・100年前相当の物語であるため、ゲーム中に出てこない過去作の人物名、および各種族の規則に従いそれぞれ名称をつける
・マロンのように過去作そのままのノリで出てくるキャラクターもいれば、ゴーマンのように役職そのものが変化しているものも存在する
・なおテリーはこの時代も普通にいる。異能生存体か何かカナ?
・チンクルについては現在検討中
退屈は猫をも殺す。
へ? それ好奇心だって?
どっちも似たようなものだって。だって退屈ってことは、変なコト考え出すってことだし。
そんなわけで絶賛暇を持て余している軟禁状態の私は、妹のインパに文句を垂れた。
「ひま~」
「…………」
「ひま~」
「……………………」
「ひ~、ま~」
「……………………姉上、少し黙るのじゃ」
あ、ちょっと本気で怒ってる。
インパは私より長老になついていた期間が長いので、実は口調が移っている。普段は「不適切ですので」と丁寧語だったり、男勝りな言葉遣いだったりするんだけど、地のしゃべり方はこういう風にお年寄りっぽい感じなのだ。
ちなみに本人はその若者っぽくない話し方を気にしてるので、指摘すると「少し話があるのじゃ」と人目のつかないところにつれていかれるので、これは禁句の類。
まぁ私含め、見た目年若い麗しき乙女なのであるから、そういう感覚は確かに女の子っぽくはある。
そして実際、そういう地の口調が出るくらい余裕がなさそうなのも事実だった。ごめんごめんと謝りながら、背中から覗き見る。
「私たちのやつ?」
「ええ。前回の多脚型守護兵装の暴走事件につきまして、調査結果と再交渉につきまして」
「再交渉…………、えっと、まだ全部は終わってないよね?」
「終わってませぬが、それ以前の問題です。どうもゴーマン大臣、今回のことを契機に予算を毟り取ろうと考えているらしく、各所へ顔を見せに行ってるそうです。知り合いから、その際の話と資料を提供されました」
「うわお」
インパ相手にそれをやろうというのだから、中々どうしてゴーマン大臣にも恐れ入る。
いや、実際働きぶりだけで言えばゴーマンも真面目な方といえるので、どっちかといえばそれだけハイラルの財政に余裕がない、研究局が確保している費用が大きいというのも問題ではあるんだろうけど。
このあたりについては、私は「神獣の動作方法」が判明するまでのトリアージ、優先順位の対応だと考えている。
厄災ガノン。
時の勇者、黄昏の勇者、風の勇者。いくつかの伝承によれば、元はゲルド族の長だったとされる巨漢の男。
その運命の系譜は、力のトライフォース――万能の力その破片――を取り込んでなお強大。
現存するハイラル史ではすでにその資格を失ったのか、ハイラル王家の系譜にトライフォースすべてが残っているとされている。
しかしそれさえどうこう出来ないほどに、その恩讐はすでに災害と成り立っていた。一部の古代遺跡で、ガノンの呪いとしか言いようのない赤黒い(紫っぽくもあるけど)泥のようなものが確認されている。現在それも含めて調査中だけど、発見されたのは厄災復活が予言されてからなのだから、状況で言えば悪いかもしれない。
まだ仮説の段階だけど――――この仮説は、明かすつもりはまだない。確証が少ないし過去の記録でも確認がとれていないこともあるので、だ。
「まぁ金食い虫に見えても仕方ないとは思ってるけど、設立から毎年なんらかの成果は発表してるし、容赦してくれてもね~」
「人員の連帯責任に持っていきたいらしいですが、それ以上に厄災復活そのものに対する否定的な調査結果を多量にまとめているそうです」
「びゃー、パワーゲームってやつ? 政治的な」
まぁ平時であるなら妥当だし、私も無関係だったらそれはそういう反応だろうなーとは思う。
王立古代研究所は、特に所長もまた放任主義な人なので私やロベリーも自由にさせてもらってるけど、そのせいもあるといえばせいもあるので、若干自業自得な部分もあるようなないような。
ただ、少なからず問題が大きいのは、時の神殿にある。
そう、時の神殿。
伝承が正しければ、あれは現在の大聖堂がある位置に置かれていてしかるべきなのだ。
風の勇者の伝承が正しければ、ハイラルは一度水底に沈んでいる。
そこから再浮上にあたり、例の「始まりの勇者」の話題が絡んでくるのだけど、このあたりの情報は不鮮明さを極める。
伝承の通りであれば、もともとは始まりの台地こそが旧ハイラル王国だったという可能性もあるのだけれど、そのあたりは学説が混乱していて、断定できるレベルではない。
なにせ退魔の剣のない時代、極魔の剣と呼ばれるそれが代用されていた時代の話だ。
もっと言うと、それすら紛失して久しい今の時代において、マスターソードがいつ時の神殿に再配置されていたのかさえわかっていない。
少なくともここ数百年以内の話ではあるみたいだけど……。
少なからず、祭事に使われ始めたのがそれくらいだったっぽい。
このあたり、実は逸話がほとんどない「無双の勇者」が絡んでくるのではと私は睨んでいるけど、それはともかく。
時の神殿があの位置にあることがもし「正しい」のだとするのならば――――現在のハイラル王国史というのは、かなりとんでもない事実を内包していることになる。
さすがにそのあたりの影響も読めないので、私はあえて何も言わないでいた。
ともあれ、厄災に対してなんら措置をしないということには繋がらない。
私がそう危機感を抱くだけの何かが、その事実には存在する。
「一応、退魔の剣が姿を消したことをその象徴として扱いたかったらしいですが……」
「剣がない、イコール剣が必要ないから姿を消した、と言い張りたいのかな?
でも出ちゃったからね~、退魔の剣」
それも、継承者を伴ってときてる。
リンリン、というかリンク。
いわゆる「神々の力を繋ぐ者」、「光の勇者」サマの系譜とかいうやつ。
退魔の剣に選ばれた剣士は、厄災討伐の任を負うとされている。
現在王城とかはてんやわんや。真面目にどうしたら良いか扱いに困っている臭い。
実際、あのマスターソードを抜ける何者かが現れると、真面目に考えていなかったくさいのが証拠だ。
そんな話がインパからぽろぽろと漏れ聞こえてきているのだけど、まぁそのあたりは置いておいて。
何を思い出したのか、ちょっとだけインパの顔が赤らんでいるのが可愛い。
「何、どうしたの?」
「え? あ、いえ、何でもございませぬ」
「怪しいなー。まぁ深くはつっつかないであげるけど」
まぁ、エポナ(勇者様が昔乗っていたとされる馬)に蹴られて死ぬ趣味はない。
妹ちゃんの機微に鋭い姉としては「きらーん」というか「はは~ん?」というか、煌めくものがあったりなかったりするのだけど、そのあたり本人がとらえきれていないらしいので、変にたきつけるつもりはない。
妹の情操教育ができる環境になかった王城勤めが悪い。うん、王サマは他者の心がワカラナイ。
まぁリンリン相手ならそう下手なことにはならないだろうと、私はそのあたりを全部彼に(勝手に)丸投げすることに決めた。
そんなわけで翌日。表で暇そうに素振りしているリンクを呼び止めて、私は彼の剣を見せてもらうことにした。
インパは王城に呼び出しを受けて、暇に輪をかいて暇なのだ。これくらいは遊ばせ……ゲフンゲフン、研究させてもらってもいいだろう。それくらいの役得は欲しい。
「という訳で……、触っちゃダメだって? だったら見るだけ見せて~」
そんな風に言いながら腕を抱いて手先を少し足にからめてみる。これでも容姿は十人並みなんてひとっとびしてる自負もあるのだけど、特にそんな色仕掛けめいたことをしても、リンリンの表情は変わらない。たいがい男性はおっぱいに弱いものだけど、とりたてて動揺している感じはしなかった。
相変わらず何を考えているか読めないのだけど、でも人は良いのか背中から抜剣。私にその刀身を見せてくれた。
古い時代の伝承から残る、マスターソード。
退魔の剣。
時の箱舟たる剣。
三角同一を示す剣。
封印の剣。
光の剣。
聖域の剣。
女神の剣。
そして、意志ある最強の剣。
呼び方も役割も伝承や時代において様々。
共通してるのは、いずれもこのハイラルの地を犯す何者かを撃滅するのに用いられている点。
柄も、刃も、伝承通りといえば伝承通りの姿かたちをしている。
しているのだけど、私はなんとなく違和感を抱く。
というのも、実際にこれを使っていた様を聞いていたからだろう。
「あれ、これって光ってなかった……? 前戦ってた時」
見た目には普通の剣の姿をしているのだけど、リンクが振るっている際にはまばゆい光を放っていたと聞いている。
あと、攻撃音がものすんごく煩かったとも。
その話をふると、リンクは無表情で、いつものように少し時間を空けて回答した。
「――――、今は眠っている」
「眠ってるって……?」
「――――、いつも目覚めてるわけじゃない」
「チェッキー!」
「――――、チェッキー ……」
あっはっは、ちょっと何言ってるかわからないです。
言葉が足りないのと、フィーリングがかなり強い話し方をするのだ、このリンリンは。
少しでも親しくなろうと思って変なあだ名とかつけて、スキンシップを増やしたりしても、相も変わらず「――――、……」という感じなのである。前々から天才も天才だっていう扱いを受けていたので、周囲からの当たりとか共感する部分もあって、かつ実験動ぶ……ゲフンゲフン、最新兵器とか出来たら試用してくれるテスターになってもらおうと、あれこれ画策していた頃もあったりなかったりで。
ただやっぱり読めないものは読めないので、このあたりどうしたものかなー、とお悩みになる昨今。
私個人の事情はともかくとして剣。外見上は普通の剣とそう大きく違いはないように思える。
王家特注の武装とは、柄の向きが逆だったりするけど。あれは元々、退魔の剣の伝承を頼りにはるか昔の職人たちが作り上げたテンプレートに沿った武器なので、まぁ歪んでるところは歪んでるのだろう。
「ま、あのあたりは伝承というか、設計図が一時紛失したりしたのが原因かな? 個人的には『極魔の剣』あたりの情報が混同したんじゃないかと思ってるけど」
「――――、極魔の?」
「うん。
あんまり勇ましくないので、極魔というのは勝手に私が呼んでる通称だけど。
ともあれ今日調べられる範囲はもう調べてしまったので(長さとか重さとかデザインの寸勁とか)、後は専用機材が解放されてから……、私が研究室に戻ってからということで、リンリンを開放する。
解放しても暇だけど、解放しなくても暇なので、だったらリンリンの素振りとかを見ておこうかなーという、まぁこれも暇つぶしだ。
リンリンは木製の剣(インパいわくコログ族が作った武器ではないかとのこと!)を構えて、ぶんぶんと振り回す。
…………うん、思った以上に暇だった。
途中で飽きて、自室に引き返す。
このあたりの判断が、うん、今日の私のミスというかやらかしというかだ。
たぶん十分も寝ていなかったともうけど、起き抜けの私が耳にした何者かの第一声がアレだった。
「――――貴様、調子に乗るのも大概にしろ!」
誰の声かと思い出そうとしても、まぁ心当たりはない。直接顔形名前役職を知っている誰かではないだろうということはわかる(そのあたり一度見聞きしたら私は忘れないのだ)。
ちらりと窓の外を見ると、リンリンは相変わらず両手を腰のあたりに引っ掛けて、突っ立っていた。たぶん表情も全然変わってないんだろうなー、という予想が立つ。そんなリンリンの様子を受けて、ますますヒートアップしてる兵士くんたち。
「大体、一年も姿を消して今更おめおめと、よく我らハイラルの軍が前に姿を現せたな。恥を知れ!」
「大方、その顔でプルア女史にでも取り入っているのだろう――――退魔の剣など出鱈目だ、この『田舎兵士』がっ」
「先日インパ殿と逢引きしていたと聞いている。なんと破廉恥なっ」
おっとー? 最後のやつ、私、聞いてないんだけどォ~?
中々エキサイティングな情報を耳にしてしまったけど、それはともかく。
「――――、ヒントを」
リンリン、煽ってる……、わけじゃないんだろうなぁ。今回はなんとなくわかった。
たぶんだけど、リンリンってば彼らが何に憤ってるかを理解してないんだろう。そのヒントが欲しいんじゃないかなー。
おんなじ兵士見習いだけど、とくになぜか私とかインパとかみたいな美人と親しいとか。
色目使ってるとか、粋がってるとか、そう思われて怒ってるんだろう。
いや、ぶっちゃけると青少年の思春期のアレそれを彼らが発症してるというのが正解なんだろうけど。
何のヒントだ、と怒ってる彼等の前に、颯爽と馬を走らせてインパが帰ってきた。
「……何をやっているのだ、お前たち」
「い、インパ様っ」
すぐさま膝をついて頭を下げる彼ら。リンリンもそれに連なって頭を下げる。……いや、しっかしリンリンこうして見ると服装のセンス皆無だな……。兵士見習いたちなみんな上半身にハイリアの鎧を当てているだけで服装は普通なんだけど、バンダナ巻いてるリンリンの姿は微妙に変な、似合わなさをこっちに与えてくる。
ちなみにこのあたりを後日聞いてみたら「――――、優秀な装備なので」とか言ってきた。ますます訳が分からない。
さってと。ちょっと面白くなりそうなので、私も下に降りる。
「もめ事は少なくともこんな生頼でするものではあるまい。……で、お前がやらかしたのか?」
「――――、わからない」
「いや、お前がわからないと言うとまた妙な話になるんだが……」
話を兵士見習い三人組にふるインパ。一方の彼らは、たじたじと、ちょっともじもじ気味に言葉を濁した。
いやだって、ねぇ?
高嶺の花本人からこんな話題の振り方されて、どうこうという話ではなないでしょーがと。
このあたり、やっぱりまだ自分が外からどう見られてるのかということに思考が及んでいないのだ。
まだまだ若い、純朴さが私の心をいやす。
リンリンの迷惑は省みないものとする。
さて、仲裁? というか、話に介入する。
「単にリンリンが気に入らないんじゃない? いろいろ特別扱いされてるし」
「姉上……?」
私の登場に、わずかに色めきだつ兵士たち。若いなぁ……。って、私と年、2つ3つくらいしか差はないので、まぁそんなものか普通。
しかし、今回はこれがちょうどよい暇つぶしになる。
「ま! そいうことなら早い話、リンリンが特別扱いされるだけの理由を見ればいいってことじゃないの? それでいいんじゃない?」
「いえ、私に言われましても……」
「三人はそれで良いカナ?」
視線を振ると、三人とも不満げなご様子。
「じゃあ、そだね~……。ちょっとゲームしよっか。四人総当たりで。勝った誰かさんは、私かインパと一日デート権をあげましょう! ちゃんと話は通しておいてねー」
「ちょ、姉上!?」
慌てるインパ。まぁ予定が確定していない現状で勝手にこんな話を出せば、そりゃ仕事に差し支えるしね――――とか思っていたら、ちらりとリンリンの方を見て、顔を赤らめる我が妹。
あ、これ完全にリンリンの勝利を疑っていないやつだ。
そして反応がちょっと露骨すぎやしないかね~?
「あ、逢引き……プルア様と……」「私がインパ様と……?」「おい、それは私の権利だっ」
対する兵士三人たちは、あからさまに動揺していた。色めき立つにはまだまだ彼らも精神が未熟未熟、まだまだうれし恥ずかしとかいうやつなのだろう。
「――――、……」
なお当然のようにリンリンは無表情のまま。ただ否定にかからないので、話を聞く姿勢ではあるらしい。
こっちの反応は期待してないので、私は勝手に話を進めた。
「じゃ、勝負はしあさって。ルールも私から当日発表。場所は始まりの台地で――――インパ許可よろしくね~」
「……姉上が遠出したいだけではありませぬか?」
ちなみに、これは結構簡単に受理された。
私から要望されたやらかしがこの程度であったことに、一部の大臣とか官僚から涙の言葉がいただけたらしい。解せぬ。
【独自設定補完】
「ハイラル史に残る各勇者の伝承について」
・もっとも伝承が多いのは時の勇者関連とする
・本作においては、既存のゼルダ系作品すべての時系列が統合された時代として取り扱う
・他の時代についてはまばら、外伝的な作品は失伝、および外典的な扱いを受けているとする
【解釈元ネタ】
・英傑解放時のセリフやら、神獣の名前の由来より
・最も取り上げられている名称が時のオカリナ関連に由来する部分より、伝承の残り方もまたそのあたりが最も大きかったのではという累々に由来
・加護についても同様の取り扱いとするので、この時代においての加護もまた六賢者(七賢者)に関連するものとして取り扱う※。なおインパのように、時世名が一致してしまう場合は別途名称変更
※風タク該当+αについては存在するが確認できていないという扱い