ホグワーツ創設物語   作:奈篠 千花

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■第2章 渾沌の精霊 後編■

冬休みに入る前に、貼り紙や口コミの効果か、ぽつぽつと求人に応募してくる男女が現れた。

それらの人々を面接して、口頭試問ではあるが、合否を決定するのだが、その中の人員に既に成人して久しいヘルガの息子が紛れていた。

ヘルガの息子は、当時のウェールズの領主階級の慣習に則って、細分化された領地を受け取っていたが、薬草研究の方がいいと独身のまま長兄に領地を譲り渡し、自分はホグワーツの教授職に応募してきた変わり者だった。

だが、変わり者でもヘルガの息子なだけあって、有能だった。

冬休み後、そのことにまつわるちょっとした話題があるのだが、それについては、またページを改めて順次話そう。

 

まずは冬休み中の出来事として、東部のサラザールから追うと。

彼はまたしても

「このおじちゃんだれ?」

状態の娘の対応に崩れ落ち、娘に再度懐いてもらおうと涙ぐましい努力を始めた。

そんな彼は、自分が不在の間、代わりに時々様子を見てくれていたカノープス・ブラックが自分の娘に自分より懐かれているのを見て、血の涙を流していた。

「やはりもう、これはホグワーツを洪水で押し流すしか・・・。」

本気ではないにせよ、物騒なことを呟き始めた友人を見て、カノープスは呆れたように、

「お嬢ちゃん、君のお父さんは賢いのに阿呆だなあ。」

と、腕に抱き上げていたサラザールの娘に語り掛けた。

「カノープス!

私の娘だぞ!」

ガバッと起き上がって主張したが、娘はむしろびくっとなって、余計にカノープスにしがみついた。

落ち込むサラザールをよそに

「いい加減になさいな、あなた。

この子はもう、おねむの時間なんですから。

ほーら、いい子、行きましょうね。」

と、妻が娘を回収していった。

まあ、子供には昼寝が必要である。

 

気が抜けたように、椅子に座り直すサラザールは、家のハウスエルフに頼んで飲み物を持って来てもらった。

当然、この時代なので薄いアルコール・・・ではなく、魔法の使える彼らは、今は水を頼む。

魔法で水が出せるのはかなり偉大なことと言えよう。

「カノ、水でいいか?

ワインが?」

「いや、水でいい。

ああ、良ければ飲める温度で白湯にしてくれ。

冷たいのは堪える。」

繰り返して言うが、水が酒より高い土地、それが欧州である。

「それにしても、サラは毎回帰ってくる度にその調子だな。

広さがないわけじゃないんだろ?

奥さんと子供も連れて行ったらどうなんだ?

屋敷の管理はハウスエルフにさせればいいし、時々は私も様子を見に来るぐらいはしてやるぞ?」

カノープスの言葉にサラザールはハウスエルフから水のグラスを受け取りながら表情を改めた。

 

「・・・いや、それはやめておく。

ホグワーツの志しそのものは素晴らしいと思うが、・・・まだ今一つ固まっていないように思う。

正直、豪放磊落と言えば聞こえはいいが、あの男は案外と謀略が好きだと思う。

サクソンの荒くれ者がどう動くか読み切れないうちは、拠点を動かす気にはなれん。

物理的な距離があるということは、それだけ守りやすいということでもあるだろう?」

サラザールの言葉に、カノープスも陶製コップの白湯を飲みながら、心当たりがあるように頷いた。

「確かにな。

サラ、気をつけた方がいい。

遠いから話は集めにくいんだが、あの赤髭はかなり癖のある人物みたいだそ。」

「具体的には?」

サラザールは彼の友人の心遣いに感謝しながら、問い返した。

「聞いた相手によって、硬貨の裏表のように評価が変わる。

陽気で親しみやすくて気前のいい人物、という評価と、傲慢で身勝手で自分の都合で賭事や決闘のルールを変える暴君、というように。

それに、だいぶ操作的で、評議会に知られるとまずいんじゃないかという魔法や魔具なんかは結構周囲を唆して研究させて、自分は成果だけ掻っ攫ってる気配もあるんだが、どれも証拠がない。」

 

それを聞いて、サラザールはアルタイルから聞いた、おそらくゴドリックが持ち出したdark artsの本のことを思い出した。

あれに関しては何かゴドリックがやっている様子は見受けられなかった。

数日すると、本も元の場所に戻してあった。

これが何かに関係するのか、サラザールには今の時点では全く分からなかった。

「そうか・・・。

どっちにしたって教育機関としてのホグワーツは動き出してるしな。

学校というのはあった方がいいと思うし、今更私だけが手を引くのもな。

カノには悪いが、うちのを頼む。

何かあったらまた相談するよ。」

カノープスは、苦笑してサラザールに首肯した。

「まあどうせ家族ぐるみの付き合いってやつだ、それは構わんが・・・、気をつけろよ?」

 

 

 

 

 

 

東でそんな会話があった時、ゴドリックも西の荒野、のちのゴドリック・ホロウに戻っていた。

ゴドリックの出身地の村は、現代でこそのどかな田舎町だが、中世の基準で言えばそれなりの規模がある集落と言えた。

彼はその土地の領主ではなかったが、少なくとも騎士階級であり、貴族であり、富裕層に属していた。

ゴドリックには妻子がなかったので、ホグワーツに居を移すかと思われていたが、地元に新年の挨拶をする必要があると言って、故郷に帰り、今、彼は友人のペベレルの家に来ていた。

だが、友人のペベレルとは言っても生徒の親であるハウウェル・ペベレルの自宅ではない。

大家族で住むことも多かった時代だが、ハウウェルの弟のガラクタス・ペベレルは未だ独身で何やら魔法の研究にいそしんでおり、早く身を落ち着けよとうるさい年老いた両親や兄を避けて、実家から出て、自分一人で屋敷を構えていた。

 

ゴドリックは、その彼を羊皮紙の書物何冊かを懐に携えて訪ねていた。

手土産はその辺で狩った牡鹿で、捌いて肉にしてくれと給仕しに姿を現したハウスエルフに投げ渡す。

ガラクタスは、薄い茶色の髪の整った顔立ちの青年で、絶妙に顔立ちが台無しになる仏頂面でゴドリックを出迎えた。

「よう、ガラクタス、しけたツラしてんな。

なんか気に障ることでもあったのか?」

ゴドリックがにやにやしながら挨拶すると、ガラクタスの仏頂面は更にひどくなった。

「気に障るも何も。

兄さんと喧嘩になって、兄さんが僕の大事な本を何冊も持って行ったんだ。

兄さんの家にはなかったから聞いたら、ホグワーツに寄付したとか言うじゃないか!

ゴド、ホグワーツって言ったらアンタのとこだ。

アンタのことだから、貴重な本が労せず手に入って喜んでるんだろ!

知ってるんだからな、アンタが結構な腹黒だってことぐらい!」

ガラクタスの罵倒にさして堪えた様子もなく、ゴドリックはひょいと肩をすくめた。

「おお怖い怖い。

んじゃこれはいらないか?

折角持って来たのになあ。」

今でいう検知不可能拡大呪文を掛けた懐から、何冊も、貴重な本が取り出される。

周知のことであるとは思うが、羊皮紙というのは動物の皮で出来ており、現代の紙とは比較にならず厚く重たいのである。

魔法がなければ、気軽に懐に入れて持ち歩けるサイズではない。

ともあれ、ゴドリックが取り出したのは、図書館から持ち出した禁書である。

図書館には魔法で複写した写本を返していた。

 

「──それ!

元々僕の本じゃないか!

返せよ!」

ゴドリックはガラクタスが目を丸くして言い募るのに、再びひょいと肩をすくめた。

「返しに来てやったんだから返すさ。

いくらハウウェルが兄貴でも、弟の持ち物を勝手に寄付するのはやりすぎだよなあ?」

どさどさどさ、と一度に手渡されたほんの重さにガラクタスはよろめいた。

「あ、ありがとう?」

毒気を抜かれて、ガラクタスは気の抜けた礼を言うが、それでも本のタイトルを確認するのは忘れない。

「足りない・・・。」

眉根を寄せると、ゴドリックが苦笑した。

「残りはまた持ってきてやるよ。

今回は確実にお前のだろうと分かる奴だけ選ってきたからな。

持って帰って来て欲しい本の題名は覚えてるか?」

 

「──何のつもりだよ。

兄貴から、僕が研究してるの止めさせてくれって頼まれたの知ってるんだからな。

親切な振りしたって騙されないぞ。」

ガラクタスの罵りに、ゴドリックは特に動じた様子もなかった。

「えらくまあ嫌われたもんだな?

大体またお前はそもそも何を研究してるんだ?

俺はそこから知らないんだぞ。

相談してくれれば、少しは何かの力になれるかもしれんだろ?」

そう言われて、ガラクタスの表情がわずかに動いた、が、一瞬ののちに不自然なまでの無表情に変化する。

「答えを待つ気もなくて、人の心を探りに来たのか。

本はいらない、どのみち研究はほぼ完成してるんだ。

あんたに何も教える気はない、帰ってくれ。」

現代ではオクルメンシー、開心術と呼ばれる技術でガラクタスは心を閉ざした。

ゴドリックはさして残念そうにでもなく、肩をすくめて

「分かった分かった。

とりあえず帰るがな、ま、俺が力になれることもあると思うぜ?

気が変わったら遠慮なく声を掛けてくれや。」

そう言って去った。

ガラクタスはその後ろ姿に貴重なはずの本を投げつけたが、重い本は届かずに落ちた。

 

 

 

 

 

 

新年が過ぎて、1月の終わりまでにまた大体の生徒が揃うと(生徒数が増えて1月中に辿り着けない生徒がごく一部発生した!)、後期の授業が始まった。

無論、去年入学の2年生は遅刻することはなかったのだが、人数が増えた故の弊害というものだった。

教師も数人は増えたが、募集は継続した。

実績が出れば出るほど生徒の人数が増え、手が必要になるのは確実だったからだ。

教師もこの島では前例がないことだけに、創設者四人の授業の助手から始め、徐々に授業を担当し始めた。

ホグワーツは田舎すぎて自然と教師も皆が住み込みになったので、全員が文字通り「同じ鍋の料理を食べる」ことになる。

この近い関係性はいいこともあれば、全てが筒抜けで、神経の細い人間には辛いこともある。

 

ヘルガの息子グリフィズは、大雑把に見えて、要点ではきっちりとしており、人当たりも良かった。

特に薬草学では母親から習得した以上のものを研究して熟達しており、遠慮のない一年生の後輩たちは、同じく創設者の子供であるヘレナと比較して、遠慮のない噂をしていた。

ヘレナはどちらかというと引っ込み思案な、人付き合いの苦手な性格で、後輩から質問された時におどおどしてしまってうまく答えられなかった。

彼女はまた、2年生の中で唯一マグル生まれのイドワルと同じ寮に属していて

「マグル生まれのイドワル先輩があれだけできるのに」

という1年生の噂から逃げることはできなかった。

もちろん、イドワルは出自が魔法族でないだけに優秀であること以上に努力していたし、グリフィズはそもそも成人した魔法使いで年齢も人生経験も違ったので比較する方が無理があるのだ。

 

まったく、グリフィズは誠実に彼の仕事を果たしていたし、彼自身には何の非もなかった。

だが、初夏を迎える頃に、特に話題にもならなかった生徒同士の会話が、ヘレナの心にわだかまりとして残ることになる。

グリフィズがその日行った薬草の授業は、教室から出て、ホグワーツの敷地内で実際に役に立つハーブを見つけるというもので、それがその日の最後のコマだったために、彼らはそこで現地解散となった。

彼らの予定は、そのままであれば大食堂に行って昼食を食べるだけだったのだが、さすがにこれだけ経つと生徒たちはそれぞれ思い思いの相手と行動を共にするようになっていて、ヘレナはイドワルと取り残された。

ヘレナは口数が少なく、身長が伸びて威圧感を感じるようになったイドワルが苦手なままだったし、イドワルはマグル出であまり余計なことを言って笑われたくないという気持ちで話さなかったのが裏目に出ていたが、彼は身近でヘレナの努力を見ていたから、むしろ、年下の少女には好意的ですらあった。

 

「ちょっとしてから行くから先に行って。」

イドワルに告げて、ヘレナは先ほどグリフィズが説明していたハーブのそばに座り込む。

イドワルは何か言いたそうにしてはいたが、結局、黙って頷くとその場を立ち去った。

ヘレナは、彼が立ち去ってから、彼が別に何をしたわけでもないのに追い払ってしまったことに自己嫌悪を感じる。

その時、別の方角から女の子たちの声が聞こえてきた。

ヘレナは一瞬身を竦ませたが、ヘレナの座り込んでいた位置は、ホグワーツに点在する謎のモニュメントの陰になって見えないことに気付くと、ほっと小さく息をついた。

 

彼女らが昼食どきにこんなところにいる理由は分からないが、低い石垣に座っておしゃべりを始めたところを見ると、食堂の混雑を嫌って、時間をずらして行くつもりかもしれない。

「ねー、グリフィズ先生って、優秀で、やっぱりヘルガ先生の息子さんだけあるわよね。

ヘレナ先輩見てたら先生の子供って言ってもこんなもん?って思ったけど、グリフィズ先生見てたら、やっぱり創設者の先生の子供ってこれぐらいないと、って思うよね。

私狙っちゃおうかな?」

「ええ、いくらなんでもおじさんじゃない?」

ヘレナの話は一言も出ていないのにもかかわらず、ヘレナは思わず耳を塞ごうとした。

「あー、何か恋が叶うおまじないとかないかしら。

愛の妙薬とか難しくて作れなさそうだし。」

新入生、子どもと言えど恋愛関係に話が転がって行くのが女である。

「うーん、そんなの知らないけど、ロウェナ先生の髪飾りとか、何かのおまじないがかかってるって噂よ。」

髪飾り?

ヘレナはそんな話を聞いたことがない。

「おまじない?

恋愛成就とか?」

「さあ?

ロウェナ先生なら賢さを増すとかじゃない?

だってほら、娘さん見る限り、家系であたまがいいってわけじゃなさそうじゃない?」

「確かにね!

そろそろ食堂空いたんじゃない?

食べはぐれる前にお昼行こうよ!」

少女たちはそこで去り、ヘレナは唐突に落とされた邪気のない悪意に、呆然として座り込んだ。

 

結局、この日、ヘレナは昼ご飯を一番遅く食べ、彼女らの言った髪飾りのおまじないのことを、デマだと思いつつも考え続けずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

この学期には、もうひとつ大きな動きがあった。

東部の港周辺に住んでいる魔法族からの話で、大陸ーー、それも地中海方面からマーミッシュ、水棲人の移住先を探しているという話が飛び込んできたのだ。

マーミッシュ、古くはセイレーンとも呼ばれた種族は独自の言語を持ち、独自の文化を持つ。

その倫理観は人のものとは違うし、交友の可能性はあるとしても、昔話のセイレーンのように気ままに遊ばれる可能性もある。

ただ、まあ、マグルとは違って、魔法族には少数ながらマーミッシュ語が話せるものもいるし、サラザールは実のところ、その数少ない一人だった。

その話を聞いたとき、ヘルガは慎重さを要求し、サラザールは難色を示した。

ゴドリックは特にいいんじゃねえかと言い、最終的にはロウェナがマーミッシュの持つ系統の違う魔法に興味をしめしたことで、ホグワーツ近くの湖に受け入れが決まった。

 

「だが、心配だな。

ギリシャ系なら海棲だろう、淡水で大丈夫なのか?」

受け入れる方向で話が決まりそうだった5月ころのある日、サラザールが不安を拭いきれずに昼食のときに呟いた。

なお、豆知識的に言っておくと、当時は昼食が正餐である。

サラザールは[[rb:蛇舌>パーセルタン]]であり、マグルと魔法族以外の鱗のある種族の言葉を学ぶのが得意だったので、彼らのことをよく知る機会があったために、逆に彼らの特性をよく知っていて、それ故に心配していた。

「大丈夫だと思います、陸の中の湖で海水じゃないことは伝えてありますが、彼らは両方に適応できる種族だと父が伝えて来ました。」

まだ席は寮ごとにきっちりと決められていたわけでなく、教師の席だけが確保されて、他はめいめい気ままに座っていたが、今日はゴーントのモーフィアスが近くに座っていた。

モーフィアスは黒髪の整った顔立ちの少年で、ブラックとは系統が違うものの、女の子からは既にアプローチを受け始めていた。

実のところ、この話を持ってきたのはモーフィアスの父親で、彼の出身地はロンドンよりも南側の海に近い位置にあり、そういった伝手が何かあったのだろうと思われた。

「父の話からの又聞きなので、正確じゃなくて申し訳ないんですが、今棲んでいる海はもう、何か危険な海獣が出てもう安全ではないんだそうです。

それで、その怪獣が来れない十分な広さのある湖に住み替えたいのだろうと言っていました。

 

マーミッシュ、或いはマーピープルの移住は圧巻だった。

全ての川は海に繋がっている。

彼らは川を間違えず遡行してきて、湖に集落を作り、人が野生の馬を捕まえて飼いならすように、海馬(ケルピー)を捕まえて飼いならした。

創設者の四人は、マーミッシュの移動が終了したと知らされたとき、生徒全員を連れて湖まで行った。

ケルピーに乗って、湖上に上がってくるマーミッシュの長は、普通の人には叫び声に聞こえる言葉で彼らに語り掛けて来た。

彼らの言葉を理解するのは決して特殊ではないが、ここではサラザールしかいなかった。

『我らの移住を受け入れてくれて感謝する。』

サラザールは、同じくマーミッシュ語で返した。

『ホグワーツはあなた方を歓迎する。

友好に謝するならば、協定を守り、ホグワーツに属する者に悪戯を仕掛けることのないよう。

またホグワーツの湖に棲むものとして、ホグワーツに害するものある時は協力することを要請する。』

 

マーミッシュ語は魔法族の言葉に比べて語彙が少ないので、サラザールが苦労してこれらのことを伝えている間、彼はずっと無意味に叫んでいるように見えたろう。

だが、ここにいるのは、学校というものに創立当初から子どもを預けて教育しようと考える教養と資産のある家庭で育った聡明な少年少女たちだったし、教える教職員が愚かなわけもなかった。

かくて、ホグワーツの堅牢な守りを維持することに資してきたと思われるマーピープルも初めは移住してきた新参者だった時代があった。

 

ただ、交友はマーミッシュ語を話せる話者が絶対的に少ないこともあり、時代時代で途切れがちではあった。

 

 

 

 

 

 

2年目で人語を話せるようになったピーブズは、この時代から元気に走り回っていた。

と言っても、まだ悪戯の種類も少なく、人の間を駆け抜けると言った悪戯が大半だったが。

ゴドリックは本気で苛立っているのか、それとも面白がって遊んでいるのか定かではないが、午後の時間は大好きな狩りにも行かず、ピーブズを追い回していることが多くなった。

ピーブズはそれを楽しい追いかけっこと認識していることがほとんどで、「ケーケケケケケ!」「待ちやがれピーブズが!」と応酬しながらの逃走劇はもはや名物だった。

しかし、ポルターガイストたるピーブズにものを大事にの観念がないのはともかく、ゴドリックも高度な魔法を駆使しながら、やることは壁を走りながら備え付けの燭台をうっかり叩き斬ることだったりするので、ほとんどヘルガに、たまにサラザールにも撃墜されている。

ちなみにロウェナは撃墜するよりも、ゴドリックの攻撃を自動で回避する燭台を作るのに夢中だ。

 

「飽きないな~、ゴドリック先生。

休み中も帰らずに追い回してそう。

待ってる家族はいないんだっけ?

あれ?

ゴドリック先生って独身なんだよな?」

ホグワーツの年々仕掛けが複雑になる通路を通りながら、オッファン・スティンクチームが首を傾げた。

「独身だよ。

オレも詳しいことは知らないんだけど、ゴド先生のうちは、公式にはゴド先生しか生き残ってないんだ。

帰ってもハウスエルフしかいないはずだぜ。」

イグーー、イグネイシャス・ウィーズルエンドはちょっとたれ気味のまぶたを少しだけ歪めて答えた。

オッファンはイグの言い方に引っ掛かり、問い返す。

「公式に、ってなんだよ。

気になる言い方だな!」

イグは重い本を抱えたまま頷いた。

「公式にはご両親と妹さんがいたらしいけど、もう何年も前にみんな亡くなってるらしい。

非公式ってのはゴド先生が結婚してないけど、子どもがいるらしいからだよ。

女癖悪いって父さんが言ってた。」

「へえ・・・。

独身なんだったら、そのうちの誰か妻にしとけば家督も安心なのにね。

家に入れてる女はいないんだ?」

オッファンの発言はあくまでも中世基準、男尊女卑ナチュラルな時代でのものであるので、勘弁してもらいたい。

 

「それにしても、ゴドリック先生のご両親ならまだ死ぬような年じゃなかったろうに。

妹さんだってまだ若いよね。

何で亡くなったんだろうね?」

オッファンの再度の疑問に、イグは少しためらってから続けた。

「親から聞いた話だから、先生に直接言うなよ。

先生が子供の頃、妹さんはマグルに殺されたって聞いた。

お父上は妹さんの仇を打ちに行って騙し討ちで殺されて、お母上はショックで寝込んで亡くなったって聞いたんだけど、さすがにちょっと本人には聞けなくてさ。

お前、オレから聞いたとか言うなよ。」

オッファンもまさかそこまで重い話が来るとは思っておらず、目を丸くして頷くしかなかった。

 

当のゴドリックは「待てやピーブズ!」と叫びながら、三階の階段から驚異の跳躍力で飛び降りている。

ゴドリックからは家族の話など一度も聞いたことがなかったが、もしかしたら、言いたくなかったのだろうか、と、オッファンは少しだけ思った。

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