一応、リンクが眠りにつくまでのプロットはありますが、そこまで続けられるかは未定です;
族長の一族に加護を持った子供が生まれた――――インパは幼少の頃、念動力を発現させたときに村ではやし立てられたのを覚えていた。
当時のハイラル王国は、様々な意味で慌ただしかった。
理由は明白であって、すなわち王国に太古から伝わる厄災――――怨念の怪物たるガノン復活の予言がなされたことに由来するだろう。
伝承によれば一万といくらかの歳月もの間、かの厄災はハイラルの大地深くに封印されたと言い伝えられている。
厄災は英傑、すなわち退魔の剣に選ばれた勇者と、女神ハイリアの力を宿す巫女の力をもってしても、滅ぼすことは出来なかったとされている。
しかしかつては、当時の兵器技術の粋を集め、徹底的な物量抗戦をもってして厄災を強く封じ込めたとされていた。
それゆえ、かの出来事以降においてハイラルが平世に陰りはなかったとされる。
事態が変わったのは、今より十年はかからないだろうが、その程度ほど前。
ハイラル王国、巫女の系譜を継ぐ王妃が倒れ、厄災復活の予言が為されたこと。
1万もの時を経て浄化されることも風化されることもなく、かの厄災は力を蓄えた。
復活の兆しと同時に、対抗する力もまた予言によって指示される。
すなわち、巨兵たる神獣を駆る四人の英傑と、退魔の剣が勇姿、ハイリアの巫女。
そしてそれらを補助する守護兵装の存在とを。
そして予言により、媛巫女に対する扱いもまた平世とは変わってしまったことを意味した。「単なる継承ではない」「本物の姫巫女」が生まれたという事実は、それほど大きな衝撃を伴った。
そんな中、インパが生まれたシーカー族というのは中々に複雑な経歴を持つ一族である。
かの厄災の封印に最も力を貸し、また同時に最もハイラル王国から虐げられた、そんな一族。
古代兵装や神獣といった機構を創造し、厄災との対決に大きく貢献したのは、かのシーカー族最盛期。最も王国の影に寄り添っていた、最も技術力が優れていた時代。
厄災が封印されてから、その技術力を多くのハイリア人に疎まれた彼らは、おおむね2つに分派した。
先端技術を捨て、自己文化の保存を図った穏健派。
謂れのない差別に反抗し、ハイラルそのものと敵対するに至る武闘派。
この流れが現在続き、前者はカカリコ村、後者はイーガ団と呼ばれる組織になっている。
インパの生まれは、カカリコ村の族長筋である。
もとより族長筋は何かしらの異能力――――加護と通称されるそれを持ち合わせていた。
これについてはイーガ団も同様のそれであるが、それはさておき。長らくカカリコ村においては、そういった加護を発現した事例が存在しなかったのだ。
平世において、それは当然であったかもしれない。だが現在、媛巫女ゼルダがいるこの時世においてはそういう訳にもいかず。
しかし同時に加護を発現させた当人たるインパは、その力をあまり好いてはいなかった。
「いいんじゃない? 別に鍛えたりしなくっても~。インパってあんまり、最前線で武器振るったりってタイプじゃないからね~。もっと気楽に構えてないと、可愛い顔なのにしわしわになっちゃうぞ?」
当時、彼女の姉はそう軽く言ってのけた。なお余談として、言い終えた後「チェキチェキ♪」など奇声を上げながら謎のポーズをとっていたことを残しておこう。
インパがそもそも能力を発現させたのは、奔放な姉が「迷いの森ってどこかな~?」などと言い出したことに由来する。なお「時の勇者の伝承に従うと、カカリコ村がある場所って迷いの森があった場所だと思うんだけど~、別に迷いの森自体がなくなったって話は聞かないからね~。伝承と齟齬があるっていうのに、何か変な作為を感じるというか」などと後々大人たちに絞られたときに供述していた。当時、十歳にも満たない年齢の子供の発言であった。
明らかに何かがおかしいが、ともあれ。そんなことを念頭に置き、森を探しに村を出た姉を、心配で一緒についていったインパである。
道中、ボコブリンの群れに襲われた彼女たちは、それこそ絶体絶命だったろう。
豚のような頭を持つ人間のような怪物。一般的な旅人が立ち向かうこともあるだろうが、流石に子供、とくにインパに至っては4歳ほどだ。どうにかこうにか出来る話ではあるまい。
しかし、ここで彼女の加護が発現した。
駆け付けたシーカー族の大人たちが目撃したのは、「こわいよ~」などと言いながら頭を抱えてうずくまる姉と、周辺に転がっていた岩を「念力で」持ち上げ、身近な敵にぶつけるインパの姿だった。
村に連れ帰られこぞって叱られはしたものの、しかし同時にやされるインパ。プルアは加護とは別な意味で既にもてはやされ(同時に問題児扱いされ)ていたが、この加護が決定打となり、次代の族長候補はインパとなった。そして彼女の額にシーカー族の模――――涙を流す目の文様が刻まれた。
それが刻まれたことに、特に何かを思ったインパではない。年端もいかない彼女であっても、姉の自由さでは族長が務まらないだろうと本能的に察知していたこともあるだろう。
ただ、そうなった直接の原因が、自分自身の資質ではなく加護に由来するというのに、なんともいえない寂しさを感じていたのだろう。
姉の言葉は、そんな彼女の納得いっていない心を解きほぐす効果があった。
「あねうえ……」
「ま! 好きなことを伸ばしなさいなって。私も今の調子で色々『研究もどき』続けてたら、そのうち何かきっかけ一つで自分のもっとやりたいことが出来るようになるかもしれないし。逆に言えば、そうなってもなんとかなるように、今好きなことを全力でやるってことだね~」
「あねうえは、ろくでなしです」
「なんで!? 私、慰めてたよね!?」
「でも、ありがとうございます」
「お、おう? そうそう、そうやって素直に考えなさい?」
そしてこの言葉が実るのは、実に六年以上の歳月がかかる。
インパも十二歳ほど、段々と情緒が定まり安定し、姉の反面教師を受け育った。
幼少の頃はおどおどと愛らしい雰囲気もあったが、現在では十二歳と思えない鋭さを伴っている。将来的に彼女の孫あたりと容姿はかなり近いことになるが、決定的に違うと言えばやはり目だろうか。
姉に呆れ振り回されること早十二年、つまり生まれた時から。
その双眸はやや鋭く、つまりやや半眼に落ちていた。
姉の言っていた通り皺こそ増えなかったものの、かわりに表情が酷くなっていたといえる。
逆説的に、インパは酷く真面目な娘として成長していた。
それこそ姉いわく「堅いよ~」とのこと。
ハイラル王家の遣いにより、インパの元にはせ参じた騎士たちが手紙を彼女に手渡した。
「…………招集? それも、執政官補佐に任命ですと?」
姉譲りで美人に分類されるだろう、しかし当時はまだ可愛らしい顔は、やはり年齢に似つかわしくない落ち着いた雰囲気を併せ持っていた。むしろいっそ、いきすぎて剣呑なくらいである。
詳しい事情は国王より、と通達され、村を開ける準備を一通り済ませた彼女もまた、騎士たちと共に馬で走る。
そんな道中、いわゆる「時の神殿跡」がある台地のすぐ近くで、壮年の狩人が襲われているのを発見した。
赤い忍び装束、補足も鍛え上げられた肉体。シーカー族の文様の仮面を被る忍びの姿は、間違いなくイーガ団のそれだった。
騎士たちが向かうよりも先に、インパは駆ける――――それは位置関係の問題もあったが、彼らの戦い方については彼女の方がよく知っていたこともあるだろう。
実際、瞬間転移の術――今では失われた古代シーカー族の術――を用い、近距離を転々と移動するイーガ団数名。騎士たちは勝手がわからず翻弄されている。
背部より二連弓を構えるイーガ団に、残心の小刀を抜刀。
斬りつけるよりも先に動作を予測して構え、相手の転移後の出現に合わせて投擲!
ぶつかって破損する刀剣と、衝撃により弓を一瞬手元から話すイーガ団員。
それを「念力で」引き寄せ奪いとるインパ。起き上がると一瞬、自らの手元に武器がないことに驚愕する団員であるが、気を取り直して腰の首刈り刀を抜く。
「お借りします、ご老人」
「ふぉ? お、おお――――――おぉっ!?」
インパはインパで、倒れた狩人に声をかけて弓筒を「念力で」引き寄せ、腰にそえて構えた。
突如手元の矢を奪われたことに驚愕する老人を無視し、接近してかけてくるイーガ団員の仮面めがけ、二連射――――! 繰り返すことで倒れたイーガ団員一人を前に、他の三人のイーガ団たちは動きを止めて警戒するよう抜刀した。
「
手を構えると、倒れたイーガ団の仮面を手に弾きよせ、それを地面に叩きつけるインパ。
後ろで倒れた騎士たちの驚いた姿同様、イーガ団たちも分が悪いことを悟ったのだろう。「ハハハハハ」と独特の高笑いを挙げながら、その場から倒れた団員を抱え転移、逃走した。
後にはルピーとツルギバナナが残るのみ――彼らのしなやかな剛体の秘訣はこのバナナであろうが、いかんせん手に取る気になれないインパだった。
「ご老人、お怪我は――――む?」
手を差し出そうとするインパの前に、倒れた騎士たちが跪き、老人に首を垂れていた。
訝し気な目をする彼女に、老人は「ふぉっふぉっふぉ」というような笑いを上げる。
「プルアから聞いていた話に相違ないようだな」
立ち上がると、赤茶けたハイリアのローブをはらう老人。現れ出た顔立ちに覚えはないものの、振る舞いからインパもまた困惑と共に声を上げた。
「一体、何をなされておいでか、ハイラル王」
「うむ。……ちょっと、お忍びじゃ」
ハイラル王。現ハイラル王国の国主にして、媛巫女ゼルダの父親である。
本来ならたったままのインパも不敬に当たるだろうが、命を救われた状況ゆえかお忍びゆえか、あまり頓着はしないようだ。代わりにいたずらがバレた子供のような仕草である。
お忍びとは? 趣味の狩りを少々。お付きの騎士は? 巻いてきた、との始末。
とりあえずお忍びのまま一度城へと向かうことになり、道中、城下町を通りながら話を聞いた。
「馬はロンロン馬宿に預けると良いだろう」
騎士の一人がインパの乗ってきた馬を預けに向かう。それを背に城下町を抜ける一同。
王は途中で別れて裏側から入り直し、再度、謁見の間にて顔を合わせた。なるほど、王冠を被りそれなりの服を纏えば、先ほどの狩人とはまた雰囲気が異なる。身分相応の振る舞いもまた、服装に左右されるのだろう。
「して、王よ。こうして謁見の機会を得られたこと、大変喜ばしく思うのですが……、何故に私なのです? 私は一度もここ王城に関わりもなく、執政に関する手練手管もありませぬ」
「うむ。そなたの疑問も当然じゃ。だが、ことはある意味で最も重要な問題でもある。何故なら――――」
王が言葉を続けようとした瞬間、突如、あらぬ何処かから爆発音が響き渡る。
それはもう、猛烈な爆発音であり、本殿から見て訓練場の方から火を噴いている。
「ウグワァッ! 失敗しちゃっタァ!」
そしてなんとも酷い声を上げて駆けてくる誰かは、インパにとって覚えしかない相手であった。
自分同様の白い髪にやや浅黒い肌。シーカー族の文様をそれぞれ左右の目のまわりにペイントし、古代兵装系統の技術を用いて作られたゴーグルを頭にかける、長髪の美女。白衣のように改造したシーカー族のスーツにへそ出しルックス、ミニスカートと明らかに場違いかつ己の趣味が反映されているだろう恰好である。
これを前にした時点で、インパは半眼に。そして彼女はそれに気づかず、あはは~と困ったように笑っていた。メガネを直し、例によって奇声とポーズ。
「ヤァ、王サマにっちゅ~! ちょっとロベリーと
そして言い訳ともつかない言い訳を途中で、インパに気付き、表情が固まる。
否、左の頬が引きつる。
「姉、上?」
「うぐぁ、い、インパ……!?」
一歩、二歩と忍者のように音もなく歩いて逃走を図る彼女だったが、インパの念動力でネックレスごと引っ張られ、その場に引き寄せられる。
王の前で首を垂れ……、というよりも五体投地のごとく投げ出した姉。
「王、ひょっとしてですが……」
「うむ。つまりお目付け役じゃな。このプルアめ、執政官の言うことを聞かないばかりか色仕掛けをして、予算を色々引き出してしまったからのぉ。ペナルティということじゃ」
実際、ハニートラップくらいなら出来そうなくらいの美人であり、振る舞いでもある。服装も胸やら腰やら脚やら強調される格好であり、存分に見てくれの良さに拍車をかけていた。
そして左遷させられないということは、実際それだけ優秀でもあると言う証ではあるのだが。
「う、うそおおおおお!?」
絶叫するプルアを前に、それこそ真面目くさったインパは生涯何度目になるかわからないため息をついた。
【独自設定補完】
「シーカーの意念」
・シーカー族の加護により、[L]を押している間、武器や小物などを選択して引き寄せることができる
・大岩などを引き寄せることは出来ない
【解釈元ネタ】
・ゲーム本編、カカリコ村にてインパの元にガーディアンやらモンスターやらを連れて行くと、座布団ごと逃走を図る挙動より。「これって要するに念力なんじゃね?」とか言う拡大解釈から、簡易マグネキャッチ的な能力という風に本作では取り扱う。
・パーヤとかに受け継がれた場合は「賢者インパの意念」に名称が変化するイメージ。