戦姫絶唱シンフォギア 響くぜ!絶唱!!   作:海空来

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第4話 僕は僕であり、君は君である

「かろうじて一命は取り留めました。ですが、容態が安定するまでは絶対安静。予断の許されない状況です」

「よろしくお願いします」

引き連れた部下ともども、弦十郎は医師に頭を下げる。

「俺たちは、鎧の行方を追跡する。どんな手掛かりも見落とすな!」

そしてすぐさま行動に移る

その場で立ち止まっていては、何もできないから

 

リディアンのすぐ隣にある、総合病院

そこに、絶唱を使って大幅なダメージを負った翼は搬送されていた

 

僕と響は病院の休憩所で座っていた

 

「あなた方が気を病むことはありませんよ、翼さんが自ら望み、歌ったのですから」

 

小川さんが珈琲を3つ買いながら話しかけてくる

内、2つを僕らの前に置いた

 

「ご存知と思いますが、以前、翼さんはアーティストユニットを組んでいまして」

「ツヴァイウィング…ですよね…」

「ええ、その時のパートナーが、天羽奏さん、今は貴方の胸に残る、ガングニールのシンフォギア装者でした

ですが奏さんは殉職、ツヴァイウィングも解散

そうして一人となった翼さんは、奏さんがいなくなった事で出来た穴を埋めるため、我武者羅に戦ってきました…

一人の少女が当たり前に経験する恋愛や遊びなど一切やらず、ただ敵を斬る剣として…自分を殺して、奏さんを奪ったノイズを倒すために…」

 

残酷な話だ、だがだからこそ、響を戦わせようとも、認めようともしなかったのかもしれない

 

「そして今日、剣としての使命を果たすため、翼さんは死ぬ事すら覚悟して絶唱を使いました、不器用ですよね。でもそれが、風鳴翼の生き方なんです」

「そんなの…酷すぎます…」

 

響が涙ながらに話す

 

「そして私は…翼さんの事…何にも知らずに…一緒に戦いたいだなんて…奏さんの代わりになるだなんて…!」

 

響の涙が止まらない

今までの事を後悔してのことだろう

 

「…後悔することは出来るよ、でも大事なのは、後悔しないために今何をするかじゃないかな」

「へ…?」

「僕はベリアルの息子、更には、ベリアルの駒として、ヒーローに仕立て上げられた、そのせいもあって僕とベリアルを同一視する人も沢山いた…けど、僕は僕でベリアルはベリアル、同じようでも違う、奏さんと響みたいにね」

「そっか…私の中にガングニールがあるだけで、私は奏さんじゃない…」

「僕が僕であるように、君も君なんだよ…」

 

「僕も同じ考えです、響さんに、奏さんの代わりになってくれとは思いません、ただ一つ、2人にお願いがあります」

 

響とリクは身構える

 

「翼さんの事、嫌いにならないでください、翼さんを、世界にひとりぼっちにしないであげてください」

 

2人は強く頷き返した

 

 

 

 

落ちるー落ちるーー落ちていくーーー

 

どこまでも落ちていき、海に落ちる

まるでイカロスのように……

 

 

薄れゆく意識の中、忘れたことの無い姿が側を通り過ぎる

翼は必死に呼びかけた

 

片翼だけでも飛んで見せる!どこまでも飛んで見せる!

 

 

だから笑ってよ、奏…!

 

彼女は哀しい目でこちらを見るだけだった

 

 

 

どうして、どうして笑ってくれないの、奏…

 

 

 

まだ落ちていく…視界が無くなるほどに…

 

いや、いや…!まだ、まだ飛んでない…私は、まだ…

 

 

いくらもがいても進めない…

 

 

 

怖い…

 

 

 

 

 

誰か…助けて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の声…聞こえたぜっ…!」

 

直後、青白い光が私を包み込んだ

 

ジード…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翼が目を開けるがまだ目の前は暗い

目にかかっているものを外すとすごく眩しくて目が眩んだ

 

「先生!翼さん!意識戻りました!」

「何!?予想より3日も早いぞ!?」

 

周りが慌ただしい

私は…生きてるのか…

 

その手に何かを握っていた

それを確認すると頭は疑問符でいっぱいになった

 

「…メガネ…?」

 

 

《数日後》

 

響は未来からの励ましを受け、今自分が出来ることとして、弦十郎さんの特訓を受けメキメキと強くなった

 

そんな矢先、広木防衛大臣が殺害され、上層部の命令により2課で保管されていた“デュランダル”という完全聖遺物を輸送することになってしまった

 

 

当日、前後左右に護衛車がついていき、その上から弦十郎とリクの乗るヘリが上空から異変がないかを探している

響も窓から顔を出して周囲を探る

 

やがて、車両群が長い橋に入った。

ふと、響が前を向くと…

 

道路が崩れていた

 

「危ない!」

「了子さん!前!」

 

幸いハンドルを切れば避けられる

だが1台は回避が間に合わず落下し、柱に激突して爆発してしまう

 

「敵襲だ、確認はできていないが恐らくノイズだろう」

「この展開、予想より早いかも!」

 

大人の2人はさすがだ、冷静に対処している

 

次の瞬間、マンホールが吹き飛び、響たちの乗る車両のすぐ後ろの車両が空高くぶっ飛ぶ。

 

「ひぃっ!?」

 

その様子に響は思わず悲鳴を上げる。

 

「下水道だ!ノイズは下水道を通って攻撃してきている!」

 

そうか、確かにそれなら気づかれずにこちらに攻撃ができる

 

「弦十郎君、ちょっとやばいんじゃない?この先の薬品工場で爆発でも起きたらデュランダルは…」

「分かっている!さっきから護衛車を的確に狙い撃ちしてくるのは、ノイズがデュランダルを損壊させないよう、制御されているように見える!だが狙いがデュランダルの確保なら、あえて危険な地域に滑り込み、攻め手を封じるって寸断だ!」

「勝算は!」

「思いつきを数字で語れるものかよ!」

 

了子さんと響さんの乗る車は薬品工場へ入った

護衛者最後の1台への攻撃を機にその動きが止まる

 

「狙い通りです!」

 

だが嫌な音が響く

 

「ダークロプスゼロ!!」

 

刹那、響達の乗る車から少し離れた位置にダークロプスゼロが出現した

その衝撃で何かに乗り上げたのか車が横転してしまう

 

「イタタタってうわぁぁぁぁぁ!!」

 

ダークロプスゼロが手を伸ばしてきた

こう見ると凄く怖い!

だが…

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」

 

リクはヘリから飛び降りながらフュージョンライズを行い、ダークロプスゼロを吹き飛ばし距離をとる

 

「あ、あの!ノイズが・・・!」

 

気付けば、周囲を大量のノイズに囲まれていた

しかもその数は増えている

 

「了子さん・・・これ、重い・・・!」

 

響はデュランダルの入ったかばんを持とうとするが全く動かなかった

 

「だったら、いっそここに置いて私たちは逃げましょ?」

「そんなのダメです!」

「そりゃそうよね・・・」

 

次の瞬間、ノイズが一斉に響たちに襲い掛かってくる

 

だが、突如として、了子がノイズの前に出て、右手を掲げた。

その手に何かしらのバリアが張られ、ノイズがそれに触れた途端、一瞬にして炭素の塊と化していく

 

「了子さん…?」

「しょうがないわね…貴方のやりたいことを、やりたいようにやりなさい」

 

響は立ち上がる

 

「はい、私、歌います!」

 

 

 

 

Balwisyall Nescell gungnir tron…

 

 

 

 

 

歌が名前の通り響きわたり響は鎧を纏う

 

 

「よし、見せてやれ響!君の力を!」

 

ジードもダークロプスゼロを見据える

 

「…くくっ、一体と思ったら大間違いさ!」

 

隠れていたネフュシュタンの女の子はライザーでなんと4回追加リードをおこなった

つまりダークロプスゼロは…計5体

 

「クソっ!これじゃ技を放つ隙がない!」

 

ジードクローは強力なアイテムだ

相手が硬い敵だったり、攻撃力が落ちるアクロスマッシャーの力を補える

だけど技の発動に時間がかかり、複数相手だと隙を作ってしまう

 

僕は防戦一方になってしまった

技を出そうとすると別のダークロプスゼロに邪魔をされてしまう

 

 

 

ネフュシュタンの女の子はデュランダルの元へ歩いていくがその前に響が立ちふさがる

 

「それを貰おうか」

「ダメ!」

「なんだ。あたしと殺り合おうってのか? 戦うことを怖がってるお前が出来るとは思えねぇけどな」

「リクくんが一緒に戦ってる限り…私も戦う!」

「あいつか?アイツはもう時間の問題だよ…すぐに倒れちまう」

「そんな事ないッ!」

 

響の目は真っ直ぐネフュシュタンの女の子を捕える

 

「私は考えることから逃げてた!ただ力を持ったから戦う!それだけだった!でも。翼さんや緒川さん、師匠に会って…何よりリクくんに出会って分かった、戦うことは、宿命から逃げないこと、諦めないこと、そして、守る事だって!

 

だから私は…

 

 

私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

皆の日常を守るために…

 

 

()()()()()!!」

 

その時だった

響の体が赤く光ると、2つの球体が響から飛び出し、ジードに向かって飛んで行った

そしてジードのカラータイマーに吸い込まれていくとカプセルホルダーへ収束した

 

「もしかして!」

 

リクは2本のカプセルを取り出す

そこには力を取り戻したセブンとレオのカプセル

だったらやることは1つ

 

「ジーっとしてても、ドーにもならねぇ!」

 

 

 

 

【〜♪優勢2】

 

 

融合!

 

スイッチを入れるとウルトラマンに継いで地球を守ったゼロの父親、ウルトラセブンが現れる

「ナーっ!」

 

それを確認し、カプセルを腰の左側の装填ナックルに填める

 

アイゴー!

 

それから現れたのはウルトラセブンの弟子でゼロの師匠、ウルトラマンレオ

「ディヤーッ!」

 

それも装填ナックルに填めると、ジードライザーのトリガーを入れる

 

HERE WE GO!

 

装填ナックルを外しジードライザーで読み込むと、心臓の鼓動のような音と共に、二重螺旋が水色と赤を彩る

 

フュージョンライズ!

 

「燃やすぜ!勇気!!」

 

僕はジードライザーを構えると再びトリガーを引いて叫ぶ

 

「ジィィーードッ!」

 

ウルトラ、セブン! 

ウルトラマン、レオ!

 

ウルトラマンジード!! 

ソリッドバーニング!!

 

 

実はこれ、第3者から見ると僕が突然燃え上がっているので皆が困惑しているだろう

だがその声は、驚嘆と感嘆の声に変わる

 

【〜♪ウルトラマンジード ソリッドバーニング】

 

焔を吹き飛ばし、現れたのはまるでロボットのような真紅のボディに切り替わったジードだ

体のあちこちから蒸気が吹き出る

 

「ジードがロボットになったぁ!?」

「おおっ!漢のロマンの塊だな!」

「まだあんな隠し玉が!」

 

ダークロプスゼロが一体こちらに向かってくる

僕はそれを突き返して拳を構えると肘からのブーストで勢いを増したパンチを繰り出す

その拳はダークロプスゼロを突き破り爆破させる

 

「ロケットパンチか!!」

 

弦十郎さんの舞い上がる声が聞こえる、好きだと思ってました

 

一体のダークロプスゼロが胸のアーマーを開いてキャノン砲を準備する

僕も相対するように胸の砲台を開いて構える

 

「ソーラーブースト!」

 

胸の4つの砲門からエネルギーが放たれ、ダークロプスゼロのビームを押し返し爆散させる

 

あと3体…

 

 

「アイツ…戦い方が変わった!?」

 

遺伝子に刻まれているのだろうか、プリミティブの時は獣のように荒々しいがソリッドバーニングになると、急に格闘技の達人のように戦う

 

「あなたの相手は私だよ!」

 

響がネフュシュタンの女の子と戦ってる間にジードは距離をとる

ダークロプスゼロの一体は頭の刀を外し向かってくる

僕も頭のジードスラッガーを構え突き進む

 

その戦いはさながら宮本武蔵VS佐々木小次郎

だが眼前の武蔵には心がない

ジード、魂の一閃がダークロプスゼロを破壊する

 

刹那、僕は別の一体により投函されたスラッガーを間一髪交わした

体勢を整えて僕もスラッガーをブーメランのように投げる

 

「サイキックスラッガァー!」

 

ウルトラ念力で上手くスラッガーを弾きながらダークロプスゼロに向かって行く

ダークロプスゼロはスラッガーを再び手に持つが僕はそれを走りながら肘に嵌め飛び上がる

 

「ブーストスラッガー、パァンチ!」

 

ジェットによる加速で思いっきりダークロプスゼロを斬り裂いた

 

最後の一体が僕に格闘戦を挑みに来る

左に右と振りかぶられるパンチを受止め、首に手刀を叩き込み肩を掴む

ダークロプスゼロは顔から放つビームで牽制するが空中で姿勢制御を行いながらゆっくり着地し僕はトドメの準備に入った

 

腕のパーツを開いてエネルギーを貯めながらそれを構える

そしてそれを正拳突きの挙動で解き放つ!

 

ストライク!ブゥーストォー!!

 

腕から緑色で炎を纏った光線が放たれそれをくらいダークロプスゼロ軍団は壊滅した

 

「凄いな彼は…」

 

弦十郎が興奮しているところでは未知の現象が起きていた

 

響の歌でデュランダルが起動、空中に現れ静止したのだ

それをネフュシュタンの女の子と響が取ろうと戦い、その末、響がデュランダルを掴んだ

 

然し、喜んだのもつかの間

響の中を何かが駈けめぐる

 

「うぅっ!…うっううウウゥゥゥゥ…!」

 

デュランダルは剣から大剣へと変わり、響の姿も何処か黒くなっていく

 

「そんな力を見せびらかすな!!」

 

ネフュシュタンの女の子はノイズを出現させるがそれはアウトだった

まるで獲物を見つけたような目をした響の圧に、ネフュシュタンの女の子は悲鳴をあげる

 

「ひっ…!?」

 

そして響はその子諸共ノイズを消滅させようと、デュランダルを振り下ろした

 

終わった…

女の子がそう思った時だった

 

「サイキックスラッガー!!」

 

その子に当たる寸前、デュランダルをジードスラッガーが抑えた

呆然とする彼女のすぐ横に大きな手が添えられる

 

「乗って!もう…もたない!!」

 

女の子が手に乗り込むとジードは一気に距離をとった

 

そしてその力は薬品工場を半壊させるのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【次回予告】
【〜♪優勢2】
響が放ったデュランダルの力、それも気にはなるけど、そろそろ翼さんのお見舞いも必要だよね…って何これ!?
そんなさなか再び、怪獣とネフュシュタンの女の子が現れる
この怪獣…なんかめちゃくちゃ素早い!今こそあの力が必要だ
次回、戦姫絶唱シンフォギア 響くぜ!絶唱!!

「撃ちてし止まむ運命を越えていけ」

魅せるぜ!衝撃!!

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