この章から週1投稿になりますが、
基本的には土曜20:00に投稿されます。
後、久世響希の容姿についてモジャ頭くらいにしか書いてないけど原作と変わらないから気になる人はデビルサバイバー2 主人公で検索してくれよな
(32)不穏の火曜日
閉じた瞼に光を感じて目を開けると、外はもう明るくなっていた。枕元には携帯が充電器に繋がれた状態で置かれており、昨夜のティコとの会話なぞなかったかのように思える。
ボーッとした頭で手を見つめていると、ノック音と共に自室の扉が開かれる。
「久世、入るぞ。あ……す、すまない。寝起きだったか」
制服をきっちり着こなしたマコトが部屋に入ってくる。こちらを見ると何故か申し訳なさげに謝ってくるが、何故だろう?
と、そこまで考えたところで先日もこんな事があったなと思い出す。漸く記憶を遡れるまでに意識が覚醒してきた。
構わない、昨日と違って服も着てるしな。
ニヤリと笑いながらからかうと、マコトの顔に僅かながら赤みがさした。
「あっ、あれに関してはわざとではない! ……しかし、見てしまったのも事実。不快な思いをさせたのなら謝罪しよう……」
生真面目と言うべきか、こちらは気にしていないというのに、律儀にもマコトは頭を下げてくる。
「君に早く伝えなければと思い、事を急いてしまったようだ……。本当にすまない。ジプスでの生活が長いせいか……。一般的な青少年への対応に、その……配慮が足りなかったな……」
動揺しているのか、聞いていない事まで口走っている。これはこれで見ていて面白いが、この部屋に訪れたという事は何か伝えたいことがあると言う事だろうか。
頭を上げてくれ。まさか、単に起こしに来たと言うだけじゃないだろう?
「あ、ああ……いや。実は……昨夜から名古屋の秋江と、連絡がつかない。……秋江だけではない、ジプスの名古屋支局も、昨夜から連絡が途絶えた。何か、問題が起こったとしか考えられない……」
充電中の携帯に手を伸ばし、メールの受信を確認する。件数……2件。冷や汗が額に伝うのを感じながら、メールを開く。
☆
FROM:ヒナコ
SUBJECT:お疲れちゃんやで〜!
今日はホンマ、ありがとな!
おかげで色々と助かったわ〜。
こんな時やなかったら、
大阪を案内したるんやけどな……。
155の豚まんとか、
めっちゃ食べさせてやりたいわ。
ま、ウチも大阪で頑張るさかい、
アンタも東京で頑張りや!
☆
FROM:ケイタ
SUBJECT:無題
今日は世話になったな。借りは返したる。覚えとけ。
☆
どうやら単にヒナコやケイタからの自分宛のメールだったようだ。
「その様子だと、秋江は死亡していないようだな……」
死に顔動画が届かずに死亡した……というのは悲観し過ぎか。少なくともジョーは生存していると見ていい。が……最悪なのは名古屋支局がジョーを除いて全滅している場合だな。
「……ありえない話ではないが、可能性は低いだろう。だが……状況が分からない。……志島が遭遇した白娘子と同様に、各地でジプスが管理していた悪魔が開封されて行っている。現在東京支局はその開封された悪魔の始末などに追われて、手が回らない状態だ」
ここまで聞いて、マコトが何を言いたいのかを察する。要は俺たちに名古屋へ向かって状況の確認をして欲しいのだろう。俺としてもこのままジョーを見捨てるような真似はしたくない。答えは既に決まっているようなものだ。
……分かった。俺が名古屋に行こう。
「……君が名古屋へか。確かに戦力面で言えば充分なのだろうが……」
マコトは瞳を閉じ、何かを考えるように黙ってしまう。流石に長考するようなことは無く、程なくして目を開ける。
「……正直に言おう。私は君たちに名古屋行きを取りつけるよう指示されている。だが……迷うのだ。これ以上、一般人である君たちを巻き込む事は……」
……迫真琴は優しい。あの厳格な峰津院大和の部下とは思えないほどに思いやりに溢れ、周囲への気配りを絶やさない……言うならば苦労人気質だ。一人の人間としてその心遣いはとてもありがたいが、マコトは1つ勘違いをしている。
メールを確認してから握ったままの携帯を更に強く握り、白虎の名を呼ぶ。たったそれだけの事で、白虎は即座に俺の元へ駆け付ける。
一般人が、なんだ?
悪魔と契約してから、俺は既に一般人であるとは到底言えない力を得てしまった。今更そんなことを言われても困るのは俺の方だ。
「……! フ……そうか、それもそうだな。久世……頼む。新田と志島を連れて、名古屋へ向かって欲しい」
分かった
頷きと共に答えを返すと、マコトは軽い笑みを浮かべる。
「……ありがとう。約束しよう、後から我々も必ず駆付ける。では……8時頃に新橋だ。車両を手配しておく」
マコトはそう言い残し、部屋を出ていった。
☆
名古屋に向かう旨を伝える為に、新田さんを探していると、副都会線ホームに辿り着く。局員によると、ここに向かうと言っていたようだが……
副都会線ホームには青いビニール袋に包まれた遺体が並んでいた。キョロキョロと周りを見ている間にも、ホームの奥へ担架に乗せられた怪我人が運ばれており、黄色いテントに入っていく。どうやらテントの内部で怪我人の処置をしているようだ。
テントの方向へ向かうと、この場所で働く人間の殆どがジプス局員だということに気付く。それ以外にも普通の服を着た、善意の協力者と思しき一般人がチラホラいる。
顔見知りの局員に軽く会釈をしてからテントの中を覗くと、怪我人への手当ての手伝いをしている新田さんを見つけた。
「あ……久世くん。えっと、ごめんね。……こんなトコで」
これは……全部?
テントの内部の怪我人は相当のもので、幾ら手伝いとは言えど無理があるように思えた。
「うん……だから……出来ることは、しようって思ったの……それにね、お父さんとお母さんが運ばれてくるかもしれないから……」
本当は無事なのが1番なんだけどね、と新田さんは薄く笑う。その間も手は休めない。
「あ……用事……だよね? 少し待っててもらってもいい?」
構わないが……何か手伝える事は無いのか?
「う、うーん……? ちょっと無いかな……気持ちだけ受け取っておくね、ありがとう」
その間に目の前の怪我人への処置を終え、持っていた道具を置いた新田さんと共にテントの外へと出る。
「ん……お待たせ。えっと、何かあった?」
名古屋に────
忙しいようなので手短に伝えようとすると、慌ただしい気配が迫ってくるのが聞こえてくる。
「……え? あ……ご、ごめん久世くん! 少し待って……!」
2人の男性局員の手によって、ひとつの担架がこちらに向かって運ばれてくる。このままここに突っ立っていれば、時間を置かずに衝突するだろうと考え、1歩退いて道を開ける。
「女性1名を搬送! ……酷い傷だ! そこをどいてくれっ!」
搬送されていく女性は顔を苦痛に歪ませて、荒い息を吐いている。ふと新田さんの方を見ると、信じられないものを見たかのように目を見開き、顔を驚愕に染めている。
「……! お、お母さん!?」
改めてよく見ると、女性の顔立ちはどこか新田さんと似通ったものがある。が、視線を身体の下へ向けると身体を隠すように覆われた白い布に血が滲み始めている。相当の深手なのだろう。
「お母さんだよね!? ねぇ、お母さんっ……! 私だよ、イオだよっ……!」
新田さんの悲痛な叫びがホーム内に響く。局員も一般人も皆一様に動きを止め、何かをこらえるように押し黙っている。
「う……ア……い、維緒……? 維緒……なの……?」
答える声は弱々しいが、新田さんの母親はまだ生きていた。担架を搬送している局員が、少し焦りながら錯乱気味の新田さんに話しかける。
「家族の者か? なら一緒に来てくれ、とても危険な状態だ……!」
「あ、は、はい!」
担架と共に新田さんがテントの中へ入る。結果的に取り残された俺は、ホームの柱に寄りかかる。直感的に、新田さんの母親は助からないだろうと感じていた。それはシーツから滲んだ血もそうだが……何よりこの状況であのような重体だ。対処したとして、延命にもなるか分からない。つくづく、この災害が恨めしかった。
「お母さん……お母さん! ねぇっ、お母さんっ……!」
新田さんの叫ぶ声は少しの間続き、やがて止んだ。
☆
弱々しい足取りで、新田さんがテントから出てくる。彼女の母親がどうなったのかは、聞くまでもなく分かっていた。だが、律儀と言うべきか。新田さんは俯きながらも母親の生死について答えた。
「……。お母さん……死んじゃった」
それは誰かに言わなければ耐えられなかったのか、自然と口から零れたのか。先程より明らかに人気の少なくなったホームに、新田さんの独白が響く。
「お父さんも……。ケガして、死んだって。最期に……そう言ってた……」
彼女が頻りに無事を気にしていた両親が先に旅立ったせいだろう。魂が抜け落ちたようにも思えるほど、新田さんは落ち込んでいる。
「何でこんな……ヤダよ……。こんなの……」
気持ちは分かる、なんてありきたりな言葉を並べるのは簡単だ。それでこの場を収めるのは容易だろう……然し。
数歩、こちらに背を向けて涙を堪える新田さんに歩み寄り、声をかける。
……泣きたいなら、泣いていいんだ。
所詮、俺達は普通の高校生で、まだ子供で。悪魔を使えるようになっても、結局精神的に不安定なのは変わらない。今ここで泣いてしまっても、誰も責めはしない。
「……ううん。泣かない……。私、泣かないよ。でも、どうして……? どうしてこんな事に……。何で死ななきゃ……、お母さんと、お父さんが……」
振り向いて見えた、今にも泣き出しそうな顔。余計なお世話だったかと後悔する。彼女なりに家族の死と向き合おうとしているのだろう。だが、この様子では暫く戦える心境では無いだろう。ならば、俺に出来るのは。
「……。ごめん……久世くん、私に用事、だよね……?」
後でいいよ、また後で……な?
「……! ごめっ……久世、くん……! ありが……とっ……!」
新田さんはそこで限界を迎えたのか、その場で泣き崩れてしまう。その場でしばらく寄り添い、涙が収まるのを待ってから、その場を後にした。
ここは個人的に名シーンなんですけど劣化させてないか心配ですね……そこら辺も一応アドバイスが欲しいので、なにか思うところがありましたら感想で言っていただけると励みになります。2020年も拙作をよろしくお願いします。