ホグワーツ創設物語   作:奈篠 千花

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物慣れず早速やらかしてしまいました…。
序章を入れずに一章投稿してた…。
前話を序章にしたはずですがうまくいったろうか。
もし読んでくださった方がおられたらすみません。


■第1章 魔法学校の創設 前編■

ユリウス暦993年9月1日、後にイギリスとアイルランドに住まう魔法族の師弟のほとんどが通うことになるホグワーツ魔法学校は、スコットランドのある隠された地方で、どこまでも青空が続く珍しい晴天の中で開校式を行った。

西暦1990年代には千人規模の学制であったホグワーツであるが、初年度には、十代前半ではあるが年齢も出身地も魔法の習熟程度もばらばらなたった8人の生徒しかいなかった。

まずは一年生しかいない!

何年で卒業にするのかも決まっていなかったが、成人を目安に卒業試験をすればいいのではないかと、漠然と話し合っていた。

8人だと必然的に教師一人に生徒二人で、この時点では、とりあえず一人に二人ずつ振り分けただけです、クラス分けも寮分けもなかった。

 

生徒については人数が少ないので、担当と名前を挙げておく。

ゴドリックが受け持った生徒。

12歳のイグネイシャス・ウィーズルエンドと、13歳のフロドリー・ペベレル。

この二人は、共にゴドリックが声を掛けた西の荒野から来た。

ロウェナが、受け持ったのは14歳のイドワル・デハイバースと11歳のヘレナ・レイブンクロー 。初年度、ロウェナは娘のヘレナしか予定していなかったので、バランスを保つために、ウェールズのイドワルを引き受けたのだ。

ヘルガは、12歳のメドレイア・ペベレル、11歳のオッファン・スティンチクーム。これは、ゴドリックが、ペベレルの兄妹を見て、「女なんざ俺が教えるのか?」的な反応を見せたために、ヘルガがゴドリックの頭にホッピング・ポットを放って妹のメドレイアは私が引き受けると言ったために分かれた。

サラザールは、12歳のアルタイル・ブラックと11歳のロドリウス・レストレンジ。ブラック家には他にも弟妹がいたが、まずは長男の教育を頼むと言われてアルタイルを引き受けた。レストレンジも、家族ぐるみで付き合いがあって、子供を預けてくれたのだ。自分が面倒を見ないという選択肢はどこにもなかった。

教師4名に、生徒8名、そしてハウスエルフ、たったそれだけの出発で、まだロウェナの仕掛けた絡繰は全部が完成しておらず、肖像画の仕掛けどころか個人の肖像画を残す習慣すらなかった。

ゴーストもまだ新品の建物にいるわけもなく、混沌(カオス)の体現者ピーブスが実体化できる力場は形成されていなかった。

建物はぎりぎり外枠は完成していたが、後世残る温室や森番小屋、近隣の町ホグズミード、そういったもの全てが未来にある。

 

初年度、ホグワーツはとにかくそうして始まった。

だが、その始まりだとて、後年、アメリカで、イルヴァモーニーの初年度、二人の教師が二人の孤児をあばら家で教えていたのよりはマシだったろう。

 

「本日、ホグワーツ魔法学校は開校します。

安心して?

うちの子もいるのだもの、大陸のどこの学校にも負けない世界一の魔法学校にして、最高の魔法使いにしてあなた方の元へ返すわ。」

ロウェナが校長として、初日、様子を見に来ていた生徒の保護者へと笑いかける。

過保護と言うなかれ。

この島国では初めての試みなのだ。

参加しているのは、魔法族の中でもある程度出資や寄付ができる富裕な家族がほとんどで、そんな彼らがこの試みに預ける子どものことを心配しないわけがない。

アルタイル・ブラックの父のカノープス・ブラックなどはそわそわして、不備を見つけたら、息子を連れて帰らんばかりの勢いだ。

 

初日は結局、授業どころではなく真っ昼間から宴会になった。

保護者は、予想以上に立派な城造りに度肝を抜かれた者もいれば、逆に余りの田舎ぶりに驚く者もいた。

現黒の一族、ブラック家のカノープスは、先ほどまで息子のアルタイルにくどいほど注意を重ねていたが、杯を持ったまま、サラザールのそばへ移動してきた。

黒髪の、非常に顔立ちの整った男だが、整いすぎて冷たく見えるのが難点だなと、サラザールは自分のことを棚に上げて思った。

ゴドリックはペベレルの父親のハウウェルと盛り上がっているので、サラザールはそちらとはそれとなく距離を取っている。

あまり近くにいると、まず間違いなく酔っ払ったゴドリックに絡まれるのだ。

ゴドリックは酒が大好きな割にすぐ赤くなって強くはない。

 

カノープスは、その秀麗な面に酒気による赤味を仄かに差して、これもまた酔いのためにわずかに眉根を寄せて、サラザールに話し掛けてきた。

「サラザール。

うちの息子をよろしく頼む。」

本来なら、ブラック家は自分のところだけで家庭教師も手配できるし、教育できるのだが、元々、イングランド東部でサラザールと知己があったカノープスは、学校の計画と理念を聞いて、自分の子供たちを預けることに同意してくれたのだ。

ホグワーツはその立地上、通学が難しいため、生徒は必然的に寄宿舎生活になる。

料理や清掃、その他の雑事はハウスエルフの仕事に振り分けることができるが、それでも小さな子供は少なくとも両手の指を数えるまでは親の元から離すべきではないというヘルガの主張により、少なくとも入学は11歳から、と取り決めた。

「カノープス。

ああ、大丈夫だ、君の息子ーー、アルタイルは真面目で利発ないい子だ。

私も出来る限りのことは伝えさせてもらう。

学校に通ったことを誇れるように努力するよ。

何年か後にはうちの娘もここに通わせるつもりなのだから、疎かなことはしない。」

サラザールが真面目に答えたことで、カノープスはほっと頬を緩めた。

若い女性が顔を赤らめそうなその微笑みの威力も、さして顔面偏差値が変わらないサラザールにはほとんど意味はなかったのだが。

そして、ここ何年か、学校設立のために東部の自分の家とホグワーツを行き来していたサラザールだったが、その間に長女が生まれていた。

不在がちな自分の代わりに、妻と娘を気にかけてくれる東部で家の近いカノープスとその妻のベガには何かと世話になっていて、逆に家族ぐるみの付き合いなために、アルタイルはサラザールを近所のおじさんほどの距離感で慕っている。

ことさらに公言することでもないが、サラザールの密かなモットーは、「魔法、家族、そして故郷」だった。

 

部屋の向こう側では、ゴドリックがげらげら笑いながら、ウィーズルエンドの父親の背中をバンバン叩いている。

野蛮人が、とでも言いたげな目で、カノープスはそちらを一瞥したが、すぐに視線を戻し、サラザールに違う話題を聞いた。

「そういえばサラザール、この城の場所を決めたのはロウェナ姫だと聞いたが、決定にはやはりあの件が関わっているのか?」

あの件、などと言っているが、場所に関わる話は特に秘密ではない、少なくとも、この宴に参加できる人々の間では。

元々、カノープスには概要を話して協力を頼んですらいた。

サラザールは頷いて、最初の日のことを思い出して、ロウェナが何と言ったか考える。

「あの件というのが、石の件なら、その通りだ。

ロウェナ姫はほとんどなんの迷いもなく、夢で見たからと言ってこの場所を決めていたが、今思えばあれは予言の類いだったんだろうな。

いざ工事を進めてみたら、建物の予定地の中心にあの石が埋もれていてな。

最初は何か気付かなかったのだが、それを見たロウェナがトランス状態になってその石がホグワーツの礎になるだろうと言い始めたんだ。」

サラザールはそこで一度言葉を切って薄いエールで口を湿した。

 

サラザールが言うのは後のペンシーブ(深く思索するもの)、憂いのふるいと呼ばれたもののことで、それはホグワーツの建設予定地から半ば地に埋もれるように出土した石には変形サクソン[[rb:文字 >ルーン]]が刻まれていたのだ。

変形とはいえサクソン[[rb:文字 >ルーン]]であるからには、サクソン人が渡来してきてからのものではあるのだろうが、それでも石はだいぶん古く、文字を読んでみたところ、それが非常に貴重な魔道具だということが分かったのだ。

用途は記憶の記録。

見つけたロウェナがトランス状態から回復してから狂喜乱舞し、しばらくべったりとそれから離れなくなったのはある程度仕方ない。

なにしろ、その系統の魔道具には執着の薄いゴドリックまでが一緒になって術式を解析していたくらいには貴重なものなのだ。

 

「なあに、石の話?」

当のロウェナが、ヘルガと一緒に話し掛けてきた。

当主として会場で来客に挨拶して回っていたところだろうが、さすがにサラザールにはだいぶん気安い。

「そうだ。

ロウェナは挨拶まわりは終わったのかい?」

サラザールも気安く応じると、ロウェナはやや疲れてはいるが笑顔を見せた。

「だいたいね。

それに、子どもたち同士の親睦をどうしようと思ったんだけど、ヘルガが、子供には大人数でできるゲームをさせとけば勝手に仲良くなるわよって言ってくれたから、それが助かったわ。」

確かに見れば会場の隅には8人の子供たちがそのまま座り込んでまだ余裕があるほどの絨毯が敷いてあり、子供たちは手のひらほどのサイズの人形にガラス玉を転がして誰がうまく倒せるかというゲームを、いつのまにか始めていた。

「子供なんて親の思うほど弱いものじゃないよ。

タイミングさえつかめれば、子供同士でうまくやるだろうし、ゲームっていうのはいい機会になるでしょ?」

ヘルガの子供はもうほとんどが成人しているが、それだけに彼女の言葉には重みがあった。

 

「話を戻してすまないが、石のことを聞いていたんだ。

記憶を記録する魔道具だとか。

我々にも協力してもらいたいことがあると聞いた。」

カノープスが尋ねたところに、ペベレルの親と話していたコルバス・レストレンジが

「なんだ?

その話だったらわたしも聞きたい。

評議会も貴重な資料を保存しようという気はあるんだろうが、今ひとつ信頼性に欠けるからな。」

と話に割り入って来た。

どうやら、ペベレルが酔っ払ったゴドリックに絡まれ始めたので、それとなく逃げ出して来たらしい。

ゴドリックは素面では間違いなく有能だし、人付き合いができないタイプどころか、気さくで分け隔てないところが、素朴な人々には非常に受けがよかったが、魔法族は大抵概ね癖がある上、東部の文化人タイプとは合わないことも多かった。

かく言うサラザールも、初対面で喧嘩を買ったら気に入られた経緯が、実は未だにうまく飲み込めないでいる。

 

いい話をしているようでいて、ゴドリックが、特別枠で招かれていたマグルのデハイバースの領主と腕相撲で勝負しようという話になぜかなったようで、魔法抜きだから腕相撲なのかもしれないが、力加減を間違えたのか、盛大に机ごと相手をひっくり返した。

剣を抜くかと思いきや、肩を組んで銅鑼声で一緒に歌い出したあたり、デハイバースの領主はゴドリックと同じ脳筋枠のようだ。

 

「あの男はなんでアレで優秀なんだろうな?」

見ていたコルバスが不思議そうな呟きをこぼすと、カノープスがたしなめた。

「まあそう言うな、決闘では手段を選ばず、全戦全勝らしいぞ。

女にもだいぶ強いらしくて、結婚もせずにあちこちの娘に手を出しまくってるらしいが、無事なところを見ると寝首を掻かれるほど、無能じゃないってことだろう。」

まあ、まったく褒めてはいないが。

「生徒に手は出させませんよ、そんな真似をしたら去勢してやるわ。」

ヘルガも割とひどい。

 

そんな脱線を気にせず、

「興味を持ってもらえて嬉しいわ。

研究を進めているのだけど、記憶をそのまま記録する手法も、サクソン[[rb:文字 >ルーン]]に記されているみたいなの。

有効に活用できるようなら、魔法族がばらばらに研究してきた知識を集約、蓄積することもできるでしょう?」

ロウェナが話すと、サラザールも頷いた。

「ただでさえ、魔法族は数が少ないし、各家で保管するだけだと貴重な資料が保全仕切れないかもしれないしな。

もちろん協力できるものだけでいい。

各家の血統の魔法に関わるものなんかは絶対に出せないだろうし。

並行して、図書館の設立も進めるつもりだ。

これらのことは、必ずやこれからの魔法族の子どもたちのためになるだろう。」

 

そんな風に、ホグワーツの初日は始まった。

 

 

 

始まりはしたが、ホグワーツの設備そのものも全てが完成していたわけではなかった。

ロウェナは、当代一のマグルの建築家を招いて堅牢な城を造り、外観と言う意味ではほぼ完成していたが、千年の後世に残る魔法の仕掛けの大半はロウェナが作ったものだ。

正しく彼女は天才で、後世のホグワーツを見て察せられる通り、案外と外観はステンドグラスなり石積みの装飾なり、後世の補修の手が加えられていても、Pensieveが置いてある部屋への入室権限パスワードの管理などの術式を変更することは誰にもできなかった。

そういえば後世では「校長室」という認識になっていたが、当初そこは貴重なPensieveを設置している部屋という扱いで、入室権限は創設者四人に帰属した。

そもそも創設者の間で誰が校長という取り決めもなかったのだが、彼らの後を継ぐときに、それが校長の立ち位置になり、Pensieveの保管部屋が校長室となったのは当然の成り行きだったろう。

 

まだカリキュラムというものも確立していなかったから、彼らは当時中世の上流階級の生活習慣に従って、午前中を勉強に、そして午後を交友と遊びの時間にあてた。

ただ午後も、田舎過ぎて他の貴族と社交というような土地柄ではなかったから、ヘルガが案内する実地の森の薬草学や、サラザールが教える基本の魔法陣(実践編)やら、ロウェナが階段や窓や扉に掛けていく複雑な呪文を見学したり習ったり手伝ったりして、結局勉強めいた遊びをしていることもよくあった。

ちなみにゴドリックだけは

「んじゃあ、野郎ども、狩に行くぞー!」

と叫んで純粋に午後を遊びに費やしていたが、結局狩った物はハウスエルフが捌いて食卓に載るのだから、実用と言えないこともない。

そしてサラザールの魔法陣はここでも活用されていて、ゴドリックが狩って来た鹿に似た魔法生物(なぜか四本角が生えている)をどさりと魔法陣の上に載せると、一部の部位が毒々しい紫色に染まった。

「ゴドリック…、毒がある種類もあるのだからもう少し慎重に…。」

サラザールの魔法陣は、ヒト族の食用に適さない部分は紫に変色するように魔法が掛けてある。

ゴドリックと一緒に狩りに行っていた赤毛のイグネイシャスは「ほへー」とか言いながら、しげしげと鹿もどきを観察している。

「ああん?まあいいじゃないか。

サラが見分けてくれるんだから安心だよな!」

ゴドリックはこめかみを押さえるサラザールの背中をバンバン叩く。反省はない。

フロドリーは案外と研究者気質なのか、紫色の部位を触って確かめようとしたのでサラザールは制止した。

「フロドリー、触れないように。

多分素手で触ったら爛れる。」

杖を一振りして紫色の部位を消してから、残りは使っていいとハウスエルフに下げ渡す。

 

「先生、あれ見たことのない種類だったけど、サンプルで採っとかなくて良かったんですか?」

アルタイルが早足で追いついて来て尋ねる。

入学前から付き合いがあるアルタイルは「サラおじさん」と呼びそうになっては「先生」と言い換えるのに苦労していたが、やっと最近慣れたようだ。

「ああ、あれは染色してしまったら多分性質が変質してるからな。

有害部位は分かったから、どうせまたゴドリックが獲ってきた時に分けて貰えばいい。」

そういうと納得した。

「でもあれ、便利な魔法ですねー。

どっかで食事出された時に使ったら毒入ってるかすぐ分かるでしょ?」

ロドリウスのセリフは物騒だが、戦乱の気質が残る中世、長男であればそう物騒な思考回路でもない。

 

まだ寮分けもなかったが、概ね生徒たちは仲良くやっていた。

一箇所、ちょっとギクシャクしていたのが、ロウェナが受け持っていたイドワルとヘレナだった。

寮分けがないとは言っても、男子と女子を同じ部屋にするわけにはいかない。

当然女子二人、ヘレナとメドレイアが同じ部屋になる。

逆に、イドワルとオッファンが同じ部屋だったが、オッファンはおっとりしていたのでここは特に問題はなかった。

問題があったのはイドワルとヘレナ、というよりはおそらく多分ロウェナだった。

まず、イドワルとヘレナは性別が違った。

そして年齢が違った。

さらに悪いことにイドワルはマグル出だった。

そしてロウェナは先にも述べたがまごうことなき天才だった。

皮肉なことにロウェナが、彼女の娘のために最高の教育を与えてやりたいと動き回っていたこの数年間こそが、ヘレナが最も肉親にそばにいてほしい幼少期で、その時代はすでに終わりつつあった。

 

そして、学校が始まった今、そばにいて欲しかった母親は、偉大で厳しい教師としてヘレナの前に姿を現した。

断っておくとヘレナが能力が低かったわけではない。

むしろ魔法族の平均的な子供からすればかなり賢く魔力も強かったろう。

だが、性別の違いで、単純な力はイドワルが強かったし、性別と年齢が違うために、体格だってかなり違った。

魔法の知識については当然ヘレナの方がイドワルより優っていたが、ロウェナの何気ない

「イドワルはマグル出だから仕方ないわね、これから勉強していけばいいわ。」

というフォローは、たまに向けられる

「あれ?ヘレナ、これも知らないの?」

という悪気のないセリフとともに、ヘレナの心を傷つけた。

知らないのはお母様が教えてくれなかったからよと言える性格ならまだ違ったかもしれないが、そういう性格ではなかった上に、ロウェナ自身も自分の親から放任されたが一を聞いて十を知る才気の持ち主だったためにヘレナの気持ちを察することができなかったのだ。

そうして、レイブンクローはのちの火種を芽吹かせた。

 

そのほかの組は今のところ特に問題はないように見えた。

イグナドリアスとフロドリーはちょっとだけ心配されたが、それ以前に教師のゴドリックが破天荒だったし、生真面目なフロドリーが煮詰まる前に、イグナドリアスがガス抜きをさせるような関係性で意外と相性は良かった。

メドレイアとオッファンも勝気なメドレイアがうっかり授業の発言を横取りしたりしても、のんびりとしたオッファンは怒らず感心し、子供慣れしたヘルガがその間にメドレイアを嗜めるので、こちらもうまくいっていた。

アルタイルとロドリウスは元々友達だったので、家にきた時もいろいろ教えてくれるサラおじさんが先生であるのになんの文句もなかったし、8人しかいないので、秋が終わって、一ヶ月年末から年明けまで学校全体で新年休暇を取ると決まった時には、長い名前を略す程度には、具体的にはイグネイシャスが全員に「イグ」と呼ばれるようになる程度には打ち解けていた。

 

新年休暇に帰った彼らは、こと魔法の腕前について目覚ましい成長を見せており、楽しそうな学校生活の話も相まって、未知の「学校」というものに二の足を踏んでいた魔法族の家庭も、それだったらうちの子も来年は入学を考えてみるか、と、考えさせる程度の効果はあった。

何しろ、全国から子弟を集めてまとまった魔法教育を受けさせようなどという試みはこの国では初めてのことであり、とにかく様子を見てから、という人々も少なくなかったのだ。

そういった意味では年末年始は人の行き来も多く、企まずして格好のインフォメーションになったとも言える。

 

新年の休みは、久し振りに東部の自分の家に帰ったサラザールが小さな自分の娘にデレデレになって、遊びに来たブラック家の兄妹達、アルタイル、アルナイル、ペルセフォネにそれを目撃されたこと以外はだいたい好感触で終わった。

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