ホグワーツ創設物語   作:奈篠 千花

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■第7章 避けられぬ決闘 後編■

ホグワーツの7年目も終わり少なくなっていたが、ゴドリックが西の荒野の評議会に呼び出されてから、ホグワーツを創設した4人の間にはそこはかとなく、どこか窺うような雰囲気が流れていた。

もっと具体的に言えば、サラザールがゴドリックの軽口をまともに相手にしなくなり、親友ゆえの気安さだと思われていた距離感に変化があったことだろう。

評議会への呼び出しと内容は生徒たちへは当然知らされなかったので、生徒たちは各々勝手な推測を垂れ流し、中でもグリフィンドールに属する生徒は普段のうわべから、ゴドリックがマグル生まれの魔法使いを受け入れても良いと言っているのに、サラザールが純血を重んじて反対しているために対立しているのだなどと無責任に噂し、その上、無遠慮に声が大きいのだった。

ロウェナはそういった雰囲気に、心を痛めていたが、西の荒野で何があったのかサラザールに尋ねても、「推測でしかないうちは無責任なことは言えない」と、ゴドリックが語った「事実」以外のことは教えてもらえなかった。

ヘルガも心配はしていたが、こちらは逆に詳細は分からないながらも、肝っ玉母さんらしく肚をくくり、決裂するならするで仕方ないというスタンスだった。

 

そんなある日、決定的な出来事が起こる。

ゴドリック・グリフィンドールは、ガラクタス・ぺべレルの屋敷から、実際に、何冊かの最も暗いとされる魔法の書籍を借り出していたのだ。

少なくともそれの一部は、この時代ですら禁忌と目される死者蘇生に関する書籍であったのは間違いない。

ゴドリックが蘇らせたかったのがなんであれ、ゴドリックはホグワーツに御誂え向きに死体があることを思い出し、単なる実験として、死者の骨を用意して、呪文の効果を確かめようとし、それに気付いたのがサラザールだったということだ。

実験は、以前、レッドキャップが発生した、普段人の来ないホグワーツの地下で行われようとしていた。

そう、つまり、ゴドリックが弄んでいたのは、かつて弟の敵討ちに挑んであえなく惨殺された青年たちの死体だった。

死者は既に骨になっていたが、たかが数年で骨が土に還るわけでもない。

 

そこで何が行われようかとしていたのに気付いたのはホグワーツ構内を、配管や通風孔を利用して生徒に会わず経巡れるバジリスクだった。

『サラ、サラザール。

前に小男の妖精が出たあたりで、妙な気配がする。

闇の魔法もだし、変な気配がする。』

秘密の部屋でバジリスクに告げられて、サラザールはバジリスクを肩に乗せたまま、急いでホグワーツの地下に向かった。

その時点ではサラザールはまたレッドキャップでも湧いたのかと思っていた。

だが、向かった先で、彼は意外な光景を目にすることになる。

 

「ゴドリック・・・!?

貴様、何をしている!!」

サラザールが見た光景は、ゴドリックが面白くもなさそうにホグワーツ地下の広場に佇んでいて、周囲に白骨が散らばり、その白骨が立ち上がりきれずにカタカタと蠢いている姿だった。

「な、なんだ、これは?

この死体はなんだ、ゴドリック!

レッドキャップが発生したのはこのせいだったんだろう!?

しかも貴様、これはなんの術を掛けたんだ!」

ゴドリックの側には不死鳥がいて、白骨が蠢くところに思い切り急降下して骨を砕いては炎を燃やし、面白いおもちゃを見つけたというように遊んでいた。

欠片になるまで砕かれた骨は流石に動きようがない。

 

「なあに、大した術じゃない。

じゃない、ってか、なかった。

ガラクは理論を褒めてたし、骨しか残ってなくっても、完全に身体を復元できるって書いてたんだがなあ。」

平坦に、なんの感慨もなく語られたその言葉にサラザールは戦慄する。

ガラクタス・ぺべレルと面識はなかったが、フロドリーの懸念は当たっていたのだと実感する。

サラザールは、唸るようにゴドリックに食って掛かった。

「ゴドリック・・・、貴様!

やはり、ガラクタス・ぺべレルを唆したのはお前だろう、ゴドリック!

なぜ他人を唆して目的に遂げようとする!

目的はなんだ、永遠の命か?

それとも家族の蘇生か?

だからといって、どうして何故、無闇にあちこちを踏み荒らして進む!

この白骨だって、お前が決闘に巻き込んだマグルか誰かだろうが!

ゴブリンの話だって、本当は彼らが正しいんじゃないのか!

お前は一体何がしたいんだ!」

 

ゴドリックはサラザールの怒りにも、特に動じる様子もなくごく普通の話題を話しているかのように平坦に返す。

「特に何がしたいと聞かれてもなあ?

サラ、死にたくないだけさ。

それなり、確かに自分の手にあったものを無くすのも嫌だな?

魔法族もマグルも一緒だよ。

俺は公平にしてるだけさ、マグルだって、魔法がないからって、狡くないわけでも、汚くないわけでもない。

現に俺の家族だってマグルに殺されたんだぜ?

油断は禁物だ。

俺は、ちゃあんとマグルにも平等に厳しくしてるだけさ。

叶わない相手だって、気付かないあいつらが不運なんだろ?」

確かに会話をしているはずなのに、話していると何かが手から滑り落ちていくような気がする。

サラザールは得体の知れない裏寒さを感じながら、ゴドリックを睨みつけたが、ゴドリックは動かない視線を返すだけで、その真意は全く読めなかった。

 

ふと、ゴドリックの目の奥底でなにかの動きがあって、いいことを思い付いた、というようにゴドリックが陽気な声を上げた。

「まあ、こんなところで喋ってても仕方ない。

サラ、決着を付けるのに決闘しようぜ。

お前が勝ったら、質問にもなんでも答えてやるし、言うことも聞いてやるよ。

決闘も賭け事も控えるし、お行儀よくしてやらあ。」

内容にそぐわない明朗さに、サラザールはたじろぐ。

だが、ゴドリックが約した内容に、心動かされたのも確かだ。どうせこのままではこの男が正直に非を認めることなどありはしないだろう。

「本気か、ゴドリック。

負けたら、きちんとこれまでのことも全部真実を喋ってもらうぞ。」

『サラ、大丈夫なの。』

耳元で、バジリスクに心配される。パーセルタングなので、ゴドリックには分からない。

決闘は、翌日午後、湖そばの広場と決まった。

 

 

 

 

 

 

決闘が決まってから、サラザールはアルタイルに立会人を頼みに行った。

教職員ではすぐにロウェナとヘルガにばれる。

ロウェナにはただでさえ最近の自分たちの様子で心配を掛けているのは分かっていたし、ヘルガには止められると思ったのだ。

その他の教職員に頼んでもすぐに二人には筒抜けになると言うことを考えれば、生徒ではあるが気心が知れてほぼ卒業というアルタイルという選択肢になるのは仕方がない。

アルタイルからアルナイルに漏れるのも当然の成り行きで、バジリスクからモーフィアス・ゴーントに話が漏れたまでがその日話が広まったメンバーだった。

 

翌日午後、サラザールはアルタイルを伴って、湖畔に広場へ向かった。

ゴドリックは、いつもはゆるい時間で行動するのに、今日は早く来ていた。

「ゴドリック、お前、立会人は?」

ゴドリックは一人で、のちのグリフィンドールの剣と呼ばれる剣をたばさんでいた。

「立会人なんかいるかよ。

迂闊に頼んだらロウェナたちにバレるじゃねえかよ。

──なんだ、お前、アルタイル連れて来たのか?」

ゴドリックのセリフの一瞬の間に、サラザールは僅かに違和感を覚えたものの、ロウェナたちにバレるじゃねえかよ、という言葉に説得力がありすぎて、そのまま聞き流した。

「さて、やるか?」

ゴドリックが気軽な様子で言うのに、サラザールが待ったを掛けた。

「待て、アルタイルには安全な距離を取ってもらわないと。」

確かに、魔法使い同士の決闘で、ゴドリックとサラザールほどの魔法使いの魔力が本気でぶつかるならむしろ、普通に声が聞こえるレベルでは危ないくらいだ。

アルタイルは不承不承距離を取り、二人が杖と剣を構えて対峙するのを見守っていた。

 

ところで、この決闘には他にもゴドリックたちが知らぬ立会人がいた。

話が漏れたうち、バジリスクを連れたモーフィアス・ゴーントである。

バジリスクは、サラザールから校舎外だから万一のことがあってはいけないから来ないように、と言われて、モーフィアスに泣きついた。

現時点でバジリスクの言葉が通じるのはサラザール以外にはモーフィアスだけで、パーセルタングという共通項もあってモーフィアス自身もサラザールにはお世話になっていたから、絶対に目を開けないという条件でこっそりと連れ出して、湖のほとりまで来て身を隠していた。

さらに、パーセルタングとマーミッシュ語は近いところにあったから、モーフィアスは湖に住んでいるマーミッシュに事情を話して、湖のほとりで卓越した二人の魔法使いに見つからない場所を教えてもらった。

これには不穏な話が付いてくる。

『決闘、多分、あそこ。』

『紅い毛の生えた男、昨日の晩、あそこに何か魔法陣描いてた。良くない。』

マーミッシュに言われて、モーフィアスは目を凝らしたが、彼には視認できなかった。

『確かに何かある、何かまでは分からない、がーー。』

バジリスクが唸るのに、マーミッシュがかぶせる。

『分からない、分からない、でも良くない。

サラザール、恩人。私たち、湖住めた。恩人。良くない、許さない。

女王呼んでくる。』

マーミッシュの少女はそう言って湖の底深くへ潜って行った。

 

さて、ゴドリックとサラザールは、正式な決闘の答礼をして、お互い、杖と剣を構えた。

「ゴドリック、お前、本当に約束を守る気はあるんだろうな?

私が勝ったら、本当に質問には答えて、いらぬ諍いをあちこちに撒いて回るのはやめろ。

お前本人が言ったんだろう、マグルは魔法は使えないが、弱くもないし、狡くないわけでもない。

貪欲さはつつしめ。

魔法族を、我々の家族を、血統を故郷、を第一に守れ。」

サラザールの言葉に、ゴドリックの瞳はどこか暗かった。

彼の言葉は、ゴドリックの心の本当に深いところにはおそらく届いていない。

「そうやって、世の汚さもマグルの卑劣さも知ってるのに、なぁ、サラ、どうして、お前はそんなに揺るがずにいられる?

特にマグルははお前が思う以上に、傲慢で好奇心旺盛で優秀でいらっしゃるよ、サラザール。

それに卑怯者だし、汚い。

マグル相手に油断は禁物だ、奴らを信じるな、目を離すな、利用して常にこちらの都合のいいようにしておかなければ、そのうち寝首を掻かれる。」

 

ゴドリックの瞳の暗さに、サラザールが言葉を失うが、ゴドリックはまるで独り言のように続けた。

「現に、俺の家族をぐちゃぐちゃにしたマグルだって、俺の妹を蹴り殺したことも、親父を斬り殺したことも、何にも覚えちゃあいなかった。

母さんと妹は、ちょうどお前みたいな髪の色をしてたよ。

なあ、お前を手に入れたら、俺も家族というものを取り返せるのか?

我々魔法族と言うが、家族だって、油断すれば一瞬でいなくなる。

どうすれば、誰がずっと側にいてくれる?

裏切らないものなぞあるのか、喪わないで済むものなどあるのか?

なあ、サラお前で試していいか?」

ゴドリックが剣を構えた、と思ったが、蠢いたものはそれではなかった。

 

サラザールが立っていた地面が、ぐにゃりと歪んだように見えた。

「カロン フルィヌス!」

また、聞いたこともない呪文がゴドリックの唇から紡がれる。

描かれ、隠されていた巨大な魔法陣があらわになる。

それはちょうど、サラザールが立っていたその真下に位置していた。

隷属の魔法陣。

完成し、発動すれば対象を完全に術者に縛る。

「な、」

サラザールは杖を構えていても、対応になんの呪文が相応しいのか一瞬の逡巡をして、魔法陣からから伸びて来た影のような手に脚を掴まれた。

引き倒されそうになって、サラザールは呪文すら唱えずに杖を振るい、とっさに得意な水の刃で影の手を刈り取ろうとした。

 

刈り取れない。

手は、さらにぐにゃりと形を変え、まるでいばらのようにサラザールの足元から巻き付いた。

「サラおじさん!」

アルタイルが、凶悪な光景に叫んで近寄ろうとしたが、ゴドリックが放った炎と煙で近付けない。

「サラ先生!」

『サラ!』

モーフィアスとバジリスクも隠れ場所から飛び出して叫ぶ。

ゴドリックはそちらも一瞥して、舌打ちした。

「なんだァ?

まぁだ鼠がいたのかよこれは決闘だぜ?

どんな手だって使やぁ勝ちだ、小鼠どもは黙っとけよ、なッ!」

ゴドリックがグリフィンドールの剣を振るい、焔が渦を巻く。

渦巻いた焔の一端を、人の争いには無関心に不死鳥が啄ばんでいた。

 

「ぐ、ぁ、貴様、ゴドリック、こんな、闇の魔法をよくもーー。」

サラザールの足元から這い上る黒いいばらはずぶずぶと、彼の体に沈着するように黒い禍々しい文様を描いていく。

『サラザールッ!!』

バジリスクが、その魔力のほとんどを解放して、人には捉えられない言葉を叫び、それは人が唱える呪文以上の力を持った。

バジリスクが放った魔力波は、ゴドリックが描いたおぞましい魔法陣を根幹から破壊し、サラザールを完全に拘束しようとしていた禍々しい魔術式はばきばきと音が聞こえそうな様子で崩壊していった。

完全に自由を取り戻しても、サラザールの消耗は激しく、がくりと地面に片膝をついた。

「くっそ、邪魔しやがって!

決闘の邪魔する奴は殺されても文句は言えないって知ってるよなあ?」

そう言ってゴドリックは、バジリスクのいる方に炎を放つ。

 

「サラおじさん!」

ほぼ同時に、アルタイルがサラザールに駆け寄ろうとして、そちらにもゴドリックが切り裂き魔法を投げた。

それは喧嘩や決闘ばかりをしていたゴドリックの反射的な行動だったのだろうが、狙った軌道はほとんどまっすぐアルタイルを狙っていた。

「アルタイル、危ない・・・!」

膝をついた後、なんとか立ち上がろうとしていたサラザールはとっさに駆け寄って来たアルタイルを押しのけ、結果、切り裂かれたのはサラザールの喉元だった。

「サラザール!

くそっ、お前を傷つけるつもりはなかったってえのに!」

ゴドリックの叫びはどこまでも身勝手なものだ。

 

『女王!』

「女王陛下!」

そして、バジリスクとモーフィアスに放たれた炎を逸らしたのはマーミッシュの女王の魔法だった。

マーミッシュの少女が呼びに行った湖の女王は、サラザールには間に合わず、だが、彼が守ろうとしたものには間に合った。

『妾の民が、何か怪しげなことが行われていると言うから駆け付けてみれば、厭わしい術を使うておる。

サラザール・スリザリン。

その者は我らの恩人である。

その傷では人の技では到底助かるまいが、せめて、隷属の陣の餌食にはさせられぬ。

助けることができれば返すが、できなければ返さぬ。

死してなお縛られるなら幽鬼よりも悪い、歩く屍、死したるしもべにさせるくらいなら、その者の身体、我らが預かり受ける。』

女王の語彙は少女よりもだいぶ多かったが生憎、意味が分かるのはここにはバジリスクとモーフィアスしかおらず、モーフィアスも通訳するどころではなかった。

だが、意味が分からずとも、さすがにマーミッシュの女王の魔法は、桁が違った。

出血多量で既に意識がなかったサラザールの身体が、ふわりと浮き上がると、夢のように湖に沈む。

サラザールに向けた誰の手も届かない。

 

「くそ、待て!

そいつは俺のなんだよ!」

ゴドリックは、どこまでも身勝手に、湖に向かって追い縋ろうとするが、きーん、と高い音がして、見る間に湖面が鏡のように固まっていく。

人ならざるマーミッシュの魔法のひとつだろうが、ゴドリックが湖に足を踏み入れても凍った湖面に乗るように、沈みさえしなかった。

「くそ、くそ、くそ!

返せ、そいつは俺のだぞ!」

ゴドリックが荒々しく踵をふみ鳴らし、グリフィンドールの剣で斬りつけ、炎を放ったが、むしろ炎がその身に返りそうになって横から不死鳥が炎を啄ばんだだけで、湖面にはなんの影響もなかった。

 

「サラおじさん───。」

「サラ先生──。」

ゴドリック以外の少年たちも呆然としていたが、そこに、ロウェナとヘルガがアルナイルを連れて駆けつけて来た。

「ゴドリック、何をやってるの、サラはどこーー。」

「湖がなんでこんな事になっているの、この残ってる妙な魔法の気配は何ーー。」

「ねえ、ゴドリック、サラはどこなの!」

混沌とした中で、ロウェナがゴドリックに詰め寄るが、ゴドリックは返事もせず、まだ傷一つつかない湖面を忌々しげに見ていた。

 

 

 

 

 

湖面は、それから一週間以上も元に戻らなかった。

一週間以上経って、湖面が元に戻ったのに、サラザールが戻らなかったとき、ロウェナはゴドリックを強く非難し、それが例え決闘だとしても先にいかさま紛いに暗い魔法陣を仕込んでいた時点で裁断されるべきだと主張した。

だが、不祥事を公にすることに難色を示したのは、意外にもアルタイル・ブラックだった。

「魔法族の子弟へ十分な教育を与えると言うのは、サラザールおじさんが本気で取り組んでいた理想です。

サラおじさんは僕にとって家族も同然なんです、おじさんの理想をこんな不祥事で瓦解させるわけにはいかない。

ひどい不祥事でしょう?

創設者の一人が、闇の隷属魔法で、意見の合わない一人を自分に隷属させようとしていたなんて。

そんなことが表沙汰になったら、やっと軌道に乗ったホグワーツの信頼性は一瞬にして地に堕ちる。

子供が隷属させられるんじゃないか、他の魔法使いのしもべにさせられるんじゃないかと思って学校に子供を預けてくれる親はいない。

実家や、東部には僕が対応に当たります。」

真っ先に、ゴドリックの処断を望むと思われたアルタイルの意見に、呆然とするロウェナだったが、ヘルガはアルタイルに賛同した。

 

「無論、グリフィンドール卿をそのまま野放しにすると言うことじゃない。

許すことは絶対にできないけどーー。

せめて、隷属魔法は二度と使わない、って、破れぬ誓いをしてもらうくらいじゃないと。」

闇の魔法、と言わないのは、今知られている魔法はそうだと知られていなくとも、半分以上は闇に属するからだ。

昼と夜があるように、光と闇も、表裏一体であるのだ。

「おお、そのくらいいくらでもしてやるぜ。」

拍子抜けだったのは、当のゴドリック・グリフィンドールが制約に簡単に同意したこと。

ゴドリックの考えていたことは結局誰にも分からなかったが、彼はこの事件の後、確実に賭け事や決闘をする回数が減り、口数が減った。

 

サラザールは突然辞任した形になり、アルタイルとアルナイルは、ブラックとレストレンジ、そして、サラザールの妻には真実を話した。

もちろん、その話は非常な怒りを呼んだが、政治というものの大切さをよく分かっている家系ばかりで、サラザールの志を知っていた者ばかりだったので、ホグワーツの不祥事を表沙汰にすることは発足したばかりの魔法学校にをダメージを与えるだけでなく、サラザール・スリザリンの評判に二度と消えない傷を与えると判断して、彼らは煮え湯を飲んだ。

だが、その前のゴドリックとサラザールが不仲になったという評判が、特にグリフィンドールの生徒の中で独り歩きをし、しかもロウェナが口走った決闘という単語を漏れ聞いていた生徒がいたせいで、サラザールはゴドリックとの決闘に負けて出奔したという勝手な風評が広がっていくのは、どれだけ否定しても真実を説明できない以上、止めようがなかった。

 

バジリスクは、それまで気ままに配管や通風孔を使って探検していたのだが、この後はほとんど出歩かなくなり、ほとんどの時間を秘密の部屋にこもって過ごした。

アルタイルにさえ会いたがらず、かろうじてパーセルタングで話せるモーフィアスとくらいしか喋らず、のちにサラザールの娘が入学して来てからは彼女と話したが、話せる相手がいなくとも湖まで出掛けることもなく、話す相手がいないときはほとんどを眠って過ごすようになった。

 

アルタイルは、予定通り、ホグワーツを卒業してからそのまま教師になった。

彼は、サラザールが突然いなくなって動揺するスリザリン寮生を励まし、支え、まずは魔法族同士を尊重し、お互いを守ろうという、サラザール生前の「魔法、故郷、そして家族」という信念を貫いた。

後に、それが伝わるうちに変質するとしても、ブラックが王家を自認する実績と伝統はおそらくこのころ生まれたのだ。

全てが後の世に、正しく伝わるとは限らない。

それでも、その時代、ブラックは正しく、魔法族の守護者の位置を確立していった。

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