丁度イカダの向かっている方向の水平線に、島を見つけてしまった。しかも既に人々が営んでいると思しき建物も確認できる為、それなりの文化が発展している島なのだろう。これは期待が高まる。
イカダを人気のない島の浜辺へと移動させる。流石に町の港へ向かったら、完全に注目される事間違いなし。
一応海賊の為、名を挙げることが嫌というわけではないが、流石に今のところは物資も仲間もいない。もう少し準備を整えるべきだと判断した。
浜辺に木の杭を打ち、その杭にロープとイカダを繋げる。初航海での初着陸だ。とはいえ、イカダだからあまり船旅というよりも、漂流の方が何となくしっくり感じた。
さてと、もし町へと訪れたのであれば、寄りたい場所を決めていた。
それは俺自身の能力について把握するためでもある。
静寂、僅かに聞こえるのは紙のめくる音のみ。ここの図書館は、上品かつ穏やかな雰囲気に包まれている。レビューするならば星5を贈呈したい程に過ごしやすい。
図書館に向かった理由は、俺自身の能力である悪魔の力について把握するためだ。
悪魔なんて超常的な存在になったのだから姿、パワーなどの肉体の変化だけというわけでもない筈。
俺が思い浮かぶ悪魔は、淫欲や強欲などの欲望を司り、何か邪悪的な力を有するみたいな中二的要素を含んでいる。しかし、悪魔なんて存在は神話や宗教で様々な姿に変わっていくものだ。
ならば、この世界における悪魔の概念を調べる必要がある。
神話や歴史についての本が集まっている棚へと向かい、無造作に何冊か本を取り出してみる。どの本も適当に読むが、どうやら概念的には前世の世界と同じような存在で取り扱われているものが多い。
そして気づいたのは、どの本にも共通して悪魔との契約について記載されていた。しかもその方法と契約書の紙なども付録付きで。
何とも邪悪極まりない本達だが、俺にとっては好都合。何より俺そのものが悪魔だからな。
大概が契約した者の欲望を満たし、代償として悪魔の望むものを支払わせる。まぁ創作とかでもありけりな話だ。
これでようやく俺の能力に予測がついたのかもしれない。
それでは、早速俺のオリジナル契約書を作成してみよう。
悪魔がせっせと契約書を手書きで作るなんて間抜けな光景だ。他に図書館を利用している者も、俺を怪訝そうに見てくる。しかしこれも強くなるための布石だと思えば苦痛では無かった。
さて、本で見たものを参考に数十枚程作成しては見たものの、俺の予測した力ではなかったらこれは全部ゴミと化してしまうわけだ。
確証が得られるよう、俺の力がわかるような状況が訪れないものか…。
「キャッー!!」
「な、何だ海賊か!?」
「おい見ろよ!あそこに海賊船が見えるぞ!!」
外で聞こえる悲鳴と爆撃音。まさかの思っていることが現実で起きてしまうパターン。俺はどうやら運に恵まれているようだ。
早速、この契約書が活かされる時。それに、この町は調べ物でお世話になった。その恩返しも含めて一石二鳥だ。
原作前の話なので、色々と独自解釈が多くなると思いますがよろしくお願いします!