息吹の叙事   作:黒兎可

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【彼の者の装備(初期状態)】
 服:コログのお面、古びたシャツ・パンツ※
 武器:森人の剣、槍、弓、盾、コログのうちわ
 道具:リンゴ、薪
 大事な物:退魔の剣、????????
 
※以前はハイリアシリーズだったと思われる。ボロボロに擦り切れて変化


インパと彼の者、仲良く稲妻から逃げる

 

 

 

 

 

 

 腕を持ち上げ、筋肉を見せつけるように確認するお面の少年。

 羞恥に震え顔を抑えるインパ。

 第三者が見ればなんだこの光景はという有様であった。

 もっとも飽きたのか何なのか、足早にインパの隣にある古びたシャツと古びたズボンとを着用する少年。お面含めてますます不審者感が増しているが、特に気にした様子はない。すぐそのあたりに転がっていた棒きれ、ボコブリンあたりが武器として使用してそうなそれに、ハイラルバスを突き刺し焚火へと向かう。串代わりに二本、じゅうじゅうと焼けるにおいがあたりに充満する。

 それをしゃがみ、何か様子をうかがうようじっと見つめる少年。

 

「お、おい、お前……」

「――――、食べる?」

 

 くきゅる、と、ややかわいらしい音が聞こえる。考えれば日中、昼食は抜いていたか。

 外見は得体のしれない相手だろうが、取ってきただろうハイラルバス自体には何か細工がされている様子もない(そもそも陸地にあげた時点でびちびちしていた)。やや無警戒ではあったが、相手に害意がないだろうと判断してインパは彼の対面に座った。

 木製の武器を一緒に背負う少年。どうやらあれらも、もともと彼の持ち物だったらしい。

 いや、そのお面の妙な雰囲気からして武器そのものは似合ってはいるのかもしれないが、いかんせん服装とは合っていないし、会話もほぼないことから妙に調子が崩される。

 早いところ戻らなければいけないが、腹ごしらえ程度は時間を割いてもいいだろうと半ば諦めているところもあった。

 少年は、わずかに仮面をずらす。

 口元は豪快に大きく開き、ハイラルバスにかじりついた。

 インパもそれに倣う(口はさすがに小さく開いていたが)。味付けがない。海産でないこともあり、特に潮が乗っているということもなく、普通に味のない魚の身と油の風味だけだった。

 仮面越しではあるが、少年はそれを意外とおいしそうに食べている。

 

「…………とりあえず食事には感謝する。が、その……、すまないが、ここはどこだかわかるか?」

「――――、マッコレ島」

「マッコレ?」

 

 言いながら、少年は地面を指でなぞり絵をかいた。それは迷いの森をおおむねかたどる輪郭のもので、その隣にさらに小さい小島を追加する。島から見て西側、ぽつんと本土との間に存在する何か。

 それを指さす少年に、おおよその位置関係の理解がつかめたインパだった。確かに地図上、島があったようななかったような。特に用事があるわけでもなく、またこの周辺はあまり探査が進んでいないこともあり、一部地図上で名前など省略されていたのかもしれない。

 

「なるほど、アルダー台地側に近いのか。ラーミン平原が近いな……。オルドラは、ここから……、見えないな残念ながら」

 

 ぼそり、と最後の一言をつぶやくインパ。聞こえていないのかいまいち理由がわからないのか、少年は特になんら反応を返さずハイラルバスにかじりついていた。

 やがて頭からしっぽまできれいに平らげると(!)、少年は立ち上がりインパの前に。

 

「な、何だ?」

「――――、誰?」

「わ、私か? 人に名乗る前に、まず自分が名乗るものだが……」

「――――、騎士見習い」

 

 はて、と頭をかしげるインパ。続けて少年が語った情報に違和感を覚える。

 騎士見習い、ということはハイラル城にて就学している子供だろう。実際、兵士たちの訓練場では城下町から子供たちも参加し訓練していることもある。基本的に政務もありその中で混ざったりすることこそないものの、おおむね上方からその様子をインパは見ていた。

 しかしそんな中で彼の姿を見た覚えはない。

 

「訓練では、お前のような者は見かけなかったが……」

「――――、参加は禁止されてた」

「なぜだ?」

「――――、わからない」

「いや、わからないと言われてもだな……」

 

 基本的に人事、軍事については他の執政補佐官が担っている箇所であるため、インパもそこまで詳しくは知らない。あくまでインパは厄災の伝承研究と調査、あと予算についてが主であり、それらはおおむねプルアたち研究員に対しての管理権限を有するという立場だ。今回の「退魔の剣」調査についても、その延長上であるため動くことができている。まぁそこにある程度、陣頭指揮を執るのが優秀であるという本人の資質にもかかわっているが。

 しかし、だからこそ純粋に少年の語る情報を精査できる。

 もっとも、常識の範囲にのっとってだが。

 インパは名と役職とを語り、少年の話の推察を続ける。

 

「同年代……、おそらく、その中でも優秀な方なのだろうか?」

「――――、一応」

 

 彼女は少年を、同年代の中で最も強く、他をケガさせないように訓練に参加させられないと判断していた。

 この勘違いが修正されるのはそう遠くないが、さておき。

 

「なら、そうか。ということは、今日は非番ということか?」

「――――、…………」

「何故そこで黙る。……もしかして抜け出してきたのか?」

「…………これを」

 

 言いながら、少年は背中から剣を手に持つ。それを見て、インパは思わず目を大きく見開いた。

 豪奢な装飾の施された鞘と、それに反するほどシンプルな剣。とくに剣の柄はハイラルの文様のような翼を広げた鳥を象ったもの。

 一瞬贋作である可能性も脳裏をよぎったが、しかし手元の剣の雰囲気には、彼女の疑念を払しょくする何かがあった。たとえ刃を見せられずとも、武具に詳しくない彼女を納得せしめるだけの何かがそこに存在したのだ。

 

「退魔の剣? なぜこれを」

「――――、持ち去られたのを見た」

「誰が?」

「――――、これくらいの大きさ」

 

 言いながら、お面の少年は自分の頭と胸元にかけて、かるく楕円を描くような動きをした。

 ちょうど、赤子くらいの大きさにも思える。

 

「――――、お面をくれた」

「ひょっとしてだが、コログか……? いや、その発言をそのまま信用するのもどうかとは思うが」

「――――、城に持っていくか、時の神殿に戻すか」

「あー、そうだな……」

 

 少なくとも退魔の剣は本物であろうと判断できる。コログが盗んだかはともかく、持ち運んだそれをわざわざ彼が取り返した、というのも、騎士見習いなら(動機として)あり得ない話ではないだろう。

 

「だが、なぜ一年もかかった? 森の中で遭難はさすがにしないだろうし」

「――――、一年?」

「ああ。それが時の神殿跡から消えて一年ほど経っている」

 

 いった瞬間、少年の顔は見えないものの、口が半開きになった。何か唖然としている様子なのはわかるが、何をそんなに驚いているのだろう。

 

「――――、2か月」

「何?」

「――――、それを手に入れるために試練を課された期間です」

「む? つまり、どういうことだ……」

 

 言いながらも、論理的に導けない箇所に対してそれなりに推測を立てるインパ。その内容がやや現実離れしていて、さらにいぶかしむばかりだが。

 ちなみに彼女は、この「試練」というものがどの程度のものであるかに理解が及んでいない。当然ではあるのだが、ある意味ではこの場合、少年にとって不幸でもあった。

 

「……時間が、外と森の中で異なるということか? 否、そんな馬鹿な」

「――――、除籍されているかも」

「あー、それは、そうかもな。お前の言っていることが本当ならばの話だが。とにもかくにも剣を取り戻して、こっちに帰ってきたということだな」

 

 首肯する少年に、インパは考える。

 少なくとも彼が盗人の類ではないだろうことはわかる。

 インパの前から剣をもって逃走する素振りも見受けられないからだ。

 ただ、その証言すべてを信じるのはあまりに迂闊である。

 結論として、一度彼ごと城に戻るのが最適だろうと判断した。

 

「……とりあえずは城に戻ろう。その際、お前の情報も確認しておく。おそらく真実でもすぐ軍には戻れないだろうな」

 

 主に姉が所属する機関の関連で。

 少なからずコログ族に連れ去られた少年、などというものは普通に考えておかしい。

 ひょっとすると、古代遺跡など何らかの関係があるかもしれない――――八方手づまりというわけではないが、全くヒントのない状況から手探りをしてきているせいもあり、なんとなくの勘所をインパもまたつかみ始めていた。

 

「ところで、もう少しそれを見せてもらえないだろうか」

「――――」

 

 手渡された退魔の剣――――マスターソードを前に、インパはその意外な軽さに驚いた。鉄製であることは間違いないだろうが、なるほど、これなら歴代の勇者が軽快に振り回していたという逸話もうなづける。

 そしてふと気になり、刀身を見てみようと鞘から抜き放とうとした瞬間、

 

「――――、ダメ」

 

 一瞬の隙をついてか、猛烈な速度で少年に剣を取り上げられた。唖然としたままの彼女であったが被りを振り、いぶかしげに彼を見る。

 

「何故だ? いや、別にそれが偽物の剣だと疑っているわけではない。だが実際に一度、この目に見てみたいと思うのはハイリアに住まう一人として変な感情ではないだろう」

「――――、命を保証できない」

「……、命?」

「――――、資格を試される」

「要領を得ないしゃべり方をするな、お前は……。まぁ良い。そろそろ日も暮れるが、訓練所まで行軍しよう」

「――――、どうして?」

「男は皆、ケダモノだと長老が口酸っぱくいっているのでな」

 

 などと言い訳しているが、年の近い男性と一緒にずっといられる自信がないだけでもあった。なおロベリーは大人だし男性とか女性とかそういう観点で見ることが出来ないので除外、ハイラル城に使える「吟遊詩人」の少年は、姫巫女に首ったけである。

 必然、免疫のないインパは、態度こそごまかしがきいているものの内心は結構余裕がなかった。

 少年は理解できないまでも、彼女の言葉に頷く。それは夜間に魔物に襲われても大丈夫という自信からくるのか否か。子供らしい自信識過剰もあるのだろうと、インパは自分の年齢を考えずに、ほほえましく納得した。

 

 そして、そんな風に話し込んでいるのが悪かったのかもしれない。

 ハイラルバスをインパも食べ終えて立ち上がった瞬間である。

 

 日は入り、わずかに大地の端から月が昇る――――。

 

 その瞬間、周囲の地面がざわざわと音を立て、盛り上がった。

 

「な、何? 何だこれは――――ひ、ひぃっ!?」

 

 彼女を知るものからすれば、あり得ないほど情けない悲鳴を上げるインパであるが、さもありなん。いまだ彼女が「見たこともない」魔物が現れれば、それもまた当然の反応といえた。

 それらは全体として、骨であった。低い鼻を持つ骨、伸びた頭頂部を持つ骨、甲羅のような何かを背負った骨。どれを見ても見たことのないそれらが、チュチュを討伐したとき同様の配置で、周囲に散乱する骨の中から湧いて出たのだ。

 後にハイラル城の研究局により「スタル系の魔物」と名付けられるそれらは、ここ1万年もの間では確認されていなかったものである。伝承に従ったそれらの姿は、現在では物語に残される程度。

 だがいざ眼前に出現したそれらを前に、インパは思わず腰が抜けそうになった。実に年齢相応の反応である。

 

 そんな、なんともいえないタイミングで、雨が降ってくる。

 

「――――」

 

 もっとも、少年の方は様子が違った。

 背負った木製の武器――――森人の剣と盾を抜き、バーバリアンよろしくとび斬りを仕掛ける。

 少年の一撃で全身をバラバラにしたボコブリンの骨。

 しかし首はいまだ元気にぴょんぴょんと飛び跳ねている。

 

「こいつ、生きているのか?」

「――――っ」

 

 盾を構えて、リザルフォスらしき骨の槍の一撃を往なし、木へと飛び移る。

 

「――――、早く」

「っ、わ、わかった」

 

 慌ててインパもそれに続くが、二人そろって木の上で万事休すという状態である。

 砕けた骨は再び結集しボコブリンのシルエットを取り直している――――未だ二人は、それらをどうすれば倒せるかという部分に理解が及んでいない。初見の魔物あるあるである。

 少年はひざまずきながら、インパは折れた小刀を持ち困惑する。

 

「こんなことになるなら、ポーチを持ってくればよかった……」

「――――、矢は?」

「ないな」

「――――、わかった」

 

 背負った矢は2本。それらを木製の弓――森人の弓で構えて、狙撃。

 一発はリザルフォスの胴体。一発は頭部。

 攻撃の成功により、砕け散るリザルフォス。

 

「……、再生しないな。頭が弱点ということか?」

 

 よし、と思い直そうとしたものの、インパは己の武器がないことを思い出す。

 す、と少年が森人の剣を貸し出した。

 

「あ、ああ。ありがとう――――ん?」

 

 ちょうどそんなタイミングで、びりびりと、何処かからか蓄電、稲妻が落ちる兆候音が聞こえる。

 ハイラルの雷は特に金属と親和性が高く、たとえ高所でなくとも金属製の物品が周辺にある場合、落雷する危険性が高い。

 そして、その帯電している物体は――――。

 

「た、退魔の剣!? いや、でも流石に投げ捨てるわけには――――ハッ、ポーチを持ってきていない!」

「――――、ポーチ?」

 

 ささ、というや早く何処かへと道具をしまう少年。どうやら彼の方は持ってきていたらしい。

 ほっとする間もなく、しかしバチバチと帯電音は周囲に響いている――――。

 

「――――、敵が持ってる」

「あれは……」

 

 錆びた剣を振り回すボコブリン。場所はちょうど、自分たちが上った枯れ木のあたりで――――。

 

「――――逃げよう」

「あっ」

 

 瞬間、少年に手を引かれるインパ。羞恥が頭を沸騰させるよりも早く走る。実際問題、雷に打たれれば死ぬ。一般的なハイリア人の「命の器」、ハートの数は雷に耐えうるほどではないのだ。

 だが降りたところで、すでに間に合うか間に合わないかという時間は超えており――――。

 

 それでも枯れ木から飛び降りた二人は、全力疾走で島の端を目指し――――。

 

「なんて厄日だっ!」

「――――、ダレカタスケテー!」

 

 二人そろって絶叫を上げながら島から飛び降り。

 背後では、猛烈な稲光が骨の魔物たちに落雷した。

 

 

 

 

 

 




【独自設定補完】
「退魔の試練」
・退魔の剣を手にするために、彼の者へと剣そのものが課した試練
・「剣の試練」を分割せず、初期ステータスで挑ませるもの。失敗したら1からやり直しも変わらず
・当然だがシーカーストーン系のアイテムはなし。また、古代兵装は当時未開発のためバクダン矢で代用となる
・パラセールがない代わりに、パラショールで代用(劣化版パラセール扱い、展開に秒数制限あり)
・クリアによりハート10個、がんばり1周分追加
 
【解釈元ネタ】
・退魔の剣解放条件および完全開放条件より
・当然のごとく、当時のリンクのハートが13は超えていたものということに由来。さらに完全開放状態のマスターソード取得の条件であるならば、それ相当の試練を課す必要があり、初期ステータスでの剣の試練ならば妥当と考える。たぶん薪とか食って過ごしたはず
・個数や数値は、初期状態のリンクに追加して問題がないレベルのものとなっている
 
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