とある吸血鬼と一方通行   作:reima1341

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第二十二話 羽をもがれた蝶

月が光り輝く夜空の中、一方通行は下を眺め、何かを探している。

その何かとは先程聞こえた叫び声の主だ。

彼が小さな通りに視線を向けた時、地上に光るものを見つけた。

おそらく、月の光が反射したものだろう。

 

一方通行(鏡か?・・・・いや、)ヒュオオオオオオ

 

一方通行はその場所へと降下してゆく。

 

スタッ!!

 

???「おや?こんな時間にここへ来るなんて・・・もしかして彼女のお仲間かな??」ニコッ

 

一方通行「・・・・・・あァ?」

 

地上に降りたところでかけられた男の声に一方通行は顔を上げる。

 

???「それにしては君、変わった格好してるね。変な棒もってるし、鬼狩りの服はみんな一緒だと思ったんだけど・・・・。」

 

屈託なく笑う男は相変わず笑顔で喋り続ける。

その足元には血まみれの蝶の形の髪留めをした長髪の女が倒れている。

 

一方通行(コイツにやられたのか・・・・・それにこの男、お馴染みの臭いがするぜェ。)

 

いまいち状況が掴めないがひとまず男に向き合う。

 

一方通行「鬼狩りィ?なンのことだ?」

 

???「君のその棒は刀なんだろ?それにしても不思議な格好してるねぇ。」

 

自分の質問に答えず、好き放題喋る男に一方通行はイラついた。

 

一方通行「・・・・・・・さっきから好き放題喋ってンじゃねェぞ。この三下がァ!」グッ

 

傷を負っている上、電極のバッテリーが切れている為、一方通行は空中へ飛び上がろうとする。

 

「・・・早く・・・・・・逃げ・・・・・て・・・・・。」

 

一方通行「あァ!?・・・・・・ッ!!」ズザザザサ!!

 

頭と胸の痛みで演算が精一杯なのにいきなり女に声をかけられ、一方通行は勢い余って転倒する。

 

???「あれぇ?どうしたんだい?さっきはあんな華麗に空を舞っていたのに、急に動きが悪くなったねぇ。」

 

一方通行「るっせェな、クソ野郎・・・・・。」

 

男の足元で伏せる形で倒れていた女が顔を上げ、一方通行の方を見る。

 

(この人、見たことも無い格好をしてるわ。それに異能の力・・・・・・もしかして、この人も・・・!)

 

一方通行「邪魔すンじゃねェ!このアマァァァ!!」

 

(怖っ!やっぱり・・・・・・・・・・・・・・・・・・鬼なのね。)

 

女は一方通行を自分の取り合いに来た鬼と認識した。

 

鬼。主食人間。手足を切り落とそうが何度でも再生する。

強くなれば特殊な異能の力、血鬼術を使う鬼もでてくる。

そんな鬼を倒せるのはは太陽の光、もしくは・・・・・・・

 

(この・・・『日輪刀』のみ!)グググ

 

満身創痍であろうと鬼を滅殺するという心、闘志の炎は消えない。

女は刀を握りしめ、立ち上がろうとする。

 

一方通行「バカか、死ぬぞ。」

 

一方通行はそう吐き捨てた。

別にこの女が死のうが生きようが自分には関係ない。

だが、そんな彼でも目の前で人が死ぬのはいい気がしない。

 

一方通行「死にたくなきゃ、おとなしくしてろ。このナルシ野郎はオレがブチ殺す。」

 

「・・・・!」

 

女は驚いたような顔を見せると立ち上がるのをやめた。

 

???「うーん、よくわかんないけど朝も近いし。獲物を横取りする気なら容赦しないよ。」シャキッ

 

そういうと男は扇のようなものを取り出し、一方通行に切りかかる。

 

一方通行「ッ!(速ェ、人間の動きじゃねェ!肉体操作系の能力者か!?)」

 

男の人間離れしたスピードに一方通行は反応出来なかった。

しかし・・・・・・・

 

ギュイン!!!!

 

その攻撃が一方通行に当たることはない。

なぜなら手負いの状態だろうと彼の反射は健在だからだ。

男の両手はひしゃげたように折れている。

しかし、痛がる様子もない。むしろ楽しそうな顔で笑っている。

 

???「俺の攻撃に反応は出来なかったはず。へぇ、面白い術だね。君、鬼の気配はしないけどそういう便利な血鬼術がつかえるのかい?」

 

一方通行「血鬼術だァ?それがオマエの能力か?」

 

???「おや?知らないのかい??君のその特殊な力血鬼術じゃなきゃ何だって言うんだい?人間がそんな異能の力を使えるわけがない。」

 

一方通行「ひとつだけ教えてやる・・・・・・・・。」ヒュオオオ・・・・

 

一方通行は己の周りに風を発生させ始めた。

 

一方通行「オマエみたいな三下をミンチにする悪党だァ!!!」ニタァ

 

顔面を狂気に歪めながら作り出した竜巻を男に撃ち出す。人間ならばこの攻撃を受ければ彼の言うとおり文字通りのミンチになるだろう。

だが、それはあくまで人間であればの話だ。

 

???「風かぁ、いやーすごいね。俺の血鬼術が遅れていたら君がいった通りになってたよ。」

 

一方通行(空気を凍らせやがった・・・!)チッ

 

一方通行の周りには男に向かって伸びる竜巻の形をした氷像が残っていた。 この男は氷を操るのか・・・・・・。

そう考えた一方通行は男に近づくのをやめた。

なぜなら空気中の水分を肺で凍らされたら、いくら一方通行でも対処が困難になる。ましてや今の状態では即、戦闘不能に陥る。

そう仮定する。

 

???「じゃあこんなのはどうかな?」シャキッ

 

男は扇を構えた。一方通行はとっさに身構える。

 

???「・・・・・・・・・と言いたいところだけど。」

 

男は攻撃を中止する。

突然の男の言葉に一方通行は思わずきょとんとしてしまう。

 

???「そろそろ夜明けだ、残念だけどここまでだよ。これ以上ここにいたら俺が死んでしまうからね。」

 

そういうと男は扇を懐にしまい込む。

 

???「君ほど面白い人間は初めて見たよ。いつかまた会おう、その時は俺が食べてあげるからね。」スッ

 

一方通行「逃がすと思うかよォ!!!!」ダァン

 

一方通行は地面を蹴り、地割れを起こすことによって男を埋めようとしたが土埃が晴れた時、そこに男はいなかった。

 

一方通行「・・・・・・・・チッ。」カラカラカラ

 

一方通行は女を放置して立ち去ろうとする。

 

「ま・・・まって・・・・・・。」

 

その言葉に彼は立ち止まる。

 

一方通行「・・・・・・なンだ?」

 

「・・・あなた・・くっ…、人間?」

 

一方通行「はァ?見りゃわかンだろ、人間だ。」

 

「その特別な力・・・・血鬼・・術かと思・・・ったけど・・・」

 

一方通行「血鬼術?知らねェな。それよりオマエ、死ぬのが怖くねェのかよ?」

 

「怖くないって・・・言えば・・・嘘になる。だけど私は・・・・鬼殺隊に入った・・時に覚悟してる・・・・・それに・・・・・・・・」

 

女は一方通行の背中を見上げる。

 

「私の後を継いでくれる・・・立派な妹たちが・・・・いるから。」

 

一方通行「・・・・・・・・・・・。」

 

女は涙を流す。

 

「だけどね・・・あの子たちには・・・・普通の女の子として・・幸せに暮らしてもらいたい・・・・・・。だけど私が死んだら・・・・・あの子たちが・・アイツを追って・・・・・・。」ポロポロ

 

一方通行は女の話を黙って聞いていた。

妹・・・・・。その言葉で妹達(シスターズ)、打ち止めを思い出した。そしてフランの事も。

 

「だからお願い。・・・・・あなたのその力・・鬼を倒せる刃になると思うの。あの哀・・れな鬼を・・・救うこ・・も・・・・・・」ポロポロ

 

一方通行「興味ねェし、やらねェ。そもそもオレには関係ねェ。勧誘なら他当たれ。」カラカラカラ

 

一方通行はフランのいる学園都市が気にかかるし、なにより傷の痛みで意識が飛びそうなので早く元の時代へ帰りたかった。

それに、オカルトなどは信じないが、ここでこの女の言う通りにしてしまったら歴史が変わってしまうかもしれないと懸念した。

自分でも心底バカだと思ったが・・・・・・・。

 

「・・・うっ・・・・ううっ・・・・・・グスッ・・・・・。」

 

背後で女がすすり泣く音が聞こえる。

 

当麻(妹達だって精一杯生きてんだよ!!)

 

一方通行「・・・・・・・・・・・・・。」カラカラカラ

 

当麻(何だって・・・・お前みたいな奴に殺されなきゃなんねぇんだ!)

 

そうだ、なぜあンなヤツなんかに奪われなきゃなンねェ?

この女はなンにも悪いこと、してねェンだろ?

自分と同じような悪党が善良な者の命を奪う?

 

 

 

ふざけンじゃねェ。

 

そンなこと、許されるわけねェンだ。

だから、あのガキたちを守ってンだろォが。

 

一方通行(もう一度、やり直すことが出来るのか?・・・・・・・・・あのヒーローみてェに・・・・・・・・・。)ピタ

 

一方通行「・・・・・・・・・・・・チッ。」クルッ

 

 

「・・・・ごめん・・ね・・・・・・・ごめんね・・・・・・」ポロポロ

 

グルッ!

 

突然、うつ伏せ状態から仰向けにされた。

 

「キャッ!」

 

一方通行「・・・・・・・・・・・・・。」

 

あの白髪の人が立っていた。

綺麗な目・・・・・・。男かな?それとも女かしら?

それにしても・・・・寒いな・・・・・・・・・・。

 

そんなことを考えていると白髪の人はしゃがみこみ、自分の傷口に指を入れてきた。

 

「ぐっ!・・・・・な・・・何を・・・・!?」

 

一方通行「喋ンな、大人しくしてろ。」

 

お腹でこの人の指が動いているのが分かる。

不思議と痛くない。もう、痛みを感じない程弱っちゃったのかしら?

それに・・・・・・・・・・。

 

「・・・・あたた・・かい・・・・。」

 

一方通行「黙ってろって言ってンだろォが。」

 

一方通行は女の破れた血管を繋いでいた。

自分も満身創痍で頭と胸は相変わず痛い。

少し気を抜けば自分は意識を失い、この女を殺してしまう。

 

一方通行(前もこンなことあったな・・・・・。確か・・・あのアホ毛のガキのウイルスを駆除したときだっけか?あん時は駆除しきる寸前で天井に脳を弾かれたンだったなァ・・・・・。我ながら甘い選択をしたぜェ。)

 

もうすぐ繋ぎ終わる。

女の顔色が微かによくなっている。

 

一方通行(おかげさまで危うく、くたばるとこだった。)スッ

 

一方通行は指を離す。

 

「な、何をしたの?」

 

一方通行「破れた血管を繋いだ。ただそれだけだ。だが、血は足りねェ、このままだとくたばっちまうだろォな。」ブチッ!

 

一方通行は自分に着いている点滴の針を強引に抜くと、点滴棒を投げ捨てた。

 

一方通行「羽織が邪魔だァ。悪ィがここに置いてくぞ。」ヒュオオオオオオ

 

一方通行はそのままでは立てないので、背中に竜巻を発生させ、女を抱き上げた。

 

「えっ?!えっ?!なに!?!?」

 

一方通行「・・・・・・・瀕死の割には元気じゃねェか。」ドオオォ!

 

一方通行は一気に上昇し、朝日が昇る空へと飛びたった。

 

「姉さぁぁぁぁん!!!!!!」

 

地上から少女の声が聞こえた。

 

「しのぶだわ!降ろして!!」

 

一方通行「バカ言うな、オマエを病院に送るのが先だ。」ヒュオオオオオオ

 

一方通行は構わず飛び続ける。

 

「姉さんを・・・・!返せぇぇぇぇ!!!!」ダァン!

 

少女は屋根を走り追いかけて来ている。

 

一方通行「どうやら、一緒に来てくれるそォだぜ。」ヒュオオオオオオ

 

「あらあら・・・・・・。」

 

一方通行「オマエ、この辺りに詳しいか?」

 

「診療所なら来る時寄ったわ。携帯用の医薬品が欲しくて。」

 

一方通行「案内しろ。」

 

一方通行は女の指示通り、病院へ向かった。

・・・・・・・・・地上に少女を連れて。

 

「見えたわ、あそこよ。」

 

女が指を指す方向にそれらしき建物が見えた。

一方通行はスピードを上げ、到着を目前にしたところで・・・・・・・

 

視界が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~二時間程前

 

ブツン!ウィィィィィン!

 

手術中のランプが消え、出てきたのは冥土帰しだった。

彼は先程一方通行に起こった出来事を考えるのに夢中だ。

だから、自分を呼ぶ小さな少女の声など聞こえていなかった。

 

フラン「おじさん!ねぇ、おじさんってば!!」グイッ!

 

冥土帰し「おっと!すまない・・・・・おや、目覚めたんだね??」

 

フラン「おじさん!あの人はどこ?」ソワソワ

 

心配でソワソワしているのだろう。冥土帰しはしゃがみ、フランと同じ目線まで合わせると彼女に告げた。

 

冥土帰し「もう大丈夫なんだね。あの子のことは心配ないんだよ。」ニコ

 

冥土帰しはフランの頭を撫でる。

 

冥土帰し「学園都市第一位の名は飾りではなかったんだね。まさか、自分で致命傷を修復してしまうとは流石の私も驚かされたんだよ。」

 

フラン「あくせられーた、自分で治しちゃったの?!」

 

冥土帰し「その通りだよ。意識がない状態でなおかつ力を使い続けた。彼、肉体操作の能力でもあったみたいだね。メスを入れようとした途端肉体から蒸気のようなものが発生してね、瞬く間に致命傷を治してしまったんだね。」

 

フラン「・・・・・・!それって」

 

当麻「なんでもアリだなベクトル操作。」ポリポリ

 

美琴「でも、ホントに助かって良かったわ」ハァ

 

冥土帰し「君たち、そんなに彼のことが心配だったんだね。いやはや、彼も恵まれてるねぇ。」

 

フラン「うんっ!!♪♪」ニカッ

 

当麻・美琴「はい・・・・(一方通行が死んでたら食われてた・・・・)」:( ;´꒳`;):

 

冥土帰し「おや、グラサンかけた子達はいないのかい?」

 

当麻「そういえば!」

 

美琴「どこへいったのかしら?」

 

フラン「なに?だれだれ??」

 

当麻「俺の同級生と・・・・・」

 

美琴「ストーカーとショタコン女ね。」

 

フラン「わぉ・・・・・・・・(なんなすごいメンツ)」

 

ピコン~♪♪

 

当麻「?メールだ。」カパッ

 

from:土御門

to:上条当麻

件名:俺たちゃ先帰ってるぜ

 

『悪ぃなカミやん!俺たち仕事があるからさー、おいとまさせていただくにゃー。結果はあえて聞かないぜぃ!冥土帰しの事だ、絶対に治してくれるからな。一方通行は無事助かっただろ??

 

それと、フランにはちゃんと謝れたか?

仮にもあいつの大事な人を傷つけたんだ。折り合いはつけろよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追伸(ココ重要!)

あのロリっ子、メイド服絶対似合 』ガチャン!!!!!!

 

当麻「ハァー・・・・ハァー・・・・・。」

 

美琴「どうしたのよ?」

 

当麻「なんでもない!ホントなんでもないから!!」スッ

 

美琴「怪しいわね・・・・・。見せなさいよ」グィッ!

 

当麻「ちょっ?!?!」

 

フラン「フランが命ずる!ミコト、トウマからそれを奪い取れ〜!!」

 

美琴「Yes、MAM!!」グググググググ

 

当麻「なんで従順な犬みたいになってんだ!!・・・・・っておい!やめろ、噛み付くな!!」イデデデデデデ!!

 

「ミサカもミサカも面白そうなことに参加してみたりぃ〜」ヒョイ

 

当麻「あっ!ちょっと待て!!」ガシッ

 

打ち止め「待てと言われてまつミサカはいないのだ〜!ってミサカはミサカはフランちゃんにパス!」ポイッ

 

当麻「おいコラ!」

 

冥土帰し「コラコラ病院では静かにせんか。」

 

フラン「ナイスキャッチ!だけどフランは使い方わかんないからミコトに流れるような華麗なパス〜♪♪」ポイッ

 

美琴「ナイスパス!さてさて、何が書いてあるのかしらー??」カパッ

 

美琴は当麻から奪い取った携帯のメールを眺める。

 

美琴「なんだ、普通の内容じゃない。?まだ下がある?・・・・・・・・・・~~~~~~~~~ッ!!!!」ガチャン!

 

美琴は当麻と全く同じような動作で携帯を閉じた。

 

美琴「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

当麻「あの・・・・・・御坂さん?」オソルオソル

 

美琴「・・・・・・・・・・・ア〜ン〜タ〜はぁ〜・・・!!」ビリッ

 

美琴が肩を震わせながら帯電する。こうなったらどうなるか当麻はよくわかっている。

 

当麻「・・・・・・・・フランさん、ミニミサカさん助けていただけないでせうか?」

 

当麻のその問いに二人の幼女は顔を見合せた後、彼に満面の笑顔を向ける。

 

フラン「よくわかんないけどじょーじょーしゃくりょーの余地なし!」

 

打ち止め「あなたには悪いけど、お姉様の力を見てみたいかも!ってミサカはミサカはワクワクしてみたり!」

 

当麻「嗚呼、ここには天使はいないのか・・・・・。」

 

フラン・打ち止め「地獄をあなたに♪ HELL(ヘル) 2U(トゥーユー)!!」ニカッ

 

当麻「」

 

美琴「この・・・・・・・ロリコンがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」バチバチバチィ!!!!

 

冥土帰し「いかん!誰か彼女を止めてくれ!!」

 

こうして手術室前のやり取りは上条さん、数名の看護師及びカエルの丸焼きが完成したところで幕を閉じた。

ちなみに御坂さんは後ほどジャッジメントの方々にこっぴどく叱られたそうな。

そして一方さんは・・・・・・・・・・・・手術室に放置されていた。

 

ピッ・・・・ピッ・・・・ピッ・・・・

 

一方通行「・・・・・・・・」スゥ...スゥ...

 

ギュォォォォン・・・・・・・

 

一方通行の周りに異空間が開く。

意識のない一方通行は為す術なくそれに吸い込まれていく。

医療機器ごと・・・・・・・。

 

 

 

 

~スキマ世界

 

紫「なんとかスキマ世界に移すことには成功したようね。」

 

スキマ世界で揺らめくのは妖怪の賢者において幻想郷の管理者、八雲紫である。

 

紫「どこの誰ともしれない馬の骨にあの子を任せられるものですか」

 

紫は一方通行が学園都市で治療されるのをよく思っていなかった。

アレイスターには釘を刺しておいたので一方通行とフランに手を出すことはないと思うが万が一ということもある。

 

紫「さて、と。急いで永遠亭に・・・・・・!」

 

その時だった。

 

紫「なにこれ?!スキマが・・・・っ!!」

 

突然制御できていたはずの異空間が歪みはじめた。

 

紫「アレイスター・・・・・あの子を逃がさないつもりね!」

 

恐らく何らかのジャミング攻撃。学園都市には能力を封じる機械があると聞く。学園都市でスキマを使った時に解析されたのだろう。

 

紫「あのビルで力を使ったのが不味かったか・・・・・。」

 

紫は一方通行を確保しようと接近する。

 

紫「!歪みが・・・・・!!」

 

一方通行はぐにゃりと歪んだ異空間の渦へ吸い込まれていった。

 

紫「少なくとも学園都市から離れた所に・・・・・!」グググ

 

紫は拳を握りしめ、自分に宿る全能力を使って操作した。

適当ではあるができるだけ学園都市から離れた世界線へ。

それだけを考え、歪んだスキマを操作していく。

それが彼女に出来る最大の努力だった。

 

紫「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

紫は歪み、崩壊していくスキマ世界の中で考えている。

 

紫「・・・・・・・・・とりあえず、私も出ないと。」

 

紫は壊れゆくスキマ世界を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変です!オペ室にいた少年がいません!!」

 

病院内に看護師の声が響く。

 

冥土帰し「馬鹿な!入口はここしかない!!出ることなど出来んはずだ!!」

 

当麻「能力を使ったとかは?」

 

冥土帰し「手術室にはAIMジャマーが仕掛けてある。不可能だ。」

 

美琴「確かに手術室前だけど少し演算しにくかったわ。」

 

冥土帰し「患者はまだ院内にいるかもしれん。探しなさい!!」

 

看護師「り、了解しました!」ダッ

 

当麻「俺たちも探すぞ!」

 

美琴「ええ!!」ダッ

 

フラン「待って!!」

 

探しに行こうとする当麻たちを制止したのは1番心配であるはずのフランである。

 

フラン「あの人ならきっと大丈夫。・・・多分迎えが来ただけだから」

 

その言葉に一同は驚愕する。

 

当麻「迎えが来たってお前・・・・・!」

 

美琴「死んだって・・・・・!」

 

打ち止め「そんな・・・!ってミサカはミサカはハンカチを・・・・。」スッ

 

当麻たちに迎えはくたばるほうの迎えと捉えさせた。

 

フラン「?なんで死んだことになるの?幻想郷への迎えが来たってことだよ?」

 

美琴「なんだ・・・・・・・」

 

当麻「ビックリさせんなよ・・・・・・・・。」

 

フランを除く一同は心底安堵した。

 

美琴「でも、フランは?一方通行に迎えが来たってことはアンタにも来るはずよね?」

 

フラン「多分、あの人が重傷だからだと思うの。心配した紫が永琳の所へ運んだんだと思う。」

 

冥土帰し「永琳だって!?」

 

冥土帰しの声にフランは肩をビクつかせる。

 

冥土帰し「フランくん、永琳っていうのは八意永琳のことかい?」

 

フラン「うん、そうだけど・・・・・・。」

 

冥土帰し「生きていたのか・・・・・!」

 

当麻「あの〜、話についてけないのですが・・・・・・。」

 

打ち止め「ついてけないどころかミサカ完全に空気。ってミサカはミサカは自己の存在をアピールしてみたり!」

 

冥土帰し「ん?いや、知り合いってだけなんだね。問題ないよ。」

 

当麻「はぁ。」

 

打ち止め「無視なの!?」

 

冥土帰し(この子達がきてから驚かされることばかりなんだね。)

 

打ち止め「おーい!」ピョンピョン

 

冥土帰しは動揺を隠すとすぐにいつもののほほんとしたカエル顔になった。

 

フラン「ねぇ、かえるのおじさん。」

 

冥土帰し「なんだね?」

 

フランは不安そうに冥土帰しの裾を掴む。

 

フラン「もし、もしかしたらの話だけど・・・・・・フランの迎えが遅くなったらどうしよう・・・・・。」

 

当麻「大丈夫だろ、一方通行が連れてかれたとしたらすぐ来るって。」

 

フラン「あの人、どっかの誰かのせいで重症なんだよ?フランにまで手が回らないかもしれない・・・・・。」

 

美琴「うぐっ・・・・・痛いとこ突くわね。」

 

冥土帰し「よく頭が回る子だねぇ。見た目小学生とは思えない。

まぁ、この子の言うことも否定できないんだね。どこで保護するか決めた方がいい。」

 

フラン「フラン、どうすればいいの??」

 

冥土帰し「丁度うちでは君みたいな子をたくさん預かっていてね、良かったらここに留まるかい?」

 

フラン「うん!そうしようかな。」

 

当麻「そうだな、ここにいれば大丈夫かもしれねぇな。」

 

ひとまずフランの処遇は決まった。この病院は量産型能力者計画(レディオノイズ計画)の際に生産された御坂美琴のクローン、妹達(シスターズ)の保護をしている施設であるから学園都市に緊急事態が起こらない限り統括理事会も手を出さない。

 

美琴「じゃあ、お願いできますか?」

 

冥土返し「任せてほしいんだね。この子は彼に引き渡すまで責任をもって預からせてもらうんだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

14024号「我々のホストコンピューターともいえる上位個体、もとい打ち止め(ラストオーダー)は一方通行、及びその他の方々によって保護されました。よって、上位個体による上位命令文が中止されたためミサカネットワークは通常稼働します。と、ミサカは報告します。」

 

現在、幻想郷では事態の収拾にあたっていた。死者は出なかったものの、宴会に来ていた妖精や妹達に負傷者が出てしまった。幸いこの場にいたのは能力持ちが多かったので被害は最小限に留めることができた。

しかし、制圧には時間がかかった。上位命令文による支配が解けた後も未知の世界に混乱し、錯乱状態に陥り、暴れだす個体がいたからだ。

 

霊夢「じゃあ、もうあなた達を拘束する必要はないってことね。」

 

14024号「はい、ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。」

 

レミリア「ねぇ、ミサカネットワークはそれぞれの個体が得ている情報を共有することができるのよね?」

 

14024号「ミサカネットワークに重大な負荷がかかっていたため、一部の機能は停止していますが、視覚情報、聴覚情報、及び記憶。これらにおいては問題なく機能しています。と、ミサカは復旧の早さを自慢し、妹達の有能さをアピールします。」

 

魔理沙「なんか自己主張の激しいヤツだな・・・・・・。」

 

レミリア「それならお願いがあるのだけれど、いいかしら?」

 

14024号「はい、ミサカのできる限りであれば何なりと。と、ミサカは少しでもお詫びができればとレミリア嬢のお願いを聞きます。」

 

レミリア「お詫びなんていいわ。あなた達が悪いわけではないのだから。でも、ありがとう。じゃあお願いだけれど学園都市にいる個体と交信できないかしら?」

 

14024号「というと?」

 

レミリア「あなた達のために学園都市に向かったフランと一方通行の状況が知りたいのよ。まあ、彼がついてるから心配はないと思うのだけれど・・・・・・やっぱり心配じゃない?」

 

14024号「わかりました。現在一方通行、及びフランドール・スカーレットの付近にいる個体に今の会話の情報を送信します。と、ミサカはできる女を見せつけます。」

 

魔理沙「だから、自己主張が激しいなお前は・・・・・・。」

 

ミサカ14024号はしばらく黙り込んだが、情報を受信したのか顔を上げ、レミリアに向き直った。

 

14024号「お二人に関する情報を入手しました。どうやら、上位個体がフランドール嬢の傍で空気になっているようです。と、ミサカは心配そうにしているあなたに言います。」

 

レミリア「フランだけなの?一方通行は?」

 

14024号「・・・・・・・どうやらさっきまで手術室にいたらしいのですが突然消えた。と、ミサカは報告します。」

 

霊夢「消えたですって!?」

 

咲夜「一体どこに・・・・・・。」

 

14024号「こちら側に空間移動系の能力者はいらっしゃいますか?と、ミサカは皆さんに問いかけます。」

 

魔理沙「空間移動系能力者?」

 

咲夜「そんなのいたかしら?」

 

レミリア「瞬間移動とか?」

 

14024号「いえ、こちらの世界と学園都市をつなぐことができる空間移動系能力者です。と、ミサカは補足説明します。」

 

空間を自由に移動できる能力者で幻想郷と学園都市を行き来できる者。

・・・・・・・いた。一人だけいた。妖怪の賢者で、境界を操る妖怪が。

 

霊夢「・・・・・・もしかして、紫?」

 

14024号「そのユカリという方が誰かは存じませんが該当する能力者がいるのですね。と、ミサカは確認をとります。」

 

魔理沙「でも、そんなこと今の話と関係ないだろ。」

 

14024号「ミサカもそう思いましたが、上位個体がフランドール嬢から聞いた話で納得がいきます。と、ミサカはうなずきます。」

 

レミリア「つまり、一方通行は紫が連れ帰ったということなのかしら?」

 

14024号「おそらくは。どうやらフランドール嬢を含め、その場にいた一同はその場面を直接見ていないようです。」

 

霊夢「密室から消えたってわけね。学園都市にそういった能力者はいないの?」

 

14024号「いるにはいますがあの病院には超能力者の演算を妨害するAIMジャマーが存在します。よって、能力の使用に大きな制限がかけられるので一方通行を連れ去ることは不可能かと思われます。と、ミサカは考察します。」

 

魔理沙「十中八九、紫で間違いないな。」

 

レミリア「手術室って言ってたけど彼は大丈夫なの?それだけ大きな傷を負ったということでしょう!?」

 

14024号「病院到着当時は瀕死の状態だったそうです。ですがあの病院の名医、冥土返しによって一命をとりとめたそうです。と、ミサカは報告します。」

 

咲夜「よかった・・・・・・・。」

 

レミリア「それでも心配した紫が重症の一方通行を先にこちらへ引き戻したってことは・・・・・。」

 

レミリアの言葉に14024号を除く一同はある考えが浮かぶ。

 

一同「一方通行は永遠亭にいるハズ!!」

 

霊夢「レミリア、咲夜は永遠亭に向かってもらえるかしら。その他はここで引き続き事態の収拾を。」

 

14024号「あの・・・・ミサカたちは・・・・・・・・。」

 

霊夢「妹達はけが人の手当てを手伝ってもらえるかしら。操られてたことはみんな分かってるからそんな気負わなくていいわよ。」

 

14024号「わかりました。と、ミサカは他のミサカたちに指示を出します。」

 

レミリア「じゃあ、申し訳ないけど行かせてもらうわね。」バサッ!

 

魔理沙「おう、一方通行によろしくな!!」

 

レミリアと咲夜は大空へ飛びあがった。

 

レミリア「もうすぐ太陽が昇る・・・・・・急ぐわよ!」バサッ!!

 

咲夜「わかりました。」ヒュン!!

 

朝焼けの空の中二人は猛スピードで竹林を目指した。

家族の一人がいるであろう永遠亭へと・・・・・・・・。

 

 

 

 

咲夜「何とか日の出までに間に合いましたね。」

 

レミリア「山と竹林に囲まれているおかげね。そうじゃなきゃ完全に焼け死んでたわ。」

 

レミリア達は迷いの竹林もとい永遠亭に比較的早くたどり着いた。

道中出会った藤原妹紅(ふじわらのもこう)と名乗る女性に案内してもらったからだ。

永遠亭の門前でその女性に礼を言い、彼女らは敷居を跨いだ。

 

レミリア「永琳ー!戻っているかしら!?」

 

レミリアは扉の前で声をかける。

しばらくして扉に人影が映り、その人物は扉を開けた。

 

鈴仙「レミリアさんですか?」ガラララ

 

レミリア「鈴仙じゃない。永琳、戻っているかしら?」

 

鈴仙「師匠ですか?一応戻っていますが今手が離せないようでして・・・・。」

 

咲夜「手が離せないということは今誰かの治療中ですか?・・・・・・・もしかして一方通行とか。」

 

鈴仙「一方通行?彼はここに来てませんよ?現在師匠は紫さんと部屋に入ったまま出てこないのですが・・・。」

 

レミリア「一方通行がいない!?それは確かなの!?」

 

鈴仙「ええ、それは間違いないです。」

 

レミリアと咲夜は衝撃の事実に驚愕する。

14024号の話では一方通行は手術室から突然消えた。

学園都市には彼を連れ去れる能力者はいないこともないが、その病院では対策されているらしい。

ならば連れ去ったのは現状紫しか考えられない。

しかも一方通行が重篤な状態ならば彼女は永遠亭に運ぶはずだ。

だが、ここに一方通行はいない。

 

レミリア「・・・・・・・?今あなた、紫がここに居るって言ったわよね?」

 

鈴仙「はい、ここに来ていますけど。」

 

咲夜はレミリアに耳打ちする。

 

咲夜「紫さんが来ていらっしゃるということは紫さんは一方通行を連れ帰っていないのでしょうか?」

 

レミリア「その可能性も出てくるわ。だけれど、紫がここにいるなら直接彼女から話を聞いた方が確実だわ。」

 

レミリアは鈴仙に向きなおる。

 

レミリア「申し訳なかったわね、待たせてしまって。」

 

鈴仙「いえ、構いませんが・・・・・。」

 

レミリア「忙しいところさらに申し訳ないけど紫に会わせてもらっていいかしら?急用なの。」

 

鈴仙「それが叶うかは師匠によりますが、部屋の前まで案内することはできます。今回の異変に関係することでしょうし・・・・・ついて来てください。」

 

咲夜「ありがとうございます。」スッ

 

レミリア達は鈴仙に案内され、中庭を抜けて永遠亭の奥へ進む。

 

レミリア「永遠亭ってこんなに広かったのね。」

 

咲夜「前来た時は治療室と病室にしか入ってませんでしたからね。」

 

鈴仙「師匠の部屋はこの中庭を抜けていくんですよ。レミリアさん、陽の光大丈夫ですか?」

 

レミリア「大丈夫よ。この竹林のおかげね。」

 

レミリア「でも・・・・・・・・・・・」

 

レミリアは竹林から漏れる薄い日光を眩しそうに見つめる。

 

レミリア「フランがうらやましいわね。」クスッ

 

気が付くと目の前に小さな小屋の入口があった。

 

鈴仙「ここが、師匠の部屋です。ちょっと待っててくださいね。」

 

そう言うと鈴仙は部屋の中に入っていった。

 

咲夜「離れに小屋だなんて・・・・風情があっていいですね。」

 

レミリア「そういえばあなたも日本人だったわね。」

 

咲夜「ええ、まぁ・・・・・・・。」

 

咲夜は少しさみしいような悲しいような表情を浮かべたがすぐにいつもの表情に戻した。

 

レミリア「・・・・・・・・・・・・・。」

 

スー・・・・・・・・。

 

ふとした瞬間に襖の戸が開いた。

 

永琳「よく来たわね。さ、入って頂戴。」

 

鈴仙「それでは私は負傷者の手当てを続けますね。」

 

永琳「お願い。」

 

永琳に連れられ、部屋の中に入る。

彼女の部屋はとても質素でどこか懐かしい雰囲気に包まれていた。

 

永琳「好きな所に座って頂戴。」

 

レミリア達は促され、各々座る。

 

レミリア「さて・・・・早速で悪いんだけれどお話を聞かせていただいていいかしら?」

 

レミリア「・・・・・・・・・・紫。」

 

レミリアは部屋の奥に座っている八雲紫に紅い瞳を向ける。

その瞳が捉えた妖怪の顔は少し青ざめていた。

 

紫「そうね・・・どこから話せばいいかしら・・・・・。」

 

レミリア「じゃあ私から質問させてもらうわ。学園都市から一方通行を連れ去ったのはあなた?」

 

紫「ええ、間違いないわ。あんなところに危篤状態の彼をおいてはおけないもの。」

 

レミリア「二つ目、何故フランを回収していないのかしら?一方通行を優先して回収したのはわかるわ。だけどフランがなぜそのまま放置されているのかがわからないのよ。」

 

紫「そう、その理由が一番重要なこと。」

 

レミリア「どういうこと?」

 

紫「学園都市の病院から彼を回収していた時の事よ。無事に彼をスキマ世界に回収することに成功したわ。だけど、以前開いたスキマの波長を学園都市のトップに解析されていた。そして運搬途中に妨害されて、スキマ世界が破壊されたの。」

 

レミリア「あなただけの世界に介入されたってこと?」

 

紫「ええ、あの時使われた力は学園都市に存在する超能力とは完全に異なっていたわ。」

 

レミリア「それで、一方通行はどうなったの?」

 

紫「スキマ世界が完全に壊れる前に私の全能力を使って別の世界に飛ばしたわ。できるだけ学園都市から離れた世界に。」

 

レミリア「それじゃあ彼を取り戻すことはできるのよね?」

 

紫「結論的に言えばできるわ。だけど問題があって・・・・・・。」

 

咲夜「その問題というのは?」

 

紫はうつむき、小さな声でつぶやいた。

 

紫「・・・・・・か・・のよ。」

 

レミリア「え?なんて?」

 

紫「霊力がすっからかんなのよ・・・・・。」

 

紫はもう勘弁と言わんばかりに両手を振った。

 

紫「あらゆる空間、境界を操ることは容易だわ。だけど時間を超えた境界を操るのは相当な霊力を使うの。前に、こうなった時はすぐに寝てしまったわ。今も気を抜けばすぐに眠ってしまいそう・・・・。」ファ~・・・

 

紫はあくびをしながら言った。どうやら彼女は以前にもこういったことがあったらしい。いつか、霊夢が紫早く冬眠してくれないかな。とか言っていたような気がする。とレミリアは思いだした。

 

永琳「そう、だから私の出番。」

 

レミリア「月のお医者様は使い切った力をも回復させることができるの?」

 

永琳「厳密に言うとコレは医学ではないわ。単に私の持っている霊力を紫にあげるだけ。」

 

咲夜「永琳先生も霊力を?」

 

永琳「持っているだけよ。使ったことはないし、使い方もわからない。まさかこんな形で役に立つとは思わなかったわ。」

 

レミリア「それで、紫はまた力を使えるの?」

 

永琳「私は紫や霊夢ほど霊力を持ち合わせてないの。だからこのなけなしの霊力で時空を操る程の境界操作が行えるかはわからないわ。」

 

紫「そこは任せて、何とかして見せるわ。」

 

レミリア「大丈夫なの?」

 

紫「もともと私のせいで起こったことだし・・・・・少なくともこの幻想郷にだけは連れ帰ってみせるわ。」

 

紫は永琳の方へ視線を向ける。

 

紫「永琳、お願いできるかしら?」

 

永琳は無言でうなずいた。

そして紫の肩に右手を置く。

 

永琳「さっきも言った通り、私は霊力の使い方がわからないわ。だから紫、あなたが私の右手を媒体として私から霊力を吸い取って頂戴。」

 

永琳がそう言った後、紫は目を静かに閉じる。

その後、少し力んだような表情になると永琳の身体が白く光りだした。

レミリア達はその光景をあっけにとられた様子で眺めていた。

その姿はとても神秘的で美しい。

永琳から発せられた白い光は一点に収束し、彼女の右手を伝って紫へ注がれていく。

そしてその光は紫の胸の辺りまで進むと吸い込まれるように消えていった。

心なしか紫の顔色は良くなっている。

 

永琳「・・・・・・・・・・・・これが私の出せる全ての霊力よ。」

 

永琳は紫の肩から右手を離す。

 

紫「思ったよりたくさん持ってたのねあなた。以外と回復できたわ。」

 

レミリア「どう?いけそうかしら?」

 

紫「ええ、これならなんとかいけそうだわ。」

 

紫は座禅を組み、再び目を閉じる。

 

紫「これからある程度スキマ世界を再建するわ。悪いけど一人にしてもらえるかしら?」

 

レミリア「わかったわ、ちなみにそれにはどれぐらいかかるの?」

 

紫「三十分で何とかしてみせるわ。その間あなた達は一方通行を探す準備をしてちょうだい。」

 

咲夜「一方通行を探す準備ですか・・・?」

 

紫「さっきも言った通り、彼を連れ戻すだけで精一杯かもしれない。だから彼がこの幻想郷のどこに落ちるかわからないわ。もし重篤な状態の場合、一刻も早く誰かが見つけなければならないでしょう?」

 

咲夜とレミリアは納得したように首肯し、襖を開ける。

レミリア達に引き続き永琳も部屋を出る。

紫は襖が閉まるのを確認すると瞑想に入る。集中するときは瞑想が一番である。

スキマ世界の再建が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~五十分後

 

一方通行「ハッ・・・・・!!」ガバッ!

 

一方通行は突然目を覚ました。相変わらず頭と胸が痛い。

ついでに言うと重い。主に腹の部分が重い。というより痛い。

窓から差し込む太陽の光に目を細めながら身体を起こし、腹の方へ視線を移す。

 

一方通行「夢だと思ったンだがなァ・・・・・・。」

 

いま自分はベッドに寝ている。学園都市の病院ではないため、幻想郷へ帰ってきたんだろう。だとしたらここは永遠亭。色々と理解が追い付いていないが今はそんなことはどうでもよかった。

今、ベッドの横で座っている幼い姿をした吸血鬼に一番聞きたいこと、それは・・・・・・・・

 

一方通行「・・・・・・・・・・なンでこの女が俺の腹の上で寝てンだ?」

 

レミリア「知らないわよ。運ばれてきた時からこの状態だったのだもの。動かしたらマズイんじゃないかなとか思っちゃうじゃない。」

 

その言葉に一方通行は呆れたように目を細める。

すると、カーテンが勢いよく開かれ、ここの医者が入ってきた。

 

永琳「あら、起きたのね。」ニコッ

 

一方通行「小動物を見るような目で俺を見るンじゃねェよ。それより、なンでこの女が俺の上で寝てンだ?」

 

永琳「あぁ、その子ね。実はあなたが発見されたときその子も一緒に倒れてたのよ。この子も重傷だったから一緒に連れ帰って治療しようかと思ったのだけど、その子意識がないのにすごい力であなたの服の裾を離さないのよ。だからその状態ってこと。」

 

一方通行「・・・・・にしてもだ、もっと他の寝かせ方あっただろォが。俺の横に寝かせるとかよォ。」

 

永琳「あら、それもそうね。」

 

一方通行「この野郎ォ・・・・・・。」ググググ

 

永琳「や~ね~、なんでそんなに力強く拳が握られるのよ。」

 

レミリア「まぁまぁ、彼が短気なのはいつものことじゃない。」

 

一方通行「おいこの500歳児。オマエの脳みそ耳からひねり出して犬のエサにしてやろォか?」

 

レミリア「だれが500歳児よ!!」

 

咲夜「まぁまぁ、これ以上やると収拾がつかなくなりますので・・・・・・。」

 

一方リア「うるせェンだよ(さいのよ)!このお漏らしメイドが(ァ)!!!!」

 

咲夜「」

 

このバカみたいなやり取り。一方通行が悪くないと思ったこの空間。

ようやく幻想郷に帰ってきたと認識できる。

だが、まだ足りない。ここにいるべきやかましいクソガキがまだ帰っていない。

連れ帰らなければ。もう一度あのクソみたいな世界へ行こうとも。

一方通行は腹の上の女をどかそうとすると手に固いものが当たった。

 

一方通行「なンだ・・・・・・・・?」

 

彼は手元に視線を向ける。

そこには片方の羽根が折れた蝶々の髪飾りがあった。

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