諦観するのはもうやめた   作:万能型蛮族

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裏話
『白娘子』から『一時の休息』は
ゲームをする為に爆速で書いた


(9)一時の休息

 局長室を出た。

 

「っっっはぁぁぁ……!き、緊張したぁ……! 

 何なんだアイツ……」

 

「その……なんて言うか、私たちと同年代くらいなのに、

 凄い威厳っていうか……風格があったね」

 

「そうだねぇ……うちの社長よりおっかなかったよ」

 

「まぁそう言うな。峰津院局長は

 若年ながら優秀な人物と有名なんだ。

 っと……私も仕事がある。君達の部屋に案内しよう。

 君達はここに泊まる事になるが……構わないか?」

 

「ん~、どうせ電車も動いてないし、

 悪魔だらけの所を歩いて帰るのもねぇ……

 僕はお世話になっちゃおっかな?」

 

「そう……だよな……

 電車動いてないんだった……」

 

「悪魔も居るし……危ないよね……」

 

「どうする響希?」

 

 俺とダイチは家も近い。

 だがこの状況だ、家に帰っている暇はないだろう。

 

 家もだが親も安全か気になる。

 ジプスでそこら辺は調べられないのか? 

 

「……っ!」

「あ……!」

 

 新田さんと響希が息を呑む。

 

「……可能だ」

 

 ならここに泊まろう。

 

「浅草寺から国会議事堂まで

 ぶっ通しで歩いて来たからねぇ……」

 

「そうだな……疲れたよ……」

 

「そうだ、ね……」

 

 ……。

 皆1回部屋で休もうか。

 連絡が来たら集合するって事で。

 

 全員が頷く。

 

「……では、案内しよう」

 

 ☆

 

 時刻19:00。

 ベットに倒れ込む。

 

 ……疲れた。

 

 体力的にも、精神的にも。

 ……色々な事があった。

 

 何故、俺がこんな事に。

 

 そう思わなくもない。だがやるしかない。

 俺が世界を救う……なんて言ったら自惚れだが、

 出来ることはあるはずだ。

 

 携帯を見る。

 

 悪魔召喚アプリ。

 峰津院大和は『Nicaea』と呼んだ。

 

 携帯の充電ケーブルを

 鞄から取り出し、充電する。

 

 生命線となる大切な物。

 どうせ圏外だ、悪魔召喚以外に

 使う事もないだろう。

 

 少しでも休んだ方がいい、

 ドゥベとの決戦は……確証は無いが、多分今日だ。

 今日でなくとも、いつ来るのかわからないのは事実……

 ならば休める時に休んだ方がいいだろう。

 そう考えて瞳を閉じ、微睡みの中に身を投じた。

 

 ☆

 

「みんな、無事かなぁ……」

 

 不安が胸に募る。

 外にいた時は気にする余裕も無かったが、

 こんな状況なのは響希達だけではなく東京、

 下手すれば日本中の人間が同じ目に遭っているのだ。

 

「気軽になんで俺だけ、って言ってたけど……

 こんな様子じゃ、俺だけじゃないんだよなぁ……」

 

 溜息が口から溢れ出る。

 気を引き締めなければいけない。

 幸い、心強い相棒も出来た。

 

「頼りにしてるぞ、ハヌマーン」

 

 ☆

 

「お母さん……お父さん……」

 

 涙が流れる。

 そんな事してる場合じゃないのに。

 戦うって、決めたばかりなのに。

 抑えられない不安と、

 今すぐ探しに行きたいという衝動。

 それを抑えるのがとても大変だった。

 

「どうか……無事でいて」

 

 少女の願いは果たして。

 

 ☆

 

「……家族、ねぇ」

 

 少年達の前で見せていた

 笑顔の仮面を削ぎ落とす。

 

「名古屋は、どうなってるかな」

 

 窓の外を眺める。外は既に真っ暗で、

 どの方角が名古屋なのかは知る由もないが、

 それでも外を見ずには居られなかった。

 

 圏外の状態では、

 病室の彼女に連絡を取ることすら出来ない。

 自分の無力さに思わず、壁に拳を叩き付ける。

 

「……僕らしくない」

 

 そうだ。

 お前(ジョー)はもっと笑う男だろう。

 お前(ジョー)はもっと適当な男だろう。

 彼女が教えてくれた通りに。

 失うのが怖くて、彼女から、

 名古屋から逃げた僕なりの償い。

 

 (秋江譲)笑顔(ジョー)の仮面を付ける。

 

 ☆

 

 パソコンとの睨み合いを終え、自販機でコーヒーを買う。

 

 時刻は20:00の少し前。もう少しで彼らを起こす時間だ。

 

「『Nicaea』の悪魔召喚者、か……」

 

 ジプスの召喚システムはNicaeaと殆ど変わりは無い。

 が、決定的に変わるのが適性だ。

 Nicaeaが召喚適正を全く無視して

 悪魔を召喚できるのに対し、

 ジプスの召喚システムでは召喚適正が最重要視される。

 召喚適正とはつまり悪魔を召喚するのに適しているか。

 これを満たせなければ召喚したそばから悪魔に反逆され、殺される。

 

 一定の値であればいいという訳ではなく、

 適性が上であればあるほど、強力な悪魔を従えられる。

 

 悪魔に好かれる、とでも表現しようか。

 事実、高い召喚適性を持つ者が

 討伐対象の悪魔を仲間にしたという報告は幾つか存在する。

 

 ────その悪魔を使ってジプスに牙を剥いた者が、

 局長手ずから殺された事件は、今でも局員の中で

 密やかに語り継がれている。

 

 彼らもそうならないといいが。

 

 缶をゴミ箱に捨て、

 彼らの部屋へ向かう。

 

 ☆

 

 私は憂う。

 人間(きみたち)の行く末を、

 北極星(ポラリス)の選択を。

 

 私は憂う。

 輝く者の誕生を、

 その行く道の先にある苦難を。

 

 私は憂う。




ジョーさんのこの二面性みたいなのめっっっちゃ良くない?会心の出来です。

大阪弁書けないけど許してくれますか

  • 許す
  • 謝っても許さない
  • 良いぞ、だがその代わりいいものを書け

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