おおむねゲーム中描写とテキストなどから、インパとプルアの年齢差は4つと考えられる。
本作では過去の話として取り扱うので、現時点では以下のイメージでいる。
ロベリー:20→22
プルア:16→18
インパ:12→14
またリンクとゼルダの年齢についても、おおむねインパの年齢前後であると考えられるため、本作でもそれに準じる。
「ふっ――――、」
「まだまだ甘いよ、インパのお嬢ちゃん!」
ウルボザの手元から刀剣を引き寄せようと構えるインパであったが、軽く指をはじいた彼女からほとばしった電撃により中断を余儀なくされる。威力を抑えていた訳ではないが故に、彼女の七宝のナイフめがけて落雷したそれを、途中でそらすようにコントロールから離して後退。バク宙して再度、残心の小刀を構えた。
静まり返っていた訓練場がにわかにいきり立つ。わいわい、がやがやと口笛すら聞こえるこれは、完全に
腰を曲げて頭を下げるインパに、ウルボザは愉し気に笑った。ゲルド族特有の日に焼けた肌、赤毛に長身と美しさが際立つ筋肉の付きをゲルド特有の涼し気な装束に包む。そして母親のような慈愛に満ちた、慈しむような目元が、見ている相手に安心を与える。もっともこれがいざ戦闘になれば、外敵から子を守るようなそれに変貌する訳で、感情とはある意味で表裏一体でもあった。
「本日は御指南、かたじけなく思います」
「そうお堅くならなくってもいいよ、アンタも。最後は残念だったけど、筋は良いし、良くなっていってるよ? 『ナボールの怒り』にだってちゃんと対応できてるし」
正直、ここの連中で獣王とやりあえるの何人くらいかね、と肩をすくめるウルボザ。肩に刃をのせ腰をひねる独特のポーズから、剣のみを腰の鞘に収納する。彼女の問いにインパはわずかに思案して回答した。
「そもそも己が勝てぬ相手と、一対一で戦う必要などないのです。イーガ団でも要人暗殺に向く際は、複数人で連携することが多いと聞きますので」
「それは、そうだったねぇ。おひぃ様も一度襲われかけてたし」
おひぃ様、とはハイラルの媛巫女のことである。
「私も個人の武力を底上げするため、というよりは、遠方に出向く機会も少なくなくなってきてますので。最低限、護身程度は出来るようにしなければと」
「そうは言っても、アンタ一人で獣王から逃げられるくらいには強いと思うけどさ。正直、そこまで要人が武力を持つ必要はないと思うよ? 各地に出向くなら、警護だってそれなりに連れていくだろうし」
「いえ、どちらかといえばそれは姉にかけるべきだと考えております」
「あー、プルアのお嬢ちゃんねぇ……。確かに今じゃ、かなりの要人と来てるねぇ。
でもアンタだって、そんな姉を守ってる立場であってもさ。アンタ自身だって大事なんだってことを、忘れないようにね」
会話を交わした後、手を振りながらその場から去るウルボザ。ゲルドの族長たる彼女がわざわざハイラル城まで来ている理由としては、ひとえに幼少の
その合間を縫って、短時間だが稽古に応じてもらったインパは、感謝の念と共に彼女の背中を見送った。
姉がこもっているだろう書庫に戻ると、案の定というべきか、大量の書類やら本やらをひっくり返して、姉がじたばたとその場で転げていた。
寝転がったまま足をバタバタさせているさまは大層異性の尊厳的な何かに悪く、しかしその場にいるもう一人の男性研究者はしかめっ面で何かの装置を確認している。
「うがー! なんっか意味不明なんだけど! やっぱり伝承と場所の関係に違和感があるうううう!」
「姉上」
「あ、インパ。にっちゅ~」
と、妹の姿を確認してそうそう、プルアは例の「ちぇきちぇき」同様妙なポーズをとった。
相も変わらずな様子に呆れを通り越し、インパは彼女に手を差し伸べる。
「まったく、なんで全く様子が変わらないのですか姉上」
「いやー、インパが来てからもう二年だっけ? 月日が経つのは早いものだねぇ……」
「そろそろ3年になりますよ。あと月日がたっても、たいして変わりませぬよ。姉上がいつもやらかすように」
「むむぅ、最近はおとなしい方だと思うけどなぁ……」
なお最後にやらかしたのが一週間前であるからして、インパはプルアの言葉をあまり信用していなかった。
インパが王城に執政補佐官として招集されてから、早二年。
プルアが村にいた時以上に王城の方でやらかしているという事実に頭を抱えながらも、彼女はそんな姉とよく付き合っていた。時に古代兵装解析のための予算をせびられたり、時に実験に失敗して城に大穴を開けたり、ときに古代遺跡の祠めがけて大量の爆弾を放ったり(なお祠は無傷である)。迷惑をかけられてばかりではあったが、昔からのこの関係でもあったし、また存外こんな姉を、インパは嫌いではなかった。
二年の歳月は、少女だったインパを女性に大きく近づけていた。具体的に、身長が伸び、二次性徴の影響が大きく出始めている。顔立ちは少女から既に女性らしいものになり、プルアと並べばどちらが姉かという話である。それでも全体的に可愛らしいのは血筋の問題か否か、それはさておき。
余談だが、プルアもプルアで若干のマイナーチェンジを果たしている。フェイスペイントをうすめにして、メガネの方をシーカー族の文様風に改造したり、といったあたり。
「いくら姉上が古代兵装の研究主任であるのだとしても、限度があります」
「限度って、何の?」
「物理的な資産の。人的、物資的、資材的、燃料的、そして何より予算的にです」
「うぅ……、だ、だって所長じゃないし、個人研究の分の予算との兼ね合いが……」
「だったらある程度は妥協するなり、常識的な対応があってしかるべきでは?」
「ちぇ、ちぇっきー!」
「はいはい、ちぇっきーちぇっきー」
「おざなりダァっ!?」
幼少のインパに語っていた通り、プルアは自分の好きだったこと、すなわち古代文明の研究を突き詰め、そしてチャンスをつかんだ。
ことのはじまりは、それこそインパが加護を発現させた前後。古代守護兵装の中で最大級のものとされるもの、すなわち巨大兵装たる神獣が発掘されたことに由来する。
星詠みの予言に従って発掘された神獣たちであったが、あくまでも現段階では動作させるに至っておらず、それどころか未だ発掘途上という状態だ。
理由は様々だが、一つはほとんどが地形に埋まっているせいである。
これは、例えばゴロンシティの側に眠る神獣ヴァ・ルーダニアについて説明すると手早いかもしれない。
すなわち、これは火山帯のすぐ傍に埋まっているのだが、わざわざ神獣がそこに無理に埋められたという風ではなく、それこそ自然な形で地中深くに存在しているのだ。
火山の壁面に埋まっている時点でも取り出すことは難しいだろうに、地中、地形に無理なく組み込まれてしまっているとなれば、発掘は遅々として進むまい。
仮に取り出せたとしても、火山周辺の山岳の壁面などぎりぎりのバランスで構成されている訳であって、何が切っ掛けで山全体が崩れてしまうかもわかったものではない。
必然、取り扱いは慎重になり、同時期に発掘された一般守護兵装、すなわち円筒めいた形状に足の生えたの
ハイラル王家とシーカー族の関係は、少なくともカカリコ村との関係はかつての王家とのそれほど蟠りが薄れている。王家からの依頼に応じ、ハイラル全土の平安のために、シーカー族は再び文明の手を取ったのだ。
この時点で、誰よりも先見の明を持ち台頭したのが、当時12歳であったプルアである。
各地を巡り古代シーカー族の風俗を掘り探し、集めていたロベリーという男がいた。当初、シーカー族全体としてはこの男を中心に研究を推し進めるつもりで居たのだが。それに待ったをかけるかの如く立ち上がり、そして朗々とロベリーと古代シーカー族について語り始めたのがプルアであった。
曰く、伝説に記される大空の勇者、時の勇者、黄昏の勇者、始まりの勇者など、様々な伝承と共に封じられているだろうシーカー族の文明の匂いなど。当時大半の大人のシーカー族でさえ理解が及ばない範囲にすら、貪欲に、そして熱心に語り合ったのだ。
「で、やっぱり『時の神殿跡』の立地から考えて、カカリコ村の場所って絶対何か変だと思うんだよ~。ちぇっきー?」
「オー、マイ? ユーは中々、ヒストリアな歴史的経緯にインタレスティング! 興味ありありかっ」
なお会話自体は、誰がどう聞いても真面なそれではなかったが。
「このマイ・ソウルシスターたる心の友、分野によってはミー以上にブレイクスルー、革命するかもしれないぞ」
ロベリーのこの判断により、二人はそろってハイラル城へと招集されるに至った。
現在、王立古代研究所において、インパとロベリーはともにエースの研究員である。
結果として研究は大きく進みこそしたものの、未だ神獣発掘にまでは至っていないと言うから、なかなか世知辛い。
ちなみにそういった研究に関して、予算の財布を握っているのはインパである。いさめる妹の配属先として、完璧な布陣であるといえた。
「で、姉上は何を見ているのですか?」
「――――ソー、ザッツ、それはマスターソードだ」
プルア、インパともに視線がもう一人の研究者の方へ向く。細身でワイルド目な容姿、鼻が高い男は額にゴーグルをかけ、頭髪はこう、形容が難しいが「爆発していた」。服装は特に改造もなくシーカー族の和風民族衣装かと思いきや、袖や足元など動きやすいように改良されているあたり、フィールドワークの多さを物語っている。
「マスターソード……、退魔の剣ですか? ロベリー殿」
すなわち、この男こそロベリー。プルアに並ぶシーカー族の天才であり、そしてプルアに次ぐやらかし要因である。もっとも頻度で言えばプルアの比ではないので、こちらはそこまで大ごとではないだろうとインパは思っている。なお外野から見ればロベリーのやらかしもまぁ相当であるため、インパの感覚がマヒしてしまっているのだろう事実は、うすうすインパ本人感じ取っていた。
「正解のザッツライ! ユーは知ってるかな、ここ1年くらい前に『時の神殿』からマスターソードがラナウェイ、消えてしまったのを」
「存じてますが……」
始まりの台地――――現ハイラル王国の流れに沿うそのはじまりにまつわる勇者が関連するとされる、ハイラル南部方面にある大型の台地である。
そこにひっそりと存在する、巨大な女神像を内包する神殿。いわく、時の勇者――――時空を行き来したとされるかつての退魔の剣の使い手がかかわったとされる遺跡だ。
現在でこそ修復がなされ催事などに利用されているが、当時としての神殿が本来もっていた機能は失せているだろう。
ともあれ退魔の剣、厄災と対峙しうることが確定していた現存する唯一の武具は、それこそ一年前からその姿を消していた。
もともと神殿奥、女神像の手前で無造作に突き刺さっていたそれは、ハイラルの紋章、鳥のようなそれをかたどった紫めいた鍔を持つ、鈍い碧の剣である。
いまだ騎士たちなどが挑戦し、それこそ一万年にも近い時の中、誰一人抜くことが出来なかったそれが、忽然と姿を消したのだ。
「あ~アレね~。本物かどうかって真偽の議論も交わされてたけど、姿を消したことで『まさか本当に本物だったのか!?』とか、そういう話にもなったっけ。ついに勇者現れたか! とか色々騒がれてたけど、結局音沙汰ないし~。盗まれたとかじゃないだろうけど、何かどうしたんだろうね~」
「姉上、研究できなくて残念なのはわかりますから、棒読みとかおやめください……」
「えぇ? だってー」
「ヘイユー、そんなユーに朗報のようなものがあるけど、リッスン?」
と、ロベリーの言葉にインパとプルアが耳を傾ける。
一方のロベリーはといえば、立ち上がると本棚の裏側、何かしら倉庫のようになっているところに入り、奥で何やら宝箱を開ける。ああでもないこうでもないと言いながら中をあさり、そして目的のものを引き当てた。
「ディスイズイット! これだ!」
取り出したそれは、小さなガラス瓶の中に入った何かである。
それは一目で見ると何かしらの木の種のようでもあり、しかし黄色で半分透き通るような、それでいて照り返しが金色がかっている独特なそれであった。
瓶の中で振ると、ちょっと良い音がする。
「何でありしょうか? それ」
「コハクか何か?」
「――――――――これは、
「「ミ?」」
理解不能な女性二人に、直接教えるのをためらったのかロベリーは本体の説明を回避し、それにまつわる話をはじめた。
「ユー、コログ族を知ってる?」
「コログとは……」
「えっと……、風の勇者の伝承にある精霊かな?」
「それだけ分かっていればドンウォーリー、問題はない。これの分析をした結果、かなり純度の高いブレスオブザワイルド、つまり養分を含んでいる、とてもきれいな
「ですからミとは……」
「あっ(察し)」
「姉上?」
「あー、うん、まぁいいや。続けて続けて?」
何かを察したらしいプルアは、インパが詳細を問い詰める前に話を促した。
「これを時折、演習場の付近で見かける。これ自体はノンプロブレム、大したものじゃない。だが重要なのは、これが一部の民間伝承で、コログがクリエイトするものだとされていることだ」
「コログが作るものですか……」
「まぁ……、
やはり何かを察したらしいプルア。遠い目をしている。
「つまり、何が言いたいので?」
「これが始まりの台地にあるのはワッツハプンド、おかしいということだ」
ここまで言われれば、プルアもロベリーが何を言わんとしているか察しが付く。
「つまり――――退魔の剣は、コログたちの住んでるとされる迷いの森の奥地にあると」
コログ、古くは時の勇者にも関連するらしいが、現状は風の勇者の伝承に出てくる精霊とされる。
彼らが住まうとされる迷いの森は、ハイラル軍の演習場のおおむね北部に位置していていた。
「ふふ~ん? なかなか悪くない推理かもネ~。たしか森の奥にある、デクの木さまだっけ? 時の勇者の伝承でも結構、深いかかわりがあったような気がするし。意外と的を射ているかも」
「場所を移し替えた、ということでしょうか」
「イグザクトリィ、正解だ。ただ、理由まではわからないが、調査してみる足掛かりにはグッドアイディアじゃないかとな」
という訳で! と一斉に立ち上がったロベリーとプルア。互いに視線を交わし、ガンをつけあう。
どうやらお互い思惑として、城を離れてフィールドワークがてら遊びに行きたい気分らしい。
と、ここでインパが半眼で二人に一言。
「……二人とも、そういえば私が提出した『近衛兵装』の案について、修正項目がまだ提出されていないのですが」
「ぎっくー?」「ワッザ!?」
びくり、と二人そろって動きを止め、ぎこちなくインパの方を見る。
インパの方は――――それこそ、今まで見たこともないほどに、とてつもなく良い笑顔をしていた。それこそその可憐さは普段を知っていれば知っているほどにギャップから魅力的に見えることだろうが、生憎二人にはその背後に得体のしれない怪物が見えているような、見えていないようなである。
「というわけで、今回は私が行きましょう。手早く調査して、手早く終了させます」
「オーノゥ!? そりゃないぜインパ様ぁ!」
「インパのライネル! モルドラジーク! ガノンー!」
「厄災呼ばわりされる筋合いはありませぬよ、ほら。二人ともお仕事をして」
「「はい……」」
言い返せない二人を背に、インパは頭を左右に振り、従者数人を呼び出して打ち合わせをはじめた。
なおこの時点で、インパは自らが「息吹の勇者」と遭遇した最初の一人となるとは、想像だにしていない。
【独自設定補完】
「賢者ナボールの怒り」
・賢者ナボールの加護により、周囲に雷を落とすことが可能となる
・[L]を押している時間で威力が3段階に変化する
【解釈元ネタ】
・ウツシエだったりDLCだったりでの、ウルボザの怒りの描写にちなんで
・武装の有無にかかわらない能力として使用しており、かつ威力にも振れ幅があるようだったので、それに準じる
・なお前回からボタン個所については[L]となっているが、これは加護の使用者はシーカーストーン未所持であることに対応しているため