中盤から終盤ら辺から体調から復帰して書いたところなんで文章の感じとか変わってるかも知れません。
「飛ぶぞ、ハヌマーン!」
ダイチがそう命じると、ハヌマーンはガシリとダイチを横持ちし、軽くその場で飛び上がると、一瞬にしてその姿が消え去る。
「えっ……? きゃっ!?」
ダイチと交戦していた女子学生は戸惑いながら姿を探すが、その答えは背後から受けた衝撃で理解することになる。
「うっし……! 上手くいった……!」
後ろから強い衝撃を受けた女子学生は、意識を失い前のめりに倒れる。その背後に立つハヌマーンの脚は、蒼く輝いていた。
夢幻の具足と称されるそれは、本来味方と隣合って戦う為の力であるが、現在はダイチによって敵対している敵の背後を取る為に使われていた。
「えーっと……そうだ、携帯。壊しといた方がいいよな……」
すまん、と謝罪を口にしながらダイチもジュンゴに倣い、暴徒の携帯を踏み潰す。
「このっ……ガキがぁ!」
「わっ、ちょっ……!?」
仲間がやられた事に対してか、怒りに肩を震わせたチンピラが、拳を握り締めてダイチに殴りかかってくる。しかし、その拳は悪魔のそれより格段に遅い。不意を突かれ驚きはしたが、ダイチはしっかりとチンピラの拳を躱した。
「クソッ……! ならこれはどうだ……!」
続けて、チンピラから雷の乱舞が襲い掛かる。拳を避けて体勢を崩したダイチにはこれを避ける術は無い。放たれた3つの雷撃の内、2つはあらぬ方向に向かったが……残る1つがダイチに迫る。
「ちょ、まっ……マジかよっ!?」
ダイチは咄嗟に腕を重ねるようにして雷撃から身を守るが、それも意味を成さず。
雷撃が直撃する。
☆
「ジュンゴ、まだまだ元気。お前たち、勝ち目ない……」
だから降参してくれと言わんばかりに、ジュンゴは悲しげな瞳をしながら、暴徒の男へ歩みを進める。
「お前たち卑怯。携帯電話、壊す……!」
「あ、アイツを、アイツを止めろ! 牛頭鬼!」
「……!」
暴徒の男により召喚された牛頭の悪魔が、ジュンゴへ斧を振るう。至近距離で振るわれた斧をジュンゴは避けようとはせず、斧の柄腹を掴んで強引に斧を押し留める。
「んなっ……!?」
────馬鹿な……!
「ん……! ジュンゴ、力比べなら……負けないよ……!」
最初は押され気味だったジュンゴは、徐々に牛頭鬼に斧を押し返し……攻撃していた筈の牛頭鬼が、ジュンゴによって吹き飛ばされる。
「悪魔使わなくても、本人の方がよっぽどバケモンじゃねぇか……!?」
牛頭鬼から奪い取った斧を真っ二つに折り投げ捨てながら、ジュンゴは再び歩みを進める。
☆
「ネコマタ! パララレイ!」
人と猫の中間を取ったような姿の悪魔が、新田維緒に向けて黄色の瘴気を放つ。決して遅くない速度で新田維緒に迫るその瘴気は、そのまま進めば確実に直撃しただろう。しかし。
「ハトホルっ……!」
すんでのところでその瘴気は打ち払われる。否、瘴気自体は直撃した。新田維緒にでは無く、その仲魔であるハトホルに。
全身に麻痺を齎す瘴気を受けたハトホルは、しかしその動きを鈍らせる事無く、唖然としているネコマタとその主人に掌を向ける。その動作に警戒を抱いた所で、もう遅い。
────マハジオ。
小さく、ハトホルがそう呟く。たったそれだけで、掌より解き放たれた雷撃が、ネコマタと暴徒に直撃する。
「きゃっ……! 何よ……! ジプスの、クセに……!」
ネコマタはそのまま光の塵となって消え去り、暴徒も手に持つ携帯が壊れる……と、それ以前に本人が気絶してしまっていた。慌てて新田維緒が駆け寄ると、流石に無傷とは行かなくてもしっかりと暴徒は生きていた。
その事実に一息吐き、ハトホルに頼んで最低限暴徒の治療をしてもらう。確かに敵対し戦った間柄だが、災害が起きなければこのように戦うこともなかった筈だ。
「早く、こんな災害……終わらせなきゃ……」
悲しげに呟きながら、新田維緒はハトホルの手当を手伝い始める。
☆
「ぐ……い、生きてる……け、ど……身体がっ……!?」
雷撃は直撃したものの、ダイチは生存していた。然し全身が麻痺し、辛うじて指が動かせる程度だ。
「このジプスが……! 手間取らせやがって……!」
「ぐうっ……!」
怒り心頭といった様子の暴徒が思い切り腹に蹴りを入れる。胃の中の物が外へ出そうになるが、堪える。堪え、チンピラの蹴る足を締め上げるように抱き着く。
「ゲホっ、ゲホ……くっそ、思いっ切り蹴りやがって……」
「な……なんのつもりだァ!?」
不可解なダイチの行動に疑問を抱くも、チンピラはリンチを続けようとするが、思った以上の力で抱き締められた脚はピクリとも動かない。
「へっ……俺は、弱いからさ……こんな事でしか、アイツに貢献出来ねぇけどよ……」
「クソっ! 離せよッ……! なんなんだこいつ……!」
残る片方の足で踏み付けても、踏み付けても、ダイチが足を掴む力は微塵も緩まない。その事実に寒気を覚えながらも、一心不乱にチンピラはダイチを踏み付けていたが、首根っこを掴まれるようにして身体が浮いた事により、リンチは中断される。
「なっ……誰だ!? クソ、離しやがれっ!」
────吹き飛べ、ザンダイン
「ぎゃぁぁっ!?」
藻掻くチンピラを無視し、首根っこを離さないまま、ハヌマーンはチンピラの背中に衝撃波を放つ。悲鳴を上げながら吹き飛ぶチンピラはそのまま地面に投げ出され、動かなくなる。
「ナイス、ハヌマーン……いやマジで」
────身を呈すにしてはやり過ぎだろう。
「悪ぃって……でも助けてくれるって信じてたからさ、だろ?」
ハヌマーンはその様子に顔を手で覆いながら呆れたように深いため息を吐くと、ダイチから背を翻してチンピラを足で転がす。
「ちょっ……無視は無いだろ! ……で? 殺してないよな?」
────無論だ、念の為調べたが……気絶してるだけだな
「うっし……なら次、だな!」
────怪我はするなよ……跳ぶぞ
再び、ダイチとハヌマーンはその場から残像を残して
☆
「……助けに来たで! ジプスめ……覚悟せえよ!」
くっ……またか……!
増援に続く増援。暴徒達は一人一人はそこまで強くは無いものの数が多く、響希達は苦戦を強いられていた。
「久世くん……!」
「響希……!」
いつの間にか、新田さんやダイチと共に階段下に追い詰められ始めている。ここから抜け出そうにも暴徒達が壁となり、容易く実行するのは難しいだろう。
「まだ、負けない……!」
ジュンゴも同様に暴徒達に囲まれているようで、時折暴徒の悲鳴と吹き飛ぶ姿が見える。これではジュンゴの力を借りるのも無理だろう。
ギリ、と無意識に歯を食いしばる。悪魔を殺すのは抵抗感はあれど、自衛のために仕方なかった。然し、同じ悪魔使いと言えど暴徒達は今も生きる人間だ。強行突破は可能だとしても……出来ない。それは、犠牲を伴う方法だ。
何か、何かないか。藁をも掴む思いで視線を巡らせていると、センタリングパークに1人の男が現れるのが見えた。顔はハットによって隠れているが、ハットから溢れるような癖毛は赤。
手には携帯。然し男は電話をするでもなく、ただ単に携帯を開き、少しだけボタンを操作するだけに留めている。一見して何をしているのか分からない行為だが、それは悪魔使いにとってはあまりにも覚えのある行為だ。
「やれやれ……随分と物騒だねぇ」
男は独白にしてはやけに大きい声で、暴徒達に話しかける。その声には嘆くような悲しみと、失望するような怒りが込められているようにも思えた。それは暴徒も同じだったのか、苛立つように怒鳴り返す。
「あぁん……? 何だぁ、お前……! まさか、お前もジプスってんじゃねぇだろうなぁ!」
「……ジプス、ジプスねぇ。俺はそんな名前のヤツは知らねえな?」
含みのある言い方ではあるが、ジュンゴが反応を返して居ないのを見るに、名古屋支局の人間でもないようだ。当然、俺やダイチ、新田さんにも覚えはない。
「じゃあお前は何なんだ! 用がねえならとっとと行きな!」
「名乗るほどのもんじゃねぇさ。……が、用ならあるぜ。その子供らを置いては去れねぇからな……!」
力強く、男は1歩を踏み出す。その一歩に付き従うかのように、一体の悪魔が男の傍らに召喚された。
悪魔……否。それは正しく鬼神と呼ばれるべき存在だ。Nicaeaが示すその悪魔の名は、ジコクテン。憤怒の形相の武将の如き鬼神が現れると、暴徒達の悪魔が目に見えて怯えを見せ始める。
「さて……やるぜ、ジコクテン」
────むぅ……!
☆
やがて、たった1人と一体の悪魔により、センタリングパークで暴れていた暴徒達は全て鎮圧された。重軽傷者が数人、死者0という規模に見合わない被害で、この騒動は集結した。
テラデカ、参戦!ジコクテンを召喚出来る&素の戦闘力が高い……見逃す手、無くない?